みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

Lake(Switch)

Lake
Gamious
2024年2月15日
PlayStation 5、Nintendo SwitchPlayStation 4Microsoft WindowsXbox OneXbox Series X/S、Google Stadia


本作『Lake』は、オランダを拠点とするゲームスタジオ「Gamious」によるインディゲーム。Gamiousは2011年に設立され、これまでに10本のゲームを発表している。尚、本作のPC版での発売は2021年9月1日で、ゲーム内での開始日(1886年9月1日)からちょうど35年後にあたる。
以下、クリア後の感想。

 

1980年代の日常

舞台は1986年のオレゴン州。湖の周りを囲うようにしてできたプロビデンスオークスという小さな街。
都会のソフトウェア会社で働く主人公・メレディスは、2週間の長期休暇をとり、しばらく帰っていなかった故郷の実家で過ごすことに。両親は旅行中で、その間メレディスは父の勤務する郵便局の手伝いをすることとなる。

 

本作は、40代独身女性のメレディスが久しぶりの地元で、郵便配達という仕事を通して様々な人々と交流し、彼らとの会話の中でどのような決断を下していくかという分岐型のアドベンチャーゲームだ。

 

湖の周りをのんびりと運転しながら各家に手紙や荷物を配達していくというのが主なゲーム内容だが、運転中に人を轢いたり事故に遭うようなことはない、きわめて平和な世界だ。配達の描写は丁寧で、手紙ならポストを開けて投函するモーションがあるし、荷物はそれぞれ大きさが違う。「思ったより重い(軽い)な」など、様々なシチュエーションでメレディスがつぶやく独り言も良い。

 

配達で出会う街の人々にちょっとしたことをお願いされることも。選択肢によって断ることも、深入りして各キャラクターの抱える物語に触れることも出来る。これが実に良く出来ていて、大きな事件などは扱わず、平坦な日常を描いているだけにもかかわらず飽きさせない。プレイヤーにイベントを探させる手間を省き、フラグ立てを配達と一体化させているのが新鮮。イベントのいくつかは、フラグが立った後にプレイヤーが主体的に赴かなければならないものもあるのだが、それらのバランスが絶妙。
配達に慣れきってくる後半は少し退屈に感じられもするが、天候の変化や、ラジオとイベントを絡ませるなどの工夫がされている。

 

配達パートを終えると自宅に切り替わり、両親との電話によるやりとりからメレディスの心境の変化を窺い知ることができる。その他にも、本を読んだり、配達で知り合った人から借りたビデオを鑑賞したり、時にはそうした人たちを家に招くことも。両親との会話では今後メレディスが都会の生活に戻るか、プロビデンスオークスで暮らしたいかを頻繁に聞かれるが、最後の最後まで迷っても大丈夫。

 

80年代を舞台としているため、当時の流行りものが出てくるのも本作の大きな特徴。街にはレンタルビデオ屋があり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)を思わせるポスターが張り出されている。レコードコーナーのように見えるものはおそらく当時流行っていたレーザーディスクだろうか。ビデオ屋の店員によれば、この田舎町ではそもそもビデオデッキの所有率が低く、経営が圧迫しているらしい。
映画やドラマなどでよく見る個人経営のレストラン「ダイナー」やモーテル、雑貨屋などに入れるほか、ダイナーに設置してあるゲーム機で実際に遊ぶこともできる。全体的な施設自体は少ないながらも、そこにいるそれぞれの人物たち、その彼らと主人公との距離感が丁寧に描かれているのは『シェンムー 一章 横須賀』(DC 1999年)を彷彿とさせる。

 

クィアゲームとしての側面

さて、本作では街の人々との交流が非常に丁寧に描かれていることは先に述べたが、その過程で彼らと主人公が恋愛関係になる選択肢がある。相手となる人物は男性だけでなく女性も含まれる。このことから本作はイギリスの雑誌Gayming Magazineで「クィア(LGBTQ)ゲーム」としてノミネートされている。

 

ゲームではメレディスの幼馴染とされる女性が登場するが、どうやら普通の別れ方をしておらず、再会時には気まずい空気が流れる。
オレゴンが舞台ということもあり、2人のこの関係性はゲーム『Life is Strange』(2015年)の主人公であるマックスとクロエを想起させる。
ゲーム内では性的指向を表す用語も、直接的な描写もない。だが、ストーリーを軸とした本作の特徴からして同性と恋愛関係を結べることが単純なゲームの自由度によるものだとは考えにくい。
80年代という時代を考えると、「クィア」という言葉は性的マイノリティを指す蔑称として使われていた時期と重なる。80年代前半にゲイコミュニティの間で流行した病気「エイズ」を、政府が「ゲイ特有の病気」として放置し、差別を助長したことにより起きた解放運動により「クィア」という言葉がポジティブな意味で使われるようにはなっていったが、86年のオレゴン州の田舎町で堂々とそれを公言できる空気があったとは考えにくい。そうした時代背景を踏まえると、本作におけるメレディスの性格や、幼馴染との距離感は腑に落ちる。

 

最後に

本作『Lake』は、古い文化や人を懐かしむ喜びだけでなく、主人公の置かれた状況を俯瞰的に捉える現代的な視点により平凡な日常の物語に特別な輝きを与えている。無駄なものを極力そぎ落としたゲーム性は単調だが、それにより郵便配達という仕事や田舎での休日という設定を際立たせることに成功している。実際にあるもの、やれること以上の広がりを感じさせてくれる良作だ。

 

 

 

※注意点 Switch版では立ち上げのロード時間以外にプレイを阻害するようなものはない。だが、遠景の描写が間に合わず、画面がぼやけて見るに耐えない画質になることがままあった(2024年2月現在)。なので他機種版をプレイする環境をお持ちの方には、そちらをお勧めしたい。

 

 

Gamious & Whitethorn Games. 2024