ゼルダ無双 厄災の黙示録
コーエーテクモゲームス
2020年11月20日
Nintendo Switch
本作は2017年に任天堂から発売された大傑作ゲーム『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下BOTW)の世界観を基にしたコーエーの無双ゲーム。
無双系だと私は今まで5~6本のタイトルを遊んできましたが、本作の前身にあたる『ゼルダ無双』(2014)は未プレイ。開発であるω-Forceの無双系では『ドラゴンクエストヒーローズ』2作をプレイ済み。
原作であるBOTWはもちろん大好きなゲーム。
以下、クリア後の感想です。
※ネタバレあり
ストーリー
BOTWの100年前を描いたゲームという事で発売前から注目されていた本作。現在開発中である続編と併せて3部作になるのではないかと一部のファンの間で噂されていましたが、本作の体験版の時点でIFだという事が発覚し原作ファンをざわつかせました。
BOTWの100年前と言えば大厄災によりハイラル王国が滅んでしまうわけですが、本作では未来から来たオリジナルキャラクターが介入することによって見事ガノンを討ち取りハッピーエンドを迎えるストーリーになっています。
「テラコ」というオリジナルキャラクター(写真上)は未来から沢山のプレイアブルキャラクターを連れてきてくれて、その彼らと力を合わせて戦う熱いストーリーが展開されるのですが、そのことにより時空に歪みが生じるなどのデメリットが一切ないのでストーリー全体がとても軽く、よく言えばわかりやすいのですが、本編に全く影響を与えないどうでもよい話に感じられ最後まで興味を持てませんでした。
タイムトラベルのようなチート能力を主人公側が最初から独占しているような設定が面白いわけもないので、最終的にゼルダ姫が大きな決断に迫られる展開を期待したのですが、平和に終わって「めでたしめでたし」みたいな内容に終始。
本編ではあまり掘り下げられなかった英傑などのサブキャラクターの描き方に関してはBOTWのプロデューサー・青沼英二氏の監修もあり素晴らしいと思える部分が多く見受けられたものの、所詮キャラゲーの域を出るに至っていないと感じました。
爽快な無双アクション!
無双と言えば無数の敵を薙ぎ払う爽快さがウリのゲーム。
ですが、本当に爽快さを感じられるのは自キャラをある程度育成してからなので、序盤では薙ぎ払っては何度も起き上がってくるゴブリンを吹っ飛ばすだけのダルい時間が続きます。
本作を無双系が好きかどうかで評価が変わるという声もありますが、無双が好きな人は本作の序盤の単純作業に何の疑問も持たないのでしょうか。
中盤で手に入るマスターソードをある程度鍛えてからようやく爽快感のようなものが感じられたのですが、本当に無双の面白さが出てくるのはストーリークリア後のクエストであって、メインストーリー中のマップでは敵と敵との間に大きく間隔があいている場合が多く、薙ぎ払っては地味に移動しての繰り返しなので爽快感も何もありません。
20近くいるプレイアブルキャラにそれぞれ異なる技を持たせているのは本当に凄いと思うのですが、結局リンクの武器である片手剣と槍によるスピード感と使いやすさが一番気持ち良いので他のキャラクターの多くのモーションがモッサリしたものに感じられ、率先して使いたいとは思えませんでした。
中には、使いこなせば面白くなりそうなキャラクターもいくつかいたものの、一人一人のキャラクターを個別にレベル上げしなくてはならないので、数多くあるクエストを効率よくクリアしていくためにはリンクを含めたせいぜい3キャラ程度を育成するだけで精いっぱいになってしまい、わざわざ癖の強いキャラを育てようとは思えません。
レベルや武器は基本的にルピーを使って強化していくのですが、1ステージにおけるルピーの取得量が渋すぎて全キャラ育成のハードルが高く、結果的にリンク優先にならざるを得ない。
ボス戦は相手の体幹を削りきると大技を繰り出せる仕組みで、各キャラにそれぞれオリジナルの大技演出があって楽しい。
BOTWに登場した「アイスメーカー」「リモコンバクダン」「ビタロック」「マグネキャッチ」のマークがボスの頭上に表示されている間にアイテムを正しく使うことにより隙が生まれ体幹を削ることが出来ます。他にも3種類の魔法(杖)や必殺技を駆使することで戦いを有利に進めることが出来ます。
強敵によってはマークの表示時間が少なかったりしてシビアな操作が求められますが、慣れると気持ちよく倒せるようになりました。
ただ、イワロック系の敵だけは頭の上に登って弱点の岩を攻撃しなければ体幹を削れないので、前方に素早く攻撃できるキャラ以外で戦うと攻撃がなかなか当たらずストレスが半端ない。
後半やストーリークリア後のクエストでは制限時間を見ながらボス連戦(カメラワーク最悪)、拠点防衛などを同時にこなしていかなければならないものもあり、ザコキャラの数も多く(画面のカクツキあり)、自キャラも最低2人は強化しておかなければならないので緊張感があり面白かったです。
結局、沢山の敵をただ倒すだけでは面白さは生まれないので、序盤の単調さを誤魔化す工夫が欲しかった。後半ではちゃんと無双の良さが出ているだけに残念。
その他の要素
マップ上にはメインストーリー以外に多くのサブクエストが用意されており、クリアすることで施設の利用など様々な恩恵を受けることが出来ます。
中には素材を上納するだけのものも多いのですが、シーカーストーンを強化すると欲しい素材がある場所を教えてくれるので便利。
BOTWでおなじみのコログ探しもあり、これらをすべて達成するとリンクの衣装(写真下)が手に入ります。
リンクの衣装は多く用意されていて着色も可能ですが、頭と服の上下を個別にそろえなければセットが完成しません。
ステータスに影響はないので無理にそろえる必要はありませんが、ストーリー序盤で手に入った衣装の他のパーツがクリア後のサブクエストでしか手に入らないようになっていたりと、ストーリーだけプレイするタイプの人には厳しい仕様。
まとめ
なんだかんだ書きましたが、結局ノーマルモードで100時間プレイしてマップ達成率100%にするほどやり込みました。
BOTWの世界が忠実に再現されており、BOTWの世界の中で新しい冒険をしているのだということだけで幸せな気持ちになりました。
ただ、無双として充実すればするほどBOTWの世界から遠ざかり作業感だけが強くなっていくのは、BOTW特有の物理法則が廃された世界の中での派手な必殺モーションなどが、既存のゲームの新機軸を確立したBOTWの続編として見ると旧世代のいかにもゲームゲームした古さを感じさせてしまう点にあるでしょう。
ファンサービスとしては十分な出来ではあるものの、同時にストーリー含め作り手側がそこから一歩も踏み出す気がないゲームでもあり、BOTWの続編だと思ってプレイすると肩透かしを喰らいます。
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