みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

デスカムトゥルー(switch)

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デスカムトゥルー
トゥーキョーゲームス
2020年6月25日
Nintendo SwitchPlayStation 4AndroidiOSMicrosoft Windows

 

『デスカムトゥルー』はダンガンロンパシリーズを手掛けた小高一孝氏を中心に設立されたトゥーキョーゲームスによる一作目。

小高氏は日大出身で『クロックタワー3』(2002年)では深作欣二監督の下で助監督を務めたり、自主映画を撮っていた時期もあることから映像作品には造詣が深く、実力も実績も申し分ない経歴の持ち主。

 

今作は「実写インタラクティブムービー」という性質故、ネタバレ防止や作品に対する攻撃的な発言に対する警告が弁護士の署名付きで公式よりアナウンスされており、switch版ではスクリーンショットすら撮れない仕様となっています。

今回のブログではエンディング2種クリア後の感想を書きますがネタバレ&スクショなしのため、実写ゲームについて語りながら『デスカムトゥルー』がその中でどういう位置付けとなるかなどをつらつらと書いてみたいと思います。

 

ジャンル

「実写ゲーム」と一口に言っても『モータルコンバット』(1992年)のような格ゲーからサウンドノベルの傑作『街』(1998年)まで多種多様なジャンルがありますが、今作『デスカムトゥルー』は映画とゲームの融合を目指した「インタラクティヴムービー」という紹介がされています。

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インタラクティヴムービーで有名なのは初代PSで発売された『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』(1996年)というガンダムを無理矢理実写化した問題作がありますが、このジャンル自体が実写化で成功した例はほぼなく、今作『デスカムトゥルー』もこの系譜を正しく辿っていると言えるでしょう。

 

ADVゲームの選択肢

近年では『街』のザッピングシステムに近い複雑な分岐をリアルタイムレンダリングの3Dゲームに落とし込んだ『デトロイト ビカム ヒューマン』(2018年)によって分岐型のADVゲームは新たな領域に到達。若者を中心に人気を博した『ライフ イズ ストレンジ』(2015年)も同様に多彩な分岐による自由度の高いドラマを体験することが出来ます。これら近年のADVゲームではインターネットに接続することで自分が選んだ選択を世界中の何パーセントのプレイヤーが同じ選択をしたのかがわかるようになっているのですが、『デスカムトゥルー』にそういったシステムはありません。選択肢も正解と不正解の2択になっているため体験の個人差が生まれにくく、ADVゲームというよりは限りなく映画に近い作りになっています。

ただ、上に挙げた3Dゲームのような手法で実写ゲームを作るとなると役者の拘束時間が膨大になるので仕方がないのだとは思いますが、やはり『ライフ イズ ストレンジ』のようなゲームを通過した2020年に今作のような「手ぶらで直進してくる」タイプのゲームが発売されたということに多少の戸惑いは感じます。

 

実写ゲームとクソゲー

私は一時期クソゲーを蒐集していたのですが、中古ショップなどで実写ゲームを見つけた時は迷いなく買うようにしていました。実写ゲームにも名作はありますが、クソゲーコレクションを増やす近道として実写ゲームは買ってまず間違いはありません。

特に良いのがPS・SS時代の作品で、そのほとんどがゲームの体を成していなかったり、ムービー部分のみが実写の地味なADVゲームだったりと、定価で買った人がただただ気の毒になるタイプのものが多く、クソゲーとしては合格点に達している率が異様に高いジャンルなのです。

PS・SS時代にはキャラクターだけが粗い実写映像で背景がCGという作りのものが多く、そこから醸し出される違和感や異世界感にはゾクゾクするものがあり、そういった奇妙な感覚を逆手に取った『RAMPO』(1995年)や、粗い実写によってのみ表現できる空気感を2Dに落とし込んだ『夕闇通り探検隊』(1999年)などの名作も生まれているわけで、個人的には90年代こそ日本の実写ゲームのピークだったのではないかと思っています。

PS2時代になるとエニックスが『øSTORY』(2000年)、『the FEAR』(2001年)という、アイドルがいっぱい出てくる実写ゲームを立て続けに出しますが、映像がキレイになったことにより90年代の作品から感じられたある種のアングラ感が消え、単なるDVD作品のようになってしまいました。この2作品に共通する「クソゲー度の低さ」と「プロモビデオ感」は『デスカムトゥルー』と非常に近いものを感じます。

 

出演者

クソゲー蒐集というちょっとアレな趣味をこじらせることにより、映画を観る際にも中途半端な出来のものを見るよりは、なるべく酷い方向に振り切った作品を見たいと思うのがクソゲーマーの性。そして映画・ドラマにおける実写ゲームに相当するものが「人気マンガ・アニメの実写化作品」です。役者では特に藤原竜也小池栄子に注目していましたが、今作の主演である本郷奏多さんも着実に藤原竜也と同じ階段を上っている役者として目が離せない存在。

実写ゲームの主演という、普通の役者なら大なり小なり確実に火傷を負うような仕事でも本郷奏多さんのこれまでの実績を踏まえれば、これから続く長い藤原竜也道の一歩でしかありません。

今作には他にも豪華なキャストが揃えられていますが、佐藤二朗佐藤二朗が言いそうなことを言わせたり、アニメっぽい台本を実物の役者に演じさせることにより地味に長くスべったりしていてストーリーへの集中力を著しく損なってはいますが、常に本郷奏多さんが画面に映し出されている事により「奏多君がまた藤原竜也案件に巻き込まれている」という興味にシフトするので全く問題ありません。

 

昨今の実写ゲーム事情

『デスカムトゥルー』を絶賛している文章を読むとNetflixの『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』(2018年)を比較として出しがちなのですが、あまり似ているとは思えません。

『バンダースナッチ』におけるストーリーのわかりやすさや分岐の細かさ、視聴者が映像に介入するというメタ的ギャグの爽快で軽妙なバカらしさ等、どこを取ってもレベルが違います。

ブラック・ミラーというドラマシリーズ自体がVRやMMOなど、ゲームの可能性や危険性を映像の手法でもって切り込んでいるわけで、現在あらゆるジャンルのクリエイターのほとんどがゲーム世代のご時世に「これは映画なのかゲームなのか?」のようなキャッチフレーズ自体がとても陳腐に思えるので『バンダースナッチ』は比較対象として適格だとは思えません。

 

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さて、近年の国産実写ゲームと言えばスクエア・エニックスの『THE QUIET MAN』(2018年)があります。

無音のゲームを配信した1週間後に音声付きのゲームを配信して謎を解くミステリーアドベンチャーゲームですが、どうにも詰めが甘く酷評されてしまいました。

『THE QUIET MAN』はムービー部分が実写、ゲーム部分がCGで構成されていましたが、その2つの特徴が仕掛けとして機能していれば評価は変わったでしょう。この作品も結局は実写であることの意味を見出せないまま、開発者がロケに行ったり海外の俳優や憧れの脚本家との仕事に舞い上がって浮かれた様子だけが配信から伝わってきました(可愛げ)。

『THE QUIET MAN』のプロデューサーを務めた藤永健生氏はその後齊藤陽介氏のチームに引き取られたそうですが、この齊藤陽介氏こそ先に挙げた『øSTORY』『the FEAR』をエニックス時代に開発した人物で、初代PS『ユーラシアエクスプレス殺人事件』(1998年)を含めて3本の実写ゲームを開発。全部アイドルがやたらいっぱい出てくる「シネマアクティブ」というジャンルのもの。アイドル好きが高じてか2018年には女性バーチャルアイドルグループ「GEMS COMPANY」(通称ジェムカン)を結成。

2017年には自身が携わっていた『ドラゴンクエスト10』を題材にしたアニメ『ドラゴンクエストX 冒険者のきせき』を監督。2話目『どの職業で戦うか迷う話』では実写映像になり、主演は本郷奏多さん。

ちなみに齊藤陽介氏と小高一孝氏はゲーム対談番組などで見る限りではとても仲の良い関係に見えます。

 

こうして見ると、もはや日本の実写ゲームの未来は彼らの手に委ねられているのではないかとさえ思えてきますが、そもそも実写ゲームというのは「ジャンル」というよりは「手法」と言った方がしっくりきますし、小高氏がTwitterに書いていた「このジャンルが流行るかどうかは、今や皆さん次第ですよ!」という言葉も正直全くピンときません。

 

まとめ

今作『デスカムトゥルー』は『THE QUIET MAN』と同様、本当に心から買って良かったと思える貴重な実写ゲーム作品。ホリプロのタレントしか出ていない映画や、全然知らないAKBのメンバーが出ているホラー映画を観る感じでプレイすると丁度良い湯加減で楽しめます。

ネタバレや批判を徹底的に封じ込めようとする姿勢も、吉本が芸人に映画を撮らせていた時期と同じ空気が感じられてワクワクします。

『THE QUIET MAN』と違いクソゲー成分が若干足りていないので気を抜くと眠気に襲われる可能性があるので『劇場版 進撃の巨人 後編~自由への翼~』や藤原竜也主演『MONSTERZ モンスターズ』などの名作映画を観て耐性を付けておくのもよいでしょう。

今作『デスカムトゥルー』は2000年以降の日本の実写ゲームの文脈を寸分も外していない王道作品。

ただ、友人にこのゲームを薦めたところ、「時間を返せ」と言われてしまいました。

 

「このジャンルが流行るかどうかは、今や皆さん次第ですよ!」

 

実写ゲーム道はいつだってワイルドサイド。

 

 

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