みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

ELDEN RING(PS4)

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ELDEN RING
フロム・ソフトウェア
2022年2月25日
PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One、Steam

 

本作『エルデンリング』は、現フロム・ソフトウェア代表取締役社長である宮崎英高氏と『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者であるジョージ・R・R・マーティン氏がタッグを組んで開発されたオープンワールドゲームではあるが、公式には「オープンワールド」という言葉ではなく「オープンなフィールド」という表現が用いられている。
以下、クリア後の感想。

 

ストーリー

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永遠の女王マリカを戴く狭間の地で
黄金樹の根源たる、エルデンリングが砕けた
マリカの血を受けた子供たち、デミゴッドたちは
エルデンリングの破片たる大ルーンを手にし
その力に狂い、歪み、破砕戦争を引き起こし…
大いなる意志に見捨てられた

ELDEN RING公式HPより

 

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主人公は祝福の力を失った「褪せ人」、要は死にぞこないとなり、祝福の導きに従ってデミゴットたちを討伐しエルデの王を目指す。「メリナ」という女性を巫女として迎え、各地に点在する祝福の光に触れることで様々な恩恵を受けることができ、その祝福から延びる光の指し示す方へ向かうと物語が進むのだが、おそらく多くのプレイヤーが一週目で迎えることになる「エルデの王」のエンディングを見るだけではこのゲームの全体像のぼんやりとした輪郭しか把握できないだろう。
物語は広大なマップの至る所に散らばり、隠れている。初プレイ時には事態がよく呑み込めず、アイテムの説明やキャラクターとの会話内容が頭の中でうまく繋がりづらいが、二周目をプレイすることで驚くほど明確に物語を理解することができる。

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一週目では歯ごたえのあるアクションゲームを楽しめるよう全てのボスキャラが解放されており、レベルや所持品は二周目に全て持ち越せる。エルデンリングの物語を一週目で深く味わいたい場合は慎重な探索と深い考察が求められるが、出来る事なら二周以上、或いは「ラニ」というキャラクターのイベントを進めることで見ることができる「星の世紀」エンディングに到達するとよい。
初見ではダークな雰囲気と難解な言葉使いに困惑するものの、構造さえ理解出来れば謎に満ちた物語や、この世界独特のユーモアに溢れたテキストを深く堪能できるだろう。


フィールド

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舞台となる「狭間の地」は、とても人間の住めるような環境ではない。あらゆる場所にそびえ立つ高い崖が行く手を阻み、よそ見をすれば谷底に落ちて死ぬ。狭いマップを広く見せるための崖なら他のゲームでもこれまで散々目にしてきたが、本作のマップにおいては「見える場所全てに行ける」ようになっている。さらには、一見奈落の底のように見える谷底に目を凝らすと小さな足場があり、地底の世界まで存在する。

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隠された洞窟や砦が無数に点在し、攻略することにより必ず見返りが用意されている。
毒の沼に腐敗した湖、強力な敵や罠がプレイヤーの行く手を阻み、逃げ道を間違うと追い詰められてボコボコにされるか高所から落ちて死ぬ。
これは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下BOTW)や『デス・ストランディング』など、日本の優れたオープンワールド作品に共通する特徴だ。
フィールドを探索し、新しい土地に踏み込んでいくこと自体に負荷をかける。

フィールドがプレイヤーを殺しにかかってくる、と言ってもいい。これら日本のゲームは、自ら道を切り開いていく困難、それを乗り越え踏破することの喜びや達成感を「遊び」として演出するのが実に上手い。
こういった作品群はしばしば「オープンワールドの革新」と評されることが多いが、残念ながらこの系統の中ではカナダで開発された『アンセスターズ:人類の旅』が頭一つ飛び抜けている。『アンセスターズ:人類の旅』は猿を操作して未開のフィールドに対する恐怖を克服することにより脳が発達し進化を促すゲームだ。
この作品では「フィールドを踏破する」ことが「キャラクターの成長」に直結し、「進化の過程」そのものがストーリーとなっている。こういった作品を革新的というのであり、本作やBOTWはあくまでも「既存のRPGオープンワールド的な拡張」として重要な作品ではあるものの、オープンワールドというジャンルが持つ最も大きな特徴である「箱庭要素」が後退している。
海外の傑作オープンワールドのように「生きた世界に放り込まれる」というよりは、「自らが主人公となり世界を再生させていく」要素の方が強い。それ故に「RPG」なのである。
とはいえ、本作『エルデンリング』におけるマップの作り込みは尋常ではない。
あらゆる場所に強敵やアイテム、そしてストーリーまでもが隠されていて、それらのすべては魅力的で探索の楽しさを上げている。
革新的なオープンワールドなどよりも、フロムソフトウェアのゲームがこれまで培ってきた要素を広大なフィールドにどれだけ上手く落とし込めるかということに創意工夫の全てが注ぎ込まれており、そこに立ち現れた世界は圧巻というより他ない。


戦闘

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前作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は相手の攻撃をはじく「パリィ」を多用した一対一の激しい戦闘がメインのアクションゲームだったが、本作では多種多様な武器や魔法、味方となって戦ってくれる霊体(遺灰)が用意され、それらのほぼ全てが強化可能。魔法や祈祷を駆使すればパリィを一度も使わずにクリアすることも出来る。レベルキャップがないので際限のないステータスアップが出来、ストーリーの進行上戦闘が不可避なボスに対しての救済措置も多く用意されている。丹念な探索とレベル上げさえすれば終盤近くまでは苦戦することなく進めることが出来るだろう。あまり仲間の霊体に頼りすぎると終盤のボス群には運頼みで臨まなければならないが、運が良ければ勝ててしまう。そうやってプレイヤーの好みにより難易度を調整できるわけだが、基本的な難易度は当然高い。しかしそれが探索の緊張感を高め、本作のオリジナリティを支えている大きな要素として機能しているため、ゲーム全体のバランスとしては決して悪くはないと感じた。


オンライン

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本作のオンライン要素には協力プレイや対人戦などもあるが、ソロプレイ時に大きな役割を果たすものとして「メッセージ」「血文字」「幻影」のシステムがある。
「メッセージ」は地面に白い光で書かれた他プレイヤーの書き込みのことで、「この先、左に注意」と書かれた先の通路左から敵の襲撃があり間一髪なんてことも。中には嘘の書き込みもあるが、評価システムがあるので危険に感じる場所では評価の高さで信憑性がはかれる。そもそも定型文の組み合わせでしかメッセージが作れないため他人を傷つけるような悪意のある書き込みが出来ず、せいぜいすぐにバレるような小さな噓しか描けないので微笑ましさしかない。
「血文字」はそこで死んだ他プレイヤーの行動が幻影として現れる。ボス付近や崖の近くに多くあり危険を知らせてくれる。崖の先端にある「この先、下が有効だ」という嘘メッセージの前にある血文字の幻影が崖から飛び降りるという組み合わせには思わず笑ってしまった。
「幻影」は自分と近いマップにいる他プレイヤーの様子がリアルタイムで見えるというもの。幻影が走っていった壁を叩いて隠し通路を見つけるなんてこともままある。
これらのオンライン要素が、広大で殺伐としたエルデンリングの世界を程よく彩ってくれている。
これらのシステムは本作のディレクターを務めた宮崎英高氏の初期作品『Demon's Souls』(2009年)において既に完成されており、本作との相性は抜群。
家庭用ゲーム機に本格的にオンライン機能が実装されたPS3時代において、対戦や共闘以外の「プレイヤー同士のゆるいつながり」を志向した『Demon's Souls』のシステムは、カプコンの『Dragon's Dogma』(2012年)におけるポーンシステムと並ぶ画期的な発明であり、小島秀夫監督など多くのゲーム開発者に影響を与えた。
また本作は、トロフィー(実績)の設定も秀逸だ。41あるトロフィーのうち、30がボス撃破で獲得でき、その他のものもプレイヤーの欲望を正確に反映したものになっている。他の多くのゲームのように、トロフィーを取るためだけの不自然な行動はしなくてよい。アイテム収集系のものにしても全てを集める必要はない。オンラインゲームにおける「称号」としての役割をしっかりと果していて、ゲームに対するモチベーションを上げる効果を見事に生み出している。


感想

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「いったいいつの頃からだろうか、RPGがキャラを育てるゲームであるという認識が一般的になっていったのは。確かに、主人公がだんだん強くなってゆくのを見るのは楽しい。所持金がうんとたまれば、思わず顔がほころんでしまう。しかし、お金や魔法値を精一杯節約し、取れる宝は全部取って、最短コースでゴールに向かうだけがRPGではないはずだ。終了した時、100万Gたまっていたからといって、いったいなにが楽しいのか。巨大なドラゴンのボスを一刀の元に斬り捨てたからといって、何が偉いのか。RPGが効率よくコトを進めればよいだけのゲームに成り下がってはならない。(略)はっきり言おう。RPGとは、断じてキャラを成長させるゲームではなく、プレイヤー自身が成長してゆくゲームなのだ。」

黒沢清『映画はおそろしい』

 

これは映画監督の黒沢清が『ドラゴンクエストⅡ』(1987年)について書いた文だが、私が本作『エルデンリング』をプレイする中で感じたことと寸分の狂いなく一致する。
ドラゴンクエストⅡ』は、表面的には西洋のファンタジーを装いながらも実に日本的な価値観で作られた「死にゲー」だった。未開の地「ロンダルキア」へと続く長い洞窟には休憩地点が一切なく、MPも底を尽き命からがら逃げきった先には、あたり一面の雪景色が広がる。そしてその先にはやはり「死」と「嘘」がプレイヤーを待ち構えている。
『エルデンリング』の、ストーリーを攻略していく道中での日本の四季を想わせるフィールドデザインや、円形の大昇降機を登り切った先の雪景色など、本作もまた日本的な価値観が要所要所に盛り込まれている作品であると感じた。そして、かつて遊んだ『ドラゴンクエストⅡ』で味わった苦しさや感動が、本作をプレイしている中で何度も蘇ってきた。
冷たく、そして恐ろしくも美しいダークファンタジーな世界観でありながら、暖かみやユーモアを感じさせ、冒険の途中で思わず吹き出してしまう事が幾度とあった。

現在、発売から約一ヵ月経つが、既に3周してトロフィーもコンプリート。総プレイ時間は200時間を超えるが、まだまだこの世界への興味は尽きない。クリア後に他人のプレイ動画を見ていると、まだ行ったことのないダンジョンや戦っていない強敵が無数に残っていて、ただただ驚く。
これほどまでに密度が高く広大なマップを目の前にすると、「この世界をもっと知りたい」という欲望の乾きが加速して止め時を失う。
かつての『ドラゴンクエストⅡ』がそうだったように、海外のオープンワールド作品を強く意識しながらも、そこから絶妙なバランスで逸脱した先に『エルデンリング』というゲームは屹立している。

 

 

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.

Life is Strange: True Colors(Switch)

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Life is Strange: True Colors
Deck Nine Games
2022年2月25日
PlayStation 5、PlayStation 4、Steam、Xbox OneXbox Series X/S、Nintendo Switch

 

本作を開発したDeck Nine Gamesは、本シリーズ一作目の前日譚にあたる『Life is Strange: Before the Storm』(2017年)を手掛けたスタジオ。ライフイズストレンジのIPは現在スクウェア・エニックスが所有しており、シリーズ1~2作目を開発したDontnod Entertainmentは今後新規IPの開発に力を入れていくとの事。脚本もこれまでの作品を手掛けてきたJean-Luc Cano氏が外れ、Deck Nine GamesのFelice Kaun氏が務めた。

まず初めに言っておきたいのが、Switch版はロード時間がめちゃくちゃ長いのでお勧めできないということ。タイトル画面が表示されるまでも真っ黒な画面がしばらく続き、Switch本体が壊れたのかと思ったほど。
というわけで、クリア後の感想です。

※ネタバレなし


ストーリー

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アメリカのコロラド州にあるヘイブン・スプリングスという小さな町が舞台。
主人公は「アレックス・チェン」という21歳のアジア系アメリカ人の女性で、孤児だった彼女をヘイブン・スプリングスに住む兄「ゲイブ」が探し出し、兄妹が再開するシーンから物語は始まります。
Black Lanternというバーの二階にある兄の部屋を譲り受け、ヘイブン・スプリングスで新しい暮らしを始めるアレックスだったが、ある事件をきっかけに状況は一変する。アレックスと街の住人たちとの交流を描きながら事件の真相に迫っていくというサスペンス要素の強いストーリーが展開されていきます。

 

超能力

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ライフイズストレンジといえば超能力。一作目では時間を巻き戻す能力を持つ主人公、二作目ではパワー系の能力を持ってしまった弟の面倒を見る兄として、その能力をいかにコントロールするかの選択が物語を動かし、主人公のキャラクターとプレイヤーの感情の揺れを同期させることに成功していました。
本作の主人公アレックスには他人の心を読める能力があり、他人の感情のオーラが見えたり、相手の考えている言葉を聞いたりする事が出来るというような説明が序盤でされるのですが、これがどうにも複雑かつ曖昧。
相手の負の感情が大きいと、その影響でアレックスが暴走し、その相手をボコボコに殴り続けるという描写が序盤にあるのですが、その物理的な強さが能力によるものなのか何なのかもわかり難い。

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「この能力による暴走のせいで今まで辛かったのだろうな」と思いきや、それ以降は暴走することなく、多少苦しそうにしている描写がある程度。何ならそのアレックスが暴力を振るった被害者をその後詰めて恋人と別れさせたり冤罪で町から追い出したりすることも出来てしまう。しかし、固有の名前や人格を持ち、ストーリーとも不可分な設定のキャラクターを主人公とした時に、セリフや行動を決める選択肢は「そのキャラクターがしそうなこと・言いそうなこと」になっていなければおかしいんですよ。プレイヤーは物語の文脈に従いながら自分の考えをどこまで反映させるかを悩み、そこで下した決定が物語を動かし、それによって作品内の世界に干渉する喜びを得られるわけです。例えば「人を殺す」という選択肢自体はあってもいいけど、プレイヤーがそれを選んでも主人公が思いとどまることで主人公の性格が説明できたりするわけで、本当に殺してしまったらそれはもうそういう頭のおかしいキャラクターなのか、或いはプレイヤーそのものでしかない。

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しかもこのアレックスの能力が、物語中盤から展開に都合よく合わせるかのように変化していくので全くついていけない。相手の気持ちを変えたり、負の感情を除去出来たりしてしまう。そしてその行為に対してアレックスがどこまで自覚的か、葛藤しているかもよくわからない。これは、本当にダメだと思います。

これまでのシリーズと同様に、アレックスもノートに日記を付けているのでそれを読むと彼女の心の内が垣間見えたりもするのですが、それがゲーム内の表現や選択肢に上手く結びついている感じがしません。ノートはあくまでも捕捉であり、読まないと本筋を見失ってしまうような構成は本末転倒。

 

シークエンス

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事件を解決するにあたり最終的に町の人たちの信頼を得て勝利を勝ち取るみたいなストーリーなんですけど、町の人たちからどうしてそんな信頼を得られたのかがよくわからない。気が付いたら仲良くなっていて、メールやSNSを見ると一週間とか二週間経過しているなんてこともザラ。能力を使って町の人の悩みを解決するということもあるにはあったのですが、その助けた内の一人が最後の大事なシーンで「あんたが来てから悪いことばっか。もう私に関わらないで」みたいなことをアレックスに言い放つ。で、そのことを後でメールで謝罪。スマホを常に細かくチェックしていないと何もわからなくなるストーリーになっています。
開発者が絶対に入れたいシーンと、ゲームに絶対に必要なシーンとの取捨選択が出来なくて、継ぎ接ぎだらけの隙間にメールとSNSを詰め込んでいる感が凄い。
あと、落ちたら絶対助からないような高所からアレックスが落下するシーンがあるのですが、失った意識の中で過去の辛い思い出がたくさん蘇ってきて、そうした過去の自分と向き合い、乗り越えることで助かるという無茶な展開には絶句しました。メガネも割れてなくて、片腕ちょっと痛めただけ。もしかするとそれくらいで助かることもあるのかもしれませんが、それだと夢の内容が大袈裟すぎるでしょ。繋ぎ方下手かよ。

 

TRPGと音楽

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本作の重要な要素としてTRPGと音楽があります。
まずTRPG要素ですが、町全体を使ってテーブルトークRPG(TRPG)みたいなことをする「ラープ(LARP)」というイベントが催されるのですが、これがとても良く出来ていて、町の人たち全員がRPGの登場人物に成りきってクエストを出してきたり、道端にアイテムが落ちていたりと手が込んでいてとても楽しい。
ただこういうものって、イベントを通じてアレックスと町の住人とのわだかまりが解けるとか、このTRPGのストーリーが本筋の物語とリンクしているとか、何かあると思うじゃないですか。それが何も無し。
ただただ『Life is Strange: True Colors』というゲームの舞台とキャラクターを使って別のゲームを作り込んでいるだけ。本編がしっかりと作られていて、おまけの遊びとしてなら素晴らしいものだと思うのですが、クリア後に思い返すと「結局あれは何だったのか」と疑問に感じずにはいられません。

 

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次に音楽ですが、アレックスの趣味がギターを弾くことで、序盤ではRadioheadの『Creep』という曲がカバーされています。BECK曰く「うぬぼれの強い曲」だそうですが、私は良い曲だと思います!
他にも、アイテムを調べた時に聞けるアレックスの独り言がボブ・ディランなど様々なアーティストの歌詞からの引用だったり、おそらくオリジナルであろうレコードのジャケットや曲の作り込みなど、ディテールへの異常なこだわりが随所に見られました。ただ、これらの楽曲のチョイスと、アレックスの性格やストーリーとの繋がりや必然性はあまりないように思いました。
ライフイズストレンジの一作目は写真学科の授業風景から始まるのですが、そこでマーク・ジェファソンという教師が「ダイアン・アーバス」という写真家を痛烈に批判しています。ダイアン・アーバスはフリークスを被写体として撮影し高い評価を受けた写真家なのですが、最期は精神を病んで自殺してしまう。アート色の強い学校の教師が何故この写真家の名前をわざわざ出して批判するところからゲームが始まるのかというのが、終盤になるとちゃんとわかるようになっている。わかる人にだけわかるタイプのネタなのでかなり自然な演出でサラッと流しているのですが、少しでも写真を知っている人には「ダイアン・アーバス」という名前は引っかかりを残すには十分なものなわけで、こういう細かい仕込みが初代のライフイズストレンジは凄く上手かったんです。
本作に出てくるRadioheadの『Creep』という曲は「完璧な肉体と魂が欲しい、だけど俺はかたわもの」みたいな歌詞で、これをアレックスに歌わせるのって相当ひどいっていうか、表現として稚拙な感じがします。

 

ステフの物語

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おまけとして遊べる『ステフの物語』ですが、これは海外では本編の後に配信されたダウンロードコンテンツ『Wavelengths(うつろい)』と同一のもの。本編でもヘイブン・スプリングスにあるレコード屋の店員として登場した女性「ステフ」を主人公として、彼女がアレックスと出会うまでの一年間が描かれるのですが、これが実に良く出来ている。
ステフの経歴ですが、ブラックウェル高校在学中はクロエと同級生で、卒業後はシアトルでパンク・オルタナ系のバンドで活動したのちにヘイブン・スプリングスに移住。
ゲームではレコード店で働くステフの一年間の様子を、彼女が一人で過ごす時間の断片で見せていきます。DJとして選曲やトークをしたり、スポンサーの要望を汲んでCMをつくったりと、この一人称のDJブースパートはシミュレーションとしてかなり充実したものになっています。ブースの外の店内ではレコードを並べ替えたりイベントの片付けをしながらステフがヘイブン・スプリングスという町でどういうふうに過ごし、馴染んでいったかがよくわかるようになっています。
ステフは所謂セクシュアル・マイノリティで、本編でもアレックスと恋愛感情を抱き合うという展開があったりするのですが、この設定も非常に練られたものになっていました。

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ステフが以前暮らしていたシアトルは2014年時点で「全米で最も LGBT が暮らしやすい都市」ランキングで1位になった町(※1)で、毎年「プライド」というLGBTQIA+によるパレードやイベントが行われており、ステフがヘイブン・スプリングスに引っ越してきた後にもそういった活動に参加していた様子が描かれます。
そんなシアトルも90年代には同性愛者に対する差別が蔓延していたのですが、その空気を変えることに大きく助力したのがシアトル出身のバンド「ニルヴァーナ」のカート・コバーンでした(※2)。ゲーム内にニルヴァーナという名前こそ出てきませんが、ステフのバンド名や思想からはカート・コバーンの影響を強く受けていることが窺えます。
現実に存在する国などを舞台とした時、こういった設定を作るのはそこまで難しいことではありませんが、サブストーリーでキャラクターの掘り下げをするというのは本来こうあって然るべきだし、ステフの物語が設定にしてもゲームとしても非常に良く出来ていることが余計に本編の粗を浮き彫りにしてしまっているように思えてなりません。

 

感想
キャラクターの表情の豊かさなど、基本的な表現力は上がっているのに物語がまるでついていっていないという印象。エピソードは全5話で構成されていますが、いちばん最初のエピソードで力尽きてしまった感もあり、全体的なボリューム不足に加え、話の脱線をスマホで補うのは悪手だったと言わざるを得ません。
前作『Life is Strange 2』における『The Awesome Adventures of Captain Spirit』のように、『ステフの物語』を前日譚としてみせてからの方がラープのような「完成度の高い蛇足」をストーリーの一部として機能しているかのように見せられた気がします。私の知識と理解が足りないせいなのか、各キャラクターの役割がよくわからず、プレイ中何度も眠気に襲われる程度には退屈なゲームでした。大好きなシリーズだっただけに、とても残念。

 

 

※1.「消費者向けファイナンシャル情報サイト NerdWallet による「全米で最も LGBT が暮らしやすい都市」ランキングで、シアトルが1位となった。
ランキングの基準となった要素は、同性パートナー世帯の割合の高さ(2012年度国勢調査ベース)、LGBT を差別から守る法規制の充実度(Human Rights Campaign の自治体平等指数ベース)、人口当たりの LGBT に対するヘイト・クライムの件数の低さなど。シアトルは同性パートナー世帯の割合が2.6%で、調査対象となった米国主要都市中で最も高かっただけでなく、平等指数が100、ヘイト・クライム件数が人口10万人当たり0.95件と、全般に良好だったことが1位という結果につながった。2位はサンフランシスコ、3位はアトランタで、ポートランドは11位となっている。」
Seattle is ‘LGBT-friendliest city in America’ in 2014

 

※2.「90年代初頭のシアトルでは同性愛嫌悪が蔓延していたが、ニルヴァーナは1992年に隣の州の街、ポートランドで開催された「No On 9 Benefit」でヘッドライナーを務めている。これは、LGBTQコミュニティを露骨に差別する投票法案に反対するためのショーだった。」
udiscovermusic Published on 4月 6, 2021

 

 

LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS © 2021 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Deck Nine Games

2021年に遊んだ新作ゲームランキング

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1.BLUE REFLECTION TIE/帝(Switch)
2.it Takes Two(PS4)
3.ファークライ6(PS4)
4.Overcooked! ® - オーバークック 王国のフルコース(Switch)
5.paratopic(Switch)
6.バイオハザード ヴィレッジ Z Version(PS4)
7.Road 96(Switch)
8.No Longer Home(Switch)
9.SEA OF SOLITUDE(Switch)
10.LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶(PS4)

 

今年遊んだゲームの中から今年発売されたものを面白かった順に並べました。

今年は去年よりもゲームをやる時間が大幅に減り、オンラインゲームやVRには一切手を付けていないのでSwitchとPS4のみのランキングとなりました。

フルプライスで買ったゲームも去年の半分の7本で、手軽にできるインディーゲームばかり遊んでいました。

以下、私が2021年に遊んだ全てのゲームを記しておきます。

 

【Switch】

『A YEAR OF SPRINGS』『Bridge Constructor: The Walking Dead』『Kentucky Route Zero: TV Edition』『Love Choice』『My Child Lebensborn』『No Longer Home』『NOSTALGIC TRAIN』『paratopic』『Return of the Obra Dinn』『REPLICA』『Road 96』『SAY NO MORE』『SEA OF SOLITUDE』『Stilstand』『The Suicide of Rachel Foster』『Through the Darkest of Times』『What Comes After』『インディヴィジブル 闇を祓う魂たち』『Overcooked! ® - オーバークック 王国のフルコース』『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』『カリコ』『くまのレストラン』『スーパー野田ゲーPARTY』『スーパーマリオ オデッセイ』『ドラゴンクエスト10』『ネクロバリスタ』『ヒュプノノーツ』『ママにゲーム隠された』『ママにゲーム隠された2』『親フラリズム~うしろ!うしろ!~』『BLUE REFLECTION TIE/帝』『ミクと水没都市』『探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.5「昏い匣の上」』『真流行り神3』『真女神転生Ⅴ』

 

PS4

Assassin's Creed 2』『バイオハザード ヴィレッジ Z Version』『ファークライ6』『Horizon Zero Dawn Complete Edition』『it Takes Two』『LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶』『Marvel's Avengers』『Tom Clancy's The Division』『WATCH DOGS LEGION』『ZOMBI』『いけにえと雪のセツナ』

 

2021年はコンシューマーゲームよりも『Twelve Minutes』や『Inscryption』といったPCゲームがバズっていたという印象が強い。個人的にはPS5の『DEATHLOOP』がやりたかったのですが、まだ全然PS5が手に入りそうもなく、『DEATHLOOP』以外に特に遊びたいゲームもないので興味が薄れていっている感じ。マイクロソフトサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」がスマホに対応したりとかなり力を入れていることから、PS5が今後どのような戦略をとってくるのかは注目したいところ。

日本国内では大作以外はソシャゲのイメージが強かったスクエニが『ダンジョンエンカウンターズ』や『Voice of Cards ドラゴンの島』など、DL専用の実験的なゲームを配信し始めたことは良い兆しだと思います。こうしたインディー的な試みを早い段階からやっていた日本一ソフトウェアの新作がことごとく不評だったことも記しておかねばならないでしょう。

 

個人的に今年ゲームをやる時間が大幅に減った理由として「DMMブックス」と「Disney+」の存在が大きかったです。3月に「DMM電子書籍」の名称が「DMMブックス」に変更された際の70%オフセールから始まり、定期的に行われる50%オフセールは漫画だけでなく、あらゆる書籍が対象となっており、読書形態が完全に電子中心になってしまいました。

Disney+はスターウォーズMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品が全て視聴できるのに加え、オリジナルのスピンオフドラマの完成度が高い。特に1月から配信された『ワンダヴィジョン』は人気があり過ぎて最新話の配信日にはサーバーダウンするほど。HBO作品を扱う「U-NEXT」と共に今年最も重要な動画配信サービスだったと言えるでしょう。

私の場合、その他の有料のサブスクとして「kindle unlimited」「Amazon Prime Video」「Netflix」「Spotify」、「ニコニコ」の有料チャンネルとプレミアム会員、ゲーム関連では「Nintendo Switch Online」と「PlayStation Network」を利用しています。これらの料金を継続的に払いながら、そこで足りないものは1か月単位で他のサブスクに入会するという事をやっているわけで、かなりの無駄が発生している。

あと何年後かにこのブログを見返して「異常だった」と思える日が来るといいのですが…

この中で今私が最も重要だと思うジャンルが「ゲーム」と「音楽」で、この2つはリアルタイムで見過ごすと数年後に全体を把握するのが非常に困難な状態になるので外せません。

 

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ランキングの話に戻りますが、今年のGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)に選ばれたのは『it Takes Two』。私も実際にプレイしましたが、アクションゲームとして非常に優れていて納得の受賞だと思います。

個人的に新しいと感じた作品は『BLUE REFLECTION TIE/帝』と『No Longer Home』で、これら2作品とも「シェアハウス」要素が重要な役割を果たしているのが非常に現代的だと思いました。人生の長い道のりを描くのではなく、最も重要な「点」だけを抜き出して語られているので、基本的に「行って、帰って来る」か「留まる」だけ。去年GOTYを受賞した『The Last of Us Part II』も正にこういった視点で語られたゲームでした。

格差や分断が加速する現代でこういったテーマを扱うのは正しいし、共同体の描き方がここ数年ではっきりと変化しているのは見過ごせません。

オンラインゲーム隆盛の中で『it Takes Two』や『オーバークック』のような、身近な人と遊ぶゲームが評価されるのも非常に良い事だし、『世界のアソビ大全51』や『桃太郎電鉄』が売れ続けているのも健全。

なんやかんやで今年もNintendo Switchを中心にたくさんの作品と出会い、その一つ一つに発見と感動があり、ゲームがあったおかげで楽しく過ごせました。

 

ということで、今年はこれでおしまい!

 

 

© 2021 Electronic Arts Inc.

ファークライ6(PS4)

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ファークライ6
Ubisoft
2021年10月6日
Xbox Series X/S、PlayStation 4Amazon Luna、PlayStation 5、Xbox OneGoogle Stadia、Microsoft Windows

 

ファークライ6』はカナダのUbisoftトロントスタジオとモントリオールスタジオが開発。リードゲームデザイナーは『ファークライ プライマル』以来のDavid Grivel氏が務める。

以下、クリア後の感想。

※ネタバレなし

 

ストーリー

ファークライのストーリーは一貫してFPSに対する批評がテーマに盛り込まれている。特にそれが顕著だったのが『ファークライ3』の主人公であるジェイソンの描写だ。殺人に対する感覚が麻痺していくことへの葛藤や、PTSD的な症状に悩む主人公の姿は、人によってはプレイヤーである自分自身への批判だと捉えられ、過剰に身構え嫌悪してしまうといった感想も少なくなかった。

それ以降のシリーズにおいても、ゲーム開始序盤で「この大量殺人に参加するかしないか」の意思決定をプレイヤーに委ねるという選択肢を提示し続けてきたわけだが、本作ではヴィランであるアントン・カスティロの13歳の息子「ディエゴ・カスティロ」の存在と、主人公の仲間でかつては伝説のスパイと呼ばれていた「フアン・コルテス」の言葉によってプレイヤーを揺さぶり続けることでストーリーが展開されていく。

 

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主人公は男女から選べるが、どちらを選択しても名前は「ダニー・ロハス」で固定。

舞台はカスティロ政権の圧政下にある架空のカリブ海の島国「ヤーラ」。モデルとなるキューバへは制作チームが1ヵ月間滞在して取材したとか。

カスティロ政権の横暴に耐えかねたダニーはクララ・ガルシアをリーダーとするレジスタンス組織「リベルタード」に参加し、革命に加わってくれる仲間を探して各地を巡ることになる。

 

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ヤーラ国の大統領アントン・カスティロを演じるのはドラマ『ブレイキング・バッド』などでおなじみのジャンカルロ・エスポジート

アントンの父であり当時の大統領であったガブリエル・カスティロは1967年の革命で殺され、息子のディエゴ・カスティロが今すぐにでも自分の跡を継げるよう教育している。かつての革命に参加した者たちはレジェンドと呼ばれ、ダニーの説得によりリベルタードに加わっていくが、この2世代に渡る対立構造の中で唯一異彩を放っているキャラクターが13歳のディエゴであり、彼の存在は本作のテーマの軸となっている。

 

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序盤で仲間となるフアン・コルテスは元KGBのスパイで、劣化ウランを使って制作した「リゾルバー」という武器をダニーに提供してくれる。フアンは革命における暴力的な側面を体現したキャラクターで、ストーリー後半になると自分自身の中にある狂気と同じものがダニーの行動原理になっている、つまり俺たちは戦争中毒者なのだという事をしきりに強調してくる曲者。ファークライ6というフィクションの中で、戦争中毒者のフアンと、支配者側にいながら暴力を好まないディエゴの間で揺れ動くダニーという図式は、これまでのファークライシリーズと同様に「FPS(殺人ゲーム)」という特性を生かしたメタフィクションとなっている。

とはいえ、レジスタンスのリーダーであるクララやカスティロ親子の掘り下げが、他のどうでもいいバカキャラよりも少ないのはちょっと気になるところ。

ただ、このゲームの広大なマップや、そこで出来る遊び要素が膨大なため、プレイしている内にストーリーの細かい繋がりをそこまで覚えていられないというのがあり、基本的な設定を何度も反芻させながら大事なことは後半に畳み込むというやり方は結果的に良い効果を生んでいる。

 

前作からの変更点

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細かい変更点は色々とあるが、何よりも今作では都市部を含めた広大なマップを生かしたゲームデザインが特徴。成長システムが廃され、ステータスへの影響は装備依存となってはいるが、マップの至る所に隠された宝箱や宝探しイベントは、その偶然性含め探索の楽しさを底上げし、コレクション性も高い。武器や装備の所持数には上限がなく、戦況に応じてカスタマイズが可能。

前作まではスナイパーライフルで拠点の外から敵を一網打尽に出来たが、今作では外からは見えない場所に敵が多く配置されていて臨機応変なゲリラ戦が求められる。

そこで活躍するのが背中に背負った「スプレーモ」という装置で、複数の敵を一掃するミサイルから、敵を毒や混乱状態にするガスを噴出するものまで数種類用意されている。武器装備と同じくいつでも付け替えが可能で、改造により強化も出来る。これらの武器やスプレーモ、そして車を改造するための素材がマップの至る所に落ちていて、自分のプレイに合った装備をカスタマイズするのが楽しい。広大なマップを様々な目的で移動する中で自然と素材が手に入り、それにより作業感が軽減され、より自由度の高いプレイが楽しめる。

 

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ストーリー序盤で、敵の畑を炎で焼き尽くす『ファークライ3』を模したミッションがあるが、こうしたセルフオマージュが効果音などの細かい部分に散りばめられているのも本作の特徴。

ただひとつ、前作にあったものからカットされて残念だったのは、仲間として一緒に行動できるのが動物だけになってしまったことで、人間の仲間に乗り物を運転させた状態で銃を撃ったり景色を眺めたりすることが今作では出来ない。これにはおそらくスペック的な事情があるのだろうし、ペットの育成など他に遊べる工夫はされているが、前作のあの楽しさを知っていると物足りなさがあるのは否めない。

 

ほのぼの生活系

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美しい南国での生活。ペットを連れて釣りや狩りを楽しみ、気が向けば敵地を襲撃し奪った素材で武器改造。道路では山犬に襲われた警備兵が放った火炎放射機の炎が草木を焼き、飛び火してパニック状態の山犬と警備兵を横目に盗んだトラックで走り去る。そんな時、カーラジオからお気に入りの曲が流れた時の高揚感。この、ある意味牧歌的とすら感じられる狂気こそが近年のファークライシリーズの大きな特徴であるのは間違いなく、広大なマップの探索をとことん楽しませる方向にゲームデザインを拡張した本作によってシリーズは一つのピークに達したと言えるだろう。

 

感想

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私自身がそうだったのだが、これまでのファークライの特定のタイトルに思い入れのある人にとって、中盤までの薄いストーリーと大幅なシステム変更には戸惑いを隠せないだろう。しかしゲームをある程度進めると『ファークライ6』だけが持つ独特の味わいに気付き、ただ単純に広いだけのオープンワールドがこれほどまでにゲームとしての楽しさに直結していることに驚かされる。

上の写真は俳優のダニー・トレホと共闘するイベントでのもので、こちらは無料で配信され、今後も『ランボー』や『ストレンジャー・シングス 未知の世界』などの作品とコラボする予定。有料のDLCでは過去作のヴィラン達が登場し、オリジナルのストーリーが展開される。

ファークライ5』の有料DLCが酷かったのと、前作『ファー クライ ニュードーン』の印象の薄さに、もういい加減このシリーズには期待できそうにないと思っていたところにジャンカルロ・エスポジート起用という、思わず「ずるい!」と叫んでしまったほどの絶妙な人選に釣られ買ってしまったが、結果的に本作は今年最も長く遊んだゲームとなった。

クリア後も最終決戦の舞台となった都市部をくまなく探索したり、追加される反乱イベントをこなしたりと、まだまだ遊び尽くせそうにない。オンラインのエリアもソロプレイに対応しており、個々のプレイヤーそれぞれの遊び方を受け入れる幅があるので、シリーズの中で最も間口が広い作品になっている。

 

 

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BLUE REFLECTION TIE/帝(Switch)

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BLUE REFLECTION TIE/帝
ガスト
2021年10月21日
PlayStation 4Nintendo Switch

 

『BLUE REFLECTION TIE/帝』は2017年に発売されたゲーム『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』から始まりアニメ作品『BLUE REFLECTION RAY/澪』、そして今後配信が予定されているスマホ・PC用ゲーム『BLUE REFLECTION SUN/燦』から成るBLUE REFLECTIONプロジェクトの3作品目にあたるが、単体でも十分楽しめるものになっている。

以下、クリア後の感想。

※ネタバレなし

 

ストーリー

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ある夏の日、近所のコンビニで落としたスマホを拾おうとする主人公の星崎愛央はそこで意識を失ってしまう。モノローグでは愛央の「ずっと何者かになりたいと思っていた。特別な何かを持つ何者かに」という想いが語られ、気が付くと舞台は閑静な住宅街から一変、辺りが水で囲まれた校舎へ。

 

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学校では3人の少女たちが、この世界に何の疑問も持たずに暮らしていた。どうやらこの世界で現実の記憶を持っているのは愛央だけ。しかし愛央の存在によってこの世界に大きな変化がもたらされようとしていた。

 

ココロトープ

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何故か電気も水道も通っている学校で暮らす4人の少女だったが、ある日突然校門の前に別の世界へと続く道が現れる。道の先は「ココロトープ」(命名は愛央)という、人の記憶を反映させた世界だった。

 

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ココロトープを徘徊するモンスターに対し、少女たちも自分の特性を生かした能力で対抗。登場する少女たちそれぞれのココロトープが存在し、各々の想いを反映させた世界は不条理だが美しい。

ココロトープの設定自体は『ペルソナ4』や『幻影異聞録♯FE』と非常に近いが、戦闘は敵のターンが可視化されたリアルタイムコマンド方式で、戦略性の高さとわかりやすさのバランスは良い。とはいえ、比較的レベルが上がりやすく、待機しているメンバーにも均等に経験値が与えられるため後半は単調になりがち。

 

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しかし、マップや戦闘における少女たちのモーションが抜群に良く、各キャラクターの魅力が遺憾なく発揮されていて何度見ても飽きない。

ココロトープの道中では各少女の思い出が断片的に提示され、最深部にいるボスは少女にとって最も思い出したくないトラウマの具現化であり、仲間たちと共に撃破し、痛みを共有することで皆の絆が深まり、それによってこの世界の謎が少しずつ解けていく。

 

学校

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学校ではココロトープから持ち帰った素材を使い、マップ上の障害物を消すアイテムやステータスを強化する料理など様々なものがクラフト可能。各キャラクターのお願いを聞くことで作れるものが増え、学校内の空いた敷地に屋台やカフェのような施設も設置できる。施設は組み合わせやレベルアップさせることによりイベントの追加やステータスアップなどの様々な恩恵を受けることが出来る。

イベントとは主に愛央と各キャラクターとのデートイベントで、内容のほとんどは女子同士の他愛のない会話なのだが、そのテキスト量は膨大。

ココロトープでの重い話とは打って変わり、学校では仲間たちとの和気藹々とした幸せな時間が流れ、中盤からは百合要素も加わる。

 

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このゲーム全体に言える事だが、オブジェクトの配置や小物の作り込みがとても丁寧で感動する。莫大な制作費をかけて開発されたAAA作品と比べるとビジュアル的に見劣りするのは当然だが、AAA作品が見落としがちな細かい要素が詰め込まれ、そこには「彼女たちが存在する世界」のリアリティが確かにある。

 

物語を取り戻す物語

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多くの3D美少女ゲームにはプレイヤーを投影する主人公キャラが用意されている。その役割は恋愛対象となる同級生や音楽プロデューサー、家庭教師であったりと様々だが、ゲーム内の少女たちは主人公の行動によって成長し、感謝することを忘れない。

例外として「百合」というジャンルがあり、本作にもその要素は盛り込まれているが本筋ではない。

表層的に見ても本作は主人公である星崎愛央の「何者かになりたい」という現状の自己不安が、仲間たちとの交流という社会性の獲得により肯定される物語となっている。

しかし私が個人的に感動したのは、本作が構造的に旧世代の所謂「ギャルゲー」の枠を大きく踏み越えていることにある。

 

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広義での女性アイドルを発掘する講談社のプロジェクト「ミスiD」に応募する女性たちのSNSでは「何者かになりたい」という発言が多く見られる。

そしてBLUE REFLECTIONの設定に大きく関わっているイラストレーターの岸田メル氏は2016年にミスiDの審査員を務めた際、Twitterで「あなたが何者でも、何者でもなくても、誰かを元気にしたい、誰かのアイドルになりたいと思っていたら是非。」というコメントを寄せている。

本作『BLUE REFLECTION TIE/帝』は「皆の力を合わせて乗り越える大きな物語=ココロトープ」と「幸せな時間を共有するシェアハウス的要素=学校」という二つのパートで構成されているが、この構造自体が現在多くのアイドルが抱えている「消費のされ方」に疑問を投げかけ、解決のヒントを提示する。

 

ミスiDに限らず、本作とアイドル文化には多くの共通点が見て取れる。サウンドノベル形態のギャルゲーが選択と分岐を軸とし、膨大なテキストによって物語性を拡張してきたのに対し、3Dモデルによるギャルゲーは同時代の日本のアイドルをロールモデルとすることで共に進化してきた歴史がある。

テレビ東京ASAYAN』(1995~2002年)期における「モーニング娘。」は、『LOVEマシーン』(2000年)という初のミリオンセラー達成という成功(大きな物語)と、それにより激化するオーディションやメンバー合宿(シェアハウス要素)のドキュメンタリーという二本柱を軸として巨大化していった。舞台の裏側を追い続けるASAYANのカメラにはメンバー間の分裂や軋轢が映し出され、彼女たちの関係性が多くのドラマを生んだ。

ファンたちはCDやグッズを買い、現場に足を運ぶことで「モーニング娘。」というゲームに参加する。所詮は日本国内オリコン周辺の狭い世界である。ファンによるCDの複数買いや匿名掲示板での運営批判がモーニング娘。や彼女たちの所属するハロープロジェクトの運営に与える影響は大きく、インターネット時代におけるアイドル産業の在り方を良くも悪くも作り変えてしまった。

しかし、そうした「アイドルに負荷をかけて楽しむエンターテイメント」()は生身のアイドルを疲弊させ、かつてあった輝きを失わせる。そうしたアイドルを指して「劣化」という表現を用いる露悪的な文化は当然寿命も短く、多くの固定ファンをつかんだハロープロジェクトASAYAN終了と共に残酷ショーから手を引きファンビジネスに特化していくことになるが、その代償としてテレビという「大きな物語」を失ってしまう。

この、初期モーニング娘。のコンセプトを引き継ぎ進化させたものに『AKB48』(2005~)と『アイドルマスター』(2005~)が挙げられるが、AKB48の「AKB総選挙」やアイドルマスターにおけるプレイヤーの存在(プロデューサー)は「お客様の力によって成立している」という建前が構造に組み込まれているが故、旧態依然の枠組みを越えられず、そこにどのような物語が生まれたとしてもファンの中だけの共同幻想、多くはホモソーシャルな消費の中で劣化する。こうしたコンテンツの劣化を防ぐために行われる頻繁なメンバーチェンジで個々のアイドルは使い捨てられるが、活動中は常に「お客様のため」の接待に明け暮れ、その中で彼女たちの物語は消費されていく。

 

こうした「生身の人間」、或いは「キャラクター」を消費することでしか成立しえないアイドルビジネスに一石を投じた作品として2017年の韓国ドラマ『THE IDOLM@STER.KR』が挙げられる。ゲーム版アイドルマスターをベースとして展開されるこのドラマは、「アイドルとして成功するための厳しいレッスンや、メンバーそれぞれの辛い過去がフィードバックされるシリアスなドラマ」と、「初めはメンバー同士が対立しながらも徐々に打ち解け合い、緩やかな空気が流れる合宿施設」という二つのパートで構成される。本来視聴者(プレイヤー)に感情移入させるべきプロデューサーの存在はドラマの重要人物として独立した設定が与えられ、こちらが介入する余地を持たない。

辛い過去やレッスンを乗り越え、メンバー同士が一つになって迎えるデビューの舞台は閑散としたものだったが、そこには彼女たち一人一人の物語が未来に向けて大きく開かれているという可能性を感じさせ、最後の場面でアイドルの口から発せられる「私たちがあなたを応援するから」というセリフにより、現状の「客に消費されるだけのアイドル」という歪んだ関係性がリセットされる。

そしてこの『THE IDOLM@STER.KR』が提示した理想的なフィクションをリアルな世界で実現させたのが韓国のヒップホップグループ「BTS」(2013~)だ。米ビルボード1位による世界的成功という巨大な物語と影響力、そして2016年の『Bon Voyage』から現在の『BTS In the Soop』まで続くリアリティ番組ではBTSのメンバーのみで過ごす休日が延々と映し出され、そこには旧来のリアリティショーの演出を廃した、シンプルで幸せな時間だけが流れ続ける。

BTS In the Soop』にある幸福な空気感、或いは視聴者の幻想を支えている要素として、彼らが男性グループであることや、現時点で大きな物語を手にしてしまっていることは勿論大きいが、ブレイクするずっと以前から現在まで基本的な演出を全く変えていないことは注目すべき点だろう。人口の少ない韓国の音楽産業は世界市場を視野に入れなければならず、BTSを売り出したBig Hit Entertainment(2005年設立)が当時としては弱小事務所であったにもかかわらず頭一つ抜けられたのは、国内の古い価値観にとらわれずアーティストの主体性を尊重するという大胆な戦略を取れたことが大きい。それはブレイク後の彼らの活躍にも顕著だ。

BTSの存在が感動的なのは、彼らが彼らの物語を自ら切り開いていると同時に、それが商業的な戦略として成功している事だ。

 

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リアルとフィクション、規模の違いはあれど、キャラクター消費型のビジネスからキャラクター自身の物語を取り戻したという点で『BLUE REFLECTION TIE/帝』と『THE IDOLM@STER.KR』、そして「BTS」は共通する。

そしてそれは同時に「消費されること」でしか価値を持てないと感じている現実の「何者でもない」少年少女たちの存在を肯定することでもある。

大きな物語を背負うことでシェアハウスにおける素に近い人間関係はエンターテイメント性を帯び、これらを両輪として3D美少女キャラクターは自分自身の物語を駆け抜ける。そしてゲームをクリアした時、星崎愛央はそこで初めてプレイヤーの中でアイドル的な存在と成り得るのだ。

 

『BLUE REFLECTION TIE/帝』というゲームは、継ぎ接ぎだらけで引用だらけの、お世辞にも洗練されているとは言い難い作品だ。しかし、どこを取っても無駄がなく、全てが星崎愛央をはじめとする少女たちの物語を構成する要素として機能している奇跡的な作品でもある。微エロや百合や魔法少女RPGが闇鍋的に放り込まれているにもかかわらず、キャラクターや物語の持つ揺るぎない一貫性がそれらを軽々と一纏めにしている。

本作のテーマである「平凡な女子高生が平凡な自分自身を肯定するまでの物語」は、3D美少女ゲームという特殊なジャンル故、それまでの接待型のキャラクター像を打ち破り、その思想は世界で活躍するBTSと根本部分で合流する。

物語はわかりやすく、多様な欲求に答えるエンターテイメント性を内包しつつ、それでいて革新的な構造を持つ『BLUE REFLECTION TIE/帝』は間違いなく大傑作であるし、2021年という年にこのゲームが発売されたこと、そしてプレイ出来たことが何よりも嬉しい。

 

 

※ TBSラジオライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(2013年)内での「AKB峯岸みなみ丸刈り謝罪」に対するコンバットREC氏の発言。

 

©2021 コーエーテクモゲームス ©2021 EXNOA LLC / コーエーテクモゲームス ©コーエーテクモゲームス/AASA

Road 96(Switch) エピソードリストと感想

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Road 96
DigixArt
2021年8月16日
Microsoft WindowsNintendo Switch

 

まず最初に本作『Road 96』各シーンの冒頭に表示されるエピソードリストを紹介します。1980~90年代の楽曲と同じタイトルのものが多く見られたので、アーティストと楽曲の発表年も右に表記。開発者インタビューとオリジナルサウンドトラックを参考にして絞っていきましたが、同名タイトルの映画やカヴァー曲も多く存在するので開発者の意図と完全に一致させるのは難しく、あくまでも参考程度に。

わからなかったものは空白になっています。

(PC以外のデバイスでは見難くなっているので注意)

 

・ABOUT A GIRL  Nirvana 1989
・A VIEW TO A KILL  Duran Duran 1985
・BEAT IT Michael Jackson 1982
BEEP BOOP BEEP
・BETTER BE GOOD TO ME  Tina Turner 1984
・BLAME IT ON THE RAIN  Milli Vanilli 1989
・BURNIN' Daft Punk 1997
・CRUISIN' Smokey Robinson 1979
・ENJOY THE SILENCE Depeche Mode 1997
・FIRE STARTER  The Prodigy 1996
・GOLDFINGER  Ash 1996
・I'M GONNA BE(500 MILES) THE PROCLAIMERS 1987
・INFINITY Guru Josh 1990
・I'VE SEEN THAT FACE BEFORE Grace Jones 1981
・JUMP AROUND House of Pain 1989
・LET'S GET SERIOUS  Jermaine Jackson 1980
・LIVIN'LA VIDA LOCA  Ricky Martin 1999
・MORE THAN WORDS  Extreme 1990
・NOBODY'S SUPPOSED TO BE HERE  Deborah Cox 1998
・NO CONCESSION  The Onyas 2000
・NOTHING'S GONNA STOP US NOW Starship 1987
・PLAYNG FOR TIME George Michael 1990
・POLICE ACADEMY 1984年の映画。或いはstrontium 90のアルバム 1997
・ROAD 96
・ROLL WITH IT  Oasis 1995
SHORT CIRCUIT Daft Punk 2001
SMELLS LIKE TEEN SPIRIT Nirvana 1991
・SOME LIKE IT HOT  The Power Station 1985
・SOMETHHING IN THE WAY  Nirvana 1991
・STRESS Organized Konfusion 1994
・SUSPICIOUS MINDS  Elvis Presley 1969
・SWEET DREAMS Eurythmics 1983
・TAKE YOUR TIME(DO IT RIGHT)  S.O.S. Band 1980
・TEENAGE DIRTBAG  Wheatus 2000
・THE PASSENGER  Iggy Pop 1977
・THE PURSUIT OF HAPPINESS  1988年の映画。或いは80年代から活躍するカナダのバンド
・THE WILD BOYS Duran Duran 1984
・THIEVES IN THE TEMPLE Prince 1990
・TO YOUNG TO DIE  Jamiroquai 1993
・VIDEO KILLED THE RADIO STAR  The Buggles 1980
・WALKING IN MY SHOES  Depeche Mode 1993
・WORLDS APART Journey 1983
・YOU'RE THE INSPIRATION Chicago 1984

 

https://open.spotify.com/embed/playlist/6AU0H8dZFwVi10I4HHUb3L?utm_source=generator

spotifyでプレイリストを作成したので興味があれば是非。

ヒット曲が多いので80~90年代音楽の入り口として丁度良いかと思います。

 

 

ゲームの感想

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『Road 96』はフランスのゲームスタジオ「DigixArt」開発のインディーゲーム。

名もなき少年少女を一人称視点で操作するストーリー分岐型のアドベンチャーゲーム

1996年、架空の独裁国家「ペトリア」を舞台とし、様々な方法を選択して国外脱出を試みる過程で出会う7人の個性的なキャラクター達。彼らとの関係性を築いていくことで物語の全容が把握できるようになっています。

1986年に起きたテロ事件が96年のペトリアにどのような影を落としているかを掘り下げながら、現在の現実世界、特にトランプ政権以降のアメリカの問題を浮き彫りにしていく描写は鮮やか。

シリアスなテーマにも関わらず、作り込まれたサウンドトラックやミニゲーム、多様なイベントにユーモラスなキャラクター達が共存する世界は楽しく、飽きさせない。

ゲームの構造自体も非常に変わっていて、『ZombiU』や『WATCH DOGS LEGION』のように複数のモブキャラを操作しながら『街』のように複数の個性的なキャラクターに影響を与えてストーリーを変化させていくという複雑さを持ちながら、構造的な仕掛けはプレイしていくことで自然と気付けるようになっているのが凄い。

 

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プレイヤーが操作するキャラクターは無個性で、そのほとんどが目的を果たせず志半ばでリタイアしていくのですが、彼らの築いた人間関係や痕跡が次の主人公の歩むべき道を切り開いてくれます。

だからこそ、一つ一つの行動の意味が深まり、選択するのが楽しい。

様々な要素が絶妙に噛み合うことでプレイ自体は非常にシンプルに感じられ、それにより扱っているテーマがダイレクトに伝わってくるし、何よりもゲームとして楽しいというのが本当に素晴らしかったです。

 

 

©2021, Digixart Entertainment Road 96™

LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶(PS4)

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LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶
SEGA
2021年9月24日
PlayStation5,PlayStation4,Xbox One,Xbox Series X|S

 

『LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶』は2018年に発売された木村拓哉主演のゲーム『JUDGE EYES:死神の遺言』の続編。

開発は「龍が如くスタジオ」。本作の発売から約2週間後の2021年10月8日に総合監督の名越稔洋氏とゼネラルプロデューサーの佐藤大輔氏がSEGAを退社。

本作は龍が如くシリーズの顔であった名越稔洋氏にとってSEGA時代最後の作品となります。

以下、クリア後の感想です(追加DLC「探偵ライフ充実パック」含む)。

※ネタバレなし

 

ストーリー

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前作では「認知症の治療薬」という社会問題を扱っていましたが、今作でも「いじめ」という社会的なテーマを軸にメインストーリーが展開される。

推理ものを軸としながらもセンシティブな問題に切り込んでいくスタイルはテレビドラマ『相棒』を想起させます()。

主人公の八神が依頼された「いじめ」問題、源田法律事務所の城崎さおりが弁護を担当する現役警察官の「痴漢」、そして横浜の廃ビルで発見された「身元不明の焼死体」。これら3つの異なる事件の点と点を結んでいくことで真相へと迫る展開は非常にスリリングで、プレイヤーの予想を良い意味で裏切ってくれます。

しかし、そうした大きな事件に立ち向かって行く八神の行動原理には大きな不満があります。

物語が中盤に差し掛かるあたりで八神の調査に協力していた学校関係者が殺されてしまうのですが、その事と八神の過去の苦い思い出が結びつき「なぜあの人は殺されなければならなかったのか」という激しい怒りに八神は固執していきます。それはもう、ゲーム内のキャラクターに「またその話かよ!」と突っ込まれるほどにです。

龍が如く7 光と闇の行方』でも主人公の春日が父と慕う人物を殺されて暴走するくだりがありましたが、ちゃんとヤクザにぶん殴られて目を覚まします。

本作での八神は中盤からもう二度とプレイヤーのもとには帰って来ず、こちらはただただ八神の暴走する正義を眺めることしかできません。

しかもその学校関係者を殺した犯人が半グレだったということで、最終的には「八神軍団VS半グレ集団」という、過去の龍が如くパターンに収束してしまっているのが残念。

特に「いじめ」に関しては最初から最後まで軽薄といっていいほどの予定調和で、学校内で発生するサブストーリーのほうが本質を突いていたりするので余計に粗が目立つ。

罪のない人間を守れなかったという八神の怒りと「いじめ被害者の復讐」という問題がストーリーを進めていくにつれ激しくぶつかるのですが、そこではいじめ問題に対する八神の考えも、一人の人間であることと同時に弁護士であることの間に生じる逡巡もぼんやりとしか見られません。怒りの感情で突き進む八神の行動は、ストーリーの過程で立ち上げてきた様々な問題を無理矢理地均ししている印象が強く、実際にストーリーの終盤ではいじめ加害者生徒の扱いが学園青春ドラマ並に軽いものになっています。

これがもし主役が八神ではなく桐生一馬で、学校関係者の殺害ではなく澤村遥の誘拐であったならプレイヤーは感情移入できたであろうし、ゲームのストーリーとしては十分成立していたでしょう。

しかし、元ヤクザで仁義の為なら法を犯すことを厭わない覚悟を持った桐生一馬と八神ではあまりにも本質が違いすぎます。

桐生の愚直な性格と「巻き込まれ型」のストーリー展開、そして反社会的なヤクザの世界を舞台として繰り広げられるフィクションはある種のファンタジー性を伴い、直線的な主人公の行動原理はゲームのレールプレイを余儀なくされるプレイヤーとの共感度が高いものでした。

一方の八神は弁護士資格を持つ探偵であり、法を遵守し、丹念に証拠を積み重ねることで真実に辿り着きます。そうした演出が随所に盛り込まれながらも長い物語の半分を怒りの感情に囚われながら突き進むというのは、このゲームの主人公としてはあまりに内向的で、そのナイーブさ故に直線的な行動力がかえって短絡的に見えてしまうし、さまざまなテーマを扱っているにもかかわらず問題の本質を置き去りにしてしまっています。

キャンセルカルチャーなどの、本作で本当に伝えたかったであろうタイムリーなテーマ選びは良いし、物語を進めていく上での推理ロジックも面白い。だからこそ、細かい描写の稚拙さや主人公の行動原理が焦点をぼやかしてしまっているのが本当に残念。

 

※『相棒season19』の第10話「オマエニツミハ」では、「いじめ」「復讐代行」など本作と共通するテーマを扱っている。『相棒season13』の第2話「14歳」は、「いじめ」を入り口としながら政治的な問題へと切り込んでいる。

 

サブクエス

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学園内で噂されている、ある事件を解決するためには約10種類の部活動に参加して証拠を集める必要があります。この「ユースドラマ」と呼ばれるサブクエストのほとんどに個別のミニゲームが用意されており、その内のいくつかにはレベル上げやカスタマイズ要素があり、とにかく作り込みが異常。

 

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ユースドラマは全体的に質が高く、難易度変更によってある程度融通が利くのが良い。シナリオは喜劇でありながらも各キャラクターの個性がしっかりと出ていて、新マップ「横浜異人町」の背景を立体的に浮かび上がらせるオープンワールド的な要素としても機能しています。八神が高校生たちと触れ合うことで、現代的な問題を楽しく、時にシリアスに伝えるストーリーが素晴らしい。

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木村拓哉を操作してコスプレ姿で動きまわるのは単純に楽しく、ベタなギャグも絶妙にマッチしていて笑えます。暴走族やボクシングジムの会長など、本作のみの出演ではもったいないほどの個性的なキャラクター達は一見の価値あり。

学園以外にも神室町エリア含め多くのサブクエストや、前作にもあった「ドローンレース」や「VRすごろく」、新ゲーム「エアセリオス」他、賭場やゲームセンターなどの施設も充実。

 

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八神探偵事務所にあるSEGAの「マスターシステム」では懐かしのゲームで遊ぶことが出来ます。ROMの入手方法は景品だったり道に落ちていたりと様々で、ゲームを満遍なく遊んでいくことで新しい遊びが次々と増えていくので止め時が見つからない。

 

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追加DLC「探偵ライフ充実パック」に入っている「ガールフレンドストーリー」では3人の女の子と付き合えるだけでなく、そこに付随したストーリーでは前作のサブクエストをプレイした人にはお馴染みのキャラクターが数多く登場し、分厚くて濃い内容となっているので買って損はないと思います。

これらの尋常ではないサブクエストの量と高いクオリティの前では本編が霞んでしまう。それほどまでに面白く、満足感のあるものでした。

ただ一つ不満点を挙げるとすれば、全ての要素を遊んでもらう為に「遊ばなくてもよい」という選択肢が削られてしまっているということ。

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特に「ユースドラマ」は軸となるストーリーを引っ張りながら全ての部活動をクリアすることでエンディングへと到達できるわけですが、部活動の中には格闘ゲームやロボット操作など、普段ゲームをあまりやらない人には難易度が高く感じるものが多く含まれ、回避するルートがない。

これまでのシリーズであれば、ポケサーを極めたい人や、より歯ごたえのある戦闘を楽しみたい人へ向けて専用のサブクエストと、モチベーションを高めてくれるオマケ的なストーリーがセットとなっていましたが、本作の「ユースドラマ」では「ミステリー研究会」のストーリーの続きが見たいのに苦手なミニゲームを我慢してやらなければならない状況が発生しやすく、「せっかく作ったんだから全部遊んでほしい」という開発者側の意図を押しつけがましく感じてしまう人もいるでしょう。

『北斗が如く』で、リンという女の子と仲良くなるためだけにバッティングや闘技場をたらいまわしにされた記憶が蘇りました。

 

探偵シミュレーション要素

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前作では浮気調査やピッキングなど、サブクエスト含め地味な依頼が多く、それらが普段の探偵業の陰の部分を際立たせることでメインストーリーが光るというのが素晴らしいと個人的には思っていたのですが、どうやら多くのユーザーからは「地味すぎる」と不評だったようで大幅に変更されていました。

一緒にお散歩できる「探偵犬」やSNSによる情報収集が加わりましたが、前作と同様に探偵業の地道な捜査という本質は残しつつ能動性を増しているので良い変更であったと思います。

 

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他にも、乗り物としてスケボーが加ることで広い異人町を気持ちよく移動できるようになりました。都会では基本的に公道を走ることは禁止されているスケボーですが、あくまでゲームであることと、『名探偵コナン』で一般的となった「探偵=スケボー」というイメージを大胆に取り入れた素晴らしいアイデア

 

感想

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名越さんのSEGA最後の作品ということで、気合入りまくりの特大ボリューム!総プレイ時間は100時間にも及びました。まさにこれまでの龍が如くシリーズでやってきたことの全てを注ぎ込んだという感じで、集大成と呼ぶにふさわしい内容。はりきりすぎて『北斗が如く』要素まで入っていましたがシリーズファンにとっては些末な事。

 

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書ききれませんでしたが、バトルに関しては前作からブラッシュアップされ、よりゲーム初心者にとっても遊びやすいものになっていました。血の量が少なくなったり、相手を殴らず気絶させるだけで倒せるようになったのも大きな変化。

龍が如くを含めれば長期的なシリーズの最新作となる本作ですが、過去作の良い部分を引き継ぎつつ新しいチャレンジを試みる姿勢が素晴らしい。

八神の行動原理については色々批判しましたが、名越さんの考えるヒーロー像というのは初代『龍が如く』から一貫しているように思います。もちろん八神というキャラクターは龍が如くとは切り離して作っているに決まっているのですが、それでもやはり八神の中の一部に桐生一馬的なヒーロー像が乗っかってしまっているように感じてしまいました。

今回はそれが裏目に出た感がありますが、今後も名越さんが仕掛けるであろう新しい試みには期待しかありません。

龍が如くスタジオの新代表に就任した横山昌義氏によれば「『龍が如く』だけではなく、『ジャッジアイズ』シリーズも大事にしていくつもりです。」(ファミ通.com 2021.11.20)とのことで、今後の展開がとても楽しみ。

そして今後期待するものとして個人的に推したいのが、今作で初登場を果たし、最も重要な役割を果たしたともいえるキャラクター「天沢鏡子」...そう

 

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天沢!!!

 

龍が如くという、現実と同じ時間が流れるシリーズにとって「成長するキャラクター」は不可欠!そして澤村遥不在の今、その役割を担うに相応しいキャラクターこそ天沢なのではないでしょうか。

ということで、天沢の今後の活躍に期待しています!

 

 

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