Wolfenstein: The New Order
MachineGames
2014年5月20日
PlayStation 4、 Xbox One、 PlayStation 3、 Xbox 360、 Microsoft Windows
『Wolfenstein: The New Order』難易度ノーマルクリア後の感想です。
※ネタバレは設定のみ。
FPSの始祖的作品
ウルフェンシュタインの歴史は古く1981年にApple IIのゲームとして発売された1作目『Castle Wolfenstein』まで遡ります。『Castle Wolfenstein』を制作したMuse Softwareが倒産した後にゲームデザイナーであるジョン・ロメロによって続編が作られていくわけですが、3作目となる『Wolfenstein 3D』(1992年)にてFPSというジャンルが確立され、その後のDOOMシリーズなどのロメロ作品に繋がっていきます。
その後も何作かリメイクや新作が作られていますが、私がこのゲームを始めて知ったのがhuluで配信されているナチスのドキュメントでした。
普通にナチスの建造物などを巡るドキュメントだと思って何気なく見ていたのですが、中盤からメインのスタッフの様子がおかしくなり、どんどん興奮してくるので「ん?」となっていたのですが、最終的に巨大建造物を目の前にしたスタッフが「僕が見たのはこれだ!間違いない!ここでナチスはUFOを作っていたんだ!」と叫んで映像が流れるのだけど、それがどう見てもゲームの画面なんですよ。あとで調べてみると2009年発売のウルフェンシュタインで、日本盤は発売されていないので当時は悔しい思いをしたものです。
今年公開された『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』というナチスのトンデモ科学や陰謀論を題材にした素晴らしいバカ映画もありましたが、ウルフェンシュタインシリーズはそういった意味でもナチスファンタジーをいち早く映像化した作品だったのではないでしょうか。
ちなみに今作『Wolfenstein: The New Order』から最新作『Wolfenstein: Youngblood』(2019年)までの作品を開発しているのはMachineGamesというスウェーデンの会社で、2009年にStarbreeze Studiosから独立してからはほぼウルフェンシュタインしか作っていません。
ストーリー
物語は1946年から始まりますが、第二次世界大戦がまだ続いています。
主人公のウィリアム・ジョセフ "B.J." ブラスコヴィッチはポーランド系の父親とユダヤ系の母親の間に生まれたアメリカ人。連合軍の兵士としてナチスの城に攻め込むも、デスヘッドの異名を持つナチスの親衛隊隊長の策にハマり意識不明の重体、そして目が覚めると1960年に。そこではドイツが世界大戦に勝利した世界が…
このデスヘッドというやつが変態科学者で、人体改造などを好みナチスの巨大要塞を築いたりしていて、最終的にこのデスヘッドに復讐するというのがこのゲームの大きな目標になります。
その他にも親衛隊中佐のフラウ・エンゲル(右)やその恋人のハンス・ "ブビ" ウィンクル(左)などのヤバい連中に嫌がらせを受けながらストーリーを進めていくのですが、中には死んだかどうかわからないキャラクターなんかもいて、続編を意識したような作りになっているのかなと感じました。
肝心のナチス最高指導者であるアドルフ・ヒトラーが全く出てきません。これも規制の問題ではなく続編を意識した流れだとは思うのですが、一目見たかった!
主人公ブラスコヴィッチには仲間がいて定期的にアジトへ戻って話したり、ちょっとしたクエストをこなしたりします。
仲間の個性に合わせた部屋なども良く出来ているし、壁に貼られた新聞記事で世界情勢を把握できるのも良かったです。
さらに、ちょっとした楽しみとして2階のベッドで眠ると初代ウルフェンシュタインを模したミニゲームで遊べます。いくつかの部屋を攻略して脱出するという短いものですが、当時の雰囲気を味わえる気の利いた演出だと思いました。
まあ、いろいろあってヒロインであるアーニャ・オリヴァと仲良くなったり一緒に戦ったりと、ラブストーリーを絡めて進めていくので第二次世界大戦の知識がなくても全然楽しめます。
ゲーム性
基本的にストーリーに沿った一本道を、拾った武器を撃ったり投げたりして進むだけ。難易度もいつでも変更可能なので詰まるようなことはまずありません。
ステルス要素もあるにはあるけど他ゲーに比べると甘い作りで、敵のAIもバカ。
本当に、突撃して殺しまくるゲームなので暗殺用の武器もほとんどないし、撃ちまくりながら落ちているアイテムの場所を確認して走り抜ける感じです。演出としての乗り物もいくつか用意されていますが、大半は徒歩です。
部位欠損などの表現はかなりの残酷描写があり、この写真のように骨が剥き出しになっていたり、ヘッドショットを決めると『恐怖奇形人間』の広介みたいに頭が真上に飛んでいったりします。
今作の特徴的な装備としてレーザーカッターがあります。
最初は金網に穴をあけて道を切り開くものだと思っていましたが、ゲームを進めていくと何段階にもパワーアップして人間を跡形もなく溶かしたりする恐ろしい武器になります。
充電式なので、所々にある充電器で電力を補充していけば銃器の弾切れをおこしても無限に戦うことが出来ます。
しかしこれによって戦略に幅を持たせられているかというと、先に述べたステルス要素と同じく中途半端にプレイヤーを困惑させてしまう作りの甘さが目立ちます。
マップに隠された回復アイテムを見つけられる程度の利便性に留まっているかと。
敵側のドイツ軍の兵器が科学的なものが多く、ロボットなんかも出てくるのでそれに対応した演出という面では理解できますが、レーザーしか効かない敵というのがいなかったせいで消化不良なイメージが残りました。
ロボットの造詣がきちんとした用途に合わせた設計になっていて、その真面目さには好感が持てます。映画『武器人間』に出てくるようなふざけた人造人間(良い意味)も出てきません。
まとめ
今作『Wolfenstein: The New Order』は歴史的FPSタイトルのリブート作品としては手堅い作り。おそらく続編を見越した序章的な面も見られ、世界観や主人公の掘り下げがきちんとされている丁寧な作り。
ゲーム性はまだ不安定な部分があり、古く感じてしまう所もありますが次作に期待したいですね。
とにかくこれで終わりだとは思えない気概を感じるし、実際本作から3年後に発売された『Wolfenstein II: The New Colossus』では舞台国であるドイツを含め様々な論争も起きていたので、近々Ⅱをプレイしてからまたレビューしたいと思います。
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