みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

アイドルマネージャー(Switch)

アイドルマネージャー
GlitchPitch
2022年8月25日
Nintendo SwitchPlayStation 4Microsoft WindowsLinuxPlayStation 5、Mac OS

 

『アイドルマネージャー』はロシアのGlitchPitchによるインディゲームで、初配信は2020年。本作は発起人でプログラマーを務めるロシア出身のMax Rogozin氏を代表とし、スペイン出身のイラストレータAiwa氏、ゲーム『ネクロバリスタ』にも携わったシナリオライターのJustin Kuiper氏の三人を中心メンバーとするプロジェクトによるもの。
以下、クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

アイドル事務所経営

主人公はオーナーである不二元の命令で新しいアイドルグループをゼロから立ち上げ、事務所を経営していきます。オーディションでアイドル志望の子を選び、事務員や作詞作曲を担当するミュージシャン、医療者などのスタッフを揃えていかなければなりません。もちろん彼らが働ける部屋も借りなければならず、初期投資が必要。事務所のあるビルにはカフェや劇場なども建設可能で、これは秋葉原のAKB劇場が入っているドン・キホーテがモデルになっています。

 

アイドルは「スタミナ」や「メンタル」値の上下が激しく常に気を遣わなければならないのに対して、スタッフは24時間勤務で管理は楽。スタッフを解雇するにはお金がかかるので最初に雇ったスタッフをある程度育成していくことを念頭に置く必要があります。しかし、アイドルのスキャンダルをスタッフの責任として解雇する、という非情な手も使えます。

序盤である程度経営が軌道に乗ってきたタイミングでスタッフを増やすと高い確率で破産します。私はそれで2回ほどゲームオーバー(赤字のまま30日経過)になりました。オーナーや銀行から借金することが出来るのですが、一度借りたらあっという間に利子で膨れ上がってほぼ返せません。他の方のレビューを見ても序盤で苦しんでいる人が多かったです。
解決策としては、ある程度ストーリーが進むまで提示されたタスクを最低限の固定メンバーでこなしていくことです。いきなり自分のやりたいようにやると話が進まずボーナスが貰えないので苦しくなります。経営に関しては序盤は手堅く、中盤からは楽に稼ぎまくれるようになるので経営シミュレーターとしての幅はそこまでないように感じました。
しかし、Max Rogozin氏は本作を「AKBシミュレーター」(※)として「プレイヤーがアイドルの幸せを気にせずに消耗品として扱い,利益だけを追求することを前提にしたゲームバランスにしています。」(※)と公言しているので、実際のAKB48が辿った道を踏まえると序盤のシビアさも納得です。

 

ストーリー

オーナーの「不二元」、ライバルの「保田アキラ」、記者の「アヤ」という3人の登場人物を軸に展開。エンディングも3つのルートに分岐します。ストーリーというよりは3人それぞれの立場からのアイドル論が示される感じで、ドラマチックな展開や悩ましい選択肢があるのは保田アキラルートだけ。日本のアイドル文化をテーマにしてはいるものの、そこまでクリティカルな視点はなく、全体的な印象は薄め。サブイベントに異常なこだわりが見られるだけに、ストーリーもマニアックな方向に振り切ってくれた方がゲームの個性をより際立たせることが出来たのではないかと思います。


豊富すぎるイベント

シミュレーションパートではCD販売やコンサートの他、ネットやテレビなどのメディア戦略、握手会やグラビア撮影などの宣伝、海外展開や総選挙など多数のイベントをこなすことで資金とファンを増やしていきます。その他にも個々のアイドルとの友好度を高めることでグループ内の問題が明らかになったり、アイドルと付き合うことも可能。こうした忙しいスケジュールをこなす中、それらに関連したイベントが発生するのですが、これこそが本作の肝。

 

SNSをアイドル本人にやらせれば当然問題は起きるし、盗撮された画像や動画が出回ればアイドルの評判やメンタルが下がり露出を控えざるを得なくなる。ネット配信のコメントが荒らされたり、政治発言などのセンシティブな問題にも対処していかなければなりません。他にも「天皇制」「捕鯨問題」「ふるさと納税」「ガチャ課金」など、あまり国内産のゲームでは見られない日本的なテーマが盛り込まれているのが面白い。それに対してAKB全盛期に「AKB商法」と揶揄され批判されがちだった高速握手会や総選挙などは単なる販売戦略として淡々と描かれる。交際を断られる理由にLGBT問題があるのも新鮮。

 

日本ではそこまで知名度が高くないゲームオブスローンズの「スタバ事件」のパロディには笑いました。

 

感想

Max Rogozin氏のインタビュー(※)によれば、モーニング娘。が出演していた『ASAYAN』をネット動画で見て日本のアイドルにハマり、その後はAKB48VTuberに興味が移行していったようで、歌やダンスなどのパフォーマンスにあまり興味がなさそうなのが良い! ファンとの関係性をあえて見せていくことをエンタメ化したAKBと同様、本作『アイドルマネージャー』も他のアイドルゲームやアニメとは全く違う視点のアイドル観が提示されています。アイドルを消耗品と割り切っていながらも、細かいパラメーターが振り分けられ、どこかあか抜けないビジュアルの子が多いことが感情移入につながります。それにより、フォーメーションに悩み、売り上げの為に安定した人気メンバーで固定すると総選挙の順位が毎年似たようなものになるので変化を加えたくなる。無数の個性的なアイドル候補と充実したイベントがランダムに羅列されることにより組み立てられるストーリーは、個々のプレイヤーのアイドル観によって様々な形に変化する可能性を秘めています。
アイドルに対しては人により思い入れの度合いに差がありますが、本作は広い層のアイドルファンの期待に応えるだけの幅を持った良作となっています。

 

 

※『アイドル事務所経営ゲーム「Idol Manager」メールインタビュー。ロシアの開発者は,日本のアイドルを題材にしたゲームをどう作り上げたのか』 4Gamer.net 2021/07/27

 

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