CrossCode
Radical Fish Games
2020年7月9日
Nintendo Switch、 PlayStation 4、 Xbox One、 Linux、 macOS、 Microsoft Windows
『CrossCode』は12名のスタッフから成るドイツのRadical Fish Gamesによって開発されたインディゲーム。
開発は2012年から始まり2015年にクラウドファンディング、アーリーアクセスによるβ版を経て2018年にPC版配信、そしてついに今年2020年に日本でもローカライズされCS機で遊べるようになりました。
個人的にはかなり前から情報を追って楽しみにしていたゲーム。
トゥルーエンドクリア後の感想です。
※ネタバレなし
MMOの世界が舞台
本作は一人用のゲームですが、本作のゲーム内ゲーム「クロスワールド」は現実のセットの中をVRによって遊ぶタイプのMMO。その構造から、ゲーム内に生身の人間が紛れ込んでいるかもしれないという不安は海外ドラマ『ウエストワールド』(※)と共通する部分があり、重層的な世界観の上で展開されるドラマは先の見えないスリリングさを維持しています。
※『ウエストワールド』はHBOで放送された2016年のテレビドラマ。現実世界の舞台に多数のアンドロイドが配置された西部劇セットの中でロールプレイを楽しめるテーマパークを舞台としたドラマ。『RDR』『スカイリム』などのオープンワールドゲームに触発された企画。
マップのデザインは開発者が良く遊んでいたという『ラグナロクオンライン』(2002年~)を参考にして作られていますが、ラグナロクを知らなくてもMMOに触れたことのある人なら既視感を感じることが出来る「MMOあるある」が数多く詰め込まれています。
なんとなく広場に集まる人達、ダンジョン前で装備の確認をするPT。運営の悪口やリアルの愚痴などのチャットが表示され、フィールドに出てもせわしなく駆け回る多くの冒険者の姿がMMOのリアリティを高めています。
JRPGにも影響を受けているということから、ピクセルアートで描かれたキャラクター達はどれも可愛くて親しみやすい(キャラ絵はちょっとクセがあって好みが分かれそう)
ギルド(チーム)やフレンドの存在も丁寧に描かれていて、リアル学生のフレンドが戦闘中に学校の愚痴を言ってきたり、毎日ログインしてたフレンドが仕事の都合で全く出てこなくなったりなどの「あるある」が満載。
ゲーム内ストーリーの説明を真面目に聞いて外へ出るとフレンドが「遅かったね。まさかあの長ゼリフ全部聞いたの?あんなのスキップしなよ」みたいなことを言われたのにはハッとさせられました。
「クロスワールド」というMMOの中にはちゃんとストーリーがあって設定も作り込まれているのですが、まだこの先にアプデを控えているので完結はしていません。
そのゲーム内ゲームの設定とプレイヤー側との温度差が演出に盛り込まれていて、すごくリアリティを感じました。これはもう、MMOを長く遊んだ人なら感動ものでしょう。
主人公 レア
秀逸な演出でゲーム内ゲームのリアリティに拘った本作ですが、現実側の世界は描かれていません。
というのも、主人公「レア」は現実世界では昏睡状態で記憶を失っており、記憶を取り戻すために以前プレイしていたMMO「クロスワールド」をプレイしています。
記憶だけをアバターに移し替える際に簡単な定型文でしか話せないという不具合が発生し、様々な誤解をされながらも必死に仲間に自分の気持ちを伝えようとするレアには共感できるし、そういったトラブルを共に乗り越えてくれる仲間たちとのドラマも見所のひとつ。
レアの現実はぼんやりとした夢という形で見え、その場所を求めて冒険を進めて行くというのが物語の本筋。
MMOの世界をリアルに感じられはするものの、プレイヤーは主人公ではなく「レア」という物語上最も謎な存在を操作することで、本来あるべきはずのチャットによるコミュニケーション不在から来るであろう不自然さを感じさせません。
パズルとボス戦
攻撃には通常を除けば4つの属性があり、剣を振り回す物理攻撃とエネルギー弾があります。エネルギー弾は溜めて発射することにより壁に反射させることが可能。
本作に登場するダンジョンは全てこの反射する弾と4つの属性を利用することで解くパズルがメインとなっており、中盤からは弾を反射させながらその弾を追いかけて仕掛けを解くという、発想と俊敏さが要求されるものになっていきます。
弾がほんの少し軌道を逸れただけで失敗するので、仕掛けを解いてから数回試し打ちしなければ正解かどうかが分かりません。
広い空間内の仕掛けを一筆書きで解くタイプのものなどは、パズルを解いた喜びよりも開放感が勝ってしまい、扉を開けてまた似たようなパズル空間があった時には胃がもたれて投げそうになりました。
しかもこのゲームのダンジョンは、設定上では自動生成のソロ専用という事になっていて仲間と切り離されて一人で進まなければなりません。
しかも相当に長く、それが幾つもある。
開発者インタビューによると、もともとパズル主体のアクションゲームにMMOの世界観を付け足していったということらしいのですが、パズル要素残しすぎでしょ。
パズルは決して面白くないわけではないのですが、MMOで何故このようなパズル主体のデザインになったのか、その背景が一切描かれていないのは納得いきません。
このゲームの中には現実世界とMMO世界が同居しているわけで、このゲームが現実世界でどのように受け入れられているかという批評的視点があって然るべきかと。
VRという設定も生かされてないし、クリア後に合流したフレンドも大した感想を言わないのでモヤモヤします。
ダンジョンを進んでいくとボス戦ですが、これもたった一人で戦います。
MMOといえばそれぞれのジョブに重要な役割があってPTプレイが成立するというのが基本だと思うのですが、フィールドの雑魚戦こそ3人PTで戦えるものの、全てのボスを一人で倒さなければならないのはかなり不自然。
戦闘自体は派手な弾幕が飛び交い仕掛けも豊富で大半は本当に良く出来ているのですが、後半では戦闘中にダンジョンにあったものと全く同じパズルが挿入されていることがあり、嫌がらせを受けているように感じてしまいました。
あと、エネルギー弾は続けて使用すると時間による補充が終わるまで使えなくなるのですが、補充され終わるまでがまあ長い。
ボス戦では特定の属性を切り替えながらほんの少しの隙を突いて攻撃しなければならず、補充が切れて逃げ回る時間が本当に退屈で、ただの時間稼ぎにしか思えません。
ダンジョンに入る前に適正レベルを教えてくれたり、仕掛けの速度も遅めに調整できるなどの新設設計も多くあるのですが、そもそもの難易度に対する考え方に問題があるような気がしてなりません。
まとめ
MMOを題材にした世界観の構築と、その上で繰り広げられるストーリーは良く練られていて素晴らしいし、歯ごたえのあるダンジョンのパズルやボス戦も緊張感があり大きな達成感を得られます。
ピクセルアートによる美しいアクションシーンも素晴らしい。
クリアするまでかかった時間は40時間程度。
正直、中盤までは楽しめたのですが、途中からマップやボスにパズル要素を加えられてからは開発者の意地の悪さばかりが目に付くようになり急いで消化した感じです。
本作と同じくJRPGに影響を受けたパズルアクションのインディーゲーム『アイコノクラスツ』と比べると全体的なレベルデザインは大分劣っていると言わざるを得ません。
おそらく退屈なMMOのクエストを刺激的なものに置き換えたかったのでしょうが、属性と反射のパズルをメインにしてしまったため中盤からは使いまわしが多くなりMMOとは違う意味での退屈さを招いているように思えました。
世界観や設定の部分では期待を大きく上回る出来でしたが、全体的なバランスは悪く、プレイ後の疲労感が大きかったです。
メディアやユーザーの評価では名作と言われている本作『CrossCode』。
その評価に文句はありませんが、それはあくまでもコアゲーマーの評価なのだという事。
軽い気持ちで手を出すと火傷します。
DANGEN ENTERTAINMENT is a trademark of Dangen Entertainment. Copyright © 2020 Dangen Entertainment. All rights reserved.