みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

祇:Path of the Goddess(Xbox Series X/S)

祇:Path of the Goddess
カプコン
2024年7月1日
PlayStation 5、PlayStation 4、Project xCloud、Xbox OneGeForce Now、Microsoft WindowsXbox Series X/S

 

本作『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は、カプコンから発売されたアクションストラテジーゲーム。開発はカプコン第一開発部で、自社のREエンジンが採用されている。
以下、2周クリア後の感想。

 

世界観

主人公・宗(そう)

 

巫女・世代(よしろ)

 

ストーリーは穢れに覆われた山村を、主人公の「宗(そう)」と巫女の「世代 (よしろ)」が祓い、復興を目指すというもの。セリフによる説明などは一切ない。というより、セリフ自体がほとんど存在しない。プレイヤーを裏切るような展開も伏線回収もネタバレもない。近年では珍しい、実に割り切った清々しい、気持ちの良い作品だ。

 

フォトモードが充実


世界観は中世和風だが、山村を舞台とした山岳信仰や民間伝承的な解釈は目新しく感じる。
マップは基本的に見下ろし型の視点を採用。
戦闘により村を浄化すると、拠点として使うことができるようになる。拠点では職業や装備の管理の他、村人を使い復興を手伝うと、礼として様々なアイテムが貰える。
ここで目を見張るのは村のオブジェクトの作り込みだ。現実的なリアリティを目指しつつ、ジオラマ的な質感が見下ろし型の視点と非常にマッチしている。開発者インタビューを読むと、これらは実際にミニチュアを制作してフォトスキャニングしているとのこと。


こうしたこだわりはキャラクターデザインにも反映されている。
ゲームの発売と同時期にYouTubeCAPCOM CHANNELで配信された動画「【CAPCOM×国立文楽劇場】『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』人形浄瑠璃文楽スペシャル演目」では、重要無形文化財保持者(⼈間国宝)・桐竹勘十郎氏の監修・出演による前日譚『山祇祭祀傳 巫女の定の段』を鑑賞することができる。ミニチュアを土台に構成されたゲーム内世界と、この人形劇は直線的な繋がりを感じさせ、世界観の拡張を実現している。素晴らしい動画なので是非一度視聴することをお勧めしたい。

 

ミニチュアや人形など、徹底的にこだわり抜いた世界を構築しながらも、ゲーム内における宗と世代のモーションにもまた、ひと工夫もふた工夫も加えられている。
モーションキャプチャーは映画『ベイビーわるきゅーれ』の主役も務めたスタントパフォーマーの伊澤彩織氏が担当。宗の戦闘モーション、殺陣や受け身、その全てが見惚れるほどに良い。お祓いの際の世代の踊りも現代風なアレンジが映える。

 

BGMも素晴らしい。ピアノや和太鼓など、和の世界観に合ったものを基調としながら、ボス戦ではロックバンドにサックスを加え、さながらスラッシュ・ジャズのような混沌と乱調を召喚する。
これらすべての要素が奇跡のように調和することで独特の美しい世界観が形成されている。

ゲーム自体は箱庭的でコンパクトであるにもかかわらず、ここまで調和の取れた拡張性を実現している作品には滅多にお目にかかれないのではないか。

 

ゲームプレイ

戦闘は村を探索しながら浄化していくステージと、ボス戦に分かれる。どちらも巫女を守りながら戦う。
探索ではマップに点在する穢れを祓いつつ、村人を助け、巫女を鳥居から鳥居まで移動させる。移動させている途中で夜になると「畏哭(いこく)」と呼ばれる妖怪の群れが巫女を攻撃してくるので阻止しなければならない。
助けた村人は槍や弓などを装備できる職業に転職させてマップに配置することで共に戦ってくれる。その間、主人公はアクションで対応。
巫女の移動や村人の転職には、汚れを祓うことで手に入る結晶を消費する。これらのバランスを考えつつ配置するのが楽しい。

 

ボス戦では主人公の立ち回りが重要となるのだが、ここもしっかりと作り込まれている。主人公のアクションは中盤から強化することができ、多彩な立ち回りが楽しめる。
序盤こそ退屈に感じられる瞬間はあるが、ゲームを進めて行くと敵の種類や数、村人の職業などが増え、自分なりの戦略を組み立てる面白さが増していく。
そうした要素を全て無視して、主人公の剣戟だけで乗り切ることができるのも良い。
アクションが苦手なら、結晶が多く入手できるステージを周回して村人を強化することで難易度を調整できるので、攻略の自由度は高い。

 

2周目

巫女の世代は祓った穢れを体内に宿して浄化するので、最終的には生き仏のようになって終わる。
2周目ではスキルや職などを引き継ぎ、少しだけ難易度の上がったステージを攻略。新たに追加されたラスボスを倒すと世代生存エンドに辿り着ける。
1周目をクリアしていれば割と簡単で、そこまでやりがいはない。
だが、やらざるを得ない理由があるのだ。


主人公と世代は基本的には喋らない。ただ、ゲーム中、世代の声をやたら聞く場面がある。
それは、戦闘中に世代が襲われている時だ。
主人公が世代から目を離して敵と戦っている時に、世代が敵に襲われていることがある。村人の配置を間違えたときなどには、特に頻繁に聞こえてくる。


「たすけてぇ」
「宗…たすけて」


と、世代のか細い声が頭の中に響き渡るのだ。
一周目を終えてゲームを終了しようとしたとき、この声の残響がプレイヤーの耳に聞こえてきたら、もう助ける以外の選択肢はないだろう。
この演出、かなり意図的に仕組まれているに違いないと私は思っている。

 

拠点では世代に団子などの和菓子を食べさせることもでき、その種類も豊富。ただのおまけ要素でしかないのだが、こうしたちょっとしたコミュニケーションが後々響いてくるのはギャルゲーとしても優秀。


感想

世界観やゲームバランスが素晴らしく、最後まで楽しくプレイできた。
主人公が自由にアクションできることで、普段ストラテジータワーディフェンス系のゲームを遊ばない人でも自然と馴染むことができる敷居の低さも魅力。
説明も簡潔で非常にわかりやすい。
同じステージを繰り返し遊んでも飽きない要素も多分にあり、やればやるほどその世界観に魅了される。
和の解釈、モンスターデザインも独特で、他の和ゲーとの差別化も図れている。
語り尽くせないほどの個性が詰まった作品。
間違いなく傑作。

 

 


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