SD シン・仮面ライダー 乱舞
バンダイナムコエンターテインメント
2023年3月23日
Nintendo Switch、Steam
映画『シン・仮面ライダー』の公開から5日後にバンダイナムコから発売されたゲーム『SD シン・仮面ライダー 乱舞』をクリアしたので感想を書いていきます。
本作はベルトスクロールとハック&スラッシュを掛け合わせたアクションゲーム。現在YouTubeで公開されている映画冒頭2分間の映像では戦闘員を倒す際に大量の血が飛び散りますが、本作にグロ表現はありません。
映画出演者の声が一部収録されているものの、ドラマ展開はほぼカットされており、緑川ルリ子による設定の説明がなされるだけ。
基本的には拠点となるセーフハウスとアクションステージを行き来して攻略していきますが、プレイヤーの進捗状況によってルリ子のセリフに多少の変化があります。とはいえ、普段は全くこちらから話しかけられないのが寂しい。似たような構造のゲームだと、『HADES』(2018年)というインディゲームでは、拠点に帰ってくるたびに複数のキャラクターに変化が見られ、セリフも大量に用意されているので周回するモチベーションが保たれていますが、本作ではそのような配慮に乏しい。というか、映画からは大分削っているのに、オリジナルな要素が加えられていることに違和感。この作品の場合、カルビーの「シン・仮面ライダーチップス」付属のカードに書いてある設定も全く生かされていないものがあったりと、もしかして全体的な連携&統制が取れていないのでは?
プレイキャラクターは様々な料理を食べることでパワーアップしますが、本郷猛が料理を食べるたびに「味がしない」というセリフが表示されます。一文字だと「味気がない」とか。本編にはないセリフですが、どうせならもっとバリエーションが欲しかった。パン系なら「ダンボールの味がする」とか、チーズ系なら「木工用ボンドのようだ」とかなんとか。
というのは冗談としても、レア料理としてライダーチップスが出てカードコレクションが出来るとか、何らかの工夫が欲しかったです。なんでカードないの?いくらゲームが面白くても育成できるキャラは最大3人で、ステージ数も少ないのだから、周回するための何かしらの達成要素は必要だったように思います。
キャラ育成にはステージ内で手に入るコインとクリスタルが必要になりますが、それ以外に必要となるチャレンジ達成が面倒なので「ルリ子のオススメ」(自動)で済ませてしまいました。正直、プレイヤーの個性を出せるようなものではないですね。
とはいえ、ゲーム自体は良く出来ていて、アクションも豊富で動かしていて楽しい。素顔の状態から変身で強化&回復、コートを着ていると守備力が上がるが、脱がなければ必殺技が出せない仕様など、とても良く出来ています。変身や必殺技のタイミングなど、プレイヤーが自分なりのシチュエーションを創作できるのが嬉しい。ジャンプで空中に浮いてバタバタするといったSD要素も懐かしく、特に使わなくても攻略できるのだけれど、こだわりとしては正しい。『シン・仮面ライダー』本編と71年のテレビ版、90年代のSDヒーローの要素がバランスよくミックスされているのは感心。ライダーファンならばそれなりに満足できるかと思います。
クリア後には「ヘブンモード」が追加され、全ステージを通したタイムアタックに挑戦できます。コインなどは手に入りませんが、オンラインに繋いでいるとランキングに参加できます。私は発売から三日後くらいにクリアしたのですが、全く盛り上がっていませんでした。
クリア後に追加される新キャラがいちばん強いのですが、それを一から育成しているプレイヤーが一人しかいなかったんですね。当然、その人が一位だったわけですが、前述した通り、本作はプレイヤーが周回したくなるような要素がほぼ皆無。これは本作の唯一にして最大の欠点でしょう。
全体的な感想として、SDライダーゲームとしては非常に良く出来てはいるものの、原作映画の特性である「キャラクターの少なさ」をカバーするアイデア不足によって、リプレイ性が著しく低下しているのが残念。初代プレイステーション版にあったライダーカードのようなものを採用していれば、だいぶ違ったかと思います。ファンとしては、ライダーのゲームが出るだけで嬉しい気持ちはあるものの、欲を言えばもう一歩踏み込んで欲しかったところ。
©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
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