Tokyo Dark -Remembrance-
Cherrymochi
2019年11月7日
今作『Tokyo Dark -Remembrance-』は2017年にSteamで配信された『東京ダーク』に新たなシナリオを付け加えた完全版。
開発のCherrymochiは、イギリス人プログラマーのジョン・ウイリアムズ氏と日本人の真保・ウイリアムズ氏によって設立されたインディーレーベル。
今作のコンセプトは「“日本に住む外国人”の視点や経験を採り入れたホラーテイストのストーリーが、スタート地点になっています」(真保・ウイリアムズ氏)とのこと。
海外のスクエアエニックスがサポートする日本を舞台にしたアドベンチャーゲームということで以前から注目していましたが、2019年にようやく(日本が舞台なのに!)コンシューマーでの日本語版が配信されました。
以下、作品の紹介とクリア後の感想です。
※ネタバレなし
主人公・伊藤絢美
プレイヤーは主人公である伊藤絢美(あやみ)という刑事を操作してゲームを進めていくことになります。最近流行りのシティポップを思わせるビジュアルですが、『攻殻機動隊』の草薙素子を意識しているとのこと。
所々でアニメーションやボイスが再生されます。
伊藤刑事の様々な表情が見られるイラストの数々も本作の魅力の一つ。
システム
プレイヤーは事件解決に向けて東京中を走り回り聞き込みをしていきます。もともとがマウスでの操作を想定して作られているためswitchでの操作は慣れるまで戸惑うことが多かったです。
多くの選択肢が出てきますが、ストーリーに分岐があるため先に事件の軸となるポイントに触れてしまうとストーリーが自動的に進んでしまうので注意が必要。
「SPINシステム」は会話や行動を選択することで変動し、シナリオやエンディングの分岐に影響します。今作のストーリーでは非現実な場面が多く出てくるのですが、いちばん上の「SANITY」(正気度)があることで、伊藤刑事の見る幻覚と現実との境界線を曖昧な状態に保留する効果がストーリーに奥行きを持たせています。
ストーリー
物語は伊藤絢美刑事の同僚であり恋人でもある田中刑事の失踪をきっかけにして、謎の少女「レイナ」(写真上)とキーアイテム「面」(写真下)を手掛かりに捜査を進めていきます。
新宿にあると囁かれる地下道のような都市伝説めいたダンジョンから北鎌倉や秋葉原など、関東の各地を移動する間に出会う多くの奇妙な人たちと接している内に東京の街全体が巨大なダンジョンのように感じられ、現実と非現実との境界線が曖昧になっていきます。
新宿のヤクザや秋葉原のメイド、鎌倉の巫女からカルト教団までが登場する展開の読めないスリリングなストーリーは一見の価値があります。
感想
最初は独特の操作感やシステムにかなり戸惑いました。
中盤まで進めることにより徐々に全ての要素が噛み合ってきて没入感を得られましたが、クセの強い登場人物たちには終始辟易させられました。
ネットフリックスのドラマ『パラノイド』では登場する刑事たちが皆なんらかの精神疾患を抱えていて、そんな彼らがサイコパスな犯人を追いかける姿がある種の喜劇として描かれていて面白いのですが、今作『Tokyo Dark -Remembrance-』も同じようにユニークなキャラクターがたくさん配置されているにもかかわらず上手く生かし切れていません。
なので、ストーリーの軸とはあまり関係ないキャラクターの自己主張の強さや話の長さが退屈に思えてしまいました。それにより、ただでさえ異色な本作の序盤の間口を狭めているのが残念。
後半は謎が次々に解明していって重要人物は余計な話をしないため、クリア後の作品の印象がサブキャラの無駄話ばかりに。
テキスト自体は多様な知識やユーモアにあふれていて興味深かったりもするのですが、会話としてはとても不自然に感じられ、ゲームとしては蛇足ではないかと。
とはいえ日本の神話と共に語られる本筋のストーリーはホラーやサイコサスペンスなど様々な方向に散らばりながらも最後にはしっかりと着地していて面白かったし、東京を巨大なダンジョンに見立てて日常と非日常の境界線を主人公の心理状態と重ねて描くというアイデアは素晴らしいと思いました。
今後続編、或いはCherrymochiさんの新作が出ることがあれば是非プレイしてみたいと思わせる良作でした。
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