みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

龍が如く 維新!極(PS4)

龍が如く 維新!
株式会社セガ
2023年2月22日
PlayStation 5、PlayStation 4Xbox Series X|S、Xbox OneWindows、Steam

 

本作『龍が如く 維新!極』は、2014年2月22日にPS3PS4で発売された『龍が如く 維新!』のリメイク作品。
以下、クリア後の感想。

※ネタバレなし

 

個人的には原作である『龍が如く 維新!』のPS4版をクリア済みで、本作もPS4で遊んだのだが、ゲームの内容は基本的には変わらず、クリアにかかった時間もほぼ同じだった。
なぜこういった作品が制作されたかといえば、龍が如くシリーズの海外展開はナンバリングに限定されていたのだが、一部の海外ファンの中でスピンオフ作品も遊びたいという要望(主に欧米圏)があり、国内で評価の高かった『龍が如く 維新!』を最新の機種でも遊べるようにリメイクしたという経緯がある。
なので、本来ならばPS5で遊ぶのが正しいのだが、まだ持っていないので仕方なくPS4でプレイ。

 

序盤こそロード時間の長さが少し気になったが、許容範囲ではある。
それよりも気になったのはキャラクターの造形だ。これまでの龍が如くはドラゴンエンジンというセガ独自のゲームエンジンで開発されてきたのが、今作はアンリアルエンジンに変更されている。これに関してプロデューサーの横山昌義氏は以前の造形を再現するのに相当な苦労があったことをインタビューで語っている(ちなみに、今後発売予定の『龍が如く7外伝 名を消した男』や『龍が如く8』はドラゴンエンジンで制作される)。

実際にプレイしてみると、ムービー画面は違和感なく見れるのだが、それ以外のシーンでは違和感が目立つ。特に主人公である桐生一馬(坂本龍馬)の顔はこれまでに総計数百時間見てきた馴染みのある顔なので、ほんの少しの違いが気になってしまう。
テクスチャの欠けなのか、陰影の問題なのかわからないが、「この人、こんな表情したことあったかな?」と思う場面がしばしばあった。はっきりとした原因は分からないが、プレイ中にキャラクターが消失するバグに幾度か遭遇したので、ハードのスペックが関係しているのかもしれない。

 

ストーリーは壮大で、史実とフィクション、そして「龍が如く」が合体した物語が展開される。各キャラクターのかっこいい見せ場が随所に配置され、ここぞというタイミングで派手な事件が起こる。伏線がいくつも張られ、次から次へと提示される謎が短いスパンで解き明かされ、そこで判明した真相が次の謎を呼び、物語の確信へと迫っていくスリリングな展開はプレイヤーを飽きさせない。
…と言いたいところだが、実際やってみるとそこまで興味が継続しない。
序盤こそ純粋に楽しめはするが、中盤からは食傷気味になってくる。仲間だったはずの人物が勘違いして襲ってくるが倒してみると実はブラフやフェイクで、真相を知りたければついて来いと言われた先で倒した思いがけない人物から聞かされた衝撃の真相も実は…みたいな展開が続きすぎて、物語の核心に迫る終盤頃には何もかもどうでもよくなってくる。
原作が発売された2014年は時期的に『龍が如く5 夢、叶えし者』(2012年)と近いが、内容的にも近いものがある。シリーズが歴史を重ね、キャラクターや組織が増えていく中で、それを生かしたストーリーは二転三転どころではない展開を見せるが、一本の作品としてのまとまりを欠く。シナリオ自体は矛盾なく納得できるものにはなっているが、終盤に向かっていく際のカタルシスは失われる。原作をプレイした当時はこれが「龍が如くクオリティ」だと納得していたが、以降に発売された『龍が如く0 誓いの場所』(2015年)『JUDGE EYES:死神の遺言』(2018年)『龍が如く7 光と闇の行方』(2020年)などの傑作を通過した現在では物足りなく感じてしまう。

 

では、もう既に原作をプレイ済みの龍が如くファンが本作をプレイする価値があるかと問われれば、十分にプレイする価値が「ある」と言えるだろう。
本作は原作とほとんど同じ作りにはなっているものの、メインキャラクターの多くが原作発売以降の作品に登場するキャラや俳優に一新されている。俳優の変更はもちろん新鮮ではあるが、『龍が如く7』で仲間として活躍した「足立 宏一」「ハン・ジュンギ」「趙 天佑」が新選組のメンバーとして登場するので『龍が如く7』のファンならば間違いなく楽しめる。

 

竜馬の妻となる「おりょう」役が桜庭ななみからオリジナルキャラクターに変更されたのは最初残念に思ったが、造形的に非常に良く出来ていて、プレイしていく過程で自然と馴染み、忘れられないキャラクターとなった。

 

サブクエストは相変わらず面白い。これはもう保証付きのクオリティだ。
ナンバリング作品では主人公たちが刑務所に長年服役していたり中年だったりで世間に疎く、そこを上手くついたリアルタイム感のあるサブクエストが魅力なのだが、時代劇ではその手法は封印される。にもかかわらずファンを納得させるに十分な面白さが保たれているのも本作の凄いところだ。ちなみに、サブクエストだけに登場するキャラクターも一部最新のものに置き換えられている。

 

本作はある意味、龍が如くファンにとっては祭りのような作品となっており、期待に十分応えるサービス過剰な遊び要素にあふれている。その波に乗れさえすれば、先ほど挙げたストーリーの弱点も軽く飛び越えられるような高いテンションを保っている。何はともあれ、龍が如くという作品が、名越稔洋という巨大な柱を失っても間を空けずにクオリティの高い作品をリリースし続けることは喜ばしく、また今後すぐに発売される『龍が如く7外伝 名を消した男』に対する期待を高めるうえでも「プレイしてよかった」と思わせてくれる良作であった。

 

 

©SEGA

台北大空襲 Raid on Taihoku(Switch)

台北大空襲 Raid on Taihoku
迷走工作坊
2023年9月21日
Nintendo Switch、Steam

 

本作『台北大空襲 Raid on Taihoku』は、台湾のアナログゲーム開発株式会社「迷走工作坊」による作品。本作は同社によるアナログゲームが原作となっている。

 

本作の世界は史実を基に組み立てられたディテールの上に、戦渦に巻き込まれた少女の視点で描かれている。
日本では今年2023年4月から広島の原爆投下を題材としたマンガ『はだしのゲン』が学校教材から削除されたが、台湾においても本作のテーマである第二次大戦下の出来事の多くが教科書から削除されており、現在60歳以下の多くの台湾人が空襲の事実を知らない。或いは、空襲の事は知っていても、どこの国から受けたものなのかがわからないという。
そうした現状を踏まえ、本作は終戦となる1945年当時の台湾の歴史を台湾・日本・アメリカの人たちに正しく認識するきっかけを与えてくれる作品となっているだろう。

 


第二次世界大戦中に台湾に対して行われた爆撃は15,908回。投下された爆弾84,756個、焼夷弾35,463個、投下された爆弾の合計は120,219個、総重量20,242トンであった。

 

死者6,100人、行方不明435人、重傷3,902人、軽傷5,335人


2017年4月6日公開の「The News Lens」の翻訳記事 TNL 編集部 翻訳者:椙田 雅美

 

これらの数字が指し示す事実だけでも当時の台湾の惨状がわかるし、それが歴史から消えかけていることには危うさを感じる。
迷走工作坊の代表・張少濂氏は本作を制作するきっかけに彼の祖父からの影響を挙げているが、これは同じく台湾の歴史を描いたゲーム『返校』においても、作者の祖父からの話を基に制作されたという経緯が語られているのが興味深い。
終戦までの50年間、台湾は日本の統治下にあり、多くの日本的な文化が取り入れられたが、戦後に中国が統治する際にそれらの多くは排除された。本作のオープニングでは神社の鳥居などが描かれているが、このような約80年前の台湾の風景を知る者は現在ではほとんどおらず、そうした失われた風景を伝えているのも本作の重要な特徴のひとつだ。

 

さて本作はマイニンテンドーストアの発売予定のラインナップに加わるのも遅く、プロモーション映像もないため、ゲーム内容が非常に伝わり難くなっている。一見するとストラテジーゲームとも受け取れるスクリーンショットもあるが、実際はステルス要素の強いサバイバル系の内容になっている。
ゲームは主に、主人公の少女「清子」を操作してマップを探索するパートと、俯瞰視点によるサバイバル要素の強いパートにわかれている。

 

サバイバルパートの清子は攻撃が出来ず、傘を開いて子供が投げてくる石を防いだり、爆撃の隙を見てゴール地点を目指さなければならない。体力ゲージが存在し、0になるとゲームオーバー。
時には相棒の犬と行動し、2つのキャラクターを操作してギミックを解いていくことも。Switch版では清子を左スティックで、犬を右スティックで同時に操作する『ブラザーズ: 2人の息子の物語』と同様のボタン配置がとられている。
それに加えて泥棒や特高警察に見つからずにゴール地点を目指すステルス要素の強いステージもいくつか用意されており、小石や煙幕などを上手く使い敵をまく必要にも迫られる。

 

ストーリーは空襲によって記憶の一部が失われた清子が、多くの人との交流を通じて徐々に記憶を取り戻すことで、自分が台湾人として今何をすべきかを確信するに至る経緯が描かれる。
サバイバルパートでは進行に従い難易度が上がり、最初は弱弱しかった清子が逞しくなっていく実感が持てるが、それに伴いアドベンチャーパートの清子の現実に立ち向かう意志も強くなっていく。
日本のアニメ『火垂るの墓』や『この世界の片隅に』に強い影響を受けているということもあり、人間の多面性や、戦争の悲惨さを伝えるための残酷表現も多い。

 

いたるところで手に入るアイテムや人々との会話内容からは当時の台湾文化が垣間見え、とても興味深いものになっている。

 

制作者のインタビューでは「台湾の若い世代の多くはこの歴史的出来事を知らず、中には日本が台北を空襲したと勘違いしている人もいます※」(迷走工作坊・KJ氏)とあるが、本作中では当時の日本兵などによる露骨なアジア人差別が描写され、空襲の人災的な側面と同時に人権が蹂躙されていく恐怖をも同時に描いている。これは決して日本人に悪意を持たせる意図ではなく、戦後の台湾を統治した蒋介石による白色テロを題材とした『返校』と同じく、現在の台湾人のアイデンティティが確立される過程において、彼らの祖父の世代が何と戦ってきたのかを知る上で重要な事実であり、当然発露したであろう感情だと言える。そうした意図は、クリア後の「国民政府が来たから、もう大丈夫。」という清子のセリフに明確に表れている。

 


※サバイバルADV『台北大空襲 Raid on Taihoku』―台湾でも、中には日本が台北を空襲したと勘違いしている人も【開発者インタビュー】2023.4.13 Thu 19:30 gamespark.jp

 

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マフィア コンプリート・エディション(PS4)

マフィア コンプリート・エディション
Hangar 13
2020年9月25日
PlayStation 4Xbox OneMicrosoft Windows


本作『マフィア コンプリート・エディション』は、2002年にPCゲームとして発売された『Mafia: The City of Lost Heaven』のリメイク版。原作のコンシューマー版はPlayStation®2で2004年に発売されたが日本では未発売。評価の高かったマフィアシリーズの一作目は、しかし日本ではプレイ環境の敷居が高いPCゲーという印象が強かったが、この度ついにPS4で気軽にプレイできるようになったのは嬉しい限り。
シリーズの過去3作の世界売上は1,890万本。
原作の開発はチェコ共和国のゲーム製作会社イリュージョン・ソフトワークスだが、リメイク版は『マフィアIII』(2016年)を手掛けたHanger 13が担当。ちなみにHanger 13には元イリュージョン・ソフトワークスのスタッフも在籍している。

 

重厚なストーリー

物語は主人公であるトミー・アンジェロの回想により過去から現在までを振り返る形で語られる。聞き手は刑事ノーマン。マフィアシリーズではお馴染みの構成だ。
1930年代のアメリカ、イリノイ州。シカゴをモデルとする架空の都市「ロスト・ヘヴン」を舞台とし、タクシー運転手として働く若き日のトミーの視点からゲームは開始される。

 

とある日の仕事中にマフィアのいざこざに巻き込まれ、ロスト・ヘヴンで大きな影響力を持つ「サリエリ・ファミリー」を紹介されるトミー。その後も仕事を受け続ける中で、次第にマフィアの世界にどっぷりと浸かっていくことになる。
敵対する組織との抗争、警察や政治家との癒着、暗殺などの仕事をこなすうちにドンであるサリエリの信用を得てファミリーの一員となる。そうした中でトミーの人格が徐々に変化していく様が段階的に描かれていく。
禁酒法時代のアメリカで酒を密売することで利益を得ているサリエリ・ファミリーだが、組織内の何者かが薬物の取引をしていることが発覚し、後半では組織の解体ともいうべき事件に発展。

 

ファミリーとは名ばかりで仲間を平気で裏切る非情さや、妻に血の付いたシャツを洗わせるなど、マフィアのネガティブな面を強調した描写は映画『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』を思わせる。

 

マフィアという組織を描く本作において、特筆すべきはその個性豊かな登場人物たちだろう。
トミーとの関係性を築いていく中でギャングたちそれぞれの憎めない面やだらしない面、母想いな一面など、それらが序列や疑心暗鬼、出世欲などにより捻じれていくドラマには悲哀を感じずにはいられない。2002年の時点でこれほど重厚なストーリーをゲームで実現できていたことに驚く。

 

オープンワールド勃興期

本作はアメリカの都市ロスト・ヘヴンをオープンフィールドによって緻密に構成してはいるが、プレイヤーがインタラクトできる部分はほとんどなく、オープンワールドというよりは映画の豪華セットといった趣きとなっている。原作が発売された2002年は前作からより自由度を増した『グランド・セフト・オートバイスシティ』が発売された年でもある。前年に発売された『グランド・セフト・オートIII(GTAⅢ)』により、広大なマップをシームレスに移動できるオープンワールドというジャンルが広く認知され、それを模倣した作品が雨後の筍のように沸いた。それらのほとんどはGTAにはとても及ばないクオリティのものが多く「GTAクローン」という蔑称で呼ばれることとなる。
当時のオープンワールドと言えばGTAに倣い、都市を舞台とし、街中の車を盗めるものがほとんどであった。

 

Mafia: The City of Lost Heaven』にももちろんそうした条件が満たされてはいるのだが、その他の要素を極力削ぎ落してストーリーに重きを置いたのは英断と言えるだろう。同年の12月に発売された『TheGetaway』も同様の方向性を志向していることから、GTAⅢ発売の翌年には既にこうした模索が行われ、一定の成功を収めていたことが窺える。後年、ロックスター・ゲームスから発売された『グランド・セフト・オートIV』(2008年)や『L.A.ノワール』(2011年)が、素晴らしいストーリーを持つ作品だったにもかかわらず各方面から批判を浴びたことを考えると、2006年の『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』あたりからオープンワールドの定義が都市や窃盗というGTA要素から離れ、マップの広さと自由度に傾いていったのがわかる。

 

2023年現在の観点からすると本作はオープンワールドとは言えないが、発売当時の2002年のオープンワールドの条件は満たしているといえるだろう。これだけ緻密に都市を形成しながら、重厚な物語を体験する際、プレイヤーに「広さ」というリアリティを演出するためだけの役割しか与えられていないというのは、なんと贅沢なことか。ゲームプレイ自体もごく一般的なTPSの枠を越えていないにもかかわらず、多彩なロケーションやストーリーによって新鮮さが常に保たれている。

本作をリメイクするにあたり、余計な手を入れず、人物やマップの描写力を向上することだけにこだわったのは正解だ。本作では主人公が所持する現金や武器もストーリーに合わせて用意されるため、プレイヤーの操作がトミーの人格やストーリーに影響を与えることはない。しかしプレイヤーは、いかにもゲーム的な手垢のついた自由度と引き換えに極上のストーリー体験を手にするだろう。それほどまでに、本作が目指した方向性は、明確で、太い。

 


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俺の有休恋物語(Switch)

俺の有休恋物語
qureate
2023年5月18日
Nintendo Switch、Steam

 

本作『俺の有休恋物語』は、qureateによるCEROレーティングマークのD区分(17才以上対象)の恋愛アドベンチャーゲーム
qureateは株式会社アートアンフから美少女ゲームブランドとして独立し2018年に創業、2021年に設立。
代表取締役は元ディースリー・パブリッシャーのゲームプロデューサーでもあった臼田裕次郎氏。
主にNintendo SwitchとSteamで作品を発表していて、ここ4年で14作品をSwitchで配信。際どいエロ表現を売りとしていますが、去年Switchで配信予定だった『マッサージフリークス』が発売前に配信延期になったのは記憶に新しい。代表作はタワーディフェンス系の『デュエルプリンセス』(2022年)や脱出系ホラーの『廃深』など。
個人的には去年配信された『ノゾムキミノミライ』をプレイ済み。

 

『ノゾムキミノミライ』(2022年5月19日配信)

『ノゾムキミノミライ』は就職氷河期世代の女子大生「臼井咲千(うすいさち)」の部屋に住み着く座敷童となり、彼女をより良い未来に導くという『ROOMMANIA#203』(2000年)にギャルゲー要素を掛け合わせたような異色作でした。操作性など諸々上手くいっていなくて全然面白くはなかったんですけど、ゲームシステム自体にはかなりそそられるものがありました。
臼田氏のこれまでのプロデュース作品を見てみると、料理とパズルを掛け合わせた『THE 熱血!炎のラーメン屋』(2014年)とか、とにかく何かと何かを掛け合わせることに異常なこだわりを感じます。
何というか、信頼はあるけどハードルも低い。臼田氏のようなクリエイターこそ常人には発想できない奇ゲー珍ゲー、あるいは大傑作を生みだすのではないかというクソゲーファンタジーが特定のゲーマーの中にはあるような気がします。かくいう私も『ノゾムキミノミライ』のプロモーションを見ただけで胸が躍り速攻で予約購入。本作『俺の有休恋物語』のギャルゲー×ぼくなつという合わせ技も、若干想像できはするものの、それでも何かが起こりそうな予感がして迷わず予約購入してしまいました。

 

本作は、仕事に疲れ果てた主人公が昔住んでいた田舎で2週間の有休を過ごすという話なのですが、別に主人公の実家があるわけでもなく、前方から偶然揃って歩いてきた幼馴染の3人の美少女の家に転がり込むことになります。少女たちの両親は既に亡くなっていたので、4人だけの束の間の共同生活を送ることに。

 

3人の少女にはそれぞれ好感度のパラメーターがあり、「釣り」「畑仕事」「ゲーム」をすることで個別に上げていくことができます。主人公はこのど田舎に現金500円しか持ってこなかったので、釣った魚や畑で取れた野菜、道に落ちている昆虫を駄菓子屋で売って金策。お金の使い道は主に「釣りの餌」や「野菜の種」といった消費アイテムとゲーム代、あとはqureateのキャラクターがデザインされたコレクション性の高いメンコ。メンコは一枚でも持っていれば駄菓子屋のゲームコーナーで本作中の登場人物たちと対戦可能。メンコバトルのテンポの悪さは若干ぼくなつっぽさを感じさせてくれます。

 

駄菓子屋にはメンコ以外にも「モグラたたき」や「スーパーボールすくい」などいくつかのミニゲームが用意されていますが、これが結構良く出来ていて面白い。ついついゲームばかりに夢中になってゲーム好きヒロイン「響」の好感度だけが爆上がりしてしまいました。

 

好感度が上がるとイベントが発生。このイベントを期限内に達成していくことがトゥルーエンドの条件となっています。9日目に分岐が発生するので、それまでに全員分のイベントを見てセーブしておくと楽に全てのエンディングを見ることができます。

 

ぼくなつ要素よりもギャルゲー要素が強めで、登場人物も少なく、寄り道する意味があまりないので攻略自体は割と簡単。ストーリーも特に猟奇事件に巻き込まれたりループしたりロボットに乗るということもなく、淡々とした日常描写に終始。ゲーム開始当初こそヒロインたちのお色気演出に気を取られますが、ある程度慣れてくると釣りやアイテム拾いなどのゲームプレイが中心となっていく。とはいえ、基本的にはヒロインのイベントを回収していくだけで、主人公の成長要素がないので、二つのゲームジャンルが乖離することによる若干の気持ち悪さは拭えず。

 

エロ要素は主にドラゴンボール亀仙人そっくりのタヌキが担っており、特に大したエピソードも用意されていないので後半は空気。タヌキを喜ばせるための女性下着が道端やカフェの中に落ちているのは不自然すぎて面白いけど、ネタとしては出オチ感が強いので、やっぱり後半空気。
ただ、こうしたギミックに飽きる前に有休が終わってしまうので、ゲームとしては最後まで十分楽しめました。エロ表現はハプニング的なイベントの一部でしかなく、良くも悪くも印象の薄いヒロインたちとのひと夏の青春を楽しむことを目的としたゲーム。『ノゾムキミノミライ』と同様、プロモーションの時点で全て出し切っている感のある作品ではありますが、ゲームとして最後まで楽しませようという配慮がなされているのは好印象。

あと、亜舞音エンドのウエディングドレスのデザインには笑わせてもらいました。

 

 

©2023 qureate

Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-(PS4)

Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-
The chinese Room
2015年8月11日
PlayStation 4、steam

 

本作『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』は、イギリスのブライトンを拠点とするThe chinese Roomによるインディゲーム。
The chinese Roomは2008年に制作した『Dear Esther』というゲームにより一躍有名となった。
本作のレビューをするにあたり『Dear Esther』のスマホ版をプレイしたが、現在日本語訳はsteam版の有志によるパッチのみが存在し、日本語だけで全貌を理解するのは難しい。

 

Dear Esther

『Dear Esther』は『ハーフライフ2』のMODとして制作され、その美しいビジュアルと音楽、謎めいたテキストにより多くのユーザーの称賛を浴びたが、そのゲーム性の薄さと、移動手段が徒歩しかない(走ることも出来ない)ことから「ウォーキングシミュレーター」と揶揄された。その後、多くのフォロワーによる優れた作品が数々と制作されたことにより、ウォーキングシミュレーターはゲームにおける一つのジャンルとして認識されることとなった。

 

Copyright © 2018 Sumo Digital Ltd

『Dear Esther』は基本的に一本道のマップを延々と歩きながら主人公の男のしゃべるセリフ(手紙の断片)を聞くだけのゲームだ。しかし、聖書やウィリアム・S・バロウズの作品から引用されたテキストはプレイヤーの想像力を掻き立て、多くのファンによる考察が異様な盛り上がりを見せることとなった。手紙の相手であるEstherという女性とはいったい何者なのか。また、プレイヤーが操作している人物とEstherとの関係性も明言されることはない。ゲーム性を欠き、説明不足のテキストを軸としながらも『Dear Esther』が何故これほどまでに多くの支持を集めたかは、実際にプレイすることでその一端を垣間見ることができる。
ゲームは、小さな島をぐるりと回り、洞窟を抜け、中心部にある鉄塔の上に登り、そこから飛び降りることで終わる。これが主人公の身体の暗喩であるという考察は一定の説得力を持つ。

 

幸福な消失

さて、本作『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』も、基本的には『Dear Esther』のゲームシステムを踏襲しているといえる。
舞台はイギリスのハンプシャー。マップは架空の田舎町ヨートンと、現在閉鎖されている天文台「VALIS」からなる。ゲームを開始するとVALIS天文台に勤務するケイトというアメリカ人女性の独白を聞かされ、その後プレイヤーは目的もわからずヨートンの町に放り出される。『Dear Esther』と同様、マップ上に人の姿は見られず、歩くスピードは遅い。
探索の中で見つかるラジオや電話、浮遊する謎の光にインタラクトすることで、かつてこの町で生活していた人々の声や行動が記憶として再現される。
未知のウイルスにより町が閉鎖され、戸惑う町の人々。原因を突き止め、解決しようと奔走するケイト。その全てが無駄だったことは、この無人のマップを見れば明らかだ。

 

1980年代のある日、この町にいた全ての人が消失し、まるでついさっきまで彼らがそこにいたかのような状態が保存されている。ゲームは美しいビジュアルと音楽に支えられ、広大なマップはオープンワールド的な要素を加えることで立体化する。その要素とは「光」だ。探索を続けていくと、この町で起きた事件が単なるウイルスによるものではなく、「意思を持った電気」のようなものに住人が感染していった経緯が語られる。やがてその電気はあらゆる光に反応し、教会の蝋燭にさえ変化を促す。
町中の電線を伝い住人たちを次々と消し去る「意思を持った電気」のようなもの。それをなぞるように記憶の光を求めて町中を歩き回るプレイヤー。本作のこうしたシステムは『Dear Esther』におけるレールプレイを前進させようとする意志が感じられる。この無人のマップを無人たらしめた「意思を持った電気」と同じ道をプレイヤーに歩ませ、やがてその過程でケイトの意識と合流し、物語は最終的に閉鎖された天文台にて、満点の星空に収束されていく。

 

総評

プレイヤーと切り離された世界に配置される消失した住人たちの会話劇。抑制されたインタラクトの中でプレイヤーは光と同化し、町中を流れる血管を伝うように、かつてそこにいた人々の痕跡を辿る。こうした思想に支えられた本作『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』は、かつて『Dear Esther』が顕現させてしまったウォーキングシミュレーターというジャンルを何歩も推し進めようと試みた意欲作である。

しかしながら、実際に最後までプレイした感想として、本作での体験には少なくない苦痛を伴ったことだけは言っておかなければならない。一本道の『Dear Esther』とは異なり、本作には広大なマップが用意されている。その中を探索しながら散らばった住人たちの記憶をプレイヤーの頭の中で繋げてドラマを完成させるシステム自体に異論はない。が、最終的にゲームのエンディングに辿り着くためには、ケイトを中心とする重要人物の記憶をある程度揃える必要があり、一つでも取り逃すと光を求めてマップ内を右往左往する羽目になる。この場合、歩行速度の低さによって受けるストレスは甚大だ。
ウォーキングシミュレーターというジャンルにおいて、本作のマップの広さと精緻さは適当であったか。物語を語る上でのプレイヤーの能動性の抑制とフラグ管理のバランスにも疑問が残る。これらのネガティブな要素が特にゲーム中盤から悪目立ちする。もちろんそこにはプレイする人間による差があるのだが、果たして物語を体験することに特化したウォーキングシミュレーターにとって、クリアまでの難易度に個人差が必要かどうかは議論の余地があるだろう。
そういった意味で本作は、素晴らしい物語とゲームシステムを持ってはいるが、決して間口が広いとは言い難い作品となっている。

 

 

©2015 Sony Computer Entertainment America LLC. Everybody’s Gone to the Rapture is a trademark of Sony Computer Entertainment America LLC. Developed by The Chinese Room.

ブラッドウォッシュ(PS4)

ブラッドウォッシュ
Puppet Combo
2022年11月17日
Nintendo SwitchPlayStation 5、PlayStation 4Xbox OneMicrosoft WindowsXbox Series X/S

 

本作『ブラッドウォッシュ』は、Puppet Comboによるインディーゲーム。Puppet Comboの日本でのコンシューマーデビュー作は『殺しの館』(2021年)だが、本作はコンシューマーによる2作目のゲームとなる。
PCによる初リリースは2021年9月16日。同年末に発売された『Christmas Massacre(虐殺クリスマス)』はサンタクロースとなって人間を殺しまくるという、楳図かずお先生の傑作短編漫画『プレゼント』を彷彿とさせる作品だが、これはおそらく日本で発売されることはないだろう。

以下、クリア後の感想。
※犯人に関するネタバレなし

 

前作『殺しの館』と同様、VHSなど画質の選択肢は豊富。PS1~2時代のゲームを思わせるローファイな表現は相変わらず健在だが、ラジコン操作が廃止され、FPS視点のみでの操作となる。

 

主人公は大学生の女性サラで、現在妊娠中。アルコール依存症の彼氏リアムと同棲しているが、妊娠していることはまだ伝えていない。

FPS視点のためサラの顔は見られないが、会話から察するにそこそこの美人らしい。彼氏もずっとトイレで嘔吐しているため、どんな人物なのかわからない。
明日、仕事の面接なのに着ていく服がない。アパートの共同洗濯機が壊れているため、もう夜も遅いが仕方なくバスに乗り24時間営業のコインランドリーへと向かう。

 

深夜、バスを利用する客は少ない。運転手も変わり者で、どこか気味悪く感じる。

 

とてもまともだとは思えない客が隣の席に座ろうとしてきて戦慄。
今作の特徴として、ウォーキングシミュレーターのような要素が強調されていることが挙げられる。バスで他の客が乗降する間には現実と同様の待ち時間を過ごさなければならない。戦闘やステルスは終盤まで発生せず、あくまでも無力な主人公が不条理な出来事や惨劇を目撃するという演出に留まっている。

 

コインランドリーに着くと、最近巷を騒がせている「子宮の切り裂き魔」の話を耳にする。子宮の切り裂き魔は妊婦だけを狙う殺人鬼だ。

そして、正に今いるこの場所こそがヤツの狩場であるという不穏な情報。
バスの待ち時間同様、衣類を洗濯する時間も当然待たなくてはならない。

 

暇をつぶすための携帯ゲーム機やコミックが用意されているが、特にコミックの方は非常に出来が良く、様々な場所に置かれているのでつい集めたくなる。

 

隣接する他のショップを覗くことも出来るが、やはりどこか普通でないように思える店員が多い。
アダルトコーナーに入り、出ようとすると目の前に突っ立っている店員には驚かされた。本筋とは関係ない、こうした日常演出の面白さも前作にはなかった要素だろう。

 

洗濯が終わり、乾燥機の時間を待っている時、最悪な事態が起きる。
ここからは武器を入手して抵抗しつつ逃げまわるパートとなる。
銃の標準は甘いが、FPS視点を主軸した作りとなっているため前作よりは簡単。
戦闘よりも、逃げながら様々な証拠を見つけて真相に辿り着けるような導線が引かれており、ゲームとしてはかなり快適だ。

 

地下には惨殺された女性の死体が。やはり犯人は世間で噂されているルイス・ケネディなる人物なのか?

 

まーまさか!

 

 

果たしてサラは無事に衣類の乾燥を済ませ、明日の面接に行くことができるのか!?

 


ブラッドウォッシュ!!!

 

 

Puppet Combo ® ©

FINAL FANTASY Ⅲ ピクセルリマスター(Switch)

FINAL FANTASYピクセルリマスター
スクウェア・エニックス
2023年4月20日
PlayStation 4Nintendo Switch


ファイナルファンタジーシリーズのⅠ~Ⅵまでの6作品が2Dによるピクセルリマスターとして2023年4月20日に同時発売されました。今回はその中の『FINAL FANTASYピクセルリマスター』のクリア後の感想となります。

 

個人的に最初に触れたFFがファミコン版の『Ⅲ』で、特に思い入れが強いのと、この三作目がファミコンスーパーファミコンのFF作品の中で唯一2Dリメイクされてこなかった不遇のナンバリングタイトルであったことから、今回のリマスター化は本当に嬉しいかぎり。
『FFⅢ』はNintendo DSで3D作品としてリメイクされたものの、荒いポリゴンで表現された世界は原作とは程遠く、ファミコン版の記憶を上塗りするには至りませんでした。
小学生の時にプレイしたオリジナルバージョンはラストダンジョンで詰んでしまったため、あの当時の感覚を有したままクリアしたいという欲望は残念ながらDS版では叶わず。
今回のリマスターは近年のスクエニの発明である「HD-2D」を使わず、スーパーファミコンのような、どこか懐かしさを感じさせる素朴なピクセルアートを用いているのが魅力。

 

本作はシリーズの一作目からシナリオを担当してきた寺田憲史氏によるFF最後の作品。クリスタルに導かれるストーリーは初期のFFを象徴するもので、以降のナンバリングタイトルと比べて容量的に描かれるドラマは制約されているものの、それが逆にクリスタルという存在の神秘性と存在感を際立たせています。
主人公を含むキャラクターたちも、セリフ量自体は少ないにもかかわらず、特徴的な言い回しが強く印象に残ります。主人公4人の無邪気な子供っぽさが残るようなキャラクターは、ドットで描かれたビジュアルと相まって愛らしい。

 

FFⅠ~Ⅲまでのプログラムは、イラン出身の天才プログラマーであるナーシャ・ジベリ氏が担当しており、本来ならばファミコンの性能では実現できない様々な表現を可能にしたのは有名な話。
寺田憲史氏が描くキャラクターのコミカルさと、ナーシャ・ジベリ氏の実現した表現は、後に続くスーパーファミコン版Ⅳ~Ⅵに色濃く受け継がれています。なので、今回ピクセルリマスターとしてⅠ~Ⅵが同時発売されたことは初期のFFを総括するという意味において大変意義のあることだと言えるでしょう。

 

実際に本作をプレイしてみた感想としては、限りなくファンの理想に近い作りになっているなあ、と。追加された設定として「経験値・ギル獲得量増加」「新旧BGM・フォント・グラフィック切り替え」「エンカウントON/OFF切り替え」などがありますが、どれも優秀。同じスクエニIPではスマホ版をベースとしたドラクエがⅠ~Ⅲまで発売されていますが、ここでいちばん気になっていたのがフォントの味気無さ。本作がドット絵時代の過去作をリメイクする際に忘れられがちなフォントの重要性を理解し、きちんと取り組んでくれたことには惜しみない賛美を送りたい。これだけでもかなり全体的な印象が原作に近付いたと思います。BGMに関しても、高音が抑えられているのか、当時の感覚を存分に残しつつ、耳に優しい音色になっていると感じました。新しく録音されたバージョンもいい感じ。

 

ゲームの内容も、その後のシリーズには見られない要素が数多く散見され、現在プレイしてみても十分新鮮に感じられました。特にジョブまわりはかなり異色。単なる一職業ではなく、ボス攻略や謎解きのためにジョブチェンジすることが多く、様々なジョブをお試しできるのが楽しい。

街にいる病人にエリクサーを使うと、特に見返りはないけど喜ばれる演出とか、何というか、感動してしまいました。

 

かなり古い作品ですが、現在でも十分プレイする価値のある名作。近年のリマスター作品の中でも特に気合いの入った作り込みで、クリア後に鑑賞できるイラストや音楽も充実。文句の付けようがないですね。

 


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