みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

インディヴィジブル 闇を祓う魂たち(Switch)

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インディヴィジブル 闇を祓う魂たち
LabZeroGames
2020年7月16日
Nintendo Switch,Microsoft Windows,Linux,macOS,Classic Mac OS,Xbox One,PlayStation4

 

インディヴィジブル 闇を祓う魂たち』は北米のデベロッパー「LabZeroGames」によるアクションロールプレイングゲーム

以下、クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

ストーリー

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物語の冒頭、主人公アジュナの暮らすアシュワット村がラバナバー軍によって焼き払われてしまいアジュナの父親も犠牲に。父の復讐のため旅に出るアジュナは旅の途中で多くの人々と交流し、同じ目的を持つ仲間と協力しながら父の仇であるラバナバーのもとへ向かいます。

旅の途中でアジュナの持つ不思議な能力、そして彼女の出生の秘密が明らかにされ、仲間とともに苦難を乗り越えながら成長していくアジュナの姿が描かれます。

ストーリー全体が非常にわかりやすくまとまっており、壮大でありながら誰にでも楽しめるような親しみやすさを持っています。

 

演出の問題点

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アジュナの成長を描くためか、序盤のアジュナは未熟というよりは、ただ単にテンションが高く他人に対して無礼で自分勝手にしか見えなくてあまり好感が持てませんでした。

有名な日本のロボットアニメの主人公にもそういう傾向が多々見られますが、悲壮感を出さないためとはいえ本作のアジュナのテンションと発言は中々に違和感が強い。

 

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本作のローカライズスパイクチュンソフトが担当しており、豪華声優陣による吹き替えが素晴らしいのですが、ボスのラバナバーを演じる若本規夫氏の演技が過剰すぎて聞くに堪えません。若本規夫氏といえばテレビ番組『人志松本のすべらない話』のナレーションが有名ですが、あのナレーションをさらに過剰にしたようなラバナバーの演技は若干ふざけているかのようにも聞こえ、とにかく違和感が凄い。

 

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とはいえ、仲間として登場するキャラクター達はどれも個性的で頼もしくストーリーを彩ってくれるし、合間に挿入されるアニメーションとテンポの良い展開は楽しく、最終的にはアジュナの成長する姿が見られたので良し。

 

探索

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マップは街やダンジョン含め、横スクロール型のメトロイドヴァニアスタイルとなっており、ストーリーの進行により習得していく様々なアクションを駆使しながらの探索となります。難易度はそれほど高くなく、見やすいマップもあるので迷いません。

終盤ともなると突然難易度が跳ね上がったように感じる場面もありましたが、どちらかというと反射神経よりも発想力が求められるため、習得したアクションをそれぞれ試していくことで道が開けるのでアクションが苦手な方でも十分攻略可能。

 

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街では人々との会話や宝探しを楽しめます。買い物こそできませんが、丁寧に描き込まれたビジュアルは圧巻で、走り回っているだけでも楽しい。

 

戦闘

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戦闘はシンボルエンカウント式で、4人のメンバーを操作して挑みます。時間経過によるそれぞれのキャラの行動回数を溜めてコンボを稼ぎます。スティックの方向入力により出せる技が変化し、個別の必殺技と併せて戦略を組み立てていきます。

敵のガードを崩すアジュナの連続攻撃に加え、空中攻撃や回復などが使えるキャラをパーティーに加えると有利に進めやすい。

最終的に使用できるキャラは10名ほどにもなりますが、一度倒した雑魚敵が復活しないため、ある程度固定されたメンバーしか育成できないのがもどかしい。

後半加わる仲間にも魅力的なキャラが多いので残念。

 

感想

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多くの個性的なキャラクターとの交流によって進められるストーリーは自然で、説明過多になりそうな入り組んだ設定もすんなり頭に入ってきてわかりやすい。

マップの仕掛けは簡単すぎる傾向もあり爽快感には欠けますが、その分ストレスなく遊べるし演出でカバーしている面も見受けられ好印象。

戦闘は非常にテンポが良く楽しめるものの、メンバーを固定した途端に単調さを招き、ボス戦も印象が薄い。

ゲーム自体は細かい部分まで丁寧に作られていて、アクションとRPGが自然に融合した良作ではありますが、インディー含め数多く作られているストーリーを強調した他のメトロイドヴァニア群と比べると突出したものは少ない。

十分楽しめるゲームではありますが、もう一つ大きな個性があれば傑作に成り得たのではないかと思います。

 

 

Developed by Lab Zero Games. Published by 505 Games, S.p.A. "505 Games," "Lab Zero Games" logos are the trademarks and/or registered trademarks of 505 Games S.p.A. and Lab Zero Games.
All rights reserved. Licensed to and published in Japan by Spike Chunsoft Co., Ltd.

ヒュプノノーツ(Switch)

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ヒュプノノーツ
並河岳史
2021年10月7日
iOS/Android,Nintendo Switch

 

『ヒュプノノーツ』は2015年にiOS/Androidで配信された基本無料ゲーム。今回Switch版配信に伴い新章とBGM、イラストを追加。

「黄泉」「もう一つの地獄」クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

ストーリー

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ある日、主人公の男性に届けられた荷物。その中身は過去の記憶の中へダイブできる枕だった。そこで見た幼い日の記憶の中で少女と交わした約束を思い出し、男性は彼女を救う旅に出ます。

 

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その枕を使って子供から大人、そして彼女の記憶までをも辿り、現在までの人生を追体験していくことに。

 

ローグライクRPG

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本作は「一次元ローグライクRPG」というあまり聞きなれないジャンルのゲーム。

フィールドが存在せず、本をめくるように左右に移動。一歩移動するごとに時間が消費され、時間切れになる前にゴールへ辿り着ければゲームクリア。

一歩歩くごとにイベントやショップなどが現れ、敵とバトルになることも。

ゴールに近付くほど敵も強くなるのでスタート地点付近でレベル上げをしておくと後半の攻略が楽になります。

HPや時間がなくなると全てリセットされてしまいますが、一つのステージを攻略する際の難易度や所要時間は絶妙に調整されています。

 

人生はRPG

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幸せそうな家族を見ると手に入るアイテム「甘えたい気持ち」。しかしこれを持っていると能力が下がってしまうため、生きていくには捨てなければなりません。

ちょっとした気分の変化が状態異常となり、社会人ともなるとお金によって人間関係を維持しなければならないことも。

現実の人間にある気分の浮き沈みや年齢ごとに変わる価値観などが反映されていて、恋人すらもアイテム扱いとなり損得勘定のみで生きていかなければならない辛さがストーリーにも反映されているのが面白い。

ゴールを目指す過程で操作しているキャラが今までどんな気持ちで、どうやって生きて来たのかがありありとわかってしまう。ゲームをクリアしたいプレイヤーの欲望と、ゲーム内キャラクターの行動原理が細かい所まで合致しているのが凄い。

 

感想

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誰かの人生をゲームにしてしまうという発想そのものはありふれたものであるのに、実際にそれを一本の作品に収めることには相当なセンスと膨大なアイデアが必要とされるわけで、結果的に『ヒュプノノーツ』は今まで体験したことのないユニークな作品になっていました。

一次元ローグライクRPGというジャンルとの相性や、わかりやすいルールとテンポの良さが、どちらかというと辛いことの方が多い人生の道のりをポジティブに照らしてくれているように思います。トゥルーエンド「黄泉」の最後には、今まで操作してきた彼や彼女の生き方を静かに肯定してくれるような締めくくり方が爽やかで良かったです。

ストーリーに散りばめられたSF的な設定や哲学的な蘊蓄に答える新章「もう一つの地獄」に関しては正直よくわかりませんでしたが、それを抜きにしても十分楽しめました。

 

 

(C)Affility

What Comes After(Switch)

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What Comes After
Mohammad Fahmi
2021年8月19日
macOS,Microsoft Windows,Nintendo Switch,Mac OS

 

『What Comes After』は、『Coffee Talk』の作者によるアドベンチャーゲーム

 

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プレイヤーは主人公の女の子「ビビ」を操作してストーリーを体験することになります。横スクロールの移動と任意による会話だけで進められるゲームはインタラクティブに乏しく、内容もかなり短め。大きなイベントを廃し、乗客一人一人の会話を丁寧に描く事のみでプレイヤーの心理に働きかける演出は、かなり地味ではあるものの作品のテイストには合っていると思いました。

 

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ビビの乗り込んだ電車は人の魂を死後の世界へと運ぶものでした。ビビはそこへ誤って乗車してしまったため死後の世界へは行けず、電車が現世に引き返すまでの間に魂たちとの会話を通して自分自身と向き合っていきます。

 

何故このような作品が生まれたのかについては作者の意図を汲まなければ全体を把握できず、混乱してしまう人も多いと感じたので、ファミ通2021年9月号に掲載されたMohammad Fahmi(モハメド・ファーミ)氏へのインタビューを以下に全文引用させてもらいます。

 

ー本作の特徴やテーマは?

ファーミ 千と千尋の神隠し』の列車のシーンに大きな影響を受けています。私はあのシーンがとても好きで「もし千尋があの電車の中を歩き回って乗客と話をしたらどうなるだろう?」と考え始めました。あの影のような人物たちには、それぞれの物語があるように思えたので、本作がいまのような形になりました。正直なところ、私たちはこのゲームを作ることで生活費を得る必要性もありました。そこで、かなりシンプルなゲームにすることに決めました。そのため、このゲームではプレイヤーができることは歩くことと話すことだけなのです。テーマとしては、本作は自分を愛することや生と死についての重いテーマを扱っています。また、本作は私の友人に宛てたラブレターでもあります。その友人は、いつも自分は他人の重荷でしかないと思っていて、よく人生を終わらせようと考えていました。その友人に「人生は生きる価値があり、あなたは自分の頭の中のモンスターと戦っているだけなのだ」ということを思い出させるために作りました。

ーもっともこだわっている点は?

ファーミ 限られた環境、限られたプレイ時間の中で、どうやってできるだけ多くの物語を伝えることができるかということだと思います。短い体験時間では、それぞれの物語を十分にカバーできていないと思う人もいるかもしれませんが、それぞれの物語の続きと理解の仕方は、プレイヤーの手に委ねられるべきだと思っています。

ー日本のユーザーに向けてのメッセージをお願いします。

ファーミ このゲームは、私と私の友人にとって、とても重要で個人的な部分を含んだゲームであり、私たちにとって多くの意味を持っています。このゲームをぜひ楽しんでいただければと思っています!

                   ©KADOKAWA CORPORATION 2021

 

感想

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作者の個人的な体験と友人に対する切実さがゲーム全体に流れる空気を覆い、静けさの中にも力強いメッセージを受け取ることが出来ます。ストーリーはプレイした個々の体験や心理状態に委ねられるので、涙を流す人もいれば退屈に感じる人もいるでしょう。

ただ、こういったテーマを持つ短編を低価格で配信することは個人的には大歓迎で、もっと増えてほしいタイプのゲームではあります。

 

 

© Chorus Worldwide Games
© Flynn's Arcade all rights reserved

電車でGO!! はしろう山手線(PS4)

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電車でGO!! はしろう山手線
スクウェア・エニックス
2020年12月2日
PlayStation 4,Nintendo Switch

 

電車でGO!!シリーズは10年ほど前にPC版をよく遊んでいて、初めてプレイした時の興奮はそれはもう本当に凄くて。東京の街のリアルな再現と電車を運転する臨場感、それにゲームとしての絶妙な難易度が相まって、私の中では最も好きなゲームのひとつとなりました。本来アーケードで人気の電車でGO!!シリーズですが、本作は家庭用移植版としては実に16年ぶりの新作。

ただ、私自身電車に全く興味と知識がないため、今回はあくまでゲームとしての「体験」についての感想をメインに書いていきます。

 

通常モード

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メインとなるのは「おうちでGO!モード」と「アーケードモード」の2つ。

アーケードモードは文字通りアーケード版を移植したものとなっており、アーケード版と同じミッションと難易度を選択して走るコース。

おうちでGO!モードはオリジナルのミッションで得点を稼いで最終的に免許皆伝運転士の称号獲得を目指します。家庭用としてはこちらをメインで攻略し、隠し要素をアンロックしていきます。こちらにはデイリーモードもありますが、ルーレットなので同じコースを何度も引いてしまうこともあり、特別これといった面白味には欠けます。

全体を通して天気の種類が朝昼夕と、明るい時間帯しかないのが寂しい。

 

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ゲームのルールは従来のシリーズと同様、電車のスピードを表示された速度に調整しながら時間通り駅の停止位置に止めるというもの。右下にある「指さし確認」「警笛」「ライト」「ドアの開閉」のタイミングも重要で、これら全てを含む総合評価が下がりすぎるとゲームオーバー。

久々に遊んでみた感想としては「え、こんなに難しかったっけ!?」と思うくらいには難しく、ミッションの中盤で足止めを喰らい心が折れました。

基本的にはリアルな運転士シミュレーションなので難しいのは当然なのですが、初心者への甘やかし的なステージが少なすぎて序盤の時点でかなり辛い。

私が過去に遊んでいたPC版やPSP版ではもう少し気軽に遊べていた印象だったのですが、今回は半分も周れませんでした。これに関しては、ただ単に私が下手だというのもあると思います。ただ、自分で運転しなくても自動運転モードにすれば車窓から流れる景色を眺めることが出来るので、結果的に10時間程度は遊べました。

 

グラフィック

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グラフィックに関してはアンリアルエンジンを採用しており、丹念な取材とゲーム的なリアリズムを追求(※1)した圧倒的なビジュアル。発売前のゲームプレイ動画を見た時は本当に驚きました。各駅の特徴もかなりこだわって再現されているのが分かります。

しかし、東京の街のリアリティでいえばPC版の方が上だと感じました。アンリアルエンジンによって再現された本作の建築群はどれもピカピカの新築のように見えます。一方でPC版は一昔前の粗いグラフィックなのですが、それが図らずも鉄道模型でいうウェザリング(汚れや錆などの表現)のような効果を生み、リアルな東京の空気感を再現してしまっていたように思うのです。

 

※1,「特徴的な建物は再現されている。ただし雑居ビルはなんとなく雰囲気が似たもので印象を近づけるようにしたという。ここに違和感があると、やはり脳に負担がかかる。運転の邪魔になる。だからこそ、完全な再現よりも「本物っぽい」景色作りにした。そこでこだわった要素は「生活感」だった。」(文春オンライン 2021年01月23日)

 

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目線の高さやオブジェクト間の微妙な距離感の影響なのか、駅のホームが全体的に狭く感じます。実際山手線に狭いホームはいくつか存在しますが、それがさらに狭く見えます。

 

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看板についても、いくつかの適当な配色のシンプルなものが用意されているだけで、それ以外は無し。これらが至る所にあるので、どこまで走っても既視感が付きまといます。オリジナルの文字付き看板(PC版ではあった)を数種類用意するだけで大分印象は変わったと思います。

 

ここまでPC版と比較して色々と不満を書いてしまいましたが、これは完全に好みの問題であって、本作のグラフィック表現が一つの到達点であることは間違いありません。

 

VRモード

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VRモードは通常のコントローラーで遊ぶことが出来ます。

原宿発のコースを3つの中から選択。晴れの朝昼夕、7駅の区間に限定された短いものですが、VRに合わせた操作方法や運転台が用意されていて臨場感は抜群。

 

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通常モードでは不自然に見えていた景色も運転席から見ると凄くリアル。アンリアルエンジンの性能が遺憾なく発揮されていて、プレイヤーの体感に則したオブジェクトのサイズも完璧。もちろんそれら全てがデフォルメされた空間ではあるのですが、違和感を全く感じさせないゲーム的なリアリティを獲得しています。

 

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通常モードでは狭すぎると感じていたホームも、VR目線からだと自然な風景に。

 

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車窓からずっと景色を眺めているだけでも十分楽しいのですが、残念な事にVRには自動運転モードがありません……なんで!?
このゲーム、VR専用として出した方が良かったのでは?と強く思わずにはいられない程VRモードの出来が素晴らしく、通常モードではマップの良さを半分程度しか引き出せていないように思います。

プレイヤーは終始運転席に固定で、フレームレートが安定しているので酔う心配がない。もしこれに低難易度を設けて山手線を一周出来るように調整したら、しばらくの間は現実世界に戻って来られなくなってしまいそう。

 

感想

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電車にそこまで興味はないけど、鉄道模型などの箱庭系が好きならVRモードは大満足間違いなしの素晴らしい出来。

一方で通常モードは難易度が高く、ミッションのバリエーションも少ないので初心者には厳しいものになっていました。

美麗なグラフィックは初見こそ大きなインパクトを受けますが、大して変わり映えのしない天気のもとで見続ける景色はどれも似たり寄ったりのように感じてしまい、やはり過去作の方が味わい深かったように思えて仕方ありません。

発売後の無料アップデートにより、オンラインでのタイムアタックランキングなどが追加されたようで、運転の腕に自信のある方には長く楽しめる作りになっています。

 

 

© TAITO CORPORATION 1996, 2021 ALL RIGHTS RESERVED.
© 2020, 2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
JR東日本商品化許諾済

Say No! More(Switch)

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Say No! More
Studio Fizbin
2021年4月9日
Microsoft Windows,Nintendo Switch,macOS,Mac OS

 

『Say No! More』はドイツのStudio Fizbin開発によるインディーゲーム。

ストーリー序盤の紹介とクリア後の感想です。

 

NO!という言葉を武器に

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主人公は男女選べて髪型などのカスタマイズが可能。

ゲームをスタートするとなんやかんやで新入社員として会社へ出勤します。

入社初日だというのに上司からは冗談なのか本気なのかわからないジョークを浴びせられ、同僚からは同調圧力をかけられるわで、引きつった笑顔の状態で表情が固定されそう!

 

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暗い気持ちのまま自分のデスクに着くと、頭上からカセットテープが落ちてきました。

何のテープだろう?ちょっと再生してみよう…

 

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誰だよ...

という疑問を挟む余地も与えてくれないまま彼は一方的に捲し立ててきます。

「NO!」さえ言うことが出来れば君は変われるよ!

今のままじゃ駄目よ!

と、そんな言い方ではなかったかもしれませんが、だいたいそんな感じです。

 

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チュートリアル的な事も図で教えてくれるのは有難いですよね。

 

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しかしこの人はカセットテープを何だと思っているのでしょうか。

 

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さあ、みんなも一緒に!

 

NO!!!

 

僕たちの戦いがはじまる…

 

                                おわり

 

 

様々なアクションがある

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見て下さい。

左上の顔が「NO!」と叫ぶと日本語の「いやです」に変換されて攻撃していますね。

もちろんボイスもちゃんと日本語になってます。

何ヶ国語か…とにかく多くの種類の言語が収録されていて、それらを選択できる。

基本的に主人公の前に立ち塞がる相手を「NO!」の一声で蹴散らしていくのがこのゲームです。

「NO!」には4つの属性があり、思わせぶりな仕草も4つ。

それらを使い分けて角ばった敵に喰らわせます。

彼らはいつまでも攻撃を待っていてくれます。逆にこちらが待っていると楽しいおしゃべりを始めるので耳をよく澄まして聞いてあげましょう。

 

感想

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ゲームオーバーの概念がなく、適当なボタン連打だけでクリアまでの約2時間を飽きさせることなく完走させるテンポの良さ。コメディのシナリオとしても、ゲームのインタラクションを上手く取り入れており、プレイヤーは自分のボタン操作によって発生したアクションによって思わず笑ってしまう。ストーリーとアクションの相互作用が「笑いの装置」として機能することでゲームタイトルが掲げる僅かなメッセージ性すら崩壊し、最終的には全てが無意味に思えるさわやかさが心地よい。

ゲームのアイデアとしては新しい発想も意外性もないが、既存のものだけでここまで組み立てるセンスは流石で、ここまでバカな企画を通して完成させる労力を想像するだけで尊敬の念を抱かずにはいられない。

 

 


©Studio Fizbin GmbH 2021. Published by Thunderful Publishing AB. All rights reserved.

アサシン クリード II(PS4)

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アサシン クリード II
Ubisoft
2009年11月17日
PlayStation4,Xbox One,PlayStation 3,Xbox 360,Microsoft Windows,macOS,Classic Mac OS

 

アサシン クリード II』は2009年のゲームですが、今回は2017年2月23日に発売された『アサシン クリード エツィオ コレクション』(PS4)内に収録されているものをプレイしました。

アサクリは初代しかプレイしていませんでしたが、まさかここまで長いシリーズになるとは思いませんでした。2007年から2021年までに本編だけで12作品、ほぼ毎年リリースされているといっても過言ではない制作体制が敷かれています。現在、PS4のダウンロード版はかなりの割引でシリーズの多くが遊べるという事で、とりあえず買いまくってみたので、できるだけ早く新作に追いつけるようシリーズの足跡を辿っていきたいと思います。

 

「観光」する都市

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アサシン クリード II』の舞台は15世紀のイタリア。フィレンツェヴェネツィアなどの有名な都市をオープンワールドで再現。高低差のある都市をアサシンとなり自由自在に駆け巡ることが出来るマップは2世代前のゲームとしてはかなり贅沢。しかもステルス要素に合わせて潜入の難易度が異なるエリアの人員配置と動きは絶妙で、群衆の数も現在のオープンワールドゲームと比べて多いと感じます。

 

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都市を支えるインフラ、それをゲームのコンセプトに合わせてどう表現、或いは存在しているように思わせることができているかの背景描写が、オープンワールドを生きた世界として構築する上では重要な要素です。それは時に、街を歩く人々個々の設定であったり、交通機関であったり店舗の営業時間であったりと様々ですが、アサクリの場合は群衆と多様なインタラクトによってそれを達成しています。

しかしプレイヤーの操作に呼応する細かい設計が独自の自由度を生んではいるものの、それがゲームとしての爽快感をある意味削いでしまっていたり、ストーリー展開のダイナミズムに制限をかけてしまっていることも確かで、全体的には地味な印象。

実際プレイ後に思い出せる楽しかった記憶は、ストーリーの内容よりも、高い建物に登って街を見下ろしたり、モニュメントを探していた時間のほうが圧倒的に多い。

しかしこうしたゲームデザインからは、後のUbi製オープンワールド『ザ クルー』『ウォッチドックス』シリーズにも共通する「観光」としての側面が窺えます。

アサシン クリード II』の時点で、既にゲーム的な派手さよりも実在の都市を忠実に再現し、その街を観光するように楽しめる設計に大きく舵を切っていることは、オープンワールドの歴史を語る上でも重要な作品と言えるでしょう。

 

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ゲーム内の人物やアイテムなどにも、わかりやすくて細かい説明が付き、まるで博物館を巡っているような楽しさがあります。

 

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主人公エツィオの協力者として度々登場するのが画家のレオナルド・ダ・ヴィンチ

実在の都市とフィクションで構成されるゲーム内世界で、こうした誰でも知っている人物が重要な役割を担って出てくることで、虚構と現実の間にある幅が狭まり、歴史に対する親近感をプレイヤーに抱かせてくれます。

 

シリーズ共通の要素

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現代においても大きな力を持つ組織、テンプル騎士団。彼らが過去の歴史的な事件にも暗躍していたという記録を頼りに、装置を使って過去へダイブしテンプル騎士団を暗殺するという1作目の流れを継承。歴史上の様々な都市を舞台とするシリーズの性質上、非常に都合の良い設定だとは思うのですが、メインであるイタリアでのストーリーの合間合間に現代へ戻されるのは若干興醒め。現代編は今後も長く引っ張っていくため大した進展もなく、設定に付き合わされてる感は否めません。個人的に1作目のストーリーがあまり頭に入っていかなかったのも、この過去と現在の分断によるものなのですが、これからも長くこのシリーズを楽しみたいのならば覚悟を決めて付き合っていくしかないのでしょう…

 

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その他の要素として、街の外で馬に乗れたり、自宅を改築して様々なサービスを受けられたりと遊びの幅は広いのですが、サブクエストがあまり充実していないのでストーリーをゆっくりと進めながら楽しむ感じですね。

 

感想

1作目をプレイした時にはステルスゲーとしての弱さに目がいってしまい、アサシンクリードという作品が持つ独自性が見えにくかったのですが、本作をプレイしてみて観光する楽しみを発見できたのは大きな収穫でした。ゲームとしてはストーリー含め、どうしても地味な印象があり後回しにしがちなシリーズですが、その地味さを別の楽しさに置き換える工夫が随所に施されており、オープンワールドの中のひとつのジャンルとしての個性を確立しています。現在プレイしても十分楽しめますし、シリーズの入門編としてもお薦めしたい作品です。

 

 

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真 流行り神3(Switch)

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流行り神
日本一ソフトウェア
2021年7月29日
Nintendo Switch,PlayStation4

 

『真流行り神』シリーズの3作目。旧『流行り神』から数えて6作目にあたる今作は、前作同様「科学/オカルト」でルートが分岐するテキストベースのホラーアドベンチャーゲーム

全エンディング回収後の感想です。

※登場人物のネタバレあり

 

登場人物

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主人公の北條紗希が所属する通称「とくそう」のメンバー。

左から愛染刹那・纐纈将臣・新見心太朗・如月密子。

その他にも旧作や旧シリーズからのキャラクターも多数登場します。

 

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前作ではおふざけが過ぎて著しくホラーテイストを損ねていた相棒の愛染刹那も、今作では豆知識の披露と怪談の語り部に徹しているのが有難い反面、じゃあ前作のあれは何だったのかという疑問が頭をよぎります。

 

その他のメンバーに関しても、ストーリーの中で多少の掘り下げはあるものの、与えられた役割を淡々とこなしている印象が強いことから、今後に繋がる大きな物語へと大きく舵を執っていることが窺えます。

 

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それを象徴するのが、旧シリーズで重要な役割を担っていた霧崎水明と間宮ゆうかの起用でしょう。彼らによって1作目に出てくる「ブラインドマン編」等の怪異と、金髪の王子が所属する組織「F.O.A.F.」との関連が示唆されて次回へ続くという流れ。

 

ストーリー

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ストーリーは5つのシナリオと、前作に続き「愛染刹那編」、そしてそれらを補完する「隙間録」から成ります。

・古典的な都市伝説を思わせる「隙間女」

・某スプラッター映画風「悪魔の人形」

・グロテスクな表現と社会的なテーマを持つ「人間シチュー」

・旧シリーズを彷彿とさせる民俗学的な視点で描かれる「両面宿儺」

・そして、これらの怪異と「F.O.A.F.」との関連を窺わせながら次回作へと繋ぐ最終話「死者からのメッセージ」

 

4話目の「両面宿儺」は霧崎水明登場回ということもあり、民俗学的な視点で語られる都市伝説。両面宿儺は大人気の漫画『呪術廻戦』でも重要な役割を担っており、昨年のアニメ人気と共に考察が盛り上がったタイムリーなネタ。

それぞれのクオリティの話は別として、これだけのバリエーションを揃えてくれたのはファンとしては嬉しく、前2作品にみられたようなハズレネタが一切ない事から、開発側のユーザーに対する真摯な姿勢が窺えます。

個人的にとても残念に感じた『真流行り神2』も、今後の展開によっては全体からすると重要なピースとして機能する可能性を若干ですが帯びてきたので、次回作に対する期待が持てました。

 

感想

旧シリーズの特徴である「科学/オカルト」ルートの分岐は、ともすれば片方の整合性を優先することでもう片方が成り立たなくなるという危ういバランスで成り立っており、どちらにも相応の説得力を持たせたうえで軸となるストーリーによって全体を回収するという志の高い作品性に拘り、旧シリーズ最終作である『流行り神3』は図らずもそれがやはり無謀であったことを証明してしまいました。

しかし、オカルトをその背景である文化・社会的な側面から掘り下げ、科学的なアプローチを試行する作品は、昨今のホラーゲームでは希少な存在。知的好奇心を刺激するエンターテイメントとしての需要もあり、テキストベースのアドベンチャーゲームとの親和性は抜群に高い。

 

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科学的にもオカルト的にも偏っていない一般的な人々の間で噂話として伝染していく過程と、そこに付く尾ひれ。

都市伝説を掘り下げることは結果的に現代日本で暮らす我々の不安や畏れを映す鏡となり、だからこそ興味が尽きません。

流行り神シリーズの掲げるコンセプトは、私のようなホラーファンにとっては貴重で有難いものではありますが、いかんせんシナリオの質が右肩下がりなのが気がかりです。

今作で多少持ち直したとはいえ、相変わらず主人公含めたキャラクターの持ち味や関係性が十分に生かされておらず、ベタなお笑いのノリでお茶を濁しているような印象を受けました。ホラーにとって最も重要な「恐怖」がキャラクターに与える影響が見え辛く、登場人物たちが物語から浮いてしまっているように感じられます。

それと、「科学/オカルト」ルートを捨てて新しいチャレンジを試みた1作目でファンの不評を買い、旧作の仕様に戻したものの作品の持つテンションが下がり続けているのも不安です。ファンのご機嫌を窺いながら伏線回収して小さくまとまってしまいそうな気がしてなりません。

名作たり得る素晴らしいコンセプトを堅持してはいるものの、その可能性を削りながら存続しているという印象は本作でも拭えませんでした。

 

 

 

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