みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

龍が如く 維新!極(PS4)

龍が如く 維新!
株式会社セガ
2023年2月22日
PlayStation 5、PlayStation 4Xbox Series X|S、Xbox OneWindows、Steam

 

本作『龍が如く 維新!極』は、2014年2月22日にPS3PS4で発売された『龍が如く 維新!』のリメイク作品。
以下、クリア後の感想。

※ネタバレなし

 

個人的には原作である『龍が如く 維新!』のPS4版をクリア済みで、本作もPS4で遊んだのだが、ゲームの内容は基本的には変わらず、クリアにかかった時間もほぼ同じだった。
なぜこういった作品が制作されたかといえば、龍が如くシリーズの海外展開はナンバリングに限定されていたのだが、一部の海外ファンの中でスピンオフ作品も遊びたいという要望(主に欧米圏)があり、国内で評価の高かった『龍が如く 維新!』を最新の機種でも遊べるようにリメイクしたという経緯がある。
なので、本来ならばPS5で遊ぶのが正しいのだが、まだ持っていないので仕方なくPS4でプレイ。

 

序盤こそロード時間の長さが少し気になったが、許容範囲ではある。
それよりも気になったのはキャラクターの造形だ。これまでの龍が如くはドラゴンエンジンというセガ独自のゲームエンジンで開発されてきたのが、今作はアンリアルエンジンに変更されている。これに関してプロデューサーの横山昌義氏は以前の造形を再現するのに相当な苦労があったことをインタビューで語っている(ちなみに、今後発売予定の『龍が如く7外伝 名を消した男』や『龍が如く8』はドラゴンエンジンで制作される)。

実際にプレイしてみると、ムービー画面は違和感なく見れるのだが、それ以外のシーンでは違和感が目立つ。特に主人公である桐生一馬(坂本龍馬)の顔はこれまでに総計数百時間見てきた馴染みのある顔なので、ほんの少しの違いが気になってしまう。
テクスチャの欠けなのか、陰影の問題なのかわからないが、「この人、こんな表情したことあったかな?」と思う場面がしばしばあった。はっきりとした原因は分からないが、プレイ中にキャラクターが消失するバグに幾度か遭遇したので、ハードのスペックが関係しているのかもしれない。

 

ストーリーは壮大で、史実とフィクション、そして「龍が如く」が合体した物語が展開される。各キャラクターのかっこいい見せ場が随所に配置され、ここぞというタイミングで派手な事件が起こる。伏線がいくつも張られ、次から次へと提示される謎が短いスパンで解き明かされ、そこで判明した真相が次の謎を呼び、物語の確信へと迫っていくスリリングな展開はプレイヤーを飽きさせない。
…と言いたいところだが、実際やってみるとそこまで興味が継続しない。
序盤こそ純粋に楽しめはするが、中盤からは食傷気味になってくる。仲間だったはずの人物が勘違いして襲ってくるが倒してみると実はブラフやフェイクで、真相を知りたければついて来いと言われた先で倒した思いがけない人物から聞かされた衝撃の真相も実は…みたいな展開が続きすぎて、物語の核心に迫る終盤頃には何もかもどうでもよくなってくる。
原作が発売された2014年は時期的に『龍が如く5 夢、叶えし者』(2012年)と近いが、内容的にも近いものがある。シリーズが歴史を重ね、キャラクターや組織が増えていく中で、それを生かしたストーリーは二転三転どころではない展開を見せるが、一本の作品としてのまとまりを欠く。シナリオ自体は矛盾なく納得できるものにはなっているが、終盤に向かっていく際のカタルシスは失われる。原作をプレイした当時はこれが「龍が如くクオリティ」だと納得していたが、以降に発売された『龍が如く0 誓いの場所』(2015年)『JUDGE EYES:死神の遺言』(2018年)『龍が如く7 光と闇の行方』(2020年)などの傑作を通過した現在では物足りなく感じてしまう。

 

では、もう既に原作をプレイ済みの龍が如くファンが本作をプレイする価値があるかと問われれば、十分にプレイする価値が「ある」と言えるだろう。
本作は原作とほとんど同じ作りにはなっているものの、メインキャラクターの多くが原作発売以降の作品に登場するキャラや俳優に一新されている。俳優の変更はもちろん新鮮ではあるが、『龍が如く7』で仲間として活躍した「足立 宏一」「ハン・ジュンギ」「趙 天佑」が新選組のメンバーとして登場するので『龍が如く7』のファンならば間違いなく楽しめる。

 

竜馬の妻となる「おりょう」役が桜庭ななみからオリジナルキャラクターに変更されたのは最初残念に思ったが、造形的に非常に良く出来ていて、プレイしていく過程で自然と馴染み、忘れられないキャラクターとなった。

 

サブクエストは相変わらず面白い。これはもう保証付きのクオリティだ。
ナンバリング作品では主人公たちが刑務所に長年服役していたり中年だったりで世間に疎く、そこを上手くついたリアルタイム感のあるサブクエストが魅力なのだが、時代劇ではその手法は封印される。にもかかわらずファンを納得させるに十分な面白さが保たれているのも本作の凄いところだ。ちなみに、サブクエストだけに登場するキャラクターも一部最新のものに置き換えられている。

 

本作はある意味、龍が如くファンにとっては祭りのような作品となっており、期待に十分応えるサービス過剰な遊び要素にあふれている。その波に乗れさえすれば、先ほど挙げたストーリーの弱点も軽く飛び越えられるような高いテンションを保っている。何はともあれ、龍が如くという作品が、名越稔洋という巨大な柱を失っても間を空けずにクオリティの高い作品をリリースし続けることは喜ばしく、また今後すぐに発売される『龍が如く7外伝 名を消した男』に対する期待を高めるうえでも「プレイしてよかった」と思わせてくれる良作であった。

 

 

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