のらねこものがたり
Feemodev
2020年3月12日
Nintendo Switch,iOS,Android,STEAM
switch版『のらねこものがたり』全ルートクリア後の感想です。
いつもはブログを書く前に開発者のインタビューを一通り読むのですが、今作に関する資料は検索しても全く出てきませんでした…
開発のFeemodevは韓国のデベロッパーで、2018年から公式Twitterも開設されていましたが、まだあまり知名度は高くないようです。
switch版発売にあたって日本での注目度はそこそこあったように見えましたが、対応機種によって『のらねこものがたり』『のらねこ物語』などの表記も統一されておらず、うまく連携取れてないのかな?とか思ってしまったり…
ちなみに「開発は損益分岐点以降の売り上げの10%を野良猫/野良犬保護施設に寄付するとしています。」とのこと。
ゲームの流れとしては子ネコとして成ネコになるまでの約2週間を生き残るサバイバルアドベンチャーです。
車に轢かれても拾ったバナナの皮を食べて回復出来たり、生き残るだけなら割と簡単。
他のスローライフと呼ばれるジャンルのゲームよりもよっぽどスローな感じ。
街には自分の他にも数匹の野良ネコがいて、色々なサバイバル術を教えてもらったり人間との接し方をアドバイスしてくれるのですが、これは別にチュートリアル的なものではなくて、それぞれのキャラが好き勝手言っているだけで善悪の判断はプレイヤーに委ねられる所が良いです。
街には他にも複数の人間や犬がいて、彼らとの交流によりエンディングが分岐します。話しかけるキャラクターの数だけ違うエンディングがあるのですが、サバイバル自体が簡単なのでコツさえつかめばサクサクと全てのルートを回収できるでしょう。
はじめは人間の顔や言葉が理解できずに影のようになっていますが、仲良くなっていくと徐々にくっきりと映るようになります。
このゲームの特徴として、主人公のネコが幼い子供のようなセリフを言ったりと一見擬人化っぽい演出に見えますが、かなりネコそのものに近付けようとしていることが見て取れます。
長老と呼ばれるネコも狭い街でずっと暮らしているので特別視野が広いわけでもなく、以前の飼い主以外の人間に対する警戒心が強すぎたり、ボスネコも自分のテリトリーでのルールにしか従わないなど人間社会と切り離された側面が強く打ち出されています。
主人公の子ネコにしても、車に轢かれて救急車で運ばれていった母ネコに執着している点以外はそこまで人間らしさを前面には出していません。
母ネコに再会したり餌に困らない環境に満足こそすれ、悪い人間になついてしまい放置され死んでしまっても憎んだり後悔したりしません。
そこそこの家に引き取られても窓の外で遊ぶ野良ネコをうらやましがったりと、人間と同じ価値観での幸福の尺度を持たない為、ネコを人間と同じように考えている人にとっては煮え切らないと感じてしまうストーリーになっていますが、これが今作の個性であり、素晴らしいところだと思いました。
主人公を飼ってくれる人間たちも、独身中年男性とか学校でうまくいってなさそうな女学生だったり、ペットとしてのネコという存在をかなり赤裸々に描いています。
かわいいネコが主人公のハートフルな物語なのかと思わせて、野良とペットという二択しか選べない街ネコの姿をあくまでもネコ視点で描いているので所謂SNSなどでバズるような「かわいいネコ動画」が好きな層には刺さらないかなと思います。
日本でいうと水木しげる漫画には山ほどネコが出てきますが、人間とは別次元の存在として描いている部分が多いのでペットとしてのネコ好き勢には刺さらないのと似ています。
今作は人間の勝手な価値観で感動を押し付ける作品群とは一線を画す、とても健全なゲーム。
ただ食べて街を彷徨い、寂しい人間に黙って寄り添う…そんなネコに対してあくまでも別の生き物として距離感を保ち、愛せるネコ好きの人なら確実に楽しめる良作です。
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