みやび通信

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Horizon Forbidden West(PS4)

Horizon Forbidden West
ゲリラゲームズ
2022年2月18日
PlayStation 5、PlayStation 4

 

本作『Horizon Forbidden West』は、ゲリラゲームズ開発によるオープンワールドゲーム。2017年に発売された『Horizon Zero Dawn』の正統な続編。

 

 

前作『Horizon Zero Dawn』はどうだったか

2017年に発売された一作目『Horizon Zero Dawn』は、未来のテクノロジー古代文明が融合したかのような独特の世界観が新鮮な作品だった。新規IPにもかかわらず売り上げは2000万本を記録する大成功を収めたのも記憶に新しい。
『Horizon Zero Dawn』における新しいチャレンジは、その謎に満ちたオリジナルな世界が、主人公アーロイの出生の秘密を追うことで同時に解き明かされていくという「主人公と世界の一体化」にある。
オープンワールド作品にとって、主人公という存在は異端の者であることが多い。特にゲームプレイ中に殺人が含まれるタイプの作品では、変人や狂人が主役であることも珍しくはない。

オープンワールドのリアリティは、その世界の自律性に支えられているがゆえ、主人公一人だけにかまってはいられないのだ。これは、主人公を世界の救世主とし、登場するモブキャラ全員が協力者となる一本道タイプのゲームとは対極にあるといってよい。
Horizonの主人公であるアーロイもまた、異端者として世界に放り出される。しかし物語の中盤、アーロイの存在がこの世界に住む他の人間たちとは決定的に異なるという事が明かされる。他のオープンワールドの主人公たちが不当な差別を受けながらも世界を構成する一員として描かれているのに対し、アーロイは世界の外側をただ一人知る者として現れる。

 

かつて人類は高度な文明を築いたが、自動兵器の異常により絶滅。天才科学者であるエリザベト・ソベックは人類を復活させる計画「プロジェクト:ゼロ・ドーン」を立案し、それによって人類は蘇った。しかしゼロ・ドーンのAIの一部が暴走し人類の文明は足止めを喰らい、再び絶滅の危機を迎える。その異常事態発生時に誕生したのがアーロイであり、彼女は自分がエリザベト・ソベックのクローンだという事実を知る。そしてこの世界を救う為、暴走するAI「ハデス」の破壊を誓う。

 

序盤こそ異端者として世界を放浪するアーロイだが、中盤以降は完全に救世主として大きなストーリーの流れに乗る。世界の謎は全て解き明かされ、高度な文明時代の記憶を宿したアーロイの目には、発展が頓挫したこの世界は文字通りの「箱庭」に見えていたことだろう。オープンワールドの自由な探索は失われた文明の発見、そして理解に通じる。アーロイが世界を見る際の外側からの視点は、ゲームの外側にいるプレイヤーの視点と重なり、ゲーム中盤あたりから物語は直線的に走り出す。近未来SFやハイファンタジーの変化球かと思いきや、安易なメタフィクションにも逃げず、既存のオープンワールドの中で王道RPG的な展開を繰り広げた『Horizon Zero Dawn』は、まごうことなき傑作である。終盤になると映画的な演出はより効果を発揮し、後日談を描いた拡張コンテンツ「Horizon Zero Dawn:凍てついた大地」でそれは極まった。

 

続編の難しさ

さてここからは本作『Horizon Forbidden West』について書いていくが、先に述べた通り前作は「世界の謎」と「主人公の出生の謎」の二本柱を用いてオープンワールドの多面性を段階的に見せていった野心作だった。しかしそれらはもう全て種明かしが済んでいる。
本作ではまたもや世界を救う為、人々が恐れる未知の機械獣や民族が支配する「禁じられた西部」を旅することとなる。ストーリーの蛇足感もさることながら、アーロイ自身が成熟し、自分のやるべきことをはっきりと自覚しているため成長要素もない。前作の複雑な設定を思い出させるためなのか、チュートリアルもやたらと長い。そしてこの、序盤で感じたネガティブな不安要素は残念ながらすべて的中する。

 

本作を単体のゲーム作品として捉えた場合、ゲリラゲームズは『Horizon Zero Dawn』の素晴らしい世界を捨てきれなかった、と見るのが妥当だろう。何せ本作は前作からたったの6ヶ月後の世界が舞台であり、次回作を匂わせる形でエンディングを迎えることから、本作が前作と次回作の繋ぎのような位置にあることは容易に想像できる。では本作が、よくある方向性を見失った手抜きの続編なのかと言えば、そんなことは全くない。
むしろ前作では作り込めなかったオープンワールド部分の徹底的な拡張を一切の妥協なくやりきった大作となっていた。チュートリアル後に放り出される「禁じられた西部」は最初からほぼ全ての場所にアクセス可能で、本筋のストーリーを無視して探索しても、それぞれのエリアに異なるコミュニティと個別のストーリークエストが多数用意されている。ここまで振り切ったものを用意されれば、オープンワールド好きとしては遊び尽くすしかない。

 

豊富なサブクエス

それぞれのエリアに住むコミュニティは多様性に富んでいて、文化の特徴が建築やファッション、宗教などに表れる。その土地や、クエストを依頼してくる人物を象徴するかのような報酬が貰えるのも良い。本作では武器や防具の種類もやたらと多いが、素材による強化が出来るので気に入ったものを使い込んでストーリーを攻略するのも楽しい。

 

映像のクオリティは高く、どの人物の表情も生き生きと描かれる。特筆すべきはやはり主人公のアーロイだが、英雄としての自信が表情に出ていて頼もしく感じる。そのリアリティは現時点で『The Last of Us Part II』(2020年)と双璧を成し、これが実在していない人物だとはにわかには信じがたいほどだ。

 

マップ上にはサブクエスト以外にも無数の「?」が点在。敵対するコミュニティの拠点に乗り込み秘密を探ることで新たなアイテムに関するヒントなどを得られる。前作でおなじみの「トールネック」は後半に飛行型の機械獣に乗れるまで攻略できないのが残念。100時間ほどかけて全てまわってみたが、各地に複数ある「機械炉」という無人のダンジョンの作り込みが緻密で、かなり楽しめた。中盤以降、潜水マスク入手により水の中を無限に探索できるようになるとまた別の世界が開ける。本作では野生の動物も多く生息しており、狩りによって得られる素材で装備を強化できるので、機械獣との激しい戦いの合間の丁度いい気晴らしになっている。

 

戦闘

前作と同様、選択した難易度により有効な戦略は大きく異なる。武器や罠の種類、それらに特化したスキルも豊富。オーバーライドした機械獣の操作感とステルス要素に若干不満点はあるものの、自分なりの戦略を見つける楽しさは健在。鬱蒼とした森の中で光学迷彩のストーカーに襲われるプレデター的なシチュエーションなど、地形を生かした粋な演出があるのも嬉しい。

 

オープンワールドとしての可能性
他のオープンワールドゲームにあったアレもコレもがHorizonの世界で出来るという感動はあるものの、そこから逸脱する要素があるかといえば厳しい。どのアクションもそこそこ作り込まれてはいるものの、特化したものがないのでインパクトに欠ける。しかし実際にプレイしてみて驚いたのは、あらゆる要素を取り込み、ビジュアルのクオリティを徹底的に上げることで全体的な面白さが底上げされているという事。「この世界にもっといたい」と思わせられればゲームとしては成功だ。実際、崖の上まで苦労して登っても何もない事が多いが、そこに広がる美しい景色に圧倒されて佇んでしまうという事が何度もあったし、それに伴うフォトモードの充実も満足度を高めてくれる。しかし、こうした要素も他と比べて圧倒的に突出しているわけではない。とにかく、どこかで見たようなものばかりで、それらを複合し、クオリティの向上を図ることでHorizonという個性を打ち出してはいるものの、やはり全体的な印象としては弱い。
前作のあらゆる要素を引っ張っていたストーリーの謎が抜け落ちたことで、前作のまま残さざるを得なかった要素が足を引っ張っているのではないか。

 

・ティルダ役を演じるキャリー=アン・モス(『マトリックス』トリニティー役など)

 

例えば、この世界に暮らす住人たちが、アーロイを含め基本的に皆善人なのも気になる。悪役がほとんどAIなので、プレイ中にこちらの感情に響くことがない。前作では世界の謎が解き明かされることで好奇心を刺激されたが、よくよく思い返すと印象に残るオリジナルキャラクターは少ない。これは、ラスボスを人工知能に設定してしまったことで、人間側をアーロイの協力者としてしか描けなくなってしまったことが原因ではないか。

 

ただ、こうした世界観の中に突如「ロサンゼルス」という、現実世界とつながる都市が廃墟として立ち現れたときは胸が高鳴ったし、終盤行けるようになるマップにも驚きがあった。まだまだ大ネタを隠したままあえて終わらせた感はある。それを踏まえると、次回作では本作で感じた不満点を全てひっくり返すストーリーの仕掛けがあると考えるのが妥当だろう。

 

感想

前作『Horizon Zero Dawn』は、不運にも発売日が『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』と被ってしまったが、売り上げは好調でゲームの内容的にも差別化が図れていた。本作『Horizon Forbidden West』もまた、発売の一週間後に『ELDEN RING』という、またしても日本産の大作オープンワールドと被ってしまい、日本のユーザーには大きなインパクトを与えられなかった。何かと比べられてばかりで可哀そうではあるが、今回ばかりは決定的な特徴を説明するのが難しい作品ではあった。確かにオープンワールドというジャンルの中では完成度の高い傑作に仕上がってはいるが、多くのHorizonファンが続編に求めたのは果たしてオープンワールドの充実だったのだろうか。仮にHorizonが全三部作構成だとしたら本作はその役割を十分果たしていると言えるが、単に『Horizon Zero Dawn』の続編として見ると、贅沢で冗長な後日談でしかないだろう。

 

 

©2022 Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Guerrilla. Horizon Forbidden West is a registered trademark or trademark of Sony Interactive Entertainment LLC.