ライアン・マークス リベンジミッション
SIEロンドンスタジオ
2019年5月30日
PSVR専用ゲーム『ライアン・マークス リベンジミッション』を難易度ノーマル、DUALSHOCK 4でクリアした感想です。
ロンドンハイスト再び!
※『PlayStation VR WORLDS』(2016年)収録の「ロンドンハイスト」
PSVRのローンチタイトル『PlayStation VR WORLDS』の中でも特にゲーマーに人気の高かった「ロンドンハイスト」。今作『ライアン・マークス リベンジミッション』はその「ロンドンハイスト」と同じ開発チームが手掛けたもので、正統な続編と考えてよいでしょう。
今作のVRディレクターを務めたスチュアート・ホワイト氏が「アクションヒーローになれる体験を目指した」と発言している通り、既存のFPSに比べてアクション映画要素の強い演出が特徴です。
SIEロンドンスタジオ(当時の名称はTeam Soho)の過去作『The Getaway』(PS2、2002年)もGTAの流れを汲んだオープンワールド風のゲームでありながらもドラマ『24』を彷彿とさせるアクション映画的な演出が個性的でした。
「ロンドンハイスト」で見せた3D酔い対策とストーリーテリングの素晴らしさから今作には多くのファンから期待が寄せられていました。
3D酔いのポイント
ゲームを開始して最初の銃撃戦でいきなり移動させられます。方向入力でポイントからポイントへ自動で移動するのですが、ここで結構酔ってしまいました。
まさか序盤でこんな洗礼を受けるとは…
このシーンを過ぎると「ロンドンハイスト」にあったような車両移動や会話のシーンが続くので休憩を取れるのですが、この先も徒歩移動の場面は多々あります。
この時点で私は酔い止め薬を買いに走りました。
幸いこのあと一回だけの服用でエンディングまで行けましたが、3D酔いは慣れが重要なので、ここで酔ってしまった人は慣れるまで酔い止め薬の服用をお勧めします。
ある程度ストーリーを進めていくと定期的に自分のアジトで自由に過ごす時間が出来、そこでコレクションを眺めたり銃をカスタマイズ出来るようになります。
そこまで広くないアジトを例のポイントに沿って移動するのですが、ここだけは最後まで酷い3D酔いに悩まされました。空間的な狭さが問題なのだと思うのですが、とにかく目的のポイントにスティックを入力してから目を閉じるというやり方で終始移動していました。
薬も効かず、辛かったです。
ストーリー
舞台はロンドン。ネタバレは省きますが、とにかくキャラクターが魅力的で、主人公との関係性もきちんと描かれているのでVR空間に十分耐えられる存在感があります。
このゲームの演出はアクション部分に大きく比重が置かれているので、裏を返せばあらゆるキャラクターが主人公にとっての単なるアクションシーンまでの案内役・繋ぎでしかないわけですが、短い会話シーンの中にもキャラクターたちの魅力が詰まっていて、それによる感情移入が単純なドラマに没入感を与えているのでVRゲームのストーリーとしては大成功だと思います。
汗だく必至なアクション
このゲームは5月30日発売で私は発売日に買って主に6月にプレイしていたのですが、まずプレイする準備としてエアコンをつけて梅干を口に入れる(酔い止め)ことだけは欠かさないようにしていたほど、とにかく汗だくになります!
その原因が上の写真にあるような「手を使った移動」です。
コントローラーを上下に動かしてダクトの中や梯子を移動するのですが、この作業の運動量がやばいです。夢中でプレイしているといつの間にか額は汗でびっしょり。敵を倒しながら雲梯を伝って移動したりするのですが、これが時間を忘れて夢中になるほど楽しい!
今までもジャイロ機能を使って遊ぶゲームはありましたが、VRだと他とは比較にならない没入感があります。友人にこのシーンをやらせて見ていたのですが、本当に焦って梯子を昇っている様が滑稽で、笑いすぎてお腹が痛かったです。
銃撃戦ももちろん熱いです!
基本的には弾を拾いながら撃ち合って、弾切れしたら他の銃に持ち替えながら戦うのでよっぽど無駄撃ちしなければ詰まることはありません。
銃の種類も色々あるので装填のスピードや敵の数を計算して使い分けていきます。ハンドガンを両手に持ったり、スナイパーライフルで遠くの敵を狙ったりと、意外と幅が広いです。
走りながらの銃撃戦や上の写真のように壁やガラスを突き破って落下しながらなど、正にアクション映画のような演出が次から次へと出てくる目まぐるしい展開が続きます。
ロケーション
舞台であるロンドンの様々なロケーションをVRで体験できるのも今作の醍醐味です。
夜のロンドンを上空から眺めたり、砂漠や都市部の高速道路を走ったり、カジノやホテルでも大暴れ。
その中でも特に楽しかったのが美術館です。
そこに展示されているアートを直に触ったり壊したり出来る遊びは最高でした。
ステージごとにある特徴を生かしたアクションや謎解きが必ず用意されているのが素晴らしかったです。
いたずら大好き
「ロンドンハイスト」で出来たことは全て今作でも出来ます。
お皿に乗ったクッキーをつかんで自分の口元へ持っていくとサクッとかじれます。他にもサングラスを装着すれば視界が暗くなるし、ビール瓶を放り投げたりも出来ます。
こういった遊びはプレイヤーがストーリーの中に確実に存在しているという意識を持たせる上で絶対に必要な要素。実際にはストーリーに干渉しない無駄な動きなのにやっていてとても楽しいし、忙しい銃撃戦の息抜きにもなっています。
まとめ
最初にも書きましたが、3D酔いに関しては全面的に無くしていく方向ではなくて一歩踏み込んでいるのでプレイヤー側にも多少の妥協を求めるような場面がいくつかあります。
そこに対しても配慮はされていて、完全に3D酔い対策がされていた「ロンドンハイスト」の手法を挟みながら様子を窺っているように感じました。
VRに関しては「万人が酔わないゲーム」で表現の幅を狭めるか「ユーザーを育てる」方向で少しずつハードルを上げていくかは開発者にとってどちらを選んでも辛いことが想像出来ますが、とりあえずの妥協点を設定してこれだけのストーリーを実現させてくれた事は称賛に値します。
実際のプレイ時間は10時間前後とそれほど長くはありませんが、その分価格も抑えられ『PlayStation VR WORLDS』にある要素を一本のゲームに詰め込みながらも丁寧にまとめ上げている今作はVRゲームがあるべき一つの方向性を確実に示した傑作だと思います。
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