シャーロック・ホームズ 悪魔の娘
Frogwares
2016年12月22日
PlayStation 4、Xbox One、Microsoft Windows
『シャーロック・ホームズ 悪魔の娘』を開発したのはウクライナのデベロッパー Frogwares。2002年から主にシャーロック・ホームズのアドベンチャーゲームを作り続けていましたが、コンシューマ移植の日本語(字幕のみ)ローカライズは今作が初。
クリア後の感想です。
※ネタバレなし
プレイヤーが操作するのは名探偵と謳われるシャーロック・ホームズ。
19世紀後半に作家のコナンドイルによって創作された推理小説の主人公であり、物語の舞台は18世紀末のイギリス。
産業革命によって労働者が都市に集中し、ロンドンでは切り裂きジャックによる売春婦連続殺人事件が起き、黒魔術のようなオカルトが流行していました。
不安が立ち込める当時の世相に対し、ホームズも決して明るいヒーロー像ではなく、偏執的で女嫌いな性格から、目の奥に狂気を覗かせる変人として描かれています。
相棒は医者のワトソン。彼の書いたホームズの伝記によってホームズの名は知れ渡っており、警察やファンの子供の助けを借りることも。
ゲームの流れ
事件現場での捜査や聞き込みによって集めた手掛かりを繋げていき答えを導き出すのですが、プレイヤーの推理によって選択肢が分かれ、最終的な答え(真犯人)は自ら決定しなければなりません。
これが本作の最大の特徴で、最終章を除けば事件の結末が全てプレイヤーに委ねられており、その選択が正しかったのかどうかは自分で納得するしかないわけで、捜査を早々に切り上げて疑わしい人物を逮捕することも出来てしまいます。
『デトロイト ビカム ヒューマン』に代表されるような、ここ数年のインタラクティブなADVゲームの手法は本作の探偵ロールプレイとの相性が非常に良く、没入感を高めてくれます。
時代的にオカルトを題材とした事件もあり、『流行り神』における「科学ルート/オカルトルート」の分岐とも通じるものがあります。
捜査中は特殊能力を使い、怪しい箇所を繋いで事件発生時の様子をシミュレーション出来たり、違和感を感じる場所やものを発見することが出来ます。
初対面の人物を観察し、推測した人物像を質問に織り込むという探偵ものでよく見る切れ者感を体験できるのも楽しい。
事件はホームズの拠点であるベイカー街だけに留まらず、工業地帯や暗黒街、想像の中の世界と様々で、アドベンチャー映画的な舞台も用意されていてゲームとしての満足度は高い。
マップを移動する際には馬車を使うのですが、ロード時間は長め。
ただ、この時間を利用してノートを開き事件の詳細を確認したり推理空間を開くことが出来るため、移動を念頭に置いてプレイするとロード時間を有効に使えます。この仕様は地味ながら素晴らしいアイデアだと思いました。
ロールプレイ
プレイヤーはゲーム内で天才探偵ホームズに成りきって捜査するわけですが、本筋の推理はもちろん、ありとあらゆる探偵仕事を体験できるといっても過言ではないほど。
よくあるピッキングや足跡追及はもちろん、薬品による復元や、繊維を顕微鏡で観察する際にもわざわざピンセットでつかんでプレパラートに挟んだりとディテールへのこだわりが凄く、手紙を開封する際にはまずやかんを火にかける所から始まり、最後には糊を塗りなおして閉じるところまでしっかりとやる。
しかもこれらのほぼ全てがスキップ可能。
細かい部分に過剰なこだわりを再現しながらプレイヤーには強制しないという配慮。
こうした細かい探偵のロールプレイを堪能することで、本作はただまっすぐストーリーを追うより何倍も楽しくなります。
QTEやパズルの難易度も難しすぎず、スキップできるものもあるので一連の捜査の流れさえ覚えれば、あとは名探偵に成りきってプレイするだけ！
まとめ
今まで多くの推理ゲームを遊んできましたが、有名な原作をベースとしながらここまでゲーム的なシナリオとロールプレイを実現させた作品はありませんでした。
18世紀イギリスという特殊な時代背景で展開されるドラマの中に散りばめられた証拠をプレイヤー自らの推理によって結末へと導くという一見複雑化しそうなシステムにも関わらず、難解すぎず、丁寧に描かれたキャラクター達にも感情移入できるので純粋な気持ちで推理に没頭できます。
シナリオ系ゲームでは実現できない探偵の細かいロールプレイがこれでもかと詰め込まれており、良い意味で「無駄が多い」。
３Dゲームで探偵ものを作るならこうあって欲しい、という願望がほぼ全て叶えられているアドベンチャーゲームの傑作。
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