Stilstand
Niila Games
2021年11月4日
iOS,Android,Microsoft Windows,macOS,Mac OS,Nintendo Switch,PlayStation 4
『Stilstand』はデンマークのコペンハーゲンを拠点とする「Niila Games」によるインディーゲーム。初配信は2020年8月27日。
4人の大学生によって始まったNiila Gamesですが、2017年に配信された『GuruGloo:Adventure Climb』をはじめ、モバイルゲームをこれまで3作品発表していて、どれも高評価。
これらの過去作はゲームとして優れてはいるもののビジュアル面での個性には若干欠けるものでした。
Niila Gamesがよりインパクトのあるゲームを生みだすために始めたコラボ企画の第一弾が『Stilstand』であり、本作はNiila Gamesと同じくコペンハーゲン在住のグラフィックノベル作家Ida Hartmannがストーリー、アート、ゲームデザインを手掛けており、彼女のゲームデビュー作品となっています。
以下、クリア後の感想です。
※ネタバレなし
インタラクション
ゲームはコミック形式で、ボタンを押すごとにセリフやコマが次々表示されます。絵やセリフの選択肢などが青くなっているポイントをクリックすることで物語が進んでいくという簡単な操作が主なので誰でもクリア可能。
スマホでSNSを閲覧する際のスクロール操作や、ちょっとしたミニゲームも用意されています。全てが単調な操作なのですが、ゲーム内のキャラクターの心理状態とリンクしているのでついつい没頭してしまいます。
このゲームの主人公はやたらとタバコを吸うのですが、ある場面では突然灰の中が真っ黒な煙で満たされるような演出がありハッとさせられます。
その他にも単純なインタラクションによって適度にプレイヤーにストレスを与える演出がいくつか挿入されており、作品世界への没入感を高めてくれます。
ストーリー
毎日ベッドでゴロゴロしているものの友人から遊びの誘いは来るし、男性をデートに誘っても断られない。
ヒッピーのコミュニティに参加してパーティーでお酒を飲んだり、現代美術に親しんだりとそこそこ教養はあるものの、どれも本気になれず結局家でゴロゴロしながらテレビを見たりSNSを眺めたり。
彼女の部屋に住み着いた一匹の怪物。彼女の内面を表す存在かと思いきや大したことは言わず、一人でトランプ(ソリティア)してるだけ。
そんな怪物との対話の中でも少しだけ彼女の意識は変化し、日々の生活に影響が…
世間一般の価値観にノリきれず悶々とするモラトリアム期間の漠然とした不安や無気力感の描写がリアルで、一見するとホラー的なビジュアルから受ける印象を良い意味で裏切ってくれる喜劇的な可笑しさに満ちています。
感想
世間や友人との近くも遠くもならない距離感と、ただただ過ぎていく時間。
気休めとしての自作ポエムやSNSの投稿や芸術作品が映画のエンドロールのように流れ続けているけど、もはや気にも留めていない。そんな、流れ続ける気休めの言葉を横目でチラ見するまでの物語。
とてもリアルで、滑稽で、辛いはずなのに笑ってしまう。
そんな物語を、アートとゲームがしっかりと支えている良作。
© 2021 Niila Games / Ida Hartmann / Nakana sp. z o.o.