みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

Lake(Switch)

Lake
Gamious
2024年2月15日
PlayStation 5、Nintendo SwitchPlayStation 4Microsoft WindowsXbox OneXbox Series X/S、Google Stadia


本作『Lake』は、オランダを拠点とするゲームスタジオ「Gamious」によるインディゲーム。Gamiousは2011年に設立され、これまでに10本のゲームを発表している。尚、本作のPC版での発売は2021年9月1日で、ゲーム内での開始日(1886年9月1日)からちょうど35年後にあたる。
以下、クリア後の感想。

 

1980年代の日常

舞台は1986年のオレゴン州。湖の周りを囲うようにしてできたプロビデンスオークスという小さな街。
都会のソフトウェア会社で働く主人公・メレディスは、2週間の長期休暇をとり、しばらく帰っていなかった故郷の実家で過ごすことに。両親は旅行中で、その間メレディスは父の勤務する郵便局の手伝いをすることとなる。

 

本作は、40代独身女性のメレディスが久しぶりの地元で、郵便配達という仕事を通して様々な人々と交流し、彼らとの会話の中でどのような決断を下していくかという分岐型のアドベンチャーゲームだ。

 

湖の周りをのんびりと運転しながら各家に手紙や荷物を配達していくというのが主なゲーム内容だが、運転中に人を轢いたり事故に遭うようなことはない、きわめて平和な世界だ。配達の描写は丁寧で、手紙ならポストを開けて投函するモーションがあるし、荷物はそれぞれ大きさが違う。「思ったより重い(軽い)な」など、様々なシチュエーションでメレディスがつぶやく独り言も良い。

 

配達で出会う街の人々にちょっとしたことをお願いされることも。選択肢によって断ることも、深入りして各キャラクターの抱える物語に触れることも出来る。これが実に良く出来ていて、大きな事件などは扱わず、平坦な日常を描いているだけにもかかわらず飽きさせない。プレイヤーにイベントを探させる手間を省き、フラグ立てを配達と一体化させているのが新鮮。イベントのいくつかは、フラグが立った後にプレイヤーが主体的に赴かなければならないものもあるのだが、それらのバランスが絶妙。
配達に慣れきってくる後半は少し退屈に感じられもするが、天候の変化や、ラジオとイベントを絡ませるなどの工夫がされている。

 

配達パートを終えると自宅に切り替わり、両親との電話によるやりとりからメレディスの心境の変化を窺い知ることができる。その他にも、本を読んだり、配達で知り合った人から借りたビデオを鑑賞したり、時にはそうした人たちを家に招くことも。両親との会話では今後メレディスが都会の生活に戻るか、プロビデンスオークスで暮らしたいかを頻繁に聞かれるが、最後の最後まで迷っても大丈夫。

 

80年代を舞台としているため、当時の流行りものが出てくるのも本作の大きな特徴。街にはレンタルビデオ屋があり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)を思わせるポスターが張り出されている。レコードコーナーのように見えるものはおそらく当時流行っていたレーザーディスクだろうか。ビデオ屋の店員によれば、この田舎町ではそもそもビデオデッキの所有率が低く、経営が圧迫しているらしい。
映画やドラマなどでよく見る個人経営のレストラン「ダイナー」やモーテル、雑貨屋などに入れるほか、ダイナーに設置してあるゲーム機で実際に遊ぶこともできる。全体的な施設自体は少ないながらも、そこにいるそれぞれの人物たち、その彼らと主人公との距離感が丁寧に描かれているのは『シェンムー 一章 横須賀』(DC 1999年)を彷彿とさせる。

 

クィアゲームとしての側面

さて、本作では街の人々との交流が非常に丁寧に描かれていることは先に述べたが、その過程で彼らと主人公が恋愛関係になる選択肢がある。相手となる人物は男性だけでなく女性も含まれる。このことから本作はイギリスの雑誌Gayming Magazineで「クィア(LGBTQ)ゲーム」としてノミネートされている。

 

ゲームではメレディスの幼馴染とされる女性が登場するが、どうやら普通の別れ方をしておらず、再会時には気まずい空気が流れる。
オレゴンが舞台ということもあり、2人のこの関係性はゲーム『Life is Strange』(2015年)の主人公であるマックスとクロエを想起させる。
ゲーム内では性的指向を表す用語も、直接的な描写もない。だが、ストーリーを軸とした本作の特徴からして同性と恋愛関係を結べることが単純なゲームの自由度によるものだとは考えにくい。
80年代という時代を考えると、「クィア」という言葉は性的マイノリティを指す蔑称として使われていた時期と重なる。80年代前半にゲイコミュニティの間で流行した病気「エイズ」を、政府が「ゲイ特有の病気」として放置し、差別を助長したことにより起きた解放運動により「クィア」という言葉がポジティブな意味で使われるようにはなっていったが、86年のオレゴン州の田舎町で堂々とそれを公言できる空気があったとは考えにくい。そうした時代背景を踏まえると、本作におけるメレディスの性格や、幼馴染との距離感は腑に落ちる。

 

最後に

本作『Lake』は、古い文化や人を懐かしむ喜びだけでなく、主人公の置かれた状況を俯瞰的に捉える現代的な視点により平凡な日常の物語に特別な輝きを与えている。無駄なものを極力そぎ落としたゲーム性は単調だが、それにより郵便配達という仕事や田舎での休日という設定を際立たせることに成功している。実際にあるもの、やれること以上の広がりを感じさせてくれる良作だ。

 

 

 

※注意点 Switch版では立ち上げのロード時間以外にプレイを阻害するようなものはない。だが、遠景の描写が間に合わず、画面がぼやけて見るに耐えない画質になることがままあった(2024年2月現在)。なので他機種版をプレイする環境をお持ちの方には、そちらをお勧めしたい。

 

 

Gamious & Whitethorn Games. 2024

パルワールド(Xbox Series X/S)

パルワールド
ポケットペア
2024年1月19日
Xbox OneXbox Series X/S、Microsoft Windows


本作『パルワールド』は、日本を拠点とする制作会社ポケットペアによるインディゲーム。PC版の売上が1日で200万本、2週間で1200万本を突破し、ゲーム史上最も速いペースで売れたタイトルのひとつとなった。尚、2月現在の段階で本作は「ベータ/プレリリース版」という扱い。
以下、15時間ほどプレイした感想です。

 

このゲーム、ポケモンに似すぎているということで発売前から色んな意味で話題になっていました。実際にプレイしてみると「パル」というポケモンそっくりの生き物がフィールド上に跋扈し、それにモンスターボールそっくりのボールを投げて捕獲し、戦わせることができる。これに関してゲーム側からの説明は特にありません。というより、各地に散らばった「手記」を集めることでゲーム内世界の秘密が解き明かされるという仕組みがあり、モブキャラとの会話からも細かい設定を窺い知ることができるようになっています。ムービーが存在しないため、プレイヤー全員が自然と共通の世界観を認識するということはなく、任意によるところが多い。パルという生き物の説明としては、ポケモンという共通認識に依存した投げ方だと言えるでしょう。悪い言い方をすると、ポケモンを知らない人が直感的に理解することが出来ないデザインになっている。

 

本作は既に各所で指摘されているとおり、恐竜世界でサバイバルをするゲーム『ARK: Survival Evolved』(Studio Wildcard 2015年)を基としながら、ARKにおける恐竜をポケモンに似た生物パルに置き換え、更にポケモン(ゲームフリーク)が避けてきた設定や描写を加えたものになっています。
拠点を立て、つかまえたパルを労働させて素材や料理を量産。野生のパルを倒すと、ぐったりと死んだ描写がされ、手持ちのパルを解体するアイテムまであります。こういった露悪的に取れる面もあれば、拠点にいる複数のパルが自分の意思で眠ったりご飯を食べたりするといった、本家ポケモンがゲームで表現しきれなかったものもあり、そういった部分をオリジナリティと捉えることも出来ます。
SNSでは本作のポケモンパクリ炎上に関して「全ての創作は模倣からはじまる」といった正論がバズっていたりして、私もプレイする前までは納得できる意見だと思っていました。
というのも、最近ではこの種の炎上が定期的に起こるのですが、そのほとんどは取るに足りないものだったから。
2020年には中国のオンラインゲーム『原神』が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に似ているということで炎上したのですが、実際にプレイしてみるとゲームの感触としては全くの別物でした。ビジュアル的にゼルダを模倣していることは確かなんですけど、きちんとオリジナルなものに書き換えられていることは実際にプレイしてみれば明確にわかります。

 

ゼルダに関して言えば、作品の大きな特徴であり本作にも出てくる崖登りや滑空などは、メジャーなタイトルであってもほぼそのまま引用している作品が多いのですが、やはりゲームとしての全体的な印象や感触が違うとさほど気にはならない。そもそもゼルダ自体が様々なオープンワールドゲームから影響を受けているわけで、何でもすぐにパクリだと騒ぐのは視野が狭すぎるのではないかというのがこの手の炎上に関していつも思うこと。


なのですが、本作における他作品からの引用は『原神』とは全く別の問題があると感じました。
まず、先ほど触れたポケモンの設定ありきでの二次創作的な改良に関しては、遊んでいる間中いちいち「これはポケモンっぽいな」「これはポケモンがやらなかったことだな」と比較してしまい、プレイ中の結構なノイズになる。武器を振るモーションはフォートナイトだし、新マップを発見した時の音はブレスオブザワイルド。発見の喜びや、プレイヤーが直接インタラクトする部分に他作品のアイデンティティともいえる演出をパーツとして組み込むことで、一つの作品としてはかなりちぐはぐな印象を受ける。今の時点では何とかまとまっているように感じられないこともないのですが、それは本作がまだベータの段階で、ゲームの全容が薄いから。
ポケモン部分に関しては今後のシナリオに依拠するところがあるので何とも言えませんが、プレイヤーの体験に直結する細かい部分、主人公のモーションや効果音の引用はこのゲームのオリジナリティを著しく損ねていると感じました。
ただ、注目すべきは本作がすでに1000万本以上の販売数を売り上げていて、拡張し続けるであろうということ。現段階でクラフト系のオープンフィールドゲームとしてはある程度の面白さが保証されていることを考えると、他作品からの引用部分の大半が何かしらの問題になってくるのは避けられないでしょう。今後、そういった要素が徐々にフェードアウトしていくのか、或いは更に増加していくかには大変興味を惹かれます。

 


© Pocketpair, Inc.

アサシン クリード ヴァルハラ(Xbox Series X/S)

アサシン クリード ヴァルハラ
ユービーアイソフトモントリオール
2020年11月10日
PlayStation 5、PlayStation 4Xbox Series X/S、Xbox OneMicrosoft WindowsGoogle Stadia


本作『アサシンクリード ヴァルハラ』は、カナダを拠点とするUBIモントリオールスタジオによるアサシンクリードシリーズの12作目にあたる作品。アサクリのモントリオールスタジオ開発は2017年の『アサシン クリード オリジンズ』以来となる。

※以下、ネタバレなし

 

本作は9世紀のノルウェーを起点とし、イングランドをメインの舞台とする。「ヴァルハラ」とは北欧神話の用語だが、ノルウェーキリスト教が布教されるのは10世紀ごろと言われているため、この頃のヴァイキングたちは北欧神話に基づく北方信仰をアイデンティティとしていた。

 

ゲームは主人公のエイヴォルを操作し、「鴉の戦士団」を率いてイングランドに攻め込む。移動手段は船と馬。イングランドのマップには様々な人種、遺跡、宗教が混在しているが、これは当時のイングランドという国の混沌を上手く表現していると言えるだろう。


イングランドの歴史

イングランドといえば石器時代に作られたストーンヘンジが有名だが、これを作った民族は現在ではまだ不明とされている。その後、紀元前7世紀頃にケルト人が流入し、紀元前55年にはローマのユリウス・カエサルが侵入。5世紀になるとゲルマン人の侵入が始まりローマ帝国に混乱が広まった。449年にはアングロ・サクソン人グレートブリテン島に侵入。
アングロ・サクソン人は7つの王国を建設し、互いに覇権を争った。このイングランドに7つの王国が並立した829年までの380年間を七王国時代と言う。(出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)
その後、ヴァイキングによる侵入があるが、それこそが本作の主人公、デーン人のエイヴォル率いる「鴉の戦士団」である。この辺はかなり史実に基づいたデザインが随所に盛り込まれながら、歴史を知らない人にも理解ができるよう丁寧にデフォルメされている。


3つの世界が交差する

ヴァイキングが信仰する北欧神話もかなり複雑で解り難い世界観を持っているのだが、拠点にある古物に触れることで神話の世界を実際に体験できるようになっている。
神話篇は主人公も切り替わり、別の物語が展開される。ある程度進めるとハクスラ系のゲームに切り替わるが、いつでもエイヴォル篇と切り替えが可能。神話篇での報酬はエイヴォル篇で特別なアイテムと交換ができる。
これにいつものアサクリシリーズにある現代篇が加わり、合計で3つの世界が描かれるのだが、ゲーム終盤、これら3つの要素が一点に集約されていくストーリー展開は圧巻。


ただひとつ気になるのは、これまでのシリーズを通して重要な役割を持つ「テンプル騎士団」の存在と繋がりに関しての説明は少なく感じた。ほぼ1年に1作のペースで発売される本シリーズの全容を把握しているユーザーがそこまで多いとは思えないわけで、もう少し仔細が語られても良いかと思ったが、ただでさえ膨大になっていくプレイ時間との兼ね合いを考えると難しい部分ではある。本作では全ての謎を解くためにテンプル騎士団に関係する「古き結社」という組織を倒す必要があり、一部ストーリーにも関わってくる。これに関して、どこまでプレイヤーの興味を惹き付けて持続させたいかのビジョンが見えにくい。これまでにいくつかの過去作を経験していれば自然と受け流す事もできるが、初見のプレイヤーを混乱させてしまう要素になるのではないか。


アサシン要素は後退したか

本作では集団で敵側の陣地を襲撃するヴァイキング的な行動が重視されている。オンラインに繋いでいれば他プレイヤーが育てたキャラクターを傭兵としてスカウトすることも出来るし、強襲に特化したクエストも豊富。奪った物資で自分の拠点を拡大していくことで戦力を向上させ、宴を開くと一定時間バフ効果が得られる。重要な物資が隠されている聖堂のある敵拠点では、仲間と協力しなければ開かない扉や宝箱もあり、エイヴォル一人で全てをクリアするのが不可能な仕様になっている。
序盤では、こういった要素がアサシンらしさを損ねているのではと感じたが、シリーズ初期に確立されていたステルスアクションはほぼ全て残されており、聖堂以外では自由度の高いプレイを楽しむことが出来る。これはただ単に遊びの幅が広がっただけと考えるべきだろう。戦闘に関しても、スキルの充実によって幅広いプレイスタイルに対応しており、繊細かつ大胆なアクションが楽しめる。武器防具に関しても、気に入ったものを強化して使い続けられるので理不尽さはない。ヴァイキングという設定を生かしながらも、非常に高い自由度を獲得している。


UBIオープンワールドの到達点

オープンワールドというジャンルを分類すると、まず「都市型」と「自然型(ファンタジー系含む)」に分けられる。これは同時に、オープンワールドというジャンルがGTA及びそのエピゴーネン(GTAクローン)から解放されていく歴史としても語ることができる。GTAは全ての車両をプレイヤーがインタラクト可能な生物とすることで生命感のある都市を演出した。その後、ベセスダのThe Elder Scrollsがコンシューマに移植されることで都市型以外のオープンワールドも広く認知されることとなる。The Elder Scrollsではモブキャラに物語を持たせる(サブクエストの拡充)ことで新たなリアリティを獲得した。しかしそれ以降は、作り込みの甘い作品であってもシームレスなフィールドを実現していればオープンワールドだという認知が広まっていく。そしてそれはゲームエンジンの進化に依存し、当初GTAThe Elder Scrollsが内包していた思想は徐々に薄れていくこととなる。そうした中で新たな視点を獲得していったのが一連のUBI作品だ。アサシンクリードパルクールやステルスによってオープンフィールドに新しい軸を設定した。拠点制圧型に暗殺要素を足すことで市民の暮らす街と戦場を折衷。高所への移動によるマーキングは、マップの解放とプレイヤーの恣意的な探索との関係を直結させた。歴史的な名所を舞台とすることで探索に観光の要素を加えたのも、オープンなフィールドがどのようにしたら生きるかを見越した慧眼と言えるだろう。
ロックスターがGTAのコンセプトを西部劇として解釈した『レッド・デッド・リデンプションII』(2018年)にあった諸々の要素も部分的にではあるが本作は取り入れている。馬や船による移動中の会話や歌、暗殺者として付け狙われる指名手配的なシステム。
そしてRDR2におけるキャンプと同様、本作の拠点での演出にも驚かされることがあった。しばらく時間を空けて拠点に帰ると、それまで普通に話していたキャラクターが亡くなっており、仲間が悲しみに暮れ、街の外れに墓が立っていた。こうした出来事が実にさりげなく挿入されている。探索をメインとしているため、点在する無数のクエストはかなり短時間で完了する。だからといってお使いだけの手抜きではなく、その土地の風習や文化を説明する役割を果たしていて興味深いものが多い。

 

そうかと思えばわざわざ個別の島が用意されているクエストが2つもある。その一つは奴隷を装い裸同然の装備でサバイバルするものなのだが、これは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)からの逆輸入であろう。BOTWがアサシンクリードに影響を受けていることは明確だが、それをさらにアサクリ側が取り入れることで良い効果が生まれている。

 

BOTWにおける「祠の試練」のような謎解きも本作中に点在しているが、BOTWではただ単にプレイヤーのためだけに存在しているミニゲームとして存在しているのに対し、本作では納得のいく説明がされており、数もそこまで多くはない。これに加えて先に挙げた短いクエスト、生きた街、プレイヤー依存だけではない拠点などが組み合わさることによって、広大でありながらも飽きの来ないフィールドが実現されている。
ロックスターともベセスダとも異なる独自の路線を歩みつつ、あらゆるオープンワールドゲームの良い部分を積極的に取り入れていった結果として、本作はUBIが目指してきたオープンワールドの2020年時点でのピークに達しているといっていいだろう。

 

暴力表現と史実の肯定

UBI作品、とりわけオープンワールドのシリーズに関しては、そのほとんどが殺人ゲームだと言って間違いはないだろう。そして、そうした自身の暴力性に対してかなり早い段階から意識的、かつ批評的に取り組んできたのもUBIだ。特にファークライシリーズにそれは顕著である。多くの暴力表現のあるゲームに関して、暴力は主人公に降りかかる厄災である。一見そう見えなくとも、環境的な貧しさや使命が暴力表現を正当化している場合もある。
アサシンクリードは、歴史上重要な場面に居合わせた人物の子孫が、その遺伝子から先祖の行動を夢として追体験するという設定となっている。これは正にゲームとプレイヤーとの関係性をメタ的に表している。
当たり前の話だが、ゲームで人は殺せない。プレイヤーは開発者によってあらかじめすべてをプログラミングされたものを巻き戻された状態で渡されているだけに過ぎない。
それを映画のような視覚聴覚以外の方法で体験しているだけだ。
だからこそ、そこにあるナラティブ(物語、設定)が重要となる。それを最初に公言したのがロックスター・ゲームスの創設者ダン・ハウザーで、それを強く意識するようになったのは『GTA IV』(2008年)の開発期間中であったという。コンシューマーゲームが当時の次世代機であるPS3XBOX360に移行していく中で更新されていくリアリティや自由度に対する危機感として、ナラティブを重要視していくことは暴力表現を扱うゲーム開発者の意識としては必然であった。それこそ、スコセッシや北野武はギャングを醜く描くことに余念がないし、GTAの元ネタである映画『スカーフェイス』の主人公の最期は数えきれない銃弾を浴びて無残に死ぬ。
本作の主人公であるヴァイキングたちもまた、確実に滅びゆく運命が決定している。
船に乗り込み、川沿いの集落を襲撃し、略奪する姿は野蛮以外の何者でもない。しかし、彼らも、彼らに殺される側も、それぞれの現実を生き、それぞれの幻想に支えられていた。そうした背景を細かく描くことに対して本作は余念がない。

 

ヴァイキングたちはヴァルハラを目指して戦い続ける。ヴァルハラとは戦死者だけが行ける戦と宴が延々と繰り広げられる世界で、そこで戦士たちは最終戦ラグナロクの準備をする。
死にゆくヴァイキングが「斧を取ってくれ、斧を抱いて死なないとヴァルハラへ行けない」と主人公に懇願するシーンが本作中には幾度も出てくる。
ここにはファンタジー作品にあるような魔法使いも巨大なドラゴンも存在しない。表層的には無知で野蛮な人間同士が殺し合っているだけだ。しかし、その背景にある神話や現代との繋がりを意識し、追体験することで複数の視点からなる立体世界が表出する。それは確かに野蛮ではあるが、様々な示唆に富んだものとなっている。


最後に

ここまであらゆる要素が多層的に構築されていながら、自由度の高いゲーム性と広いフィールドを飽きさせない作りとして完成させたことは驚異だ。
本作が発売された同年には『Ghost of Tsushima』が高い評価を得た。あちらが侵入者から自国を守る立場であるのに対し、本作は他国へ攻め込んで略奪するゲームだ。Tsushimaは被害者的な立場であるから、戦うことへの正当性やドラマチックな演出が現在の価値観からして共感しやすかった。それに比べて本作のヴァイキングの価値観は、現代とはあまりにもかけ離れている。にもかかわらず、エイヴォルが内包する多層的な物語はあまりにも感動的だ。それはアサシンクリードというゲームの持つ設定と、北欧のヴァイキングが信仰する神話を徹底的に可視化した結果だろう。ゆえに、プレイ時間は必然的に膨大になる。120時間プレイしてイングランドの全ての領土を侵略してもエンドロールが流れない。長く遊ばせることと、長くならざるを得ない都合との折り合いがもう少し欲しかったところだが、名作であることに変わりはない。

 

 

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Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –(Apple Arcade)

Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –
GAME START LLC
2023年9月6日
Apple Arcade


本作『Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –』は、日本のゲームスタジオ「GAME START LLC」によるインディゲーム。製作は基本、音楽以外はGAME START LLCさんが一人で行っているようです。
以下、30時間プレイの感想です。

 

AppStoreの紹介文に「日本の田舎暮らし体験スローライフゲーム」とあるように、日本を舞台とした「どうぶつの森」ライクなゲームとなっています。
ピクセルによって丁寧に描かれたなビジュアルは『スターデューバレー』を想起させますが、どちらかというと牧場系よりどうぶつの森に近い作りだと感じました。
今後コンシューマ向けの展開も視野に入れているようですが、スマホで遊ぶのにちょうど良い絶妙なバランスになっています。他のスローライフ系との違いとしてボリュームの少なさが挙げられますが、それが決して満足度を下げることなく面白さを維持しているのが凄い。

 

基本的には都会からやってきた若者が田舎の古い家を片付けて一人暮らしを始めるという展開なのですが、近所の住民とそこまで距離感を詰めなくて良いのは日本的と言えるかもしれません。マップは広く、今後も拡張していく感じで住民も10人以上登場します。村長の頼みを聞いて村を復興させていくと住民が増えて、学校や駄菓子屋などの施設が充実していく。どうして新参者が自腹で村を復興せにゃならんのだとは思いましたが、ゲーム自体が単純に楽しい。

 

ゲーム序盤、空き家の雑草を刈り、床を拭いて障子を貼り替える過程がチュートリアルになっていて、これをクリアするだけでこのゲームのほぼ全てを把握することができます。
生活に必要なアイテムを売ってくれるおばあさんが午前中、プレイヤーのアイテムを買い取ってくれるおじさんが午後と、それぞれが主人公の家の前まで来てくれるのも親切。ただ、おばあさんが売ってくれるものが全てではなく、時には少し遠出したところにあるお店にしか売ってないものもあり、このへんのバランスも絶妙。

 

お金を稼ぎたいだけなら自分の家の周りでひたすら釣りや虫捕りをしていればいいのかなと思っていたら、魚も虫も一匹だけでは買い取ってくれず、他の季節や場所でしか取れない種類も用意しなければならないのが面倒。しかし、この面倒さがゲームに飽きさせないシステムとしてしっかりと機能しているのでストレスを感じさせない。
この手のゲームではよく中盤から様々な施設を拡張していくことで金策が楽になりすぎてしまい、急速に飽きを招いてしまうことがありますが、本作ではアイテムの総量と金策との均衡が取れていて、全てのイベントを終えた後でもほとんどお金が余りませんでした。
畑の作物の育つスピードがずっと一定だったり、他のゲームと比べると不親切に感じる部分が多いのですが、本作をプレイすると他のゲームが過保護に感じられるほど。ゲームからの命令が少ない分、何をしたらよいのかわからなくなることがありますが、それが逆に「これをこうすればよかったのか!」という発見の喜びに繋がる。

本作は最初からその拡張性の限界をある程度見せることにより、多くのスローライフ系作品にある「終わりが見えない」というイメージの払拭に成功しているように思います。
これはほぼ同時期に発売された『スピリットティー』(2023年11月)にも似た傾向が見られました。

 

本作では釣りや虫捕り、畑やペット育成の他、アイテムのクラフトや写真撮影などの様々な遊びが用意されていますが、中でも料理にかなり力が入っているのが良かったです。材料を捏ねたり握ったりするのもタッチパネルの特性を十二分に生かしていて懐かしくも温かい。中盤で裏山が解放されても目当ての素材が全然見つからないのですが、全体的な作業量と相対させるとマップの広さが本当に絶妙で、実際のサイズよりも広く感じられます。

 

本作では1ヵ月が2日で経過するようになっています。なので年末のイベントに参加する場合は12月の2日目に行かなければなりません。最初の年はこれに慣れなくてほとんどのイベントを見過ごしてしまいましたが、慣れてくると逆にイベントを準備するための作業量と必要経費に圧倒され、夏祭りの準備を半年前からすることになったり。なので、イベントを無事に終えた時の喜びはひとしおです。

 

本作は良い意味で日本的であり、インディらしさを感じさせる良作。出来ることが限定されているぶん、攻略などを見ずに手探りでプレイする楽しさがありました。30時間かけて村の復興は達成したものの、タヌキを一回しか見てないし撮影も出来てない!他にもまだまだ未知の魚や虫が残っているので、アップデートが来たらまた遊びたいと思います。

 

 

 

COPYRIGHT©2018 GAME START LLC

魂売(Switch)

魂売
Taiga
2024年1月25日
Nintendo Switch


本作『魂売』は、Taigaさんの『通夜』(2023年)に続く2作目のホラーゲーム作品。価格は『通夜』よりも100円高い300円で提供されています。安い!

 

本作はここ数年のホラーゲームではトレンドといっていいウォーキングシミュレーター作品。ゲームは主人公の大学生である佐藤美咲を操作し、ネットカフェでアルバイトとして業務をこなしていく過程で怖いことが起きるという流れ。全体的にチラズアートの『閉店事件』(2022年)インスパイアといった感じ。
前作では生きた人間が一人も登場しませんでしたが、今作ではアクの強いキャラクターが3人登場。

 

店長の間島はいかにもパワハラしそうなクソ野郎で、当然スタッフからは嫌われていて「死ねばいいのに」と思っている者もいるという。

 

バイトリーダーの山崎は新人の主人公に優しく仕事のイロハを教えてくれる人物。ただ、チュートリアルキャラ過ぎて、セリフでそのまま「Aボタン」「Yボタン」などのメタ発言をしてしまうのが玉にきず。ちなみに裏で店長に対して「死ねばいいのに」と発言したのがコイツ。

 

謎のおじさん。全くよくわからない存在だが、たぶんストーカー。

 

さて、タイトルにある魂売(こんばい)ですが、バイト中にパソコン画面にあらわれた「あなたの魂を出品しますか?」という質問に「出品する」を選ぶと画面が真っ赤になることから、何かしらの契約を結ぶ行為だと思われます。
この、赤い画面になってから本作の難易度がぶち上るので要注意。

 

細かいクリア条件は不明ですが、おそらくこれまでのノウハウを生かして店の「食事提供」「掃除」「マンガの返却」「ゴミの片付け」を制限時間内に終わらせないとバッドエンド。画面の暗さは設定で変えられるものの、赤が強すぎて画面がよく見えない。特に困るのが食品の配置。上の写真を参考にしてもらうと少しは役に立つとは思いますが、注文はランダムなので作り置きが出来ないのが辛い。
前作と違い直前の日付でオートセーブされているのでチャレンジ自体は苦ではないのですが、その分難易度が上がっています。

 

この最終日だけで2時間近くプレイしましたが、結局クリアできず。
ストリーマーさんの配信でトゥルーエンドを拝見しましたが、魂売という言葉の意味はよく分かりませんでした。

 

感想
ヒトコワ系かと思って進めていたら理不尽巻き込まれ型にハマって意味不明エンド。これはこれで面白い。ホラーゲームでなければここまで変な体験は出来ないでしょう。何よりもコンスタントに低価格で配信することに価値があると思います。ただ、開発者自身がネタ的に消費されることをある程度想定しているのなら、難易度はもう少し下げてほしいところ。
次作があればもちろん買いますし、もう既に楽しみでもあります。

 


©Taiga

クイズ☆正解は一年後 presents あつしの名探偵(Switch)

クイズ☆正解は一年後 presents あつしの名探偵
ハッピーミール
2023年12月31日
Nintendo Switch


本作は2013年からTBSテレビで毎年年末に放送されている『クイズ☆正解は一年後』の企画から生まれたファミコン風のアドベンチャーゲーム。番組では実際にファミコン実機で遊べるROMを10本作って全国の中古ゲームショップで販売。ゲームを買った人が約半年後の番組生放送までに何人クリアできるかというのがクイズになっていました(結果は0人)。番組の後半でこのゲームがSwitchで発売されることが告知されるという流れで、ダウンロード版の値段は1000円とお手頃価格。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし

 

全体的なゲームデザイン、ビジュアルやBGMは1987年にナムコから発売されたファミコンソフト『さんまの名探偵』のオマージュ。当時のアドベンチャーゲーム(ADV)はいわゆる「総当たりコマンド方式」が一般的で、とにかくフラグ立てが面倒でなかなか先に進めない。携帯用ゲームなどで細々と生き残っていたジャンルではあるのですが、最近ではファミコンADVオマージュの『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』(2019年)がシリーズ化されるなど、一部のファンからの人気が再熱しています。本作はこのミステリー案内シリーズを手掛けたハッピーミール開発ということで、テレビの企画モノの水準をこえた手堅い作りになっています。

 

マップ画面は『さんまの名探偵』と比べると大分チープな印象を受けてしまう。とはいえ、雰囲気の再現度は高い。全体的に凄くがんばっている感じが伝わってきて好感触。メインのBGMも良い。

 

本作の説明文には「本ゲームは演出の都合上、高難度・不親切な作品となっております。理不尽かつ悪意のあるクリア条件などが多分に含まれますので、予めご理解の上、お楽しみください。(ご購入後のクレームには応じかねますのでご注意ください)」とあります。
ファミコン時代のADVに触れたことがない人にとっては、前出した総当たりによるフラグ立てだけでもかなり苦しむだろうと思われますが、それ以上にこの文章からは『たけしの挑戦状』(1986年)のような理不尽なシステムが採用されていることを仄めかしているようにも取ることができます。
で、実際に本作中にはそういった理不尽なものも含まれています。
ただ、その理不尽さはあくまでも番組の放送までにクリアされることを想定した上でのハードルであって、Switch版では誰でも攻略しやすいように公式の情報交換BBSが用意されているので安心。

 

終盤に突然『魔界村』(1985年)風のアクションゲームになって絶望しかけましたが、魔界村よりも少し難易度が低い絶妙なものになっていて助かりました。ただ、ラスボスの動きが速すぎて詰みかけたのですが、ゲームオーバーになった瞬間にAボタンを連打していたら倒したことになっていました。バグ?


本作の監修は『クイズ☆正解は一年後』の企画/演出/プロデューサーを担当している藤井健太郎氏。これまで放送された同番組ネタが随所に散りばめられていますが、今回(2023年)の放送だけ見ていれば十分楽しめるものになっていました。逆に、真犯人に関しては今回の放送を見ていないと意味が全く分かりませんが。

出演しているタレントも有名な方ばかりなのですが、会話の内容もキャラクターにしっかりと合っていて、そこもちゃんと『さんまの名探偵』に近付けているのが良い。
タレントをメインに据えたゲームはスマホアプリなどで探すと結構出ているのですが、本作のように関係者がきっちりと関わっていると質が格段に向上するのだと実感。野田ゲーしかり。
普通にゲームとして面白いんですよね。

企画モノと侮るなかれ、アドベンチャーゲームとして十分楽しめる良作でした。

 


©TBS ©Phoenixx
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2023年に遊んだ新作ゲームランキング

 1.スーパーマリオブラザーズ ワンダー(Switch)
 2.Starfield(Xbox Series S)
 3.Season: A Letter to the Future(PS4)
 4.パラノマサイト FILE23 本所七不思議(Switch)
 5.バイオハザード RE:4(PS4)
 6.The Cosmic Wheel Sisterhood(Switch)
 7.ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(Switch)
 8.Alan Wake 2(Xbox Series S)
 9.A Space For The Unbound 心に咲く花(PS4)
10.Hi-Fi RUSH(Xbox Series S)


2023年の新作から個人的に面白いと思った順に並べてみましたが、今年に限っては様々なジャンルから驚くような傑作が生まれた年でもあるのでそこまで差はない感じがします。あと10本足したいくらい、とにかく面白いゲームが多かった!
以下、今年プレイした全てのゲームを記しておきます。


【Switch】
バイオハザード リベレーションズ2』『SD シン・仮面ライダー 乱舞』『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』『POST VOID』『LOOP8』『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』『地球防衛軍2 for Nintendo Switch』『俺の有休恋物語』『FINAL FANTASYピクセルリマスター』『Road 96: Mile 0』『通夜』『Christmas Tina ‐泡沫冬景 -』『Pokémon LEGENDS アルセウス』『OCTOPATH TRAVELER』『真砂楼』『Vampire Survivors』『ピクミン4』『DREDGE』『Unheard ―罪の代弁―』『つぐのひ』『なつもん!20世紀の夏休み』『イハナシの魔女』『ポケットモンスター バイオレット ゼロの秘宝』『スイカゲーム』『台北大空襲』『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』『ご当地鉄道 for Nintendo Switch !!』『The Cosmic Wheel Sisterhood』『恐怖の世界』『デイヴ・ザ・ダイバー』『桃太郎電鉄ワールド 〜地球は希望でまわってる!〜』『SUPER NO ONE LIVES UNDER THE LIGHTHOUSE』『SUPER STAY OUT OF THE HOUSE』『ghostpia シーズンワン』『あつしの名探偵』


PS4
バイオハザード RE:2』『バイオハザード RE:3』『バイオハザード RE:4』『龍が如く 維新! 極』『マフィア コンプリート・エディション』『ドラゴンボールZ KAKAROT』『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』『殺しの館』『ブラッドウォッシュ』『The Good Life』『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』『A Space For The Unbound 心に咲く花』『Eternights』『Season: A Letter to the Future』

 

Xbox Series S】
『Starfield』『Hi-Fi RUSH』『Sea of Stars』『Forza Motorsport』『Thirsty Suitors』『龍が如く7外伝 名を消した男』『Dordogne』『Alan Wake 2』『Jusant』『COCOON

 

【PC】
『ファミレスを享受せよ』

 

スマホアプリ】
『Dear Esther』『探しものは、夏ですか。』『スクールガールストライカーズ2』『KABU BOY』『ドアを開ける短いゲーム』『忘れないで、おとなになっても。』


以上の全66本。毎年Switchの総プレイ時間が200時間程度だったのに対して、今年は800時間を超えていました。ゼルダだけで300時間なので、過去最高にSwitchで遊んだ年でした。私生活では去年の100倍忙しくてしんどかったのですが、そのせいで睡眠障害になり結果的にゲームいっぱいできたので良かった!…と思うようにしています。


2020年に起きたパンデミックによって、ゲームはもちろん、映像系のサブスクリプションが一般家庭に普及して久しいですが、今年はそれぞれの方向性の違いが明確になった年ではなかったかと思います。
Netflixは去年の11月から広告付きの新プランを開始し、それに追随した形でAmazon Prime Videoも来年1月から広告付きをデフォルトとしていく。同時的にYouTubeTVerなどの基本無料の映像コンテンツにもCM量の増加が見られました。
ユーザーは視聴環境を以前の状態に戻したいがために課金を促される。内容の良し悪しとは全く関係ない単なる水増しではあるけど、こうしたことはゲーム業界も散々やってきた事でもあるわけです。
ただ、ゲームの場合、特にオンラインゲームに関してはこうした依存性を利用した集金システムは、ギャンブルを引き合いにしてこれまで散々批判されてきたわけで、対策と修正を幾度となく繰り返してきた歴史があります。
近年では長時間プレイを前提としたMMOが廃れ、一回のプレイ時間を10~20分としたバトロワ系が台頭してきたことも記憶に新しいですが、最近では買い切りのオフラインゲームでも短時間のプレイによる満足度が重要視されています。

 

   スイカゲーム(Switch)

今年Switchで大流行した『スイカゲーム』には制限時間も対戦モードも存在しない。しかも超低価格。

同じくSwitchで爆売れした『Vampire Survivors』もスマホゲームのような中毒性と直感的なわかりやすさを兼ね備えていながら無課金。発売当初はストーリーすらなかった。
これら2つのゲームがストリーマーからカジュアル層に広がっていったというのも象徴的ですが、こういった時代の空気をもっと意図的かつ戦略的に打ち出していったのが任天堂でしょう。

 

   スーパーマリオブラザーズ ワンダー(Switch)

スーパーマリオブラザーズ ワンダー』では制限時間を排除。オンラインで知らない人と助け合うことでステージクリアの敷居を大幅に下げながらも、ゲーム体験としてはこれまでにない満足度が得られる。様々なアイデアが惜しみなく積め込まれ、プレイヤーは驚きと期待感の洪水にのまれながら、気が付いた時にはエンディングに辿り着いてしまっている。ピーチ姫をプレイキャラクターとしてデフォルトで選択できるのも、今年公開された映画の設定と繋げることでジェンダー的な問題を軽やかにクリア。しかも来年にはピーチが主役の新作も控えているという用意周到ぶり。
任天堂作品ではピクミンの新作もワンダーと同じコンセプトを別のアプローチで再構築することでカジュアル層からコアゲーマーまで満足させる作品に仕上がっていたわけで、任天堂の先見性の高さを改めて認識させられました。

 

   Starfield(Xbox Series S)

ベセスダのオープンワールドゲーム『Starfield』も、こうした現代的なゲーム環境を突き詰めた作品。宇宙というこれまでにない広大な世界を舞台としながらも、1周のプレイ時間は過去作と比べると大幅に短縮。しかも、そうしたゲームデザインそのものをナラティブに落とし込んでいたのには驚愕しました。

 

   Alan Wake 2(Xbox Series S)

一方、アドベンチャーゲームの世界では大分前からこうした試みはされていて、全世界で300万本を売り上げた『Life is Strange』(2015~2016年)は単話で数か月にわたり配信されたのちにパッケージ化されました。こうしたテレビドラマ的な試みをゲームに取り入れた先駆的な作品であるアランウェイクの続編が13年ぶりに発売された2023年に、『Life is Strange』を開発したDontnodがセリフの存在しないパズルゲーム『Jusant』により高度な環境ストーリーテリングを志向したのも感慨深い。

 

   龍が如く7外伝 名を消した男(Xbox Series S)

今年はゲームを売るための戦略にも大きな変化が見られました。というより、そうした戦略の成功例がたくさん生まれた年であったように思います。SEGA龍が如くシリーズは年々プレイ時間が膨大なものになっていくという特徴がありますが、スピンオフ作品の『龍が如く7外伝 名を消した男』は、シリーズファンに人気のサブクエストを簡略&省略し、派手なアクションとストーリーをメインにすることで短時間プレイによる高い満足度を目指した作品。価格も抑え、初日からXbox Game Passで遊べるようにもした。結果的には大成功で、開発者が想定する2倍の売り上げを記録。海外向けのプロモーションとしても大成功といえるでしょう。

 

   パラノマサイト FILE23 本所七不思議(Switch)

スクウェア・エニックスの『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』も低価格のダウンロード専用ゲームとして成功した好例。スクエニはこれまでもこうした試みは行ってきましたが、開発は新人や海外スタジオを使っていたため、どうしても質的に見劣りする部分がありました。パラノマサイトはスマホ部門にいたベテランデザイナーを起用することで見事に「安くて面白い」商品となり、更に配信初日から割引を実施。結果、口コミで爆発的にヒット。海外でも広く受け入れられるほどの知名度を得ました。スクエニのような国内で大きな影響力のある企業がこうしたチャレンジをすることには大きな意義があると思います。

 

映像系のサブスクが価格操作で戦争している間に、ゲームはその構造をいつの間にか現状に合わせて最適化し、しかも質がやたらと高いものを無数に、しかも多岐のジャンルにわたって生み出していたというのが今年の率直な感想です。去年までは主にストーリーを中心に各作品に注目してきましたが、そんな問題は普通に突破した上で「どうしたら面白くなるか」という遊びの原点を未来に据えた志の高い作品が多かった。
現在の各サブスクの方向性から考えるとゲーム系も同じ道を辿る可能性が高いので、今遊ぶならGame Passが充実しているXbox Seriesがお薦めです。
あと、「短時間で満足度の高い作品」はスマホゲーでも増えていますが、「満足度」の解釈が安易な感動系に流れる傾向が多く、魅力を感じられませんでした。やはり海外の良質インディーから過去のエロゲー移植まで網羅しているSwitchが現時点では最強でしょう。

 

 

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