みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

奇天烈相談ダイヤル(PC)

奇天烈相談ダイヤル
法螺会
2024年2月10日
Microsoft WindowsMacintoshAndroidiOS

 

本作『奇天烈相談ダイヤル』は、日本を拠点とするゲームサークル「法螺会」によるインディゲーム。法螺会はホラーアドベンチャーゲームを得意とし、これまで3本のフリーゲームを配信しています。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし

 

本作はルーカス・ポープ氏によるアドベンチャーゲーム『Papers, Please』(2013年)に影響を受けていると公式のコメントにありますが、『Papers, Please』が入国審査官となって書類審査を行うゲームなのに対して、本作は電話相談員となり相談の内容が「怪異のしわざか/そうでないか」を判定していきます。

 

プレイヤーは新人相談員「ミサコ」となって、資料を参照しながら相手の話に該当する怪異を特定したり、資料との違いを見つけていきます。
読み応えのある分厚いマニュアルに個性的な2人の同僚など、この施設のバックグラウンドがしっかりと描かれていて没入感が高い。時代設定が1994年で、現代視点から見るとチープなテレビ電話と黒電話のベル音が、レトロゲーム風のビジュアルとBGMにすごく合っていて、絶妙な雰囲気を醸し出しています。
本作に出てくる怪異の中には初出が2004年の「きさらぎ駅」など、時代に合わないものもいくつかありますが、これは英断だと思います。実際プレイしてみると、単純に種類がいっぱいあったほうが楽しいと感じました。

 

怪異の種類は100種類。それに比例して相談してくるキャラクターも多いのですが、どれも個性的でいい味出してます。相談者が全員ニックネームなのもキャラクターの魅力を引き立てていて素晴らしい。
それに加え、ゲームを周回すると相談してくる人物と怪異の種類がシャッフルされるので飽きさせない。
私は普段オカルト関連の本を読んだりゲームを遊ぶことが多いのですが、聞いたことのない怪異が多く収録されていて驚きました。ネット検索にも引っかからないものもあり、相当マニアックかつ、都市伝説系に寄せたチョイスも良い。そうした未知の怪異をゲーム内の資料で調べるのが本当に楽しい。

 

ゲーム自体の難易度は高め。特に最初は相談者に関係ない質問をしてしまいがちでハートを削られる。慣れてくると少ない質問である程度怪異の見当がつき、それに沿った質問をしていくことで成功率を上げられます。一日最大で5人の相談を受けられますが、家に帰って寝てもハートが回復しないので、自分のペースでやりつつ、こまめにセーブしておけば誰でもクリアできると思います。難易度設定が複数用意されているのも親切で良い。
相談者一人当たりにかかるプレイ時間が少なく、ストーリー的な連続性もないので気軽にサクッと遊べて中毒性が高い。


最終日までハートをゼロにすることなく過ごせればクリア。クリア後には画面にカラーバーが表示され、その後は…


藤子不二雄風オープニングからの、このエンディングの演出には痺れました。
さらに怪異を100集めると別の展開もあるので抜かりがない。

 

感想

ゲーム・オカルト系エンタメに必要な全ての要素が絶妙に調和しています。とにかく面白いし、世界観やキャラクターの魅力も申し分ない。
特に素晴らしいのが、ゲーム全体に流れるユーモア。
心霊系YouTubeチャンネルで「ゾゾゾ」が頭一つ抜けているのは、土台となる優秀なディレクションはもちろんとして、出演者たちの飄飄とした、そしてどこか可笑しみを感じさせるキャラクターによるところが大きいかと思いますが、その、多くのオカルト系エンタメが獲得できない絶妙なユーモアセンスを本作は内包しているわけで、ある意味最強。レトロ風のビジュアルやBGMに人を食ったようなユーモアが加わることで、どこか言い知れぬ不気味さを醸し出しているのもホラーゲームとして100点。アイデアがどれも素晴らしく、プレイ環境も丁寧に配慮されているので誰でも楽しめるものになっています。今後は是非Switchなどのコンシューマにも移植され、より多くの人に遊んでほしい傑作。

 

 

© HORAKAI, Inc.

クレヨンしんちゃん『炭の町のシロ』(Switch)

クレヨンしんちゃん『炭の町のシロ』
ネオス
2024年2月22日
Nintendo Switch


本作『クレヨンしんちゃん『炭の町のシロ』』は、2021年に発売された『クレヨンしんちゃん 「オラと博士の夏休み」〜おわらない七日間の旅〜』の続編。開発はネオス、「ぼくなつ」シリーズを手掛けてきた綾部和氏がスーパーバイザーとして参加しています。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし

 

舞台は秋田県

前作ではしんちゃんの母・みさえの故郷である熊本が舞台でしたが、今作は父・ひろしの故郷の秋田が舞台になっています。とはいっても、祖父祖母の家で暮らすというわけではなく、ひろしが仕事用に借りた古民家に家族で寝泊まりをしているという設定。古民家はひろしの実家からさほど離れていない場所のようで、祖父祖母が毎日遊びに来てくれます。
秋田では前作と同様に、ゆったりとした休日を過ごしながら虫捕りや釣り、家庭菜園を楽しむことができます。これまでの綾部作品と違い、カレンダーによる期限が存在しないので、周回することなく図鑑のコンプリートが可能。

 

「ぼくなつ」シリーズや前作、そして『なつもん! 20世紀の夏休み』(2023年)など、多くの綾部作品に共通するゲーム的特徴として、行動の制限が挙げられます。ご飯は決まった時間に家族で食べるし、遅くまで外で遊んでいると家族が迎えに来るなど。主人公を子供に設定することによるこうした制限は、他のゲームにはない独特のリズムとテンポを生んでおり、慣れると実に心地良い。
いわゆるスローライフ系と呼ばれる作品のほとんどが、実際には自由度が高いがゆえに作業に忙殺され、その任意性ゆえの没入感がゲームの中毒性に直結しているのに対して、綾部作品ではそれらを大胆に分断することで子供目線の日常感覚がリアルに演出されています。朝起きて夜に寝ること、陽が昇って沈み、いつも家族で食事をすることなどを等価に並べることにより表れる特別な日常風景。そうした土台があるからこそ、些細な出来事にも輝きが与えられ、ちょっとした探索が大冒険になる。
こうした綾部作品に共通する特徴は本作の秋田パートでも健在。ただ、家族やその他キャラクターたちのセリフが前作に比べてだいぶ削られていた(特に後半)のは寂しかったです。サブクエストも頼まれた素材を持っていくだけのものが大半。

 

秋田パートでは、キッチンカーでのカレー屋オープンからの流星群観測が印象深く、とても良かったです。他にも地元の子供たちとの交流などもあるのですが、ストーリー的にはあまり生かされず消化不良。他にもいろいろな要素を置き去りにしたままストーリーが進行してしまっているという印象は拭えませんでした。

こうなった理由としては、日数制限の廃止と、もう一つのマップ「炭の町」のストーリーを軸とした作品の方向性があると考えられます。

 

炭の町

しばらく姿を見せなかったペットのシロが黒く汚れた姿で帰って来た。シロに導かれるように不思議な電車に乗ったしんちゃんが辿り着いたのは炭鉱によって発展した炭の町。
そこに住む少女「スミ」は、町で困っている人を助けるため、シロにしんちゃんを連れてきてもらう、という所からストーリーが始まります。

町に着いたしんちゃんは研究所の発明を手伝ったり、経営不振の食堂を繁盛させるお手伝いをしていきます。
町の大人たちが5歳児に大量の金属や宝石、食材などを要求してくる展開はかなり不自然。しんちゃんの見た目が少し変化していたり、炭の町の人たちにだけ別の姿に見えているなどの設定もなし。メインストーリーもサブクエストも全部がおつかいで、がんばって集めてきたのにお礼の一言もない時もあり心がくじけそうになりました。各キャラクター固有のシナリオも秋田パートと同様に薄く、かなり物足りない。

 

前作や秋田パートでは、主人公が子供だという特性がゲームデザインと直結していて、独自のシステムに説得力を与えていたのに対して、炭の町パートはあまりにも一般的なゲームシステムに則しすぎていて秋田パートと断絶しています。とにかく、何故しんちゃんが炭の町で使いっ走りをし続けなければいけないかの背景が語られてなさすぎます。素材によってはお店で買わなければ手に入らないものもあり、のんびりと楽しめていた秋田パートが金策のためだけの作業に感じられてしまうのも残念。

 

ロッコレース

ストーリーを進めて行くとトロッコレースで遊べるようになります。前作「オラ夏」における恐竜バトルのようなミニゲームかと思いきや、なんとメインストーリー絡み。というか、トロッコレースを軸にストーリーが組み立てられていると言っても過言ではありません。なので、トロッコレースで詰むと当然ストーリーも詰みます。しかもこのレース、かなり操作にクセがあり、序盤はなかなかコツをつかみにくい。逆に、お金をガンガン投入して高性能パーツを搭載するとヌルゲーになります。レース自体はコースがたくさん用意されていて面白いのですが、報酬が一回しか貰えないので周回する旨味がありません。

 

ストーリーの目的

炭鉱ではダンシャーリというボスキャラが炭の町を改善するため『無駄ゼロパーフェクトタウン計画』を画策。その過程で「無駄」として切り捨てられそうな食堂や銭湯を守るため、しんちゃんがほぼ一人で奔走することになります。炭鉱には女性労働者がいないので、時代的にはおそらく戦後。一見無駄に見えるものも人間には必要なんだというテーマと昭和ノスタルジーとの相性は良い。ただ、それらは最後まで交わることなく、終盤にかけては「友情」や「犬」などに頼った安易な感動系に収束されていきます。とても大人の鑑賞に堪えるものではないし、ゲーム内に散りばめられた設定すら放棄してしまっているように見えます(設定の土台はおそらく、オスカー・ワイルドの短編『幸福な王子』)。

 

感想

独特な時間の流れの中で過ごす秋田の日常はとても魅力的で楽しい。周回システムを廃したことで、自分のペースで納得するまで遊べるのも良い改変だし、全体的なゲーム部分が前作よりも向上していると感じました。リアルパートとファンタジーパートを分けたのも今後の展開を考えると納得。綾部和氏の作風としては前作の「オラ夏」や『怪獣が出る金曜日』(3DS 2013年)の、現実と夢が混在した子供視点ならではの体験が特徴的でしたが、クレヨンしんちゃんの作風を鑑みると、本作のアニメ劇場版のような構造はわかりやすくて良いと思いました。
本作の欠点は、炭の町パートの作り込みの甘さに限ります。舞台は整っているのに、そこで展開されるドラマが味気なく、それが全体的なストーリーの不満に繋がっている。特に舞台の背景については、言葉でなくとも、もう少し丁寧に描いてほしかった。設定自体は魅力的なので、ディテールの描き込み不足は本当にもったいなく感じました。
「ぼくなつ」的な構造から大きく方向転換した作品だけに今後の課題点も多く、余計に粗が見えてしまったことは否めません。とはいえ、その欠点が致命的とも思えず、良い部分も沢山ある作品なので、このままアニメ劇場版のようにシリーズ化されることを切望します。

 

余談ですが、今回の主題歌は松崎ナオさんが歌っていて、コレクターズエディションにはソノシートがついてきます。こういうアイデアは本当に秀逸!

 

 

©臼井儀人双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK ©Neos Corporation

Lake(Switch)

Lake
Gamious
2024年2月15日
PlayStation 5、Nintendo SwitchPlayStation 4Microsoft WindowsXbox OneXbox Series X/S、Google Stadia


本作『Lake』は、オランダを拠点とするゲームスタジオ「Gamious」によるインディゲーム。Gamiousは2011年に設立され、これまでに10本のゲームを発表している。尚、本作のPC版での発売は2021年9月1日で、ゲーム内での開始日(1886年9月1日)からちょうど35年後にあたる。
以下、クリア後の感想。

 

1980年代の日常

舞台は1986年のオレゴン州。湖の周りを囲うようにしてできたプロビデンスオークスという小さな街。
都会のソフトウェア会社で働く主人公・メレディスは、2週間の長期休暇をとり、しばらく帰っていなかった故郷の実家で過ごすことに。両親は旅行中で、その間メレディスは父の勤務する郵便局の手伝いをすることとなる。

 

本作は、40代独身女性のメレディスが久しぶりの地元で、郵便配達という仕事を通して様々な人々と交流し、彼らとの会話の中でどのような決断を下していくかという分岐型のアドベンチャーゲームだ。

 

湖の周りをのんびりと運転しながら各家に手紙や荷物を配達していくというのが主なゲーム内容だが、運転中に人を轢いたり事故に遭うようなことはない、きわめて平和な世界だ。配達の描写は丁寧で、手紙ならポストを開けて投函するモーションがあるし、荷物はそれぞれ大きさが違う。「思ったより重い(軽い)な」など、様々なシチュエーションでメレディスがつぶやく独り言も良い。

 

配達で出会う街の人々にちょっとしたことをお願いされることも。選択肢によって断ることも、深入りして各キャラクターの抱える物語に触れることも出来る。これが実に良く出来ていて、大きな事件などは扱わず、平坦な日常を描いているだけにもかかわらず飽きさせない。プレイヤーにイベントを探させる手間を省き、フラグ立てを配達と一体化させているのが新鮮。イベントのいくつかは、フラグが立った後にプレイヤーが主体的に赴かなければならないものもあるのだが、それらのバランスが絶妙。
配達に慣れきってくる後半は少し退屈に感じられもするが、天候の変化や、ラジオとイベントを絡ませるなどの工夫がされている。

 

配達パートを終えると自宅に切り替わり、両親との電話によるやりとりからメレディスの心境の変化を窺い知ることができる。その他にも、本を読んだり、配達で知り合った人から借りたビデオを鑑賞したり、時にはそうした人たちを家に招くことも。両親との会話では今後メレディスが都会の生活に戻るか、プロビデンスオークスで暮らしたいかを頻繁に聞かれるが、最後の最後まで迷っても大丈夫。

 

80年代を舞台としているため、当時の流行りものが出てくるのも本作の大きな特徴。街にはレンタルビデオ屋があり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)を思わせるポスターが張り出されている。レコードコーナーのように見えるものはおそらく当時流行っていたレーザーディスクだろうか。ビデオ屋の店員によれば、この田舎町ではそもそもビデオデッキの所有率が低く、経営が圧迫しているらしい。
映画やドラマなどでよく見る個人経営のレストラン「ダイナー」やモーテル、雑貨屋などに入れるほか、ダイナーに設置してあるゲーム機で実際に遊ぶこともできる。全体的な施設自体は少ないながらも、そこにいるそれぞれの人物たち、その彼らと主人公との距離感が丁寧に描かれているのは『シェンムー 一章 横須賀』(DC 1999年)を彷彿とさせる。

 

クィアゲームとしての側面

さて、本作では街の人々との交流が非常に丁寧に描かれていることは先に述べたが、その過程で彼らと主人公が恋愛関係になる選択肢がある。相手となる人物は男性だけでなく女性も含まれる。このことから本作はイギリスの雑誌Gayming Magazineで「クィア(LGBTQ)ゲーム」としてノミネートされている。

 

ゲームではメレディスの幼馴染とされる女性が登場するが、どうやら普通の別れ方をしておらず、再会時には気まずい空気が流れる。
オレゴンが舞台ということもあり、2人のこの関係性はゲーム『Life is Strange』(2015年)の主人公であるマックスとクロエを想起させる。
ゲーム内では性的指向を表す用語も、直接的な描写もない。だが、ストーリーを軸とした本作の特徴からして同性と恋愛関係を結べることが単純なゲームの自由度によるものだとは考えにくい。
80年代という時代を考えると、「クィア」という言葉は性的マイノリティを指す蔑称として使われていた時期と重なる。80年代前半にゲイコミュニティの間で流行した病気「エイズ」を、政府が「ゲイ特有の病気」として放置し、差別を助長したことにより起きた解放運動により「クィア」という言葉がポジティブな意味で使われるようにはなっていったが、86年のオレゴン州の田舎町で堂々とそれを公言できる空気があったとは考えにくい。そうした時代背景を踏まえると、本作におけるメレディスの性格や、幼馴染との距離感は腑に落ちる。

 

最後に

本作『Lake』は、古い文化や人を懐かしむ喜びだけでなく、主人公の置かれた状況を俯瞰的に捉える現代的な視点により平凡な日常の物語に特別な輝きを与えている。無駄なものを極力そぎ落としたゲーム性は単調だが、それにより郵便配達という仕事や田舎での休日という設定を際立たせることに成功している。実際にあるもの、やれること以上の広がりを感じさせてくれる良作だ。

 

 

 

※注意点 Switch版では立ち上げのロード時間以外にプレイを阻害するようなものはない。だが、遠景の描写が間に合わず、画面がぼやけて見るに耐えない画質になることがままあった(2024年2月現在)。なので他機種版をプレイする環境をお持ちの方には、そちらをお勧めしたい。

 

 

Gamious & Whitethorn Games. 2024

パルワールド(Xbox Series X/S)

パルワールド
ポケットペア
2024年1月19日
Xbox OneXbox Series X/S、Microsoft Windows


本作『パルワールド』は、日本を拠点とする制作会社ポケットペアによるインディゲーム。PC版の売上が1日で200万本、2週間で1200万本を突破し、ゲーム史上最も速いペースで売れたタイトルのひとつとなった。尚、2月現在の段階で本作は「ベータ/プレリリース版」という扱い。
以下、15時間ほどプレイした感想です。

 

このゲーム、ポケモンに似すぎているということで発売前から色んな意味で話題になっていました。実際にプレイしてみると「パル」というポケモンそっくりの生き物がフィールド上に跋扈し、それにモンスターボールそっくりのボールを投げて捕獲し、戦わせることができる。これに関してゲーム側からの説明は特にありません。というより、各地に散らばった「手記」を集めることでゲーム内世界の秘密が解き明かされるという仕組みがあり、モブキャラとの会話からも細かい設定を窺い知ることができるようになっています。ムービーが存在しないため、プレイヤー全員が自然と共通の世界観を認識するということはなく、任意によるところが多い。パルという生き物の説明としては、ポケモンという共通認識に依存した投げ方だと言えるでしょう。悪い言い方をすると、ポケモンを知らない人が直感的に理解することが出来ないデザインになっている。

 

本作は既に各所で指摘されているとおり、恐竜世界でサバイバルをするゲーム『ARK: Survival Evolved』(Studio Wildcard 2015年)を基としながら、ARKにおける恐竜をポケモンに似た生物パルに置き換え、更にポケモン(ゲームフリーク)が避けてきた設定や描写を加えたものになっています。
拠点を立て、つかまえたパルを労働させて素材や料理を量産。野生のパルを倒すと、ぐったりと死んだ描写がされ、手持ちのパルを解体するアイテムまであります。こういった露悪的に取れる面もあれば、拠点にいる複数のパルが自分の意思で眠ったりご飯を食べたりするといった、本家ポケモンがゲームで表現しきれなかったものもあり、そういった部分をオリジナリティと捉えることも出来ます。
SNSでは本作のポケモンパクリ炎上に関して「全ての創作は模倣からはじまる」といった正論がバズっていたりして、私もプレイする前までは納得できる意見だと思っていました。
というのも、最近ではこの種の炎上が定期的に起こるのですが、そのほとんどは取るに足りないものだったから。
2020年には中国のオンラインゲーム『原神』が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に似ているということで炎上したのですが、実際にプレイしてみるとゲームの感触としては全くの別物でした。ビジュアル的にゼルダを模倣していることは確かなんですけど、きちんとオリジナルなものに書き換えられていることは実際にプレイしてみれば明確にわかります。

 

ゼルダに関して言えば、作品の大きな特徴であり本作にも出てくる崖登りや滑空などは、メジャーなタイトルであってもほぼそのまま引用している作品が多いのですが、やはりゲームとしての全体的な印象や感触が違うとさほど気にはならない。そもそもゼルダ自体が様々なオープンワールドゲームから影響を受けているわけで、何でもすぐにパクリだと騒ぐのは視野が狭すぎるのではないかというのがこの手の炎上に関していつも思うこと。


なのですが、本作における他作品からの引用は『原神』とは全く別の問題があると感じました。
まず、先ほど触れたポケモンの設定ありきでの二次創作的な改良に関しては、遊んでいる間中いちいち「これはポケモンっぽいな」「これはポケモンがやらなかったことだな」と比較してしまい、プレイ中の結構なノイズになる。武器を振るモーションはフォートナイトだし、新マップを発見した時の音はブレスオブザワイルド。発見の喜びや、プレイヤーが直接インタラクトする部分に他作品のアイデンティティともいえる演出をパーツとして組み込むことで、一つの作品としてはかなりちぐはぐな印象を受ける。今の時点では何とかまとまっているように感じられないこともないのですが、それは本作がまだベータの段階で、ゲームの全容が薄いから。
ポケモン部分に関しては今後のシナリオに依拠するところがあるので何とも言えませんが、プレイヤーの体験に直結する細かい部分、主人公のモーションや効果音の引用はこのゲームのオリジナリティを著しく損ねていると感じました。
ただ、注目すべきは本作がすでに1000万本以上の販売数を売り上げていて、拡張し続けるであろうということ。現段階でクラフト系のオープンフィールドゲームとしてはある程度の面白さが保証されていることを考えると、他作品からの引用部分の大半が何かしらの問題になってくるのは避けられないでしょう。今後、そういった要素が徐々にフェードアウトしていくのか、或いは更に増加していくかには大変興味を惹かれます。

 


© Pocketpair, Inc.

アサシン クリード ヴァルハラ(Xbox Series X/S)

アサシン クリード ヴァルハラ
ユービーアイソフトモントリオール
2020年11月10日
PlayStation 5、PlayStation 4Xbox Series X/S、Xbox OneMicrosoft WindowsGoogle Stadia


本作『アサシンクリード ヴァルハラ』は、カナダを拠点とするUBIモントリオールスタジオによるアサシンクリードシリーズの12作目にあたる作品。アサクリのモントリオールスタジオ開発は2017年の『アサシン クリード オリジンズ』以来となる。

※以下、ネタバレなし

 

本作は9世紀のノルウェーを起点とし、イングランドをメインの舞台とする。「ヴァルハラ」とは北欧神話の用語だが、ノルウェーキリスト教が布教されるのは10世紀ごろと言われているため、この頃のヴァイキングたちは北欧神話に基づく北方信仰をアイデンティティとしていた。

 

ゲームは主人公のエイヴォルを操作し、「鴉の戦士団」を率いてイングランドに攻め込む。移動手段は船と馬。イングランドのマップには様々な人種、遺跡、宗教が混在しているが、これは当時のイングランドという国の混沌を上手く表現していると言えるだろう。


イングランドの歴史

イングランドといえば石器時代に作られたストーンヘンジが有名だが、これを作った民族は現在ではまだ不明とされている。その後、紀元前7世紀頃にケルト人が流入し、紀元前55年にはローマのユリウス・カエサルが侵入。5世紀になるとゲルマン人の侵入が始まりローマ帝国に混乱が広まった。449年にはアングロ・サクソン人グレートブリテン島に侵入。
アングロ・サクソン人は7つの王国を建設し、互いに覇権を争った。このイングランドに7つの王国が並立した829年までの380年間を七王国時代と言う。(出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)
その後、ヴァイキングによる侵入があるが、それこそが本作の主人公、デーン人のエイヴォル率いる「鴉の戦士団」である。この辺はかなり史実に基づいたデザインが随所に盛り込まれながら、歴史を知らない人にも理解ができるよう丁寧にデフォルメされている。


3つの世界が交差する

ヴァイキングが信仰する北欧神話もかなり複雑で解り難い世界観を持っているのだが、拠点にある古物に触れることで神話の世界を実際に体験できるようになっている。
神話篇は主人公も切り替わり、別の物語が展開される。ある程度進めるとハクスラ系のゲームに切り替わるが、いつでもエイヴォル篇と切り替えが可能。神話篇での報酬はエイヴォル篇で特別なアイテムと交換ができる。
これにいつものアサクリシリーズにある現代篇が加わり、合計で3つの世界が描かれるのだが、ゲーム終盤、これら3つの要素が一点に集約されていくストーリー展開は圧巻。


ただひとつ気になるのは、これまでのシリーズを通して重要な役割を持つ「テンプル騎士団」の存在と繋がりに関しての説明は少なく感じた。ほぼ1年に1作のペースで発売される本シリーズの全容を把握しているユーザーがそこまで多いとは思えないわけで、もう少し仔細が語られても良いかと思ったが、ただでさえ膨大になっていくプレイ時間との兼ね合いを考えると難しい部分ではある。本作では全ての謎を解くためにテンプル騎士団に関係する「古き結社」という組織を倒す必要があり、一部ストーリーにも関わってくる。これに関して、どこまでプレイヤーの興味を惹き付けて持続させたいかのビジョンが見えにくい。これまでにいくつかの過去作を経験していれば自然と受け流す事もできるが、初見のプレイヤーを混乱させてしまう要素になるのではないか。


アサシン要素は後退したか

本作では集団で敵側の陣地を襲撃するヴァイキング的な行動が重視されている。オンラインに繋いでいれば他プレイヤーが育てたキャラクターを傭兵としてスカウトすることも出来るし、強襲に特化したクエストも豊富。奪った物資で自分の拠点を拡大していくことで戦力を向上させ、宴を開くと一定時間バフ効果が得られる。重要な物資が隠されている聖堂のある敵拠点では、仲間と協力しなければ開かない扉や宝箱もあり、エイヴォル一人で全てをクリアするのが不可能な仕様になっている。
序盤では、こういった要素がアサシンらしさを損ねているのではと感じたが、シリーズ初期に確立されていたステルスアクションはほぼ全て残されており、聖堂以外では自由度の高いプレイを楽しむことが出来る。これはただ単に遊びの幅が広がっただけと考えるべきだろう。戦闘に関しても、スキルの充実によって幅広いプレイスタイルに対応しており、繊細かつ大胆なアクションが楽しめる。武器防具に関しても、気に入ったものを強化して使い続けられるので理不尽さはない。ヴァイキングという設定を生かしながらも、非常に高い自由度を獲得している。


UBIオープンワールドの到達点

オープンワールドというジャンルを分類すると、まず「都市型」と「自然型(ファンタジー系含む)」に分けられる。これは同時に、オープンワールドというジャンルがGTA及びそのエピゴーネン(GTAクローン)から解放されていく歴史としても語ることができる。GTAは全ての車両をプレイヤーがインタラクト可能な生物とすることで生命感のある都市を演出した。その後、ベセスダのThe Elder Scrollsがコンシューマに移植されることで都市型以外のオープンワールドも広く認知されることとなる。The Elder Scrollsではモブキャラに物語を持たせる(サブクエストの拡充)ことで新たなリアリティを獲得した。しかしそれ以降は、作り込みの甘い作品であってもシームレスなフィールドを実現していればオープンワールドだという認知が広まっていく。そしてそれはゲームエンジンの進化に依存し、当初GTAThe Elder Scrollsが内包していた思想は徐々に薄れていくこととなる。そうした中で新たな視点を獲得していったのが一連のUBI作品だ。アサシンクリードパルクールやステルスによってオープンフィールドに新しい軸を設定した。拠点制圧型に暗殺要素を足すことで市民の暮らす街と戦場を折衷。高所への移動によるマーキングは、マップの解放とプレイヤーの恣意的な探索との関係を直結させた。歴史的な名所を舞台とすることで探索に観光の要素を加えたのも、オープンなフィールドがどのようにしたら生きるかを見越した慧眼と言えるだろう。
ロックスターがGTAのコンセプトを西部劇として解釈した『レッド・デッド・リデンプションII』(2018年)にあった諸々の要素も部分的にではあるが本作は取り入れている。馬や船による移動中の会話や歌、暗殺者として付け狙われる指名手配的なシステム。
そしてRDR2におけるキャンプと同様、本作の拠点での演出にも驚かされることがあった。しばらく時間を空けて拠点に帰ると、それまで普通に話していたキャラクターが亡くなっており、仲間が悲しみに暮れ、街の外れに墓が立っていた。こうした出来事が実にさりげなく挿入されている。探索をメインとしているため、点在する無数のクエストはかなり短時間で完了する。だからといってお使いだけの手抜きではなく、その土地の風習や文化を説明する役割を果たしていて興味深いものが多い。

 

そうかと思えばわざわざ個別の島が用意されているクエストが2つもある。その一つは奴隷を装い裸同然の装備でサバイバルするものなのだが、これは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)からの逆輸入であろう。BOTWがアサシンクリードに影響を受けていることは明確だが、それをさらにアサクリ側が取り入れることで良い効果が生まれている。

 

BOTWにおける「祠の試練」のような謎解きも本作中に点在しているが、BOTWではただ単にプレイヤーのためだけに存在しているミニゲームとして存在しているのに対し、本作では納得のいく説明がされており、数もそこまで多くはない。これに加えて先に挙げた短いクエスト、生きた街、プレイヤー依存だけではない拠点などが組み合わさることによって、広大でありながらも飽きの来ないフィールドが実現されている。
ロックスターともベセスダとも異なる独自の路線を歩みつつ、あらゆるオープンワールドゲームの良い部分を積極的に取り入れていった結果として、本作はUBIが目指してきたオープンワールドの2020年時点でのピークに達しているといっていいだろう。

 

暴力表現と史実の肯定

UBI作品、とりわけオープンワールドのシリーズに関しては、そのほとんどが殺人ゲームだと言って間違いはないだろう。そして、そうした自身の暴力性に対してかなり早い段階から意識的、かつ批評的に取り組んできたのもUBIだ。特にファークライシリーズにそれは顕著である。多くの暴力表現のあるゲームに関して、暴力は主人公に降りかかる厄災である。一見そう見えなくとも、環境的な貧しさや使命が暴力表現を正当化している場合もある。
アサシンクリードは、歴史上重要な場面に居合わせた人物の子孫が、その遺伝子から先祖の行動を夢として追体験するという設定となっている。これは正にゲームとプレイヤーとの関係性をメタ的に表している。
当たり前の話だが、ゲームで人は殺せない。プレイヤーは開発者によってあらかじめすべてをプログラミングされたものを巻き戻された状態で渡されているだけに過ぎない。
それを映画のような視覚聴覚以外の方法で体験しているだけだ。
だからこそ、そこにあるナラティブ(物語、設定)が重要となる。それを最初に公言したのがロックスター・ゲームスの創設者ダン・ハウザーで、それを強く意識するようになったのは『GTA IV』(2008年)の開発期間中であったという。コンシューマーゲームが当時の次世代機であるPS3XBOX360に移行していく中で更新されていくリアリティや自由度に対する危機感として、ナラティブを重要視していくことは暴力表現を扱うゲーム開発者の意識としては必然であった。それこそ、スコセッシや北野武はギャングを醜く描くことに余念がないし、GTAの元ネタである映画『スカーフェイス』の主人公の最期は数えきれない銃弾を浴びて無残に死ぬ。
本作の主人公であるヴァイキングたちもまた、確実に滅びゆく運命が決定している。
船に乗り込み、川沿いの集落を襲撃し、略奪する姿は野蛮以外の何者でもない。しかし、彼らも、彼らに殺される側も、それぞれの現実を生き、それぞれの幻想に支えられていた。そうした背景を細かく描くことに対して本作は余念がない。

 

ヴァイキングたちはヴァルハラを目指して戦い続ける。ヴァルハラとは戦死者だけが行ける戦と宴が延々と繰り広げられる世界で、そこで戦士たちは最終戦ラグナロクの準備をする。
死にゆくヴァイキングが「斧を取ってくれ、斧を抱いて死なないとヴァルハラへ行けない」と主人公に懇願するシーンが本作中には幾度も出てくる。
ここにはファンタジー作品にあるような魔法使いも巨大なドラゴンも存在しない。表層的には無知で野蛮な人間同士が殺し合っているだけだ。しかし、その背景にある神話や現代との繋がりを意識し、追体験することで複数の視点からなる立体世界が表出する。それは確かに野蛮ではあるが、様々な示唆に富んだものとなっている。


最後に

ここまであらゆる要素が多層的に構築されていながら、自由度の高いゲーム性と広いフィールドを飽きさせない作りとして完成させたことは驚異だ。
本作が発売された同年には『Ghost of Tsushima』が高い評価を得た。あちらが侵入者から自国を守る立場であるのに対し、本作は他国へ攻め込んで略奪するゲームだ。Tsushimaは被害者的な立場であるから、戦うことへの正当性やドラマチックな演出が現在の価値観からして共感しやすかった。それに比べて本作のヴァイキングの価値観は、現代とはあまりにもかけ離れている。にもかかわらず、エイヴォルが内包する多層的な物語はあまりにも感動的だ。それはアサシンクリードというゲームの持つ設定と、北欧のヴァイキングが信仰する神話を徹底的に可視化した結果だろう。ゆえに、プレイ時間は必然的に膨大になる。120時間プレイしてイングランドの全ての領土を侵略してもエンドロールが流れない。長く遊ばせることと、長くならざるを得ない都合との折り合いがもう少し欲しかったところだが、名作であることに変わりはない。

 

 

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Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –(Apple Arcade)

Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –
GAME START LLC
2023年9月6日
Apple Arcade


本作『Japanese Rural Life Adventure – にほんの田舎ぐらし –』は、日本のゲームスタジオ「GAME START LLC」によるインディゲーム。製作は基本、音楽以外はGAME START LLCさんが一人で行っているようです。
以下、30時間プレイの感想です。

 

AppStoreの紹介文に「日本の田舎暮らし体験スローライフゲーム」とあるように、日本を舞台とした「どうぶつの森」ライクなゲームとなっています。
ピクセルによって丁寧に描かれたなビジュアルは『スターデューバレー』を想起させますが、どちらかというと牧場系よりどうぶつの森に近い作りだと感じました。
今後コンシューマ向けの展開も視野に入れているようですが、スマホで遊ぶのにちょうど良い絶妙なバランスになっています。他のスローライフ系との違いとしてボリュームの少なさが挙げられますが、それが決して満足度を下げることなく面白さを維持しているのが凄い。

 

基本的には都会からやってきた若者が田舎の古い家を片付けて一人暮らしを始めるという展開なのですが、近所の住民とそこまで距離感を詰めなくて良いのは日本的と言えるかもしれません。マップは広く、今後も拡張していく感じで住民も10人以上登場します。村長の頼みを聞いて村を復興させていくと住民が増えて、学校や駄菓子屋などの施設が充実していく。どうして新参者が自腹で村を復興せにゃならんのだとは思いましたが、ゲーム自体が単純に楽しい。

 

ゲーム序盤、空き家の雑草を刈り、床を拭いて障子を貼り替える過程がチュートリアルになっていて、これをクリアするだけでこのゲームのほぼ全てを把握することができます。
生活に必要なアイテムを売ってくれるおばあさんが午前中、プレイヤーのアイテムを買い取ってくれるおじさんが午後と、それぞれが主人公の家の前まで来てくれるのも親切。ただ、おばあさんが売ってくれるものが全てではなく、時には少し遠出したところにあるお店にしか売ってないものもあり、このへんのバランスも絶妙。

 

お金を稼ぎたいだけなら自分の家の周りでひたすら釣りや虫捕りをしていればいいのかなと思っていたら、魚も虫も一匹だけでは買い取ってくれず、他の季節や場所でしか取れない種類も用意しなければならないのが面倒。しかし、この面倒さがゲームに飽きさせないシステムとしてしっかりと機能しているのでストレスを感じさせない。
この手のゲームではよく中盤から様々な施設を拡張していくことで金策が楽になりすぎてしまい、急速に飽きを招いてしまうことがありますが、本作ではアイテムの総量と金策との均衡が取れていて、全てのイベントを終えた後でもほとんどお金が余りませんでした。
畑の作物の育つスピードがずっと一定だったり、他のゲームと比べると不親切に感じる部分が多いのですが、本作をプレイすると他のゲームが過保護に感じられるほど。ゲームからの命令が少ない分、何をしたらよいのかわからなくなることがありますが、それが逆に「これをこうすればよかったのか!」という発見の喜びに繋がる。

本作は最初からその拡張性の限界をある程度見せることにより、多くのスローライフ系作品にある「終わりが見えない」というイメージの払拭に成功しているように思います。
これはほぼ同時期に発売された『スピリットティー』(2023年11月)にも似た傾向が見られました。

 

本作では釣りや虫捕り、畑やペット育成の他、アイテムのクラフトや写真撮影などの様々な遊びが用意されていますが、中でも料理にかなり力が入っているのが良かったです。材料を捏ねたり握ったりするのもタッチパネルの特性を十二分に生かしていて懐かしくも温かい。中盤で裏山が解放されても目当ての素材が全然見つからないのですが、全体的な作業量と相対させるとマップの広さが本当に絶妙で、実際のサイズよりも広く感じられます。

 

本作では1ヵ月が2日で経過するようになっています。なので年末のイベントに参加する場合は12月の2日目に行かなければなりません。最初の年はこれに慣れなくてほとんどのイベントを見過ごしてしまいましたが、慣れてくると逆にイベントを準備するための作業量と必要経費に圧倒され、夏祭りの準備を半年前からすることになったり。なので、イベントを無事に終えた時の喜びはひとしおです。

 

本作は良い意味で日本的であり、インディらしさを感じさせる良作。出来ることが限定されているぶん、攻略などを見ずに手探りでプレイする楽しさがありました。30時間かけて村の復興は達成したものの、タヌキを一回しか見てないし撮影も出来てない!他にもまだまだ未知の魚や虫が残っているので、アップデートが来たらまた遊びたいと思います。

 

 

 

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魂売(Switch)

魂売
Taiga
2024年1月25日
Nintendo Switch


本作『魂売』は、Taigaさんの『通夜』(2023年)に続く2作目のホラーゲーム作品。価格は『通夜』よりも100円高い300円で提供されています。安い!

 

本作はここ数年のホラーゲームではトレンドといっていいウォーキングシミュレーター作品。ゲームは主人公の大学生である佐藤美咲を操作し、ネットカフェでアルバイトとして業務をこなしていく過程で怖いことが起きるという流れ。全体的にチラズアートの『閉店事件』(2022年)インスパイアといった感じ。
前作では生きた人間が一人も登場しませんでしたが、今作ではアクの強いキャラクターが3人登場。

 

店長の間島はいかにもパワハラしそうなクソ野郎で、当然スタッフからは嫌われていて「死ねばいいのに」と思っている者もいるという。

 

バイトリーダーの山崎は新人の主人公に優しく仕事のイロハを教えてくれる人物。ただ、チュートリアルキャラ過ぎて、セリフでそのまま「Aボタン」「Yボタン」などのメタ発言をしてしまうのが玉にきず。ちなみに裏で店長に対して「死ねばいいのに」と発言したのがコイツ。

 

謎のおじさん。全くよくわからない存在だが、たぶんストーカー。

 

さて、タイトルにある魂売(こんばい)ですが、バイト中にパソコン画面にあらわれた「あなたの魂を出品しますか?」という質問に「出品する」を選ぶと画面が真っ赤になることから、何かしらの契約を結ぶ行為だと思われます。
この、赤い画面になってから本作の難易度がぶち上るので要注意。

 

細かいクリア条件は不明ですが、おそらくこれまでのノウハウを生かして店の「食事提供」「掃除」「マンガの返却」「ゴミの片付け」を制限時間内に終わらせないとバッドエンド。画面の暗さは設定で変えられるものの、赤が強すぎて画面がよく見えない。特に困るのが食品の配置。上の写真を参考にしてもらうと少しは役に立つとは思いますが、注文はランダムなので作り置きが出来ないのが辛い。
前作と違い直前の日付でオートセーブされているのでチャレンジ自体は苦ではないのですが、その分難易度が上がっています。

 

この最終日だけで2時間近くプレイしましたが、結局クリアできず。
ストリーマーさんの配信でトゥルーエンドを拝見しましたが、魂売という言葉の意味はよく分かりませんでした。

 

感想
ヒトコワ系かと思って進めていたら理不尽巻き込まれ型にハマって意味不明エンド。これはこれで面白い。ホラーゲームでなければここまで変な体験は出来ないでしょう。何よりもコンスタントに低価格で配信することに価値があると思います。ただ、開発者自身がネタ的に消費されることをある程度想定しているのなら、難易度はもう少し下げてほしいところ。
次作があればもちろん買いますし、もう既に楽しみでもあります。

 


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