みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

Life is Strange 2(PS4)

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Life is Strange 2
Dontnod
2020年3月26日
PlayStation4Xbox One、Steam

 

『Life is Strange 2』のストーリー2パターンクリア後の感想です。

※ルートや設定に関する記述はありますが、エンディングに関するものや、ストーリー中盤以降の重要人物などに関するネタバレはありません。

 

The Awesome Adventures of Captain Spirit

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まず本編の紹介の前に体験版として事前に配信された『The Awesome Adventures of Captain Spirit』というゲームの存在がありました。

配信前は「次の主人公は超能力も持った少年!」と宣伝されていて、いざ『The Awesome Adventures of Captain Spirit』をプレイすると良い意味で裏切られました。

主人公のクリス少年は自らを「キャプテン・スピリット」と称する、ヒーローに憧れる普通の少年。おもちゃに話しかけたり、宝の地図を作ったり、自らの設定の上で遊んでいるのですが、彼がそういった空想に耽ざるをえない世知辛い家庭の事情がだんだんとわかってきて胸を抉られます。

両親は離婚してアル中の父親に育てられているというクリスの現実部分と、空想のヒーローごっこ部分を行ったり来たりするゲームで、空想部分では様々な冒険が出来て楽しいのに事あるごとに現実が邪魔をしてきて、最後には父親の心無い一言で家を飛び出してしまいます。

ここで大半のプレイヤーは「このクズ親父ゆるせねえよ!」という気持ちになると思いますが、これが本編では選択肢により「ぶん殴ってもいいよ、責任持てるならね」となっていくのが面白い。

『The Awesome Adventures of Captain Spirit』では超能力を持たないクリス少年が空想によって現実から逃避する様が描かれますが、それが「本当に超能力を使えたら運命を変えられるのか?現実を変えられるのか?」という本編のテーマに繋がっていきます。

 

ストーリー

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2人の兄弟が主人公。

プレイヤーは兄のショーンとなって、弟のダニエルと共に行動します。この兄弟も『The Awesome Adventures of Captain Spirit』のクリス少年と同じく父子家庭なのですが、クリス家と違い父親が優しく、2人の子供達をとても愛しているのだと窺える場面が序盤で描かれます。この家族はメキシコから移住してきて、アメリカのワシントン州で自動車整備工をして暮らしています。

そんなある日、隣に住んでいるショーンと同じくらいの年代の人種差別野郎と兄弟がケンカになり、駆け付けた警官が勘違いして兄弟の父親に発砲して殺してしまった…と同時にダニエルが覚醒し大爆発!という目まぐるしい展開に。

爆発の損害と警官殺しの罪で追われる身となった兄弟は父親の故郷であるメキシコの街を目指して旅に出ます。

 

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ここからはもうほとんど『ウォーキングデッド』みたいなルートで。

祖父母の家で安全を手に入れたかと思えば警察に居所がバレて列車で逃げ、ヒッピーのコミュニティみたいなところで麻薬栽培のバイトをしても争いが起きて逃げざるを得なくなり…

まるでアメリカンニューシネマに出てくるような人物達と交流を深めたり対立したりしながらロードムービーのように物語は進行していきます。

ショーンはダニエルの保護者的な立場でもあり、ダニエルに対してとった行動が後々の展開にも大いに影響を与え、エンディングは大きく分けると4種類に分岐します。

 

超能力

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ダニエルの超能力は傷を癒したり空を飛べたりするタイプのものではなく、物体に対して力を加えて移動させたり爆発させることしかできません。

これってもう、子供が銃を持っている感じなんですよね。

ピンチの時に超能力を使うかどうかはプレイヤーが操作するショーンの意思に委ねられているのだけど、実際手を汚すのはダニエルなわけで、兄としては教育上弟に銃を撃たせるのは避けたいわけです。前作では主人公のマックス自身が超能力を使えたので、プレイヤーは純粋に自分の意思決定によってドラマが切り開かれていく感じを楽しめたのですが、今作では自分の選択によってピンチを切り抜けられたとしてもダニエルに悪影響が及ぶ可能性を考慮せざるを得ません。ショーンがメキシコへ向かうのも、道中で様々な悪事に手を染めるのも全て「ダニエルのため」だということが劇中何度も反芻され、そんなショーンの気持ちさえ汲まなければならないという、プレイヤーにとっては2倍の重みが選択肢にのしかかります。

 

人種差別と暴力

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このゲームに出てくる白人至上主義者による差別は本当に酷くて、そもそも最初の事件の発端が差別野郎が2人揃ったことが原因で起きているわけで、 生まれ持った肌の色だけで不当に差別され、時には暴行まで受ける少年の姿を見ると本当にいたたまれない気持ちになります。

これはトランプ大統領の移民に対する政策を反映していて、トランプ氏が大統領選の公約に掲げ、実現させたメキシコとアメリカの国境に建設された高い鉄壁はゲーム後半に兄弟の行く手を阻み、その時兄弟を拘束したのは警察ではなく白人至上主義者の自警団でした。

不法移民がアメリカで子供を産むと、その子供はアメリカ国籍を取得しますが、トランプ氏の「不法移民のみ強制送還」という政策によって家族から不法移民者の親だけを追放し子供だけがアメリカに残ってしまうという家族の分断問題はそのまま、家族の愛や教育を十分受けていないまま荒野に放り出されたダニエルの境遇と重なります。

こういった過剰な政治性は『ウォーキング・デッド シーズン2』(2013年)や『デトロイト ビカム ヒューマン』(2018年)など、近年の人間性を深く掘り下げたアドベンチャーゲームに顕著に見られる傾向ですが、今作ほど近年のアメリカで起きている問題にフォーカスを絞った作品はありませんでした。

兄弟が受ける人種差別という不条理な暴力と、家族が引き裂かれることにより発動してしまったダニエルの超能力という暴力を対立させることによって現在の社会が抱える問題点を浮き彫りにし、その方向性をプレイヤーに委ねるという表現方法は選択肢を軸としたアドベンチャーゲームの在り方を追求してきたライフイズストレンジというシリーズにとって避けては通れない道だったのでしょう。

 

まとめ

『Life is Strange 2』はシリーズ前作にあたる『Life is Strange: Before the Storm』(2017年)とは別の開発チームにより制作されたものですが、その根底にある「プレイヤーの選択によってどこまで感情を揺さぶれるか」という理念は一貫していて、これまでの3作品にそれぞれ異なるテーマを持たせることで表面的なゲーム性を削ぎ落しながら表現としては尖ったものになっていました。

しかしこの作品も「娯楽性」というゲームの呪いから完全には逃れられなかったのか、カルト教団ネタなどの派手なシナリオを投入することで本質から多少ズレてしまっていると感じられる部分もありました。

とはいえ今作がアドベンチャーゲーム史上重要な傑作であることに変わりはなく、ゲームというメディア及び、ライフイズストレンジのような人気作品がこのようなテーマ「も」扱えるという印象を強く与えたことには大きな意義が感じられます。

何よりもこの作品が持つ美しいビジュアルや音楽、演出が強化され、全体的な表現力が底上げされていることに驚かされました。

Dontnodの次の一手は果たしてどういうテーマを持ったものになるのか?

あれこれ想像しながら楽しみに待ちたいと思います。

 

 

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