みやび通信

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DEATHLOOP(Xbox Series X/S)

DEATHLOOP
Arkane Studios
2021年9月14日
PlayStation 5、Xbox Series X/S、Project xCloud、GeForce Now、Microsoft Windows


本作『DEATHLOOP』は、Arkane Studiosが開発し、ベセスダ・ソフトワークスから発売されたFPS。当初はPCとPS5でしかプレイ出来なかったが、2022年9月20日Xbox Series X/S向けに発売。2024年現在ではXboxサブスクリプションでプレイできる。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし

 

概要

本作の特徴を簡単に説明すると、プレイヤーは記憶を失った主人公・コルト・ヴァーンを操作して4つのマップを攻略、探索していくというもの。

 

舞台はブラックリーフという島で、ここでは同じ1日がループしている。さらに謎なのは、主人公のコルトが島内で死んでしまうと1日目の朝に強制的に戻されてしまうということ。
ゲームの目的は、この島の謎を解き明かしてループを止めること。

 

コルトのライバル的存在として現れる謎の女性ジュリアナ。彼女もまたコルトと同じくブラックリーフ島のループとは別の時間軸で行動している。『魔法少女まどか☆マギカ』における暁美ほむら、『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』におけるチャオズみたいなもの。
物語がある程度進むと、オンラインモードでジュリアナを操作し、別のプレイヤーの世界に侵入して邪魔することができるようになる。逆に他プレイヤーに侵入されることも頻繁にあり、オフラインに切り替えてもNPCのジュリアナに襲撃される。
ジュリアナの存在はゲームプレイに程よい緊張感をもたらす効果があり、倒せば武器等それなりの特典がもらえる。


死にゲー

ゲーム序盤は手探りでこの風変わりなゲームの概要を自分なりに理解しなければならず、難易度選択もないので人によっては何度も殺され、わけのわからないまま強制ループさせられるだろう。
1つのマップの中には2~3のエリアがあり、時間帯によって敵の配置や行ける場所も変化する。まずは死にながらマップを覚えて自分なりの攻略ルートを見つけていくしかない。


ストーリーは意味がわからないし、すぐに死ぬ。

こうした序盤の洗礼を面白いと思えるかどうかが評価の分かれ目だろう。


FPSRPG要素

何の補助もなく手探りだったゲームプレイも中盤からは大きく変化する。コルトの能力や手に入れた武器をストックして強化できるようになり、カスタマイズによっては高速移動も可能となり、ステルス潜入も容易となる。
ここからは見知ったマップを素早く探索しながら証拠を集め、ジュリアナの襲撃に対応しながら無事に1日を生き延びて、また同じ1日を繰り返すというのがローテーションとなる。
ここまでのゲームの流れを見ると、ただの旧態依然としたFPSのように思えるが、このゲームの特殊性は、これらの一見ネガティブな要素を設定・デザイン・ストーリーによって乗り越えようとする胆力にある。そしてその試みは大方成功しているといってよい。


パズル型ストーリー

本作のストーリーにはやたらと長いムービーや説明セリフもない。マップ上に点在する書類もそこまで読み込む必要もない。大事なのはそこに書かれている時間だ。「昼に扉を開けておく」「朝、倉庫に花火を運ぶ」など、一つ一つは意味のなさそうなものでも、そうした情報が繋がった時、自分がいつ何をすべきかがわかるようになっている。

 

ある程度ストーリーを進めると、ループを止めるには8人の「ヴィジョナリー」と呼ばれる人物たちを1日の内に全滅させなければならないことがわかる。
4つのマップ、4つの時間帯(朝、昼、午後、夜)に均等に8人が振り分けられることはなく、同じ時間帯に別々のマップにいたりするので、彼らの行動原理を理解し、作戦を立てて決行の準備をしなければならない。


全ての準備を整えて最後の1日を迎えた時の高揚感は格別。


さらに自分のアイデアを投入し、ひと手間加えればピタゴラスイッチ的な自動攻略も取り入れることができる。
見えてはいるけど行けない場所、個別には倒せるけど達成できないヴィジョナリー全滅。それらを自らの探索で手に入れた情報を繋ぎ合わせ、パズルを解くように攻略する。

 

自由度と達成感
オープンワールドの傑作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(BOTW)』(2017年、任天堂)は、「見える場所には全部行ける」という点が高く評価されているが、ここで重要なのは「簡単には行けない」がセットになっているということだ。

高い山の上に登るにはスタミナの上限を上げ、防寒服を着て、回復系の料理を作らなければ辿り着けない。そうかと思えば、別のプレイヤーは全く違うルートとアイデアで辿り着いていたりもする。

プレイヤーの「発見」と「発想」が繋がることで開かれる道が一つではなく、さらにそれらを受け止めるだけの舞台が用意されることで初めてBOTWの「自由度」と「達成感」が生まれたのだと言える。
そして最新作の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(2023年)では、クラフト要素を強化することで「発想」の部分を伸ばした。


この構造にインスパイアされて作られたゲームに『IMMORTALITY』(2022年、Half Mermaid Productions)がある。

『IMMORTALITY』は、実写映像によるパズルゲームという、かなり特殊なジャンルの作品だ。ほとんどの人はゲームをプレイしていても、まさかこれがBOTWに影響を受けているとは露ほども思わないだろう。

しかしインタビューの中で開発者のバーロウ氏はBOTWからの影響を挙げながら「探索型のゲームがなぜ面白いかと言うと,自分が行きたい場所を決めて,その意図を持って目的地に向かう自由度が提供されるから」と語っている。


ゼルダシリーズの元々の特徴である「発見」と「発想」が、遠方まで見渡すことの出来るオープンワールドという舞台を得ることにより新たな「自由度」を手に入れたことは疑いようがない。
そして、その理論を他ジャンルに当て嵌めたのが『IMMORTALITY』であり、本作『DEATHLOOP』であると考える。


『DEATHLOOP』では、やるべきクエストは常に提示されており、それを辿ることである程度メインストーリーを進めることは出来る。
だが、各4つのマップと時間帯のどこから手を付けるのかは自由で、無数にある証拠を手に入れる順番も決まっていない。
マップには鍵のかかった扉がいくつか存在するが、気になる扉の周辺を調べていくとヒントが見つかりやすい。別のマップの誰かが鍵を持っていることもあれば、扉を開けた先にある電力源を操作することで開く扉もある。鍵を取りに行く途中で、いつもは閉まっていた扉が開いていて、うっかり寄り道をしたら見たこともないような無数の敵が湧いてきて殺されたりもする。
その体験が悔しくて、鍵の入手そっちのけで自分を殺した敵を殲滅することに執着してしまうプレイヤーもいるだろう。
本作では、メインストーリーの導線をぼんやりと見せつつ、その周辺に無数の誘惑が仕掛けられている。そして、その誘惑に負けて別のルートを選んでも、その先で何かしら重要なヒントやアイテムが手に入る。
最終的にはどのプレイヤーも同じ答えに辿り着きはするが、そこに至る道のりが無数に存在するのだ。


こういったゲームデザインが特に画期的だと言うつもりはないが、手垢にまみれたFPSのシステムを上手く利用し、プレイヤーに新鮮な驚きを与えることには成功している。
4つのマップをループという名目で周回させるというのは、ともすれば単なる使い回しとも取れる。だが本作では、メインストーリーを完走するまで飽きさせない工夫が無数に施され、そこに手抜きは見られない。

 

個々の謎が明らかになっていくに連れて単純化されていくストーリーは、中盤で抑圧されたゲームプレイと逆転する。目的の輪郭が見えてきたところで、旧態依然としたFPSRPGがゲーム的な快楽として機能するのだ。
そうして、最終日には全てが万全の状態になり、8人全てのヴィジョナリーを出し抜けるだろう。
当然だ。

そのために、気が遠くなるほどループしたのだから。


ビジュアルデザイン

最後に、本作のビジュアルデザインの秀逸さにも触れておきたい。
全マップ通してレトロ・フューチャーなデザインが施されている本作だが、拠点ではそれぞれ駐在しているヴィジョナリーの個性が表れている。
実際にゲームを攻略する上で、ヴィジョナリーと直接戦闘する必要はない。ヴィジョナリーがいる建物の外から中のタレットをハッキングして倒すこともできる。私の場合、一度も直接戦闘をしていないヴィジョナリーが少なくとも2人はいる。
しかし、彼らが拠点としているマップや建造物、島内放送から感じられる個性は、プレイヤーに強烈な印象を残す。

 

あと、マップの至る所でヒントのようなメッセージが現れるのだが、ヒントでも何でもないどうでもいいメッセージが多く用意されているのも良かった。こういった遊び心は高確率で失笑を招く事態になるのだが、本作では上手く作用していたように思う。何度も笑わせてもらった。


感想

使い古された手法とネガティブに捉えられがちなシステム。
複雑で意味不明だと思わせて、蓋を開けてみると単純なストーリー。
ループという設定を生かし、手垢に塗れたFPSに新しい体験をもたらした手法は見事。
これぞ創意工夫というべき練られたアイデアを丁寧に積み重ねることで、退屈で死んだ世界に命が吹き込まれている。
最後まで飽きることなくプレイできたが、まだまだ足りないくらい楽しさが持続している。

 

 

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