バイオハザード ヴィレッジ
カプコン
2021年5月1日
PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Xbox One、Microsoft Windows、Google Stadia
『バイオハザード ヴィレッジ Z バージョン』クリア後の感想です。ネタバレ防止のためストーリーの核心には触れないようにしますが、大まかな設定や序盤に関する記述は含まれます。
前作『7』との繋がり
本作『バイオハザード ヴィレッジ』は2017年に発売された『バイオハザード7 レジデント イービル』の正統な続編。「Village」の「Vill」がローマ数字の「8」を表している。
ゲームの主人公は前作と同じくイーサン・ウィンターズ。ゲームエンジンは最新のものとなっていますが、フォトリアルを基調とした一人称視点のシューターという基本部分は変わらず。
物語は前作で生き延びたイーサンが、嫁のミア、娘のローズと仲良く暮らしているシーンから始まります。
人気のあるホラー作品の続編というのは往々にして敵側(怪異を起こしている側)を中心に作られがちですが、本作では「そもそもイーサン一家に問題があるのでは?」という、前作で匂わせていた主人公側の謎に焦点が絞られています。
「よくわからないことに巻き込まれている自分自身(イーサン)がそもそも何なのかわからない」という、プレイヤーの置かれた状況が面白い。
序盤の演出が秀逸
序盤ではやたらと暗い廃屋に入らなければならなかったり、そこにある冷蔵庫を恐る恐る開けるなど、前作で強調されていた生理的嫌悪感を漂わせていますが、それら全てを吹き飛ばす衝撃的かつ圧倒的な暴力により『バイオハザード ヴィレッジ』という未知の世界が幕を開けます。そして、個性的すぎるボスキャラ勢揃いでの威圧は「ああ、今からこいつらが支配するステージを一つずつ回って、最後に真ん中のやつを倒すんだな」と誰もが思うであろうし、実際その通りになります。
前作のベイカー親子登場シーンを踏襲しつつ、より単純化され、スケールだけが大きくなっている。序盤におけるここまでの疾走感、そして圧倒的な理不尽感はこの上なく爽快で、ワクワクが止まらない!
それに加え、ゲームを進めて行けば行くほど気になるイーサンのボヤキや、ゲームの都合上の問題だと思っていたイーサンの特殊能力への不信感は高まり、「一体自分は誰を操作して何に巻き込まれているんだ!?」という理不尽感が増幅されていく。
前作でもイーサンをしつこく追いかけまわし、何度殺しても蘇る「ジャック」という理不尽極まりない存在がいましたが、今回はストーリー体験としての理不尽が強調されており、ゲームプレイとの相乗効果で前作とは異なる新しい体験をプレイヤーに与えてくれます。
探索と収集
今作ではお金を使って買い物が出来ます。お金は敵が落としたアイテムを売ったり拾ったりして手に入れることが出来、お店では武器の改造やカバンの拡張、食材を渡して作ってもらえる料理でステータスを上げることなどが出来ます。
今作ではとある村を拠点に攻略を進めて行くのですが、広い村マップの四方にボスのエリアが用意されており、何かと忙しいボス戦の合間に立ち寄る村の探索は解放感が感じられ、気持ち的にも余裕が出来るのでとても良かったです。
お店をフルに使うことになるのは2周目ですが、ノーマルモードの1周目でも気分転換の役割をしっかりと果してくれます。
今回は謎解きが比較的優しくなっていますが、隠しアイテムなどの収集要素が強まり探索の楽しさは増しています。
戦闘
戦闘に関しては、特にこれまでのシリーズにはなかった新しさみたいなものは見当たらないし、中盤の水辺にいるボスとの戦闘は動けるエリアが狭いだけの退屈なものでしたが、基本的にはどのボスも総合的な演出込みでデザインされているので大きなマイナスにはならない。ボスに辿り着くまでの仕掛けは意表を突くものが多く、最後まで緊張感が途切れません。
ただ、少ない弾でやりくりしている所に無数のゾンビに囲まれて絶望するような、かつてのバイオにあった緊迫した状況というのは本作の構造的には生まれにくく、個人的には今さら欲しいとも思わないのですが、こうした難易度調整に関してはバイオハザードというシリーズに何を求めるかによって評価が分かれるでしょう。
ストーリーと関係ないマップにも強敵や罠が仕掛けられていたりと、細かい遊びが随所に用意されていて、ノーマルモードでも最後まで気が抜けない演出は緊張感を保ちながらプレイヤーを確実にクリアまで導いてくれるという意味で素晴らしい。
感想
前作と同様、ホラーゲームというジャンルにおいて、ここまでビジュアルの美しさを生かしきった作品というのは他に見当たりません。レールプレイでの自由度の高さもストーリーの疾走感を損なうどころか、心地よい休息を得ることで逆に止め時を失います。主人公のアイデンティティを揺さぶり続ける事で、これまでのシリーズとの差別化を図りつつファンサービスにも抜かりがない。
バイオハザードの新作としても『7』の続編としても、これ以上のものは想像が出来ません。
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