OPUS-地球計画
SIGONO
2017年11月30日
Android、 iOS、 Nintendo Switch、 Microsoft Windows、 Classic Mac OS
クリア後の感想です。
台湾のインディーゲームスタジオSIGONOで制作期間9ヵ月、スタッフ4人によって開発されたゲーム。90分程度のプレイ時間を想定して作られ、ゲームとしては短編ですが、満足度は非常に高い名作です。
※ネタバレなし
ゲーム内容
ゲームの冒頭、望遠鏡で地球を探す人間(博士)とロボットの会話が出て来たかと思えば、暗転してロボットだけがロケットの中に取り残されている状況からゲームはスタートします。
主人公の汎用船外活動ロボットOP1414型(通称エム)を操作して広大な宇宙の中から地球を探すことになります。
ゲーム性は非常にシンプルで、望遠鏡で覗いた宇宙の中からレーダーを頼りに地球に似た星を探していきます。
ヒントがわかりやすく誰でも簡単に見つけられますが、1ターンの短さの中にもエムの会話とほどよい情報量により単調さを回避。
宇宙の孤独感と、その中に目的の星を発見した時の安心感が同居し不思議な感覚に陥ります。
途中から博士によく似た人工知能リサが登場し、エムとリサとの会話によりストーリーが進んでいきますが、基本的にやることはずっと同じ。にもかかわらず、この人間ではない二人の会話によりプレイヤーは激しく感情を揺さぶられ、エンディングまで退屈することなくストーリーを運ばせる演出が素晴らしい。
果たしてエムは地球を見つけることが出来るのか?
現在の地球は?博士は?
感動的なストーリーを是非体験してみて下さい!
ボーナス
ゲームクリア後に解放される「ボーナス」には開発者から日本のユーザーへ向けたメッセージを聴くことが出来るのですが、これがかなり興味深いものでした。
開発者が内に秘めるゲームやゲーム業界に対する批評性は真のインディ精神と呼べるもので、そういった反骨精神から今作が企画・開発され、見事成功を収めたことは感動的です。
ネット時代に突入すると人は自分の欲しい情報しか見なくなり、ゲームにおいても似たようなジャンルが世代別に用意され、同じものしか売れなくなってしまう現象が。
多様性は失われ、似たようなゲームばかりが並ぶインディゲームランキングに憤りを感じたことから「何か新しいもの」「ゲーム業界から失われつつあるものの復興」を目指して今作は作られました。
世代的には『ワンダの巨像』やFF・ドラクエシリーズに親しみ、ストーリー性の高いゲームを遊んできた彼らにとって、昨今のオンラインゲームやソーシャルゲームばかりが作られるゲーム業界に対する失望と焦燥感が創作の原動力となっているようです。
ただ今作が凄いのは、ひとりよがりのストーリー語りなどには決してなっておらず、ゲームシステムの核からストーリーを何度も書き直し、難易度も「他メディアに触れると感情が中断されてしまう」ことから適正なバランスに練られ、ナラティブとして相当突き詰められているということ。
「メインストリームと異なる作品作りで個性を出す」というSIGONOの挑戦は処女作である今作『OPUS-地球計画』において素晴らしい結果を出しましたが、課金要素に対しても断固「NO!」を掲げる彼らの今後の作品にも注目していきたいと思います。
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