
FANTASIAN
ミストウォーカー
2021年4月2日
iOS、tvOS、Mac OS
本作『FANTASIAN』は、ファイナルファンタジーシリーズの生みの親である坂口博信氏が2004年に設立したゲームスタジオ「ミストウォーカー」によるロールプレイングゲーム。尚、音楽もFFシリーズでおなじみの植松伸夫氏が担当。
今年の冬にはコンシューマ移植版が発売予定の本作だが、現在まではAppleのサブスクリプションであるApple Arcadeのみによってプレイ可能となっている。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし
本作は全2回にわたり配信された。前編が2021年4月2日、後編が同年の8月13日と、約4か月の開きがあった。私がプレイしたのは前後編そろってからではあるが、前編と後編ではそのゲーム性が大きく変化している部分があるため、それぞれ分けての感想を述べたいと思う。



まず前編であるが、結論から言うと本作『FANTASIAN』は、かつての坂口氏が関わった古き良きFFシリーズの空気を存分に堪能できる傑作RPGだといえるだろう。
それだけではない。本作の大きな特徴であるジオラマで表現されたマップは、近年多く見られるピクセルアートによるノスタルジックな演出を超えるような素晴らしい効果をもたらしている。
ジオラマの中を歩き回ることで得られる独特な感触は新しくも懐かしい。
数多く用意されたジオラマの中には漫画家の鳥山明氏の作品もあるとのことで、それだけでも一見の価値があるだろう。


ゲームシステムの方も古き良きオーソドックスなRPGのスタイルを踏襲しながらも、倒したことのある雑魚敵を数十匹分貯めてからサクッと処理できるディメンジョン・バトルシステムが採用されており、ストレスなく楽しめる。
前編のストーリーでは主に仲間集めがメインとなっており、一本道ではあるが王道の物語の序章を存分に味わうことができる。
世界の再生と現人類の存在価値を問う大仰なテーマを主軸にしながらも、どこか抜けた主人公の性格は初期FFシリーズを彷彿とさせる。
前編のプレイだけで約20時間のボリュームを持つ本作だが、ジオラマを含む全体的な驚きと、その完成度から、感動が波のように押し寄せてあっという間に終わってしまったという印象を受けた。


さて後編だが、ここからは前編の終盤で散り散りになってしまった仲間を探しながらストーリーを進めて行くことになる。前編の一本道な展開とは打って変わり、行動を制限されないオープンワールドのようなシステムとなっている。
何処から進むべきかはある程度指標が立てられるようにはなっているものの、順序によっては恐ろしく強い雑魚敵に瞬殺されることもザラ。特に最初は前編で育てた仲間がいないので、たった一人か、慣れないキャラクターで探索しなければならず苦戦を強いられる。しかもこのゲーム、自分のレベルよりも格下の敵を倒しても大した経験値が貰えない仕様。なかなか辛い。

それに加えて、後編からはボス敵が異常に強くなる。即死攻撃に状態異常など、明らかに初見で勝つことが想定されていない。
「死にゲー」と言っても大げさではないだろう。上記したとおりレベルは上がり難いうえに、上げたところで物理攻撃はほとんど役に立たない。レベル上げはHPの底上げとスキルポイントの獲得のために必須ではあるものの、それだけでは倒せないようになっている。
ボスの特性と攻撃パターンを見極めて適切なメンバーチェンジと耐性装備、スキルセットが欠かせない。
幸いなことに、キャラの切り替えはターンを消費しないし、スキルリセットもノーリスクで行える。しかし、裏を返せばこれら全てが想定済みのボスと連戦せねばならないので、毎回毎回ボス戦の度に装備とスキルの見直しを必要とするゲームデザインになっていると言える。
これはなかなかに面倒だ。オンラインゲームによくあるような水増しにも思える。
慣れてくると初戦で粘ってボスの特性を見極め、2回目で勝利することも増えてきて、高難易度ならではの達成感を得ることもあった。特にパーティーメンバーが全て揃い、それぞれの特性を把握してからの作戦が上手くいったときの勝利では高揚感もひとしお。最初は辛かったボス戦も後半では楽しく思える瞬間が増えてくる。
ただ、数が多すぎる。四天王的な敵が幾度も出てくるといい加減ウンザリする。
その極めつけがラスボスだ。

こいつだけはどうにもならない。本当に面倒なだけにしか思えなかった。
3回に一回くらいの頻度で全体即死攻撃。それに備えるために全員の防御力を上げてHPを満タンにしてバリア。相手の攻撃力を下げ、即死攻撃の前ターンで全員防御。少ない攻撃ターン、大量の仲間呼びの準備としてザコ処理用のキャラのテンションだけ上げて控えに保存。エリクサーがぶ飲み。
同じことの繰り返しなので単純に面白くない。
ヒーラーやテンション上げキャラが不意の攻撃で死ぬとほぼ詰み。運ゲー要素も強い。これがダメ。
結局、倒すにしても全滅するにしても同じくらい無駄な時間を浪費する。
アクションゲームと違い、RPGでは何とかギリギリ耐えることができるのが逆に虚無感を増長させてしまっている。
敵の行動が完全に読めているがゆえに、同じ行動を何度も踏まされ、幸運を引き続ける事を願うしかない。こちらのパーティーメンバーが3人なので攻撃できる隙が少ないことで無駄に戦闘を長引かせてしまっているのも残念。とにかく長いし、地味。
アクション系の死にゲーと決定的に違うのは、プレイヤースキルによってプレイ時間の短縮がほぼできないことだろう。どんなにゲームが上手くても、それなりにHPを盛らなければ即死級の攻撃に耐えられないし、豊富な耐性装備も集めなければ勝てない。どうしたって長くなってしまうのだ。
後編のクリア時間は約60時間以上と言われているが、本当にそれくらいかかる。どうやっても。
しかもそのほとんどが、ボス戦と、その対策。
あんなに楽しめていたストーリーも、ジオラマも、どうでもよくなり、ただ、目の前のボスを倒すことだけしか考えられなくなる。それはそれで楽しめた部分はあるし、人によっては全編通して楽しめるのかもしれない。しかし、前篇にあった、ジオラマやキャラクターによる素晴らしいコンセプトはいつのまにか霧散していた。それはやはり残念に思う。
ただ、坂口氏自身、ラスボスの難易度については開発の最後まで迷っていたようで、2024年冬期にスクウェア・エニックスのパブリッシングにより発売予定のコンシューマ移植版『FANTASIAN Neo Dimension(ファンタジアン ネオ ディメンジョン)』で何かしらの改善がなされれば確実に評価は変わるだろう。
©MISTWALKER

