
春待ちトロイダル
さめさめサメーション
2024年8月16日
Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Microsoft Windows
本作『春待ちトロイダル』は、さめさめサメーション開発によるインディゲーム。
PCでの初配信は2023年8月3日。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし。
概要

ストーリーとシステムは、タイトルのトロイダル(円環状)という語からもわかる通り、所謂ループもの。
プレイヤーは女の子の姿をした悪魔に拉致(?)され高校生の姿に戻された20代後半の男性になって学園生活を送ることになる。
舞台は「隆ヶ島」という離島。
その島の高校で、10日間を過ごし、無事に卒業式を迎えるというのが悪魔から課せられたミッションだ。

最初の10日間を終えると起こる悲劇。
この原因を探るため10日間を何度もループして悲劇を止めよう。
学園シミュレーション&カードバトル


高校には12人のクラスメイトが存在し、それぞれの好感度を上げることで個別のイベントが発生する。
主人公の1日は自室での起床から始まり、登校・授業・下校・夜と過ごしていく。
自室パートでは勉強や運動ができるので、うっかり『ときめきメモリアル』と間違えてお気に入りの女子の好感度を優先的に上げても恋愛系イベントは起きないので注意!

高校生たちとの好感度を上げるには、カードバトルで勝利し続けなければならない。
ルールは単純で、「話題(4種)」と「数字(1~10)」の書かれたカード4枚を出し合って数字の大きいほうが勝ち。さらに相手と同じ話題だった場合にはボーナスポイントが得られる。
相手の手札はこちらに見えていて、何を出すかは表情を見て推察する。素直な生徒の手は読みやすいけど、変わり者の手は表情から読み取り辛いなど、カードバトルを通じて相手の特徴が見えてくる。


8枚のカードデッキはループするたびにリセットされてしまうが、次のループ突入前にバトルで稼いだポイントを消費して数字を強化したり特別なスキルを手に入れられるようになるので、数字で勝てるようになってきたら話題を合わせることも意識しよう。
自室での勉強や運動でもカードを強化できるが、早く攻略したい人は次のループを見越してカードバトルでたくさんポイントを稼いでおくのがおススメ。
謎解き

卒業式の悲劇を止めるには、なるべく多くの生徒の好感度を上げていかなければならない。
はじめは相手の表情が見極めにくく難しいと感じるが、何度もループすることでパターンが読めてくるので、やればやるほど難易度は下がる。こうしたプレイヤーの体験の定着が、ループものの設定と非常にうまく噛み合っている。

序盤は一部の生徒としか話せないが、ストーリーを進めることで解放される。
セリフや行動の選択肢こそあるが、終盤まで分岐はない。うまく進める方法は「ジブン」のセリフが示してくれるので、よく見て実行しよう。
生徒たちと仲良くなるうちに、この島には特有のルールや、オカルトじみた迷信があることがわかってくる。
ストーリー全体はコンパクトながらも、近年のループものの定形をなぞっており、二転三転する仕掛けが用意されていて面白い。謎解きはあくまでも会話によるストーリー進行に依存しているので、理不尽なパズル要素が皆無なのも嬉しい。
感想

『ひぐらしのなく頃に』(2002年 - 2006年)や『STEINS;GATE』(2009年)のように、大量のテキストを読ませるタイプのループ作品が流行らなくなって久しい。
しかし、ループものというジャンル自体は2024年現在でも健在だ。それは、『東京卍リベンジャーズ』(マンガ連載.2017年 - 2022年)のアニメ人気や、異世界・マルチバース系の作品に頻繁に引用されていることを見ても明らかだろう。
ただ、ここ数年、ゲームを含めたサブスクリプションが定着したことにより、長時間プレイを要するゲームジャンルの作品群に変化が起きている。テキスト系は約10時間程、オープンワールド系は約20~30時間程と、クリアまでに要する時間が以前の半分程度になっている作品が多く見られるようになった。
そんな中で本作『春待ちトロイダル』は、本来ある程度長いテキストで解説すべきループものを、シミュレーション要素とカードバトルで効率的に体験させてくれる逸品だ。
『ときめきメモリアル』風のUIは、恋愛シミュレーションゲーム的な印象を強く意識させ、それにより主人公の没個性をプレイヤーに自然と受け入れさせる仕掛けとして機能している。
カードバトルにおいても、相手の表情と話題、勝敗に対するリアクションでキャラクターの個性を自然と理解することができるようになっている。
これらの演出は、非常に「ゲーム的」であると言えるだろう。
カードバトルは他にもゲーム全体に軽快なリズム感を与えており、それが繰り返しで作業的になりがちなゲームプレイを、プレイヤーの恣意的な反復性によるものだと錯覚させる。
本作の物語は、ひぐらし~シュタゲを体験している世代には少し物足りないと感じられるかもしれないが、それらに近いものを短い時間で体験させるための工夫が随所に施され、そのチャレンジは大方成功している。
ループものという、複雑怪奇になりがちなものから設定や説明を極力削ぎ落とし、ほど良く思考を動かしながら自然と物語世界を理解できる構成は見事。
© 2023-2024 SameSameSummation
© 2024 KEMCO