龍が如く 極2
株式会社セガ
2017年12月7日
PlayStation 4、 Xbox One、 Microsoft Windows
2019年2月21日に3990円の新価格版として発売された『龍が如く 極2』のストーリー(クランクリエイター、水商売アイランド、全サブクエスト、真島編)クリア後の感想です。
※本作ではスクリーンショットが撮れない仕様のため、ゲーム内の携帯で撮影した写真だけを載せています。
※ストーリーのネタバレなし
前作に当たる『龍が如く 極』(2016年)はPS3とPS4の縦マルチかつ、店舗予約で買うと5000円程度の低価格販売だったことに比べ、本作『龍が如く 極2』は『龍が如く6 命の詩。』(2016年)から採用されたドラゴンエンジンによりPS4のみ(発売当初)での販売に加え、価格も税込みで8000円を超えていました。
前作と似たようなリメイク内容にも関わらず強気なお値段と、『龍が如く6 命の詩。』の評価の低さに影響されてか初週売り上げはシリーズ最低の13万本。その後の売り上げも伸び悩んだのか、中古価格も高値で安定していました。
個人的には龍が如くスタジオ唯一の駄作であると思っている『北斗が如く』(2018年)が同時期に発表されていることから、『龍が如く 極2』の発売時期は龍が如くシリーズに対する期待値が最も低かった時期と重なります。
実際にプレイしてみると、それらがただの誤解であったと思い知らされました。
『龍が如く 極2』は間違いなくシリーズ最高傑作の部類に入る意欲作であると同時に、過去作と最新作『龍が如く7 光と闇の行方』(2020年)を繋ぐ重要作でもあり、まだ未プレイのシリーズファンに強くお薦めしたいゲームです!
ツカミは失敗
正直、ゲームを開始してから数時間は全く面白いと思えませんでした。
画面は暗いし、モブやテクスチャなどの粗ばかり見えて、やはりナンバリングに比べて劣るな、と。
主観視点が加わりリアルな街を散策する喜びもつかの間、✖ボタンがダッシュという仕様が操作の煩わしさと、コインロッカーのカギを拾う動作との相性の悪さを引き起こしてイライラ要因に。
それに加えてスクリーンショットも禁じられているのだから、原作ファンからすれば知っているストーリーを追いながらゲーム的に良い部分を見いだせないままチュートリアルを延々とこなすのが本当にダルい。
本作の悪い部分は全てこの序盤のツカミの失敗に集約されています。
そこを越えた3章あたりからはもうずっと面白いのに、序盤でプレイヤーをワクワクさせる要素が少なすぎて粗が悪目立ちしています。
2006-2017
最初はどぎつく感じられた夜の神室町も路地裏や昼の街を通過して目が慣れてくると凄まじくリアルに見えてきます。これぞ職人芸。
原作である『龍が如く2』が2006年当時の新宿を再現しているのに対して、今作ではそれをそのままなぞるのではなく、2006年の設定の中で2017年の現在性をギリギリまで生かそうという試みがなされています。それが顕著に表れているのが膨大なサブクエストで、当時から存在していたBL等のネタを現代の切り口で描くなど、間口が広く誰でも感覚的に楽しめるものになっています。
ガラケーなのにスマホっぽい機能だけを特徴付たりするなど、ゲーム的な切り取り方が相変わらず巧く、現代的なアップデートが隅々まで行き届いているという印象を受けました。
多彩な寄り道要素
各プレイスポットはもちろん、「クランクリエイター」や「水商売アイランド」など、近年のシリーズで好評だったものをバージョンアップして採用。
「クランクリエイター」は『龍が如く6 命の詩。』のものと比べてかなり遊びやすくなっていました。「水商売アイランド」と同様に、サブクエストで助けた人たちが仲間になるのが楽しく、「水商売アイランド」で稼いだお金を「クランクリエイター」に投資するというわかりやすいレールが敷かれており、全てが連動しながら一番難易度の高い「クランクリエイター」をてっぺんに持ってくるあたり、これまでのシリーズで多く見られた「わかってない感」が払拭されていて良かったです。
「水商売アイランド」では6人のキャストに個別のストーリーが用意され、最終的には『龍が如く0 誓いの場所』(2015年)を知っているファンには嬉しい展開も。
「クランクリエイター」では長州力や蝶野正洋などの有名レスラーが敵役として立ちはだかり、勝つと仲間に。話を進めて行くと『龍が如く6 命の詩。』内のスナックイベントと同様の会食イベントが発生し、レスラーたちの無駄話(主に長州の活舌イジリ)にかなりの長尺が取られていて謎の贅沢感に圧倒されます。
メインシナリオの強さ
個人的には馳星周監修から外れたナンバリング3~6期は派生作品含めメインシナリオがサブ要素に完全に喰われてると感じていました。複雑化する相関図との整合性を取ることと多様化するサブ要素との喰い合わせは非常に悪く、物語を完全に把握できないまま離脱してしまったファンが多いことは売り上げの推移を見ても明らか。
ストーリーが面白くないわけではなかったのですが、ゲーム全体を引っ張っていく軸としては弱かった。
本作においても、舞台に大阪が加わることにより組織間の軋轢を個性的なキャラクター達の群像劇に編み込み始める時期で、説明的なセリフが多く入るとドラマが陳腐化し、多くのプレイヤーを混乱させてしまう危険性を孕んでいました。
ただ『龍が如く 極2』が素晴らしいのは、事件や相関図のディテールを最小限に抑え、主人公桐生一馬の内面と個々のキャラクター達を結び付けることによって物語をシンプルに見せることに成功していることです。
プレイヤーは主人公である桐生の視点で世界を把握し、桐生の内面の葛藤が他のキャラクターと紐付けされ、それによって明確になった関係性により各々の行動原理を理解し、複雑な物語を桐生という一本の太い軸によって辿ることが出来ます。
特に桐生と真逆の刑事という立場にある狭山薫との関係性を濃密に描くことにより枝分かれした物語が一本に束ねられ、ラストのカタルシスを生じさせることに成功しています。
この手法は『龍が如く7 光と闇の行方』にも受け継がれており、単純にゲームとしての「シナリオの質の高さ」と直結しています。
本作の桐生一馬は他人を映す鏡の役割と同時に、彼が何を大切にし、何故他人を放って置けないかなどの行動原理がかなり明確に示されていて、桐生一馬主演作品の中でも最重要であり最高傑作の部類に入ると言えるでしょう
本作中では澤村遥の出番は少なく、「くんくんくん、事件のニオイがするよ!」
「私、犯人わかっちゃたかも!」などと探偵ごっこに興じるよくわからないキャラになっていますが、なんか、丁度いいです。
真島編
本編のストーリーをある程度進めて行くと解放される「真島編」。
短いながら、このシナリオもシンプルかつ過去作との繋がりと本編との関わりが明確に示されていて秀逸。
本編の桐生の育成要素も単純なスキル開放型で非常にわかりやすいのですが、真島編ではそれすら省かれていて、しかも笑っちゃうほど強い!
サブクエストこそないものの、真島を操作して神室町や蒼天堀を闊歩するのは単純に楽しい。
『龍が如く0 誓いの場所』の18年後、真島吾郎とマキムラマコトとの邂逅の物語としても納得の出来。
まとめ
シンプルでありながら奥深さも感じさせ、桐生一馬という主人公を掘り下げた分厚いメインシナリオが力強く物語を引っ張り、過去作や最新作にもつながる豊富なサブシナリオが脇をがっちりと固める。ボリューム、密度共に申し分ない出来。
シリーズのコアなファン、前作『龍が如く 極』から入った新規ファン共に楽しめる配慮は絶妙で、2006年当時の舞台と現代的な感覚が自然に同居している世界観は唯一無二。
わずか10か月で制作された事による多少の粗が序盤に目立ってしまったり、その他諸々の要因が重なって多くのファンに十分届けられていないことがもどかしい。
『龍が如く0 誓いの場所』『龍が如く7 光と闇の行方』と並べても遜色ない傑作。
あと個人的に買わなかった理由として、本作に出演している木村祐一が嫌いだったという理由があるのですが、声優として普通に巧かったです。
やっぱり、シリーズに対する信頼度は大切。
今は、『北斗が如く』を除けば、龍が如くスタジオの作品は「最新作が最高傑作」だと言える数少ない貴重なシリーズだと思っています。
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