みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

『 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』感想

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ドラゴンクエスト ユア・ストーリー

2019年8月2日公開
監督: 山崎貴、 八木 竜一、 花房真
原作者: 堀井雄二
音楽: すぎやま こういち
製作: 白組、 ロボット

 

公開初日の朝一番で鑑賞してきた映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の感想です。内容は原作をほぼなぞったようなものなのでストーリーのネタバレは当然あるので原作未体験の方は注意!

映画ならではの仕掛けについても書きますがネタバレ部分に入る前にお知らせします。

 

さて、今作の原作にあたる『ドラゴンクエスト天空の花嫁』の私の個人的な経験としてはSFC版を2回、DS版を2回、PS2版を1回の計5回クリアしていてドラクエシリーズの中でもいちばん思い入れのある作品で、全ゲームを通しても3本の指に入るほど好きな作品です。

 

制作過程

ドラクエというゲームを映画化するという無茶な企画ですが、インタビューなどを読む限り堀井さんや監督含む制作陣も当初は難色を示していました。しかし「あるアイデア」を提示されて「これならいける!」と制作に踏み切ったそうです。

堀井さんや監督のアイデアではないとするとスクエニさんからの提案なのでしょうが、このアイデアというか仕掛けは後半のネタバレ部分に関わってくるので後述します。

(追記2019.8.9 後で調べてみるとラストのアイデア山崎貴監督によるものだと解りましたが、他のインタビューによるとこの部分に関して堀井氏との長時間のディスカッションを経ているとのことで監督・堀井氏そして最終的にスクエニが通しているということで訂正はしません)

他にもスクエニさん側からかなり細かい世界観の注文&駄目出しがあったようです。

一例を出すと「当初、「ブオーンは“はげしいほのお”を吐くから、ビアンカが“こおりのたて”を装備して戦う。でも、その盾がどんどん溶けていく……という演出はおもしろいんじゃないか?」と思ったので、そんなシーンを提案させていただいたところ、「『DQV』には“こおりのたて”が出てこいないので、ビアンカは装備できません」とのご指摘が。」(八木竜一.ファミ通.com)

アイテムやモンスターなど『Ⅴ』の世界を構成するものはかなり細かく再現されていますが、キャラクターの性格や見た目などがかなり変わっているのではと予告編を見た多くのファンから危惧されていました。これも後半の仕掛けに多少関わる事なので後述します。

本作のもう一つの特徴として、音声を先に収録(公開の2年前)して、そこからCGを作っていくプレ・スコアリングという手法が採用され、CGキャラのデザインの一部は声優を務めたタレントさんに近付けたりもしているそうです。

キャスティングのほとんどをテレビで売れているタレントさんを使っているということもファンから心配されていましたが、実際に映画を見てみると違和感をほとんど感じることなく楽しく鑑賞することが出来ました。

 

多様化するビジュアル

今作の予告編が公開された時点でキャラクターのビジュアルにはほとんどのドラクエファンが違和感を覚えたであろうし、私自身も絶句するほど衝撃を受けました。

ドラクエの三本柱の一つである鳥山明氏の絵ではない時点で「こんなのドラクエじゃない!」と思って敬遠しているファンも多くいるかと思います。

しかし昨今のソシャゲを除くドラクエのビジュアルデザインを比較して考えてみると今作の作風はそれほど外れたものではないかと。

ナンバリング最新作『Ⅺ』や『ドラクエヒーローズ』ではフォトリアルな世界の中でデフォルメされた鳥山絵が浮いてしまっているという現象が起きていました。

一方で派生作品『ドラクエビルダーズ』では世界の土台が全てブロックで出来ていて、キャラクターや小物までがデフォルメされていて全体的に違和感がありません。

初期のドラクエ作品を現在の最新技術でリメイクしてほしいという声が多くあるにも関わらずなかなか実現しない理由として考えられる要因の一つが鳥山明氏の作風の変化です。

ドラクエの初期のシリーズと同年代に鳥山氏が描いていた絵はかなりデフォルメされていました。同時期の『ドラゴンボール』に出てくるキャラクターは大人でも3~4等身の人物が多く、ドラクエ初期のキャラもやはり同じような等身です。

当時のキャラや、それに合わせてデザインされた装備などを通常の等身に合わせると何が起きるか?

 

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クソダサくなるんですよ!

この現象を乗り越える形で当時のファンが望むリメイクをするとしたら、昔の雰囲気を壊さないように全てのキャラと装備を現代風に鳥山氏にデザインし直してもらうか、背景や小物まで全て鳥山風の絵で再構築するしかありません。

 

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2016年にNHKで放送された『ドラクエ30周年特番』に寄せられた鳥山先生からのメッセージ。 

 

 肝心の鳥山先生に頼れなくなった今、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が取った選択が「フォトリアルの世界にキャラクターを寄せる」だったのではないかと。

今作ではその試みがかなり上手くいっているように見えます。

原作の特徴を生かしながらも細かく改変されていているのでリアルな背景とキャラクターが自然な形で融合しています。キャラクターデザインは好みが分かれそうですが、モンスターに関してはフォルムを多少改変しながらも、身体の汚れや毛羽立った感じがリアルな風景に溶け込んでいて良かったです。

個人的には今作のビジュアルデザインはドラクエの新しい可能性を開拓したという点で成功だったのではないかと思います。

 

※ここから多少ネタバレあり

 

原作の再現度

映画が始まるとまずSFC版のゲーム画面が表示され、主人公リュカの誕生から幼少期のエピソードが足早に紹介されます。

その中にフローラと幼少期に出会っていたというエピソードがSFC版の映像で出てきます。実はこれ、PS2版で追加された要素なのですが、ちゃんとSFC風に再現されていました。

あと、主人公が石化される場面でも魔法をかけるモンスターがジャミからゲマに変更されていることから、PS2版の設定を主軸にして作られたことが窺えます。

ドラクエ史上最も話題に上がるビアンカ&フローラの結婚シーンは映画でどう再現するのかと心配していたのですが、きちんと主人公を含めた三者三様の想いが描かれていて納得できるものになっていました。

あと、主人公が大人になってから妖精の力で過去へ行き幼少期の自分とオーブを交換する有名なシーンでは、大人になった主人公が過去の自分の生家やパパスに想いを馳せる様子が丁寧に描かれます。

 ここは実際にゲームを進める際にはオーブを交換した後はさっさと先に進むことも出来るのですが、多くのプレイヤーがまるで自分の体験のように昔を懐かしんで佇んだであろう場面。こうした、シナリオにはないプレイヤーの体験を丁寧にすくいあげる演出は素晴らしかったです。

私は『Ⅴ』大好き人間なので、映画が始まるとすぐにドラクエの世界に入り込んでしまって、主人公がピンチの場面では「無理無理!いっこ前の村に戻ってレベル上げさせてくれ!」と心の中で叫んでしまいました。それくらい没入感がありました。

ただ一つ言いたいのは、感動的な場面でドラクエ序曲が流れるのですが、計3回くらい流れるので少し醒めてしまいました。もう少し名曲を大切に扱ってほしかったです。

 

クリアまでに40時間程かかるゲームの内容を2時間に収めることは到底不可能なので大部分が端折られていて、全てのエピソードに思い入れのある方には納得がいかないかもしれませんが、きちんと押さえるべきところは押さえてあります。

ただ、ファンとしては前後編にして前編で幼少期と青年期をもう少し深く掘り下げてもらえると大人になった時のエピソードが何倍にも映えるのになあ、という願望はどうしても持ってしまいますね。

 

※ここから核心部分のネタバレあり

 

 

ミルドラースと主人公の正体

ゲーム版ドラクエの主人公は基本的にプレイヤー自身を投影しやすいように言葉をほとんど喋らないのですが、映画ではそんなわけにもいかず当然喋ります。

問題は性格の部分なのですが、主人公リュカはちょっと弱気な感じなんですね。でもこれってたぶん結婚の場面でビアンカとフローラのどちらかをなかなか選べなくて葛藤する様子を描きやすくする為の設定なんだろうなと思ったのですが、リュカはあっさりとフローラを結婚相手に選びます。何の迷いもなく。

それでもなんやかんやあって結局リュカは自分の本心はビアンカなのではないかと葛藤することになるのですが、その葛藤するシーンが妙で、電脳っぽい世界をリュカが落ちていって「じこあんじシステム」と書かれた文字に体当たりして破壊する様子が描かれます。少し引っ掛かりはしたものの、冒頭にもドラクエっぽい棒読みのセリフと文字による演出があったのでそこまで気にならなかったのですが…

 

映画も終盤になり、主人公リュカは父パパスの仇であるゲマと直接対決し勝利します。原作ファンならこの後に真のラスボスであるミルドラースが控えているのは知っているし、知っていながらもドキドキして待っていたのですが…

 

どす暗い空から降ってくる巨大なポリゴン…リュカ以外の全ての世界が活動を停止…そこに現れたのは私達が良く知るナメック星人みたいな魔法使いでも巨大な豚野郎でもなく、のっぺりとした、ジョジョの第5部以降に出てくるスタンドみたいなやつで…

 

 

つまりこういうことです。

 

 

この映画の主人公はリアルでは氏名年齢不詳の一般男性で、子供の頃に買ってもらったSFC版『ドラクエⅤ』が大好き。大人になって街にバーチャルで『ドラクエⅤ』の世界の主人公になって冒険できる施設が出来たので意気揚々と訪れました(新宿にあるやつね)

そうだな~2時間くらい遊んでいこうかな~名前はリュカで~子供時代はスキップ機能使います~結婚相手はいつもビアンカにしちゃうから今回は自己暗示システム使ってフローラで~…みたいな感じで知らない男性が遊んでいるゲーム画面を映していたのが今我々が観ている映画なのだと唐突に知らされます。

ミルドラースはそのVR装置に入り込んだウイルスで、ゲームに何かうらみでもあるのか、主人公に「ゲームばっかやってないで大人になれや!」みたいな説教をしてきます。カチンときた主人公は「ゲームの中の体験だってかけがえのない人生の一部なんだ!」みたいなことを言ってミルドラースを討伐。

ゲームの世界は元通りになり、丘の上で家族や仲間たちと「幸せだな~」みたいなかんじになって上映終了。

 

 

あ…あの…

 

 

わかります!堀井さんや監督が「これならいける!」と言った理由もわかりますよ!

でも原作の再現部分が良く出来ていたので、そんな仕掛けがなくてもこっちは自分のゲームの追体験として十分満足出来てたし楽しめていたんですよ!

ストーリーを端折ることで批判されることを回避したかったのかもしれませんが、この仕掛けでは納得できないし、むしろ混乱を招きますよ!

やるならもっと丁寧にやって下さい!

リアルパートの素性のわからない男性に自分を重ね合わせるにはあまりにも時間と材料が足りなさすぎるし「え!?この人のゲームプレイを見せられてたって事?」からの理解が追いつく前に上映終了するし、もっと「気付き」みたいなものを序盤から入れてほしかったです。

「これは私の物語なんだ」と思いたい気持ちは山山ですが、映画を見ている自分と「あいつ」を同期させる前に映画終わっちゃうから!(主人公と似た環境の人もいるかとは思いますが…)

実際このネタバラシって終盤唐突に始まって、あっという間に終わるんですよ。

完全にドラクエの世界に没入して胸が熱くなってる終盤にこのシーンが始まったので、瞬時に「このシーンなし、ない、これは夢、CM!」と自分に言い聞かせて何とかやり過ごしましたが、ここに引っかからない人はいないと思いますよ。

「大人になってもゲーム好きでいることは悪い事なんかじゃない」みたいなメッセージ、要ります?

この映画を見に来るような人の大半って、みんなずっとドラクエが好きで、それを恥じてなんかいないし、最新の技術で再現された『Ⅴ』の世界と自分の体験を重ね合わせて「あの場面はこういう感じだったんだ」とか「あそこは想像していたのとは違うな~」みたいな個々の楽しみ方を求めて来たのではないでしょうか。

歴史が長く多くのファンがいるドラクエだからこそ、そういう楽しみ方が出来るし、幸せな体験になりえたと思います。

「ただのゲーム」を恥じているのはスクエニさん自身なのでは?

 

 

 

 

…とまあ、冗談はさておき

とても面白い映画なのでドラクエファンなら必見ですよ!

映画館で迫力のある映像で見るドラクエは最高でした!

みんなも映画館へGO!GO!

 

 

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2週間後…もう一度冷静に考えてみました。
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