みやび通信

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ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤(Switch)

ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤
スクウェア・エニックス
2022年12月9日
Nintendo Switch

 

本作『ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤』(以下DQT)は、家庭用ゲーム機におけるドラクエ派生作品の完全新作。プロデューサーを務めたのはエニックス時代からドラクエを支えてきた犬塚太一氏。犬塚氏は主にジョーカー以降のモンスターズを担当しており、本作もどこか『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3』(2016年)の手触りを感じさせる作品となっています。

 

本作のゲームシステムは「お宝さがし」を軸として構成されています。「お宝さがし」は『ドラクエX オンライン』(以下DQX)における「採掘ギルド」にあたるもので、ヒント写真を参考に宝を掘り当てるというもの。DQXとの違いは、お宝写真をギルドで受け取るのでなく、仲間モンスターの力を借りてビジョンを見るという形に変更がなされていること。仲間モンスターはスカウトで最大3匹まで連れ歩くことができ、種類によってライドや滑空など様々な能力を発揮します。ここら辺も『ジョーカー3』や『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(DQXI)に近い感覚です。

 

主人公はDQXIでおなじみの「カミュ」と「マヤ」。チュートリアルを終えると、寂れてしまった駅を拠点として宝探しの旅に出発。駅から電車に乗ると、砂漠や火山など、特徴的な5つのマップを自由に冒険できます。それぞれのマップには集落や使われていない駅などがあり、クエストを攻略することで様々な恩恵を受けられます。マップはオープンワールドとは言いがたいものの、ビルダーズシリーズに近い広さや高低差があり、「お宝さがし」の舞台としては申し分ない作り込み。

 

「お宝さがし」では近付くだけで場所がわかる銀色の宝箱と、モンスタービジョンによって発見できる金色の宝箱があり、当然金色の方が高価なものになっています。宝箱は連れているモンスターに持たせるので、5~6個もとれば拠点で鑑定するため駅まで戻らなければなりません。しかし、ファストトラベルに相当するアイテム「キメラのつばさ」は非売品。クエストで手に入ることもありますが、貴重品なので中盤までは広いマップを最初の駅に向かって延々と帰るしかないのがかなりのストレス。課金前提のゲームを無料で遊んでいるような気持ちになります。宝をたくさん抱えていると他の盗賊団に宝を狙われることがあるので、無事に宝を拠点まで持ち帰る緊張感を演出しているのだとは思いますが、基本的に「お宝さがし」しかしないゲームなので、慣れてくるといい加減ウンザリします。

 

拠点となる寂れた駅には崩れた施設などがあり、お金が貯まるとここにたくさんお店が出来るのかなと期待していたのですが、ただのコピペ金貨が積まれていくだけでした。お店は3種類あるのですが、全部同じ受付からアクセスするという味気のないもの。

 

持ち帰って鑑定した宝は『ドラクエⅤ』のリメイク作品にあった「名産品」のように、飾って眺めることができます。宝は全部ドラクエにちなんだもので、DQXの最新バージョンやソシャゲのものまで含まれます。過去作のキャラクター像や装備品・アイテムなどはデザインが一新されており、全体的にかなりソシャゲ寄りな印象。古参ファンに向けて懐かしさを喚起させたいのなら、初期作に関してはもっとオリジナルデザインが欲しかったところ。とはいえ、宝の種類は集めきれないほど多いので楽しいです。あくまでも「ガチャ」的な楽しさですが。

 

ストーリーはクエスト受注方式で進められます。他にも、サブクエストや何から何まで全部クエスト受注方式となっており、日課エストなるものまであります。ストーリーは他のサブクエスト並に薄く、適当にクエストをこなしていたつもりが、いつの間にか物語が佳境に入っていたりするので驚かされます。序盤にたくさんのオリジナルキャラが紹介されますが、全員ことごとく単なるクエスト案内人の役割しか与えられておらず、それぞれの魅力が全く伝わってきませんでした。

 

冒険の合間合間で拠点の地下に「竜王の迷宮」というダンジョンが出現し、そこをクリアするたびに新しいストーリークエストを受けられるのですが、ダンジョンが全部円形の単純なものになっていて、モンスターも似たり寄ったりのものしかいないので進んでいる感じが全くしません。ストーリーの他に「宝の地図」というアイテムを手に入れることで行けるダンジョンもあるのですが、これも全部円形のおなじものになっていてストーリーとの差別化が全く図れていない。

 

モンスターの種類は全17種で、あとは色違い。
あるボス戦では『スーパーマリオ64』のクッパ戦などにみられる「突進してくる敵を障害物にぶつけて気絶したところを攻撃して倒す」というシステムが採用されていますが、タゲが攻撃してくるものに向かうので、敵のタゲが近くにいる味方モンスターばかりに集中してしまい、ゲームとして破綻しています。これはバグでも何でもない初歩的な設計ミスなので、テストプレイをしていれば絶対に起こらない現象。

 

モンスターを仲間にする「スカウト」は成功すると拠点で待機となり、指定された素材を与えると仲間になるという仕組み。この素材集めがなかなかの曲者で、ほとんどがノーヒント。クエストでは場所を指定してくれたりもするのですが、モンスターが要求する素材に関しては手掛かりなしで探さなくてはなりません。しかも強いモンスターだと素材の他に料理も要求してくるのですが、料理をするためのレシピは各マップに隠されていて、それもノーヒント。あんなにたくさんのサブクエストがあるのに「○○(場所)に○○(料理)のレシピを取ってこい」みたいなものが一個もないのはどういうことなのでしょうか。

 

モンスター自体の能力もなかなかポンコツで、やっとキラーパンサーを仲間にして宝探しの効率が上がるかと思えば、スタミナはすぐに切れるし、ジャンプ力も人間以下。

まあでも、無課金だからこんなもんか…

 

 

いや、最初に8000円払ったよね!?

 

 

 

主人公についてですが、チュートリアルを終えると「カミュ」「マヤ」から好きなほうを選んで操作することができます。選ばなかったキャラは拠点で留守番することになりますが、仲間モンスターが増えると自動で探索に行ってくれるようになります。探索は場所によってかかる時間が異なり、リアル時間で15~45分程度かかるのですが、ゲームをスリープ状態にしていると時間が進まない仕様になっているので注意が必要。

 

戦闘ではナイフによる攻撃の他に「スリングショット」というパチンコから弾丸を発射することで、敵を攻撃したり味方モンスターの手助けなどができます。弾丸は拠点にある店で買うか、素材を消費しての自作で入手。回復の弾丸やバフデバフ効果があるものまで、これまでのドラクエでいう呪文の役割ですね。スリングショットは右トリガーで構えて右スティックで狙って右ボタンで切り替えて…みたいなレトロチカシステムを採用しており素人にはやや難しく思えるかもしれませんが、Switchユーザーならばもれなく全員『クッキングシミュレーター』経験者なので問題ありません。

あと、主人公と仲間モンスターが使える必殺技はとても強力で、演出も凝ったものになっていて良かったです。


感想

やっと面白くなってきたと思ったところでストーリーが終わってしまったので、やはりストーリーの薄さがいちばんの不満点でした。
ビルダーズからビルド要素を、モンスターズから配合要素を抜き、そこにDQXでもたいして人気のない「お宝さがし」を入れ、他を全てクエスト方式で処理するというのはいくらなんでも手を抜きすぎではないでしょうか。本作は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)からの影響も随所に見られますが、ゼルダシリーズで最も評価できるポイントのひとつである「プレイヤーが試行錯誤することで成長を実感できる」装置がまるで見当たらない。アドベンチャーゲームの基本である「あらかじめロックされているものをプレイヤーに解除させていく」という仕掛けを全てクエスト方式でまかなっているため、ゲームの骨格がむき出しの状態になり、作業感だけが残ることに。これまでのスクエニ作品では、こうした仕掛けをムービーで補う傾向が強く、ある種のハッタリ感を演出できていたわけですが、本作にはそれすらない。あと、ゲーム全体に漂うソシャゲ感もすごく気になります。
制作発表から4年、最新のナンバリングタイトルであるDQXIのスピンオフ作品として、本作はあまりにも肩透かしなものだったと言わざるを得ません。

 

 

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