Deadly Premonition Origins
アクセスゲームズ
2019年9月5日
Nintendo Switch、 PlayStation 3、 Xbox 360、 Microsoft Windows
2020年7月10日に続編『Deadly Premonition 2: A Blessing in Disguise』の発売を控えるシリーズ一作目。
初リリース日は2010年2月23日で、私は当時Xbox 360版を買いましたが序盤で挫折。
今回はちゃんとクリアしてからの感想です。
※ネタバレなし
海外ではカルト的な人気がある今作ですが日本では全く売れなかったようで、開発者インタビューからも日本のユーザーに対する失望感が滲み出ていました。
当時国内では『レッドシーズプロファイル』というタイトルで発売されていたのですが、現在は海外人気を考慮して『Deadly Premonition』という海外でのタイトルに統一されています。
私が当時日本版を買った時も大して話題にはなっていませんでしたが、オープンワールドであることと、雑誌の紹介で「車のウインカーが出せる」という記述に惹かれて買ったのを憶えています。
しかし肝心の車の挙動が酷すぎて、そのことに失望して中断してしまいました。
それはこのswitch版でも変わりませんし、リマスターによってロード時間が短縮されたことを考慮しても独自のテンポの悪さはある程度覚悟しなければならないでしょう。
ストーリーとキャラクター
FBI特別捜査官フランシス・ヨーク・モーガンがアメリカ北部の田舎町「グリーンベイル」で起きた若い女性の猟奇殺人の捜査にやってくるところから物語が始まります。
この主人公モーガンという男が曲者で、頭の中にいる「ザック」という別人格と頻繁に会話するんですね。頭に指を置いて、『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるディオみたいな感じで。そんなだから友達もいないし、外部から来たFBIということでグリーンベイルの警察内でも色んな意味で浮いてしまいます。
ストーリー上よく一緒に行動するのが保安官補のエミリー・ワイアット。このゲームに出てくる女性は被害者含め、ほとんどゴリラみたいな厳つい感じのキャラが多いのですが、エミリーだけはかなり可愛いです。このエミリーとモーガンの関係性が変化していく過程もこのゲームの見所のひとつ。
モーガンがエミリーに「俺も昔はパンクスだったなあ」と言ってエミリーが「へー!今の感じからは想像できないわ!」と、ちょっと見直したみたいなシーンがあるのですが、その後車中でのザックとの会話で「ピストルズは嫌いだったな。ジョイ・ディヴィジョンとかラモーンズとかが好きだった」「CBGB(ライブハウス)は緊張して中々入れなかった」と発言。
エミリーの想像するであろうロンドンパンクスではなくて、どちらかというとレコードオタク寄りの陰キャだというすれ違いコントみたいなものなんですけど、私はこういうネタは大好きです。
モーガンがこれまで追ってきた複数の事件現場に落ちていた「赤い種」(レッドシーズ)が今回の事件現場にも落ちていたという事と、この街の民間伝承にある「レインコートキラー」の存在。
これらの関連性と共に事件の核心に迫っていくのがストーリーの軸となっています。
個性の強い登場人物たちはある意味既視感も強いのですが、事件を推理していく上での引っ掛けにもなっていて、描き方も丁寧なので作品の個性としてきちんと成り立っています。
ゲームの流れ
モーガンの夢の中、オープンフィールド、結界に囲まれた戦闘エリア、推理モード、レインコートキラーとのかくれんぼなど、とにかく数多くのゲーム要素があり中盤まではほとんど意味も解らずやらなくてはならないので疲れます。
オープンワールド要素も無駄に充実していて、登場するキャラクターは街の中で規則性を持って活動し、タイミングよく話しかけるとサブクエストが発生。店や民家も窓から中を覗けるようになっています。
車はパトカーのためGTAのようなラジオこそないものの、最初に書いたウインカーやワイパーは動かせるし、ガソリンが切れると動かなくなるのでスタンドでの給油が必要。
とにかく、てんこ盛り。
バイオハザード~サイレントヒル~シェンムーに海外のオープンワールドと推理アドベンチャーを掛け合わせ、ストーリーは猟奇殺人~サイコパス~シリアルキラーに都市伝説とサブカルチャーネタをぶち込む。
そりゃあ海外でカルト作品として人気なのも納得です。
まとめ
最初はわけもわからず様々な異なるパートをたらいまわしにされている感じに疲れ、キャラクターの個性の強さや事件の複雑さに戸惑いましたが、ストーリー後半で様々な謎が全て繋がり解けていく様は圧巻。
派手なボス戦なども用意されていてゲームとしての幅やボリュームも凄い。
開発者の頭の中のアイデアを惜しみなく全て注ぎ込んだかのような集大成感に圧倒されます。
全てのパートがゲームとしてストレスなく快適に調整されているかと言えば、かなり欠陥の多い作品ではありますが、それらをねじ伏せる創作のパワーが感じられるし、よくこんなバケモノみたいな作品をまとめられたな、と。
10年前の日本ではオープンワールドゲームは取っつきにくい印象を持たれていましたが、今作はその中でも更に独自の路線を突き進んでいるのでまだまだ敷居は高そう。
現在プレイしてもやはり独特。
続編ではどんなストーリーになるのか?今作のシステムをどう引き継ぐのか?
そこらへんを楽しみに待ちたいと思います。
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