Mosaic
Krillbite
2020年1月23日
PlayStation 4、 Nintendo Switch、 Xbox One、 Linux、 Microsoft Windows、 Classic Mac OS
『Mosaic』はノルウェーのインディースタジオKrillbiteによる作品。
公式HPにある文章の
Mosaicは「Among the Sleep」の作成者によるものです。
Krillbite Studioは、幼少期の恐怖から恐ろしい孤独な大人の生活に移行しています。
という説明の通り、今作は『Among the Sleep』の作者によるゲーム作品の第2弾です。
『Among the Sleep』は赤ちゃんを主人公に夢の世界を徘徊するホラーアドベンチャーゲームですが、その内容はこれまでのアドベンチャーゲームの歴史を踏まえつつ、難易度調整からストーリーまで丁寧に練られ、尚且つユーザーの意見を取り入れてアップデートしていき完成させるというインディーゲームのお手本のような作品でした。
なので、『Among the Sleep』のようなゲーム性を期待して『Mosaic』をプレイするとプレイ開始後しばらくはその独特な世界観とゲーム性に呆気にとられてしまうかも。しかし、ゲームを進めて行くうちに前作にあった繊細さを至る所に見つけることが出来るでしょう。
以下、クリア後の感想です。
※ネタバレなし
ストーリー
ベッドから起き上がり、メールに目を通し、歯を磨いて家を出る。
エレベーターに乗り、マンションの廊下を歩きロッカーを確認(いつも何も入っていない)して外へ出る。
会社で仕事をして、家に帰る。
プレイヤーはまず、この一連の日常を体験させられることになります。
巨大企業で残業し、少しでも遅刻すれば「あと○○回で解雇」という冷たいメッセージが。
スマホで見るニュースには「路上で歌う歌手は多くの労働者の業務を滞らせている」「ホームレス人口が増加」などの暗い話題が並び、ここがどこかの非文化的なディストピアなのだとわかります。
2日目、いつものように洗面台に立つと一匹の金魚が話しかけてきます。ここで初めて主人公の口から言葉が発せられ、選択肢を選ぶことにより、冷たく孤独で無意味に思えた日常に変化が起こり始めます。
加速する日常
金魚を胸のポケットに入れて外へ出ると、それまで気にも留めなかった虫や音楽が光り輝いて見え、彼の中に人間性のようなものが宿り始めるのと並行して冷たい都市の生活も加速して見えてくるのですが、そのビジュアル表現&演出は圧巻。
彼を操作して日々を過ごし、何か小さな発見をする度に段階的にギアが入るかの如く周りの景色が過剰に複製されて死んでいくようなイメージが加速し、グロテスクな快感とでもいうべき錯覚に眩暈を憶えます。
ゲーム性
仕事では上にあるヘキサゴン的なパイプをひたすら上までつなげて信号のようなものを送ると業務完了。これが結構良く出来ていて、この世界の中の仕事としてやる分には面白いのですが、特に内容の説明がなかったり、これを大勢の人間が毎日やっているのかと思うとゾッとします。
スマホのアプリが充実しています。
上の写真はこの世界で大人気のモバイルゲーム「Blip Blop」というもので、内容は「同じボタンをただひたすら押すだけ」で、押す度に貯まる「Blop Coin」を使い機能を充実させたり、他のアプリの通貨としても使えます。
恐ろしく単調なゲームですが、効果音や演出が凝っていて意外とハマってしまいました。
他にも、女性の顔が全員同じにしか見えない出会い系アプリや仮想通貨など。
近年の社会性の強いテーマを持つインディー作品ではこういった「ゲームからゲーム性をプレイヤーの手によって剥奪させる」タイプのものが増えてきているように思います(『OPUS: 魂の架け橋』『ヘッドライナー:ノヴィニュース』など)
本来ゲームの作業が、あくまでもゲーム内世界で「強くなる」「お金持ちになる」などの成長を目的とするのに反して、今作ではゲーム内の作業に打ち込めば打ち込むほど無意味感が増し、プレイヤーと主人公がシンクロしていくという効果を狙っているのですが、そのゲーム内ゲームの設計思想にまで踏み込んでいて、丁寧に作り込むことである程度の中毒性を獲得することでリアリティが増しています。
2018年頃に東浩紀氏が「スマホアプリで仮想通貨をチェックする感覚はゲームと同じ」だというようなことを言っていましたが、人々から文化的な要素が失われた世界で流行するゲームとは、おそらく今作のスマホアプリのようなものなのでしょう。
まとめ
もし最近のゲームに疎い状態でこのゲームをプレイしたら「なんか凄いけど、これってゲームじゃなくね?」みたいな反応をしていたと思います。
それほど巧妙かつ、練られた作品。
前作『Among the Sleep』での「どこか変わっているけど優等生」的な仮面を脱ぎ捨て本領発揮といったところでしょうが、2作目にしてこれは凄すぎます。
インディーゲームをいろいろ漁っていて、こういう作品に出会うと本当に嬉しいし、こういったゲームが生まれる土壌があるということも健全。
Krillbiteスタジオの次回作を楽しみに待ちたいと思います。
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