みやび通信

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マフィア コンプリート・エディション(PS4)

マフィア コンプリート・エディション
Hangar 13
2020年9月25日
PlayStation 4Xbox OneMicrosoft Windows


本作『マフィア コンプリート・エディション』は、2002年にPCゲームとして発売された『Mafia: The City of Lost Heaven』のリメイク版。原作のコンシューマー版はPlayStation®2で2004年に発売されたが日本では未発売。評価の高かったマフィアシリーズの一作目は、しかし日本ではプレイ環境の敷居が高いPCゲーという印象が強かったが、この度ついにPS4で気軽にプレイできるようになったのは嬉しい限り。
シリーズの過去3作の世界売上は1,890万本。
原作の開発はチェコ共和国のゲーム製作会社イリュージョン・ソフトワークスだが、リメイク版は『マフィアIII』(2016年)を手掛けたHanger 13が担当。ちなみにHanger 13には元イリュージョン・ソフトワークスのスタッフも在籍している。

 

重厚なストーリー

物語は主人公であるトミー・アンジェロの回想により過去から現在までを振り返る形で語られる。聞き手は刑事ノーマン。マフィアシリーズではお馴染みの構成だ。
1930年代のアメリカ、イリノイ州。シカゴをモデルとする架空の都市「ロスト・ヘヴン」を舞台とし、タクシー運転手として働く若き日のトミーの視点からゲームは開始される。

 

とある日の仕事中にマフィアのいざこざに巻き込まれ、ロスト・ヘヴンで大きな影響力を持つ「サリエリ・ファミリー」を紹介されるトミー。その後も仕事を受け続ける中で、次第にマフィアの世界にどっぷりと浸かっていくことになる。
敵対する組織との抗争、警察や政治家との癒着、暗殺などの仕事をこなすうちにドンであるサリエリの信用を得てファミリーの一員となる。そうした中でトミーの人格が徐々に変化していく様が段階的に描かれていく。
禁酒法時代のアメリカで酒を密売することで利益を得ているサリエリ・ファミリーだが、組織内の何者かが薬物の取引をしていることが発覚し、後半では組織の解体ともいうべき事件に発展。

 

ファミリーとは名ばかりで仲間を平気で裏切る非情さや、妻に血の付いたシャツを洗わせるなど、マフィアのネガティブな面を強調した描写は映画『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』を思わせる。

 

マフィアという組織を描く本作において、特筆すべきはその個性豊かな登場人物たちだろう。
トミーとの関係性を築いていく中でギャングたちそれぞれの憎めない面やだらしない面、母想いな一面など、それらが序列や疑心暗鬼、出世欲などにより捻じれていくドラマには悲哀を感じずにはいられない。2002年の時点でこれほど重厚なストーリーをゲームで実現できていたことに驚く。

 

オープンワールド勃興期

本作はアメリカの都市ロスト・ヘヴンをオープンフィールドによって緻密に構成してはいるが、プレイヤーがインタラクトできる部分はほとんどなく、オープンワールドというよりは映画の豪華セットといった趣きとなっている。原作が発売された2002年は前作からより自由度を増した『グランド・セフト・オートバイスシティ』が発売された年でもある。前年に発売された『グランド・セフト・オートIII(GTAⅢ)』により、広大なマップをシームレスに移動できるオープンワールドというジャンルが広く認知され、それを模倣した作品が雨後の筍のように沸いた。それらのほとんどはGTAにはとても及ばないクオリティのものが多く「GTAクローン」という蔑称で呼ばれることとなる。
当時のオープンワールドと言えばGTAに倣い、都市を舞台とし、街中の車を盗めるものがほとんどであった。

 

Mafia: The City of Lost Heaven』にももちろんそうした条件が満たされてはいるのだが、その他の要素を極力削ぎ落してストーリーに重きを置いたのは英断と言えるだろう。同年の12月に発売された『TheGetaway』も同様の方向性を志向していることから、GTAⅢ発売の翌年には既にこうした模索が行われ、一定の成功を収めていたことが窺える。後年、ロックスター・ゲームスから発売された『グランド・セフト・オートIV』(2008年)や『L.A.ノワール』(2011年)が、素晴らしいストーリーを持つ作品だったにもかかわらず各方面から批判を浴びたことを考えると、2006年の『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』あたりからオープンワールドの定義が都市や窃盗というGTA要素から離れ、マップの広さと自由度に傾いていったのがわかる。

 

2023年現在の観点からすると本作はオープンワールドとは言えないが、発売当時の2002年のオープンワールドの条件は満たしているといえるだろう。これだけ緻密に都市を形成しながら、重厚な物語を体験する際、プレイヤーに「広さ」というリアリティを演出するためだけの役割しか与えられていないというのは、なんと贅沢なことか。ゲームプレイ自体もごく一般的なTPSの枠を越えていないにもかかわらず、多彩なロケーションやストーリーによって新鮮さが常に保たれている。

本作をリメイクするにあたり、余計な手を入れず、人物やマップの描写力を向上することだけにこだわったのは正解だ。本作では主人公が所持する現金や武器もストーリーに合わせて用意されるため、プレイヤーの操作がトミーの人格やストーリーに影響を与えることはない。しかしプレイヤーは、いかにもゲーム的な手垢のついた自由度と引き換えに極上のストーリー体験を手にするだろう。それほどまでに、本作が目指した方向性は、明確で、太い。

 


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