みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

My Child Lebensborn(Switch)

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My Child Lebensborn
Sarepta studio
2021年6月3日
Android.iOS.Steam.PlayStation4.Xbox One.Nintendo Switch

 

『My Child Lebensborn』はスマホアプリとして2018年に配信されたノルウェーのインディゲームで、2021年にCS版が配信されました。

まず最初にネガティブなことを書かせてもらうと、現在2021年6月時点でSwitch版をプレイすることはお勧めできません。

操作性の悪さ(主にレスポンス)に加え、進行不能バグにも遭遇しました。オートセーブのため、進行不能バグを踏むと二度と再開できなくなります。

私はSwitch版配信前にiOS版をクリアしているので、本作がいかに素晴らしいゲームなのかを知っています。なので、Switch版で遊ぶ全ての人たちにこのゲームの良さを知ってほしく、一日も早い改善を望みます。

 

養子育成ゲーム

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第二次世界大戦終結してから8年後のノルウェー

プレイヤーはナチスドイツがノルウェーに建てた施設であるレーベンスボルンから引き取った子供を養子として迎え入れ、育てることになります。

養子となる子供は男女選べますが、基本的なゲームのシナリオはどちらを選んでも変わりません。

 

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左に表示されたアイコンの真ん中三つのメーターが子供の状態を示しており、「空腹度」「清潔度」「楽しさ」が下がらないように、一日の限られた行動の中で管理して育成します。

 

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マップ上には自分の働く職場、子供の通う学校、食料品などを売っている雑貨屋の他、湖や森などの遊び場があり、釣竿を作成することによって湖で魚を釣ったり、森でキノコを採って食材を手に入れることが出来ます。

子供が学校に通っている間に働き、暗くなる前に食料品を買っておかないと直ぐに底をついてしまうので注意。子供が何回か不満を漏らした状態で放置しているとゲームオーバーになってしまいます。

 

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子供とのコミュニケーションとして選択肢が提示されます。選択により子供の好感度に影響を与え、あなたに心を閉ざしてしまうことも。

給料が安いからといって残業ばかりして子供を放置していると著しくパラメーターが下がってしまいます。しかし食料は高く、プレゼント用の特別な商品は期間限定なため悩ましいところです。

育成シミュレーションとしてのゲームバランスは絶妙で、ゲームを進めて行く過程の葛藤が対象の子供への感情移入と分かち難く結びつき、理不尽に感じる部分はそのままテキストに示される歴史の理解につながるという意味では、一切の無駄がないゲームと言えるでしょう。

 

レーベンスボルン

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本作は「同じくレーベンスボルン問題を扱った映画を制作していたチームと共同で取材を進めていった」(4Gamer.net 2019/08/26)とある通り、史実に基づき大量の資料と証言から成るドキュメンタリーゲームです。

第二次大戦中にナチスユダヤ人を迫害し大量殺戮を行っていたことは有名な話ですが、それと並行してアーリア人増殖のために作った施設の名前がレーベンスボルン。

ドイツ国内のレーベンスボルンは母子家庭などで育てるのが困難な子供を引き取り養子仲介などを行う施設で、戦時下の貧困から来る堕胎を抑止し、子供を産む女性を支援するためのものでした。こう書くと聞こえは良いですが、劣等とみなした人種を殺戮し、優秀な人種を増やすという、政治的に行われた人口管理という許されない行為です。

こうした政策はドイツ国内だけにとどまらず、北方の占領下でも行われ、「瞳が青い」「髪の色がブロンド」など、アーリア人としての条件を満たした子供は拉致され、ノルウェーでは現地の女性とドイツ兵との性交渉を積極的に奨励し、混血児を収容するレーベンスボルンがいくつも作られました。

戦後、ドイツに対する憎しみはノルウェー国内の、ドイツ兵と関係を持った女性や、その間に生まれた子供たちに向けられることとなります。女性は逮捕され、子供は「知的障害の可能性が高い」など嘘の情報が拡散され、ノルウェー政府主導のネガティブキャンペーンが展開されます。

約12000人いたとされる混血児への差別がいかに過酷であったかは本作をプレイすることで体験できます。ゲーム内にあるテキストを読み込むことで理解が深まると同時に、出口の見えない絶望感に眩暈を覚えるでしょう。

このゲームで提示される問題は多岐にわたり、「いじめ」「人種差別」「女性差別」その他諸々。そして現在世界中でこれらの問題が何一つ解消していないどころか支持される状況まで生まれています。

本作の価値は正にそこにあり、我々日本人から見ればはるか遠くのあまり馴染みのない小国の1世紀近く前の子供の苦しみがダイレクトに伝わってくる、このリアリティこそが本作の「ドキュメンタリーゲーム」たる所以です。

 

感想

フィクションにおけるディストピアを史実に置き換えてエンタメ化する方法は、最近では白色テロを扱った台湾のホラーゲーム『返校』が記憶に新しいですが、本作『My Child Lebensborn』では育成シミュレーションという、ある意味ゲーム性の高い閉じたシステムを採用することにより、過剰な演出が抑えられ、作品の持つ本質的なメッセージをダイレクトに伝えることに成功しています。これは本当に、快挙と言えるでしょう。

ゲームの持つ没入感と対象となる子供への共感、システムやシナリオの理不尽さと歴史的背景との結びつきが完璧で、インタラクトの一つ一つに意味があると思わせてくれる。

 

今回はSwitch版のスクリーンショットを使って感想を書かせてもらいましたが、スマホ版のほうがより感度の高い体験を与えてくれるのでお勧めです。

 

 

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