みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

FINAL FANTASY VII REMAKE(PS4)

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FINAL FANTASY VII REMAKE
スクウェア・エニックス
2020年4月10日
PlayStation 4

 

FINAL FANTASY VII REMAKE』ストーリー・全サブクエストクリア後の感想です。ネタバレ全開なので気を付けて下さい。

 

FF7という作品の意義

原作である『FF7』は、ストーリーやキャラクターなどの一側面だけでは語れないほど90年代のゲーム史において様々な役割・存在意義を持った作品でした。

ゲームの販売戦略や次世代機における方向性に大きな影響を与えたのはもちろん、その内容においても一つの時代の空気感がパッケージングされているといってよいでしょう。

90年代における一つの潮流としてあった「自分探し」をテーマとする作品群の多くが内面を志向していたのに対して、主人公クラウドが仲間との繋がりや死を通して「自分の現実を生きる」という選択をしたことは象徴的で、ファイナルファンタジーという作品が97年という時代を引き受けていくのだという気概が感じられました。

リメイクの意味は「作り直す」ことですが、その作品が同時代的であればあるほど現在における価値観や視点とのズレが出てしまい、それを補正する役割は送り手も受け手も請け負わなくてはなりません。

例えば、バレットは自分の村の魔晄炉誘致賛成派のリーダー的存在だったわけですが、結果的に魔晄炉は爆発し、村は壊滅的な状態になってしまう。

当時このエピソードを完全にフィクションと捉えることができたとして、2011年の福島原発事故を経験した後(※1)では受け手の感覚がまるで違ってきてしまうわけです。

現実の特定の時代を舞台にした作品であれば、その時代の価値観で再現できますが、『FF7』のような完全に架空の世界が舞台となると、時代や価値観のアップデートがなされてなければ技術的な新しさと価値観の古さにギャップが生まれてしまうわけで、今回のリメイクではそういった違いがどう補正されているかも見所のひとつではないでしょうか。

 

※1.北瀬佳範氏へのインタビューによれば「(リメイクの)構想は2012年から」「(2020年時点で)現在の世相を反映した世界」とのこと。

 

 

クラウドがかわいい!

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原作のクラウドは自分の殻に閉じこもり、自分がセフィロスのコピーだという事実を受け入れられず精神崩壊してからの再構築というプロセスで描かれています。

なのでアバランチのメンバーともそれほど仲良くない状態で死に別れ(たように描かれている)たことを悔いていて、そういった後悔が後に仲間との絆を深める役割を果たしていました。

しかしリメイクのクラウドの性格は「ちょっと人見知りで強がり」程度のもので、他のアバランチのメンバーが楽しく談笑していても、空気を読んであえて入らない感じなど共感できる部分が多く、それにより随所に彼の「可愛げ」が溢れていて原作にはない魅力を引き出しています。

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そんな春の陽気のようなクラウドの温かさに誘われてか、ラスボスであるセフィロスもニブルヘイムを待てずにひょっこり顔をのぞかせます。序盤からラストシーンまで何度も何度もクラウドに会いに来ます。それはもうウンザリするほど…ラスボスなのに!

 

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ストーリー的には序盤にあたる今作ですが、もう既にバレットにすら好かれてしまうクラウド。原作では生存不明だったアバランチの仲間達の元気な姿も描かれてハッピー。

バレットといえば最初に書いた「魔晄炉問題を現代の視点でどう描くか」に注目して見ていましたが、「大声を出して散らす」という一点突破で無理矢理乗り切っていて好感度が下がりました。

 

ミッドガルの圧倒的再現度

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スラムに着いて昼間のミッドガルの景色を見た時は本当に感動しました。今作の開発陣が好んで使う「規模感」「密度」という言葉は嘘ではなかったのだな、と。

勢いよく外へ飛び出してみましたが、どうやらこの世界は「ちょっと大きめの広場」と「長細い小道」で構成されているらしく、電車で行ける場所には電車でしか行けず、高速道路も上部分にしかなく、そこへ行く道も見当たりません。

まあでも、実際のスラムというのはこういうものなのかもしれません。

 

サブクエストが酷い

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この写真は「猫探し」というサブクエストをしている時のものです。

スラムの幼女からネコを探して欲しいと頼まれ、見つけては逃げていき~を3回くらいくり返して幼女のもとへ帰ると「すごい!ありがとう!」と言われて完了です。

今作には多くのサブクエストが用意されていますが、全てこのクオリティのもので統一されています。他にも薬草探しや鍵探し、レコード集めなど。中には情報を頼りに各地をたらいまわしにされたりしますが、そこで特別変わったエピソードに出会えるわけでもありません。たらいまわし系だとマップに目標が表示されるのに、それ以外のものは報告する人物に目標と同じマークが表示され続けるのでとてもわかり難くなっています。

事前情報では原作を「掘り下げる」ということでしたが、猫探しは何のどこら辺を掘り下げているのでしょうか。というか、ここに出てくるサブクエストと全く同じものをスクエニの他のゲームで何度もやらされた気がするのですが…(ドラクエ10とか)

今時「幼女と猫」や「優しい肥満体と猫」のようなポンコツAIが導き出しそうな組み合わせを何のひねりもない話として出してくるあたりに人間性の低さや「メガ盛り」的な暴力性が感じられて不気味です。

 

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サブクエストに関わってくるキャラクターには小説版やアニメ版から出てくる者もいるのですが、エピソードが薄すぎてタレントでもないのに「バーター感」を強く漂わせています。

 

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酷いのはサブクエストだけでなく、メインストーリーの追加シナリオも同様です。神羅にさらわれたエアリスを助けに行くためには協力者の力を借りてコルネオの地下道を通らなければならないという原作にはないシナリオがあるのですが、そこに出てくるレズリーというキャラクターが豚にカギを盗まれてしまいます。

そこからは、豚を追い詰める→逃げられる→豚を追い詰める→逃げられる→二手に分かれる→上に逃げられる~みたいな行動をくり返して最終的にカギを取り戻すのですが、話を聞いてみるとレズリーは恋人をコルネオに取られたらしく、復讐のためにクラウド達に手を貸してくれているのだとか。

いや、あのさ。この段階で「コルネオってそんなにひどい奴だったのか!」ってならないでしょ。「でしょうね~」くらいな感じですよ。

このエピソード…いる⁉

 

ジェシーの実家に立ち寄ったり、エアリスと屋根の上を伝って延々と歩くシーンなど効果的な演出もあるにはありますが、それ以上に酷いものが多くてウンザリしました。

原作から2年後を描いた『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』(以下AC)のスピンオフ(※2)では、スラムで生きる親友同士の二人の孤児の男の子のうちの一人が「元・神羅社員の家族」だということで生まれる軋轢が描かれていて、それだけでアバランチ神羅の、原作だけでは伝わり難かった罪の側面が垣間見える良いエピソードがあるのですが、そういった意味のある掘り下げの片鱗すらこのリメイクからは見えてきませんでした。

 

※2.『On the Way to a Smile』デンゼル編(アニメ作品 著者は野島一成)

 

 

マップが酷い

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水門を開けて水を流したら瓦礫が浮いてきて…渡ったら今度は水門の上部分が押しあがって(30㎝くらい)登れない…とか、二手に分かれて片方がスイッチを押したらもう片方がちょっと進んでスイッチを押して無線で知らせて…みたいなセコい仕掛けが満載。

初期のバイオハザード…というか下手したらファミコンドラクエで見たことがあるようなものばかりだし、面倒くさすぎて失神寸前でした。

敵と戦う時は高くジャンプできるのに階段ほどの出っ張りを登れないとか、鉄の箱を山ほど壊してアイテム入手しているのに「絶対壊れない&動かせないプラスチックケース」に進路を阻まれるとか、普段なら見過ごせるはずのゲーム的な記号なのに今作はマップの構造自体が酷いので粗がより一層際立って見えました。

ハムスターが主人公のゲームだったらこういうマップでも良いとは思うのですが、FFでこれは正気を疑います。

 

戦闘とムービー

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ボス戦は合間合間に迫力のあるムービーが挿入されるので楽しかったです。リミット技を使った瞬間にムービーに入って当たったかどうかわからなかったり、敵が大きすぎて部位破壊攻撃が当たっているかどうか全く分からなかったり、やたらと敵が硬かったりもしますが、イージーモードで適当に▢ボタンを押していれば大体なんとかなります。

後半はモグラ叩きをさせられたり、耐性が盛られ過ぎて召喚獣が空気になったりもしますが、適当にやっていればなんとかなります。

 

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ムービーはだいたいキャラクターが空中に浮いた瞬間に時間が止まってカメラがそのキャラクターを中心にぐるっと回る…みたいな昔流行ってACでも散々擦った演出をどや顔でキメてきます。攻殻機動隊マトリックスが新作でファンサービスとして使うならわかりますが、FFが2020年に堂々とやるというのがポイント高いです(ダサポイント)。

ACのエンディングで氷室京介の歌をバックにバイクで疾走するクラウドとか、今見ても最高です。そこ(2005年)から何も進歩していないことが凄い。

 

まとめ

散々酷く書いてしまいましたが、ストーリー的には特に改悪された部分はないし、終盤のセフィロスのセリフ(※3)やザックスの回想など、面白くなっていきそうな余韻はありました。ただ、数々の薄っぺらいエピソードが積み重なることにより90年代フィルターが剥がれて「本編も時代性を抜きにしたら大した話ではないのかもしれない」という想いにもなり、複雑な所です。

PSPiモードのアプリで展開されたシナリオを匂わせるようなセリフがいくつか見られましたが、そこまで壮大な話にするなら今作にもっと詰め込んでほしかったです。

原作『FF7』はただ単に莫大な開発費を投入することによって名作となったわけではなく、雑多なアイデアを出し惜しみなく強引に具現化していくことによるダイナミズムが感じられましたが、今回のリメイクではムービーに全力を注ぎすぎて他の部分を使い古されたアイデアで埋め立てているような印象をどうしても受けてしまいます。

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発売日、Twitterのトレンドに「ティファ」というワードが入っていたので見てみましたが、今作のキャラクター達は日本でも海外でも好評なようです。

特に今回のボスキャラの多くは触手によってキャラクターを縛り付けてくるので、巨乳で露出度の高いティファがグロテスクな触手を巻き付けられている様に興奮するファンが多いのだとか。

他人の趣味嗜好はどうでも良いのですが、同人誌などの二次創作が特定のファンの需要を満たしてきた歴史があるという前提で、開発側がそういった層をある程度意識している(と思わせてしまう)ことがファンの分断を招く要因のひとつになっているのではないでしょうか。

FF7の派生の中で、このリメイク作品に最も近いと思うのがAC。

両者にはキャラクターのビジュアルを見せることに主眼が置かれているという共通点があり、特定のキャラクターが必要とされていないシーンに無理矢理人気キャラをねじ込み、その結果ストーリーの厚みが損なわれてPV的なイメージしか残らないという現象が起きています。

こういったキャラクター中心の二次創作的な手法でゲームを作ればムービー部分が骨格となり、ゲーム性やストーリー性が薄くなるのは当然。

FF7』というゲームが好きな人と、キャラクターを愛する人がいて、どちらも正しいので議論することは不毛でしかありませんが、開発者たちのインタビューを見る限りでは、あくまでもゲームとしてのリメイクを目標に掲げているようなので、原作派の人達の批判も真摯に受け止めてもらえることを願います。

 

※3.終盤のセフィロスのセリフ「気を付けろ そこから先は まだ存在していない」「終末の7秒前 だが まだ間に合う」「未来はお前次第だ クラウド-」がファンの間で様々な憶測を呼んでいる。

 

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