ヒュプノノーツ
並河岳史
2021年10月7日
iOS/Android,Nintendo Switch
『ヒュプノノーツ』は2015年にiOS/Androidで配信された基本無料ゲーム。今回Switch版配信に伴い新章とBGM、イラストを追加。
「黄泉」「もう一つの地獄」クリア後の感想です。
※ネタバレなし
ストーリー
ある日、主人公の男性に届けられた荷物。その中身は過去の記憶の中へダイブできる枕だった。そこで見た幼い日の記憶の中で少女と交わした約束を思い出し、男性は彼女を救う旅に出ます。
その枕を使って子供から大人、そして彼女の記憶までをも辿り、現在までの人生を追体験していくことに。
本作は「一次元ローグライクRPG」というあまり聞きなれないジャンルのゲーム。
フィールドが存在せず、本をめくるように左右に移動。一歩移動するごとに時間が消費され、時間切れになる前にゴールへ辿り着ければゲームクリア。
一歩歩くごとにイベントやショップなどが現れ、敵とバトルになることも。
ゴールに近付くほど敵も強くなるのでスタート地点付近でレベル上げをしておくと後半の攻略が楽になります。
HPや時間がなくなると全てリセットされてしまいますが、一つのステージを攻略する際の難易度や所要時間は絶妙に調整されています。
人生はRPG!
幸せそうな家族を見ると手に入るアイテム「甘えたい気持ち」。しかしこれを持っていると能力が下がってしまうため、生きていくには捨てなければなりません。
ちょっとした気分の変化が状態異常となり、社会人ともなるとお金によって人間関係を維持しなければならないことも。
現実の人間にある気分の浮き沈みや年齢ごとに変わる価値観などが反映されていて、恋人すらもアイテム扱いとなり損得勘定のみで生きていかなければならない辛さがストーリーにも反映されているのが面白い。
ゴールを目指す過程で操作しているキャラが今までどんな気持ちで、どうやって生きて来たのかがありありとわかってしまう。ゲームをクリアしたいプレイヤーの欲望と、ゲーム内キャラクターの行動原理が細かい所まで合致しているのが凄い。
感想
誰かの人生をゲームにしてしまうという発想そのものはありふれたものであるのに、実際にそれを一本の作品に収めることには相当なセンスと膨大なアイデアが必要とされるわけで、結果的に『ヒュプノノーツ』は今まで体験したことのないユニークな作品になっていました。
一次元ローグライクRPGというジャンルとの相性や、わかりやすいルールとテンポの良さが、どちらかというと辛いことの方が多い人生の道のりをポジティブに照らしてくれているように思います。トゥルーエンド「黄泉」の最後には、今まで操作してきた彼や彼女の生き方を静かに肯定してくれるような締めくくり方が爽やかで良かったです。
ストーリーに散りばめられたSF的な設定や哲学的な蘊蓄に答える新章「もう一つの地獄」に関しては正直よくわかりませんでしたが、それを抜きにしても十分楽しめました。
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