みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

STARFIELD(Xbox Series X/S)

STARFIELD
Bethesda Game Studios
2023年9月6日
Xbox Series X/S、Project xCloud、Microsoft Windows

 


本作『STARFIELD』は、Bethesda Game StudiosによるオープンワールドアクションRPG。現在はPCの他、Xbox Series X/SのGame Passでプレイすることができる。開発のベセスダは2020年にマイクロソフトに買収されたため、今後他社のゲーム機でプレイできるようになる可能性は低い。
※以下の文章は重要なネタバレを含むので注意。

 

 

宇宙に移住した人類の物語

本作の舞台は2330年の未来。人類が地球を捨てて各惑星に定住している世界なのだが、ここまで惑星間を自由に行き来できるのは「グラヴ・ジャンプ」と呼ばれる技術によるもの。グラヴ・ジャンプとは、簡単に言えばワープ装置で、宇宙船に搭載されたグラヴ・ドライブにエネルギーをチャージすることで発動する。これはゲームプレイにも大いに関係してくるもので、ほとんどすべてのマップ移動はグラヴ・ジャンプで行うため、星から星へ向かうのに複雑な飛行技術は必要ない。本作中の宇宙での移動が局所的な戦闘とコミュニケーションに留まるのは、他の宇宙を舞台としたアクションゲーム群との大きな違いといえるだろう。

 

ストーリーは主人公が採掘の仕事中に見つけた謎の金属片に端を発する。この「アーティファクト」と呼ばれる金属は触れた者に幻覚を見せるが、誰もが見れるというわけではない。そのため、主人公は「コンステレーション」と呼ばれる、富豪や学者によって結成された組織の研究チームにスカウトされ、彼らと共にアーティファクトに関する謎を解き明かしていくというのがメインのストーリーとなっている。

 

STARFIELDの世界は最初に宇宙へ進出した人類によって創設されたコロニー連合(UC)のほか、そこに属さない人々や複数の海賊、カルトなど、多様な背景を持つ人種によって構成されている。
これまでのBethesdaによる「The Elder Scrolls」と同様に、それぞれのコミュニティに無数のサブクエストが存在し、全てのサブクエストを消化しようとすると敵対関係にある組織の怒りを買い、立ち行かなくなってしまう事もある。関係性をある程度戻すには高額な料金を支払って犯罪歴を抹消する必要があるため、序盤では自分で設定したキャラクターの属性に沿ったロールプレイが求められる。

 

Bethesda製オープンワールドの進化形

名作と呼ばれるオープンワールドゲームは、ある種の異常な欲望によって支えられている。それは広大な箱庭を「そこにあるべきもの」で埋め尽くしたいという欲望だ。実物大のタイタニック号のレプリカを作って撮影されたジェームズ・キャメロン監督による『タイタニック』を例に挙げるまでもなく、大きな予算を割けるプロジェクトではしばしばこうした欲望が幅を利かせる。しかしこれがゲームとなると、セットそのものが作れたとしても、それらをどの程度プレイヤーに干渉させればリアリティを保てるかが重要になってくる。そのため、多くのオープンワールドゲームでは固定された主人公キャラが採用されている。そうすることで「主人公がしなさそうな行動」を省くことができるからだ。これまでのBethesdaが目指していたのは、そうしたオープンワールドの壁を突破し、プレイヤー自身による完全なロールプレイを実現しようとする試みだったはずだ。ゆえに、物量は膨大になり、メインストーリーは他のキャラクター依存の作品にあるような深みを出せなかった。プレイヤーが自ら主人公の設定を考え、それに従って広大な世界を生きるという体験こそは実現したが、それは古典的なRPGの拡張として一部の熱狂的なファンを獲得したものの、所謂「ベセスダゲー」と呼ばれる一癖も二癖もあるアクの強い作品群として認識されたのではないか。そして、こうしたプレイヤー自身による拡張性が顕著に現れたのが『The Elder Scrolls V: Skyrim』におけるMOD文化だろう。PC版『The Elder Scrolls V: Skyrim』は、プレイヤーによって様々な改良を加えられることにより作品が素材化したもっとも有名なオープンワールドゲームとなった。


本作『STARFIELD』は、そうしたパブリックイメージに依拠することなく、未知の領域へと果敢に踏み出した作品だ。プレイを開始して数十時間は「いつものベセスダゲー」という印象に留まるが、ストーリーを進めて行くと幾層にも重なる仕掛けに直面することになるだろう。ストーリーだけを見れば既存のSF作品の枠を出ることはない。近年のクリストファー・ノーラン監督によるSF映画作品群の方がよっぽど優れていると言える。しかし、プレイヤー自身が主人公となって旅するための、広大で途方もない物量によって構成された世界の軸としては、これまでのベセスダ作品よりも数倍太いものになっている。
本作では主人公がアーティファクトの謎の核心に迫っていく過程で「なぜ、この世界が今のような状態になっているか」が明らかになっていく。ここまでは『Horizon Zero Dawn』(ゲリラゲームズ、2017年)と同じだ。しかし本作はその先を行く。長時間のゲームプレイを通じて徐々にプレイヤーに納得させていったグラヴ・ジャンプというシステムを物語と結実させることによりゲーム内の宇宙がループすることに説得力が与えられる。所謂「ループもの」と呼ばれる物語の円環構造自体も特に新しいものではない。しかし重要なのは本作が自由度の高いオープンワールドであるという点だ。
近年では『Cyberpunk 2077』(CD PROJEKT RED、2020年)のように、これまでのオープンワールドと同等の密度を保ちながら複数のルートを内包し、ストーリークリアまでの時間を短縮した作品が多くのユーザーに歓迎された。
短い時間で濃密な体験が出来るが、ゲームを気に入れば周回して少し違う物語も体験できる。それは、これまでのように広大な世界を100時間かけてゆっくりと味わうオープンワールドの定石を崩してはいるが、あらゆるコンテンツに気軽にコミットできる現代においては当然の変化だと言えるだろう。
本作『STARFIELD』は、『Cyberpunk 2077』で試行されたオープンワールドのプレイの変化をストーリーに完全に取り入れた作品だ。
これまでのベセスダ作品であるならば、なるべく1周目で多くのクエストをこなし、ある程度納得した状態でクリアしたいという欲望に駆られていたはずだ。2周目で別の人生を体験しようと思えば引継ぎ要素もノイズになってしまう。そうすると、序盤こそ自分の設定したキャラクターの生き方を守るも、レベル上げや金策のために適当なサブクエストをこなす羽目になり、その結果キャラクターの個性は必然的に薄まってしまう。

 

本作においても当然そういった事態に陥ることになるが、それはあくまでも1周目のみに留まる。1周目のエンディングで主人公は時空を超える旅人となり、2周目からは「周回する者」としての人生が始まる。会話のスキップもこれまでのようにコントローラーのボタンを長押しするわけではなく、「俺もう2週目だから」とNPCたちに宣言することで行われる。ある種メタ的な設定ではあるが、これは別に世界を救う為だけではなく、この広大な世界を何度も何度も味わい尽くすための設定という側面のほうが強いだろう。オープンワールドにおけるプレイ時間の長さや、周回における引継ぎ要素の枷を全てストーリーに取り込むことにより、プレイヤーがこれまで想像すらしなかった新しい「自由度」の概念が加わったのだ。
こんなことは、もちろん膨大な時間と金がかかるであろうし、多くのオープンワールド大作を世に送り出してきた経験がなければ出てこない発想だろう。
なんというか、スケールの大きさがバカすぎる。
しかし、先ほども書いたように、優れたオープンワールドとは「ある種の異常な欲望によって支えられている」のだ。その欲望を実現したものだけが新しい世界に踏み入ることができるという意味で、本作の価値は既に決定しているだろう。


おわりに

現在の私のプレイ時間は100時間程で、まだ2周しかクリアしていない。普通のゲームならば十分すぎるが、本作に関してはまだほとんどのゲーム要素を理解しきれていないと感じる。

本作はチュートリアルが充実しておらず、ゲーム全体が説明不足であることは否めない。それに加え、Xboxでプレイしたかぎりではバグも多く、サブクエストが進行不能になるなど、とても快適とは言えない状態であることもプレイ意欲を削ぐネガティブな要素として見過ごせない。
オープンワールドゲームとしては久々に「どこへ行って・何をすればよいかわからない」という状態に陥った作品でもあった。ベセスダの過去作と比較しても、戦闘や探索について賛否が分かれる要素も多く見られた。
しかし、それらを払拭するほどのチャレンジとアイデアの詰まった作品であるし、多くの可能性を示唆しながらも、そこに明確なビジョンを見せてくれたことに対する感動があった。
本作がオープンワールドゲームのマスターピースになれるかどうかは今後の対応次第ではあるが、オープンワールドの歴史を語る上での重要作品として絶対に外せない作品であることは間違いないだろう。

 

 


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