地球防衛軍6
ディースリー・パブリッシャー
2022年8月25日
PlayStation 5、PlayStation 4
本作『地球防衛軍6』は、2017年に発売された『地球防衛軍5』の正統な続編。2019年にEDFプロジェクトとして発売された『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』とは開発も世界観も異なります。今作は『5』同様、サンドロットによる開発で、世界観は前作とあわせて前後編ともいえる内容になっています。
以下、ストーリークリア後(レンジャー、難易度ノーマル~ハード)の感想です。
※ネタバレあり
本作の特徴
このシリーズの主な特徴として
①日本を舞台としたマップ
②硬派な難易度
③カオスな戦闘
④会話によるストーリー進行
⑤豊富なハクスラ要素
が挙げられると思います。
では、そこにどのような変化が加わったのか?
①の「日本を舞台としたマップ」ですが、今回は前作の後の世界が舞台という事で、荒廃したイメージが発売前から公開されており非常に不安でした。これまでは、どこかで見たことがあるような鉄道模型風の架空の都市や農村など、戦闘の舞台として組み立てられながらも細かいこだわりが垣間見えるマップが魅力的だったのですが、ポスト・アポカリプス的な荒廃したマップだけでは飽きが早いのではないか、と。
しかし、そんな不安は杞憂に終わりました。過去現在未来の円環構造から成るストーリーによって前作以上のバリエーションを感じさせるマップが楽しめます。前作からの「使いまわし」が編み込まれたストーリーは、下手をすればチープな印象を与えてしまいそうなアイデアですが、「それ」が発動するチャプターのインパクトは相当に衝撃的。プレイヤーを一気に物語の中に引き込む力を持っています。
②の「硬派な難易度」は初期作においても評価されていた点ですが、フルプライスとなった3作目からは他の作品と比べられてしまうため、単純に「敵が固い」や「処理落ち攻撃」はマイナス要素にもなりえます。それを補う⑤「豊富なハクスラ要素」も初期の『SIMPLE2000シリーズ』という低価格ゆえの工夫として歓迎されていたもので、ここら辺の兼ね合いは前作においても若干不安定なバランスだったと思います。前作ではレベル上げをしなければ難易度イージーでも初心者には厳しいステージがいくつかありましたが、今作ではレベル上げをしなくともノーマルモードでストレートにクリアできる難易度に落とされていたように感じました。昔からのファンには賛否あるかもしれませんが、入り組んだストーリーを理解するには良い調整であったと思います。
視界がモンスターとその残骸で完全にふさがれるほどの③「カオスな戦闘」もシリーズの大きな特徴ですが、今作では終末世界の不穏な色彩と混然一体となり、サイケデリックともいえる、眩暈を覚えるような美しさがあります。特に爆弾を抱えたアンドロイドが連鎖的に爆発していく様は圧巻。そうした中で④の「会話によるストーリー進行」があるわけですが、戦闘がとにかく忙しすぎて全く聞き取れません。今作から自動的に字幕が入るようになったものの、それを読む余裕ももちろんない。ただこれもシリーズの特徴として、毎回同行している隊員や無線から発せられるセリフがバカバカしいほどに過剰で大袈裟。それがループするストーリーにより何度も繰り返されて笑いが増幅し、嫌でも頭に残ってしまう。これまでシリーズを通して貫いてきた様式美をこの一作の中に詰め込んだような構造になっているので、人によってはうんざりするかもしれませんが、シリーズの良さを生かした演出であることは間違いなく、そのループから脱した時の感動的な景色も用意されているので一見の価値あり。
感想
今回感想を書くにあたり過去作(4.1)を少しプレイしてみたのですが、思ったよりも変化はありませんでした。にもかかわらず新作が発売されるたびに新しい驚きがあり、シリーズ独自の良さも保持されている。近年では新作が出るたびマンネリ感を指摘される本シリーズですが、それは百も承知の芸風であると思います。
仮面ライダーや戦隊シリーズを手掛けた平山亨は自身が関わった特撮番組に関して「マンネリの美学」を標榜していました。これは戦前戦後の時期に量産され、70年代には廃れかけていたチャンバラ映画や西部劇の復興を目指したものでした。戦隊ヒーローやアンパンマンなどの低年齢向けコンテンツは短期間での絶え間ない世代交代や玩具販売により長寿番組として成功を収めているものの、常に変化が求められる大人向けのエンタメでのマンネリな姿勢はネガティブなイメージを持たれてしまい長続きしにくい。では何故『地球防衛軍』というシリーズがマンネリを許されているどころか作品を重ねるごとに売り上げを伸ばし続けられているのか。それには様々な理由が考えられますが、私が最も強く思うのは「似た作品がない」という事に尽きます。地球防衛軍というシリーズは一貫して日本という舞台設定と、日本の特撮作品へのオマージュを散りばめながら『インデペンデンスデイ』的な大規模な侵略者との戦争を描いてきました。ハリウッド大作から白人的なイデオロギーが脱色されたヒーロー賛美やUFOカルトネタは、その滑稽さだけを上手く抽出しながら「無害なオカルト」に置き換えられ、独自の世界観を形成します。
本作『地球防衛軍6』は、シリーズがこれまで作品を重ね続けてきたことによる、熟成されたコクのようなものを最も堪能できる良作に仕上がっていると思います。
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