みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

パルワールド(Xbox Series X/S)

パルワールド
ポケットペア
2024年1月19日
Xbox OneXbox Series X/S、Microsoft Windows


本作『パルワールド』は、日本を拠点とする制作会社ポケットペアによるインディゲーム。PC版の売上が1日で200万本、2週間で1200万本を突破し、ゲーム史上最も速いペースで売れたタイトルのひとつとなった。尚、2月現在の段階で本作は「ベータ/プレリリース版」という扱い。
以下、15時間ほどプレイした感想です。

 

このゲーム、ポケモンに似すぎているということで発売前から色んな意味で話題になっていました。実際にプレイしてみると「パル」というポケモンそっくりの生き物がフィールド上に跋扈し、それにモンスターボールそっくりのボールを投げて捕獲し、戦わせることができる。これに関してゲーム側からの説明は特にありません。というより、各地に散らばった「手記」を集めることでゲーム内世界の秘密が解き明かされるという仕組みがあり、モブキャラとの会話からも細かい設定を窺い知ることができるようになっています。ムービーが存在しないため、プレイヤー全員が自然と共通の世界観を認識するということはなく、任意によるところが多い。パルという生き物の説明としては、ポケモンという共通認識に依存した投げ方だと言えるでしょう。悪い言い方をすると、ポケモンを知らない人が直感的に理解することが出来ないデザインになっている。

 

本作は既に各所で指摘されているとおり、恐竜世界でサバイバルをするゲーム『ARK: Survival Evolved』(Studio Wildcard 2015年)を基としながら、ARKにおける恐竜をポケモンに似た生物パルに置き換え、更にポケモン(ゲームフリーク)が避けてきた設定や描写を加えたものになっています。
拠点を立て、つかまえたパルを労働させて素材や料理を量産。野生のパルを倒すと、ぐったりと死んだ描写がされ、手持ちのパルを解体するアイテムまであります。こういった露悪的に取れる面もあれば、拠点にいる複数のパルが自分の意思で眠ったりご飯を食べたりするといった、本家ポケモンがゲームで表現しきれなかったものもあり、そういった部分をオリジナリティと捉えることも出来ます。
SNSでは本作のポケモンパクリ炎上に関して「全ての創作は模倣からはじまる」といった正論がバズっていたりして、私もプレイする前までは納得できる意見だと思っていました。
というのも、最近ではこの種の炎上が定期的に起こるのですが、そのほとんどは取るに足りないものだったから。
2020年には中国のオンラインゲーム『原神』が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に似ているということで炎上したのですが、実際にプレイしてみるとゲームの感触としては全くの別物でした。ビジュアル的にゼルダを模倣していることは確かなんですけど、きちんとオリジナルなものに書き換えられていることは実際にプレイしてみれば明確にわかります。

 

ゼルダに関して言えば、作品の大きな特徴であり本作にも出てくる崖登りや滑空などは、メジャーなタイトルであってもほぼそのまま引用している作品が多いのですが、やはりゲームとしての全体的な印象や感触が違うとさほど気にはならない。そもそもゼルダ自体が様々なオープンワールドゲームから影響を受けているわけで、何でもすぐにパクリだと騒ぐのは視野が狭すぎるのではないかというのがこの手の炎上に関していつも思うこと。


なのですが、本作における他作品からの引用は『原神』とは全く別の問題があると感じました。
まず、先ほど触れたポケモンの設定ありきでの二次創作的な改良に関しては、遊んでいる間中いちいち「これはポケモンっぽいな」「これはポケモンがやらなかったことだな」と比較してしまい、プレイ中の結構なノイズになる。武器を振るモーションはフォートナイトだし、新マップを発見した時の音はブレスオブザワイルド。発見の喜びや、プレイヤーが直接インタラクトする部分に他作品のアイデンティティともいえる演出をパーツとして組み込むことで、一つの作品としてはかなりちぐはぐな印象を受ける。今の時点では何とかまとまっているように感じられないこともないのですが、それは本作がまだベータの段階で、ゲームの全容が薄いから。
ポケモン部分に関しては今後のシナリオに依拠するところがあるので何とも言えませんが、プレイヤーの体験に直結する細かい部分、主人公のモーションや効果音の引用はこのゲームのオリジナリティを著しく損ねていると感じました。
ただ、注目すべきは本作がすでに1000万本以上の販売数を売り上げていて、拡張し続けるであろうということ。現段階でクラフト系のオープンフィールドゲームとしてはある程度の面白さが保証されていることを考えると、他作品からの引用部分の大半が何かしらの問題になってくるのは避けられないでしょう。今後、そういった要素が徐々にフェードアウトしていくのか、或いは更に増加していくかには大変興味を惹かれます。

 


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