みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

ザ・コーマ2:ヴィシャスシスターズ(switch)

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ザ・コーマ2:ヴィシャスシスターズ
Devespresso Games
2020年8月6日
Nintendo SwitchPlayStation 4Xbox OneMicrosoft WindowsLinuxmacOS

 

多くの謎を残した前作からの続編。

ホラーは基本謎を残したままで全然良いと思っていましたが、本作をプレイしてみるとゲームとして何段階も進化しており、続編としてはこれ以上ないくらいの満足度を得ることが出来ました。

『ザ・コーマ』シリーズとしてはこの2作で完結との事で、前作を遊んでいるとより楽しめるものになっています。

以下、クリア後の感想です。

 

※ネタバレなし

 

ストーリー

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主人公はヨンホに代わり、前作でも登場したヨンホの同級生であるミナを操作してゲームを進めて行くことになります。

ヨンホが経験した恐ろしい事件から3週間後の世界が描かれ、ソング先生やセホなど、おなじみのキャラクターが重要な役割を持って登場します。

 

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ヨンホの見る悪夢に導かれるように闇の領界へといざなわれてしまうミナ。そこで出会う謎の少女。果たしてミナは無事脱出することが出来るのか!?

ゲームを進めると、前作では謎のまま終わった「凶姉妹」や「コーマ界」の正体が徐々に明かされていきます。

 

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今作ではビジュアルのクオリティが格段に向上したこともあり、服装のカスタマイズが出来たり、ミナが受けたダメージが見た目に反映されたりといった効果が追加されています。

 

舞台

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前作ではセファ高校が舞台でしたが、今作ではセファ高校に体育館が加えられた他、ソンルン警察署や小鬼市場、地下鉄ソンルン駅など多数追加されたマップを行き来しながら謎を解いていきます。

それぞれのマップが丁寧に作り込まれており、敵出現のタイミングと逃げ道の配置バランスが絶妙で、ある程度イベントを終えるとワープポイントが出現したりなど、この手のゲームによくある「同じ場所を何度も行き来させられる煩わしさ」を極力感じさせない作りになっています。

 

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前作同様、韓国のスクールカースト的な問題などがオブジェクトやそこらに落ちているメモの中に散りばめられ、十代の子供たちの文化や心情を垣間見ることが出来ます。

 

ゲーム性

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今作ではライフとダメージの概念が特殊で、毒や傷などを適切なアイテムで治療しないまま放置しておくとライフの最大値が下がり、二度と元に戻りません。

持てるアイテムの量が少ないため、前作では包帯や解毒剤を捨ててライフがギリギリまで下がってから回復アイテムを使うというプレイによるクリアが可能でしたが、今作では全てのアイテムに対する取捨選択が重要。

私の場合、前作と同様のプレイスタイルで進めてしまい、中盤からはライフが1つしかない一撃即死状態でゴールまで行かなければならないという悲惨な状況に。

それはそれでゲームとしては緊張感があって面白かったのですが、これからプレイされる方は説明をよく読んでから臨まれることを強くお勧めします!

 

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前作同様「逃げる」「隠れる」「回避する」という3つの行動を使い分けて敵から逃げるのですが、敵の臭覚が増したのか、隠れている際に敵が近付くとキー入力を求められ、失敗すると見つかってしまいます。同様に施錠などの仕掛けにもキー入力があり、そういった場面に限って敵の足音が近付いてきたりといった恐怖演出が緊張感をより一層引き立てています。

 

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ストーリーやマップの複雑化には携帯電話で仲間と連絡し合うことによってナビゲーションなどの補完がなされ、迷うことなくゲームを進めることが出来ます。

 

まとめ

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前作からビジュアルや操作性が格段に進化したのはもちろん、ゲーム全体としてのクオリティの向上に感動。

開発者インタビューでは「ナラティブを目指した作品」という発言がありましたが、正に今作ではストーリーとゲーム性が完全に融合しており境界線がない。

マップやイベントの配置も見事で、環境ストーリーテリングの巧さと理解、そしてそれを実現する技術が数多のインディーゲームの中でも頭一つ抜けている。

 

前作は「優しかった先生が突然理由もわからず襲い掛かってくる」という、ホラー作品としてはインパクトも怖さも抜群で、この1作目の謎を解き明かしていく今作のストーリーは、これがもし映画やドラマなどの映像作品ならば地味なものになっていたはず。

『リング』に対する『らせん』みたいな感じで、謎が明らかになっていく過程を見せるということは未知の体験から来る怖さが薄れていくことでもあるし、単純にゲームとしてもストーリーとアクションが分断されている前作の方が「鬼ごっこ」という特性からもゲームプレイに集中できて面白いはず。

『ザ・コーマ2:ヴィシャスシスターズ』はそういった「2作目の壁」をゲームシステムの向上と、プレイすることのみによって得られる物語への没入感によって乗り越えています。だから、奥深い設定のストーリーを理解させながらも、ちゃんと怖い。

その怖さの種類もゲーム性も前作と似ているようで、ほとんどがすり替えられているにもかかわらず違和感を感じさせない作りは見事で、ゲームバランスも絶妙。

台湾の『返校』(2017年)と並ぶ、新しい感覚を持ったホラーゲームの傑作。

 

 


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合戦!!にんじゃ村(switch)

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合戦!!にんじゃ村
カイロソフト
2019年2月28日
Nintendo SwitchAndroidiOS

 

『合戦!!にんじゃ村』は2011年に初配信されたスマホアプリのCS移植版。

本作を開発したカイロソフトは1996年にPCゲーム『The 古本屋』でデビューし、2001年以降は携帯電話のアプリのみでゲームを配信していましたが、2018年からはコンシューマへの移植により幅広い層に知られるようになりました。

「ドット絵」「クォータービュー視点」のシミュレーションゲームという特徴が全ての作品に貫かれており、一見するとどれも同じようなゲームに見えますが、真面目なのかふざけているのかわからないようなタイトルが数多く並ぶカタログを眺めていると、子供の頃の玩具屋で感じたワクワク感が止まらなくなります。

 

そういったわけで、カイロソフトの存在は前々から気にはなっていたものの、商品一覧を眺めているだけで満足してしまい中々手に取れずにいましたが、今作でついに初プレイ!

 

内容

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村の土地を耕し、出来た作物を加工して売りお金を稼ぎます。

住人(忍者)の家を建て、木を植えたりして環境を整え「にんじゃ村」を発展させていきましょう。

 

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ある程度進めて行くと幕府の命により全国統一の戦に駆り出されるようになります。

貯めたお金で兵を雇い、村の忍者たちを成長させることで軍を強化していきます。

 

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幕府軍は「足軽」「弓隊」「鉄砲」「騎馬」から成り、部隊とのバランスを考慮しながら強化していくのですが、「鉄砲」をメインに育てていくと終盤まで勝ちやすくなっていると感じました。忍者部隊にはそれぞれ「武器」「防具」「アイテム」を装備させることが出来、村を発展させることで開発や販売が可能となります。

 

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お城を攻略していくと新しい土地や住人が増え、村で作れるものも増えていくので、限られた土地を上手く利用して沢山お金を稼いで軍事力を強化!

 

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16年という期限で一つの区切りがついてポイントが示されます。モバイル版ではスコアを他のプレイヤーと競うことが出来るようですが、Switch版ではただ表示されるだけ。この時点で全国統一を成し得ていなくても引き続きプレイすることが出来ます。私はのんびりと自分のペースで楽しんでいたのでスコアはあまり気になりませんでした。

 

感想

20時間くらいプレイしました。しかもぶっ続けで(死ぬかと思った)。

全国統一自体はその半分くらいの時間で達成できるのですが、問題はクリア後の強敵。

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「クマックス野球団」というのが本当に強くて。しかもこのチーム、今まで鉄板として強化してきた「鉄砲」を全部バットで打ち返すので一から編成を組みなおし、忍者のレベルも全員カンストさせる必要に迫られ、とんでもない額の資金を注ぎ込むことに。それまでのプレイを全てなかったことにしなければならないほどのシビアなゲーム性に痺れました。

 

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全国統一までのカジュアルなゲーム性の中にも十分に中毒性があり危険度大!

村はどんどん広くなり、住民や訪問する客も増え、鉱山や伐採作業などの管理を行い、それら全ての動きを眺めつつ作戦を練っていると、あっという間に恐ろしいほどの時間が経過しています。

ほとんどの時間が「ただ眺めているだけ」なので全く疲れないし、狙った結果が出るまでの過程を眺めるのが本当に楽しくて夢中になってしまいました。

ロード時間は無に等しく、多くのキャラクター達が全員規則通りに行動しているのにカクつくことなくヌルヌル動く。

 

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人を食ったような独特のセンスと絶妙なゲームバランスは堀井雄二氏やさくまあきら氏の作品と通じるものを感じさせ、今作だけで完全にカイロソフトの虜になってしまいました。

とにかく中毒性が高いので、これからは死なない程度に注意しながら他作品も遊んでいこうと思います。

 

©KAIROSOFT CO.,LTD. All Rights Reserved.

原神(PS4)

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原神
miHoYo
2020年9月28日
PlayStation 4Nintendo SwitchAndroidiOSMicrosoft Windows

 

『原神』は『崩壊学園』などのスマホゲームアプリを主に開発していた中国のデベロッパー miHoYoによるオープンワールドのオンラインRPG

クロスプラットフォームで展開され、Nintendo Switch版も今後予定しているとの事。

初のPlayStation 4での展開に加え、初のオープンワールドゲーム開発ということで400人以上のスタッフが開発に参加。

ゲームは基本無料で、ガチャにより使用キャラやレア武器が手に入りますが、現時点でストーリークリアには影響はなく、ゲーム内で貯まるポイントで引くことも可能。

マルチプレイに関しては今のところオマケ程度といった感じ。

ストーリーは3幕から成る序章と第1章の序盤が公開されており、7つある国の内2つの国周辺のマップで遊ぶことが出来ます。

以下、序章クリア(約20時間)後の感想。

 

※ネタバレなし

 

ストーリー

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ストーリーは、生き別れてしまった兄妹を探しながら幻想世界テイワットの様々な問題を解決していくという流れで、謎の存在であるパイモン(写真右)がお供としてナビゲーションしてくれます。

 

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序章では主に「モンド」という国で出会うキャラクター達と力を合わせて、この国で起きている事件の謎を解いていきます。

RPGが好きであればすんなりと入り込める間口の広さがあり、フィールドの各地に点在しているサブクエストも世界観を掘り下げながら楽しめるものが多く、ゲームのシナリオとしては十分すぎる出来。

 

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中国っぽい雰囲気の「璃月」という街も細部まで作り込まれていて圧巻。これらの趣の異なる城や街が一つの世界の中で違和感なく共存しているのが凄い。

 

オープンワールド

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翼による滑空、遊泳、崖登りなどはスタミナ管理で行い、各地に散りばめられたポイントによって成長が可能。火によって燃え広がる草原、凍り付く水場など、本作の特徴である属性(元素)が環境に影響を及ぼすことで戦闘面における広がりを持たせています。

これらのデザインはビジュアル含め『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下BOTW)から多大な影響を受けていることは開発者も公言していますが、その取捨選択の巧さは単なる模倣の域を超えています。

ゲームアクション的にも自由度でもBOTWには数段劣っていますが、各地に配置されたサブクエストやランダムに発生するイベントなど、BOTWとは異なる本作独自の解釈がマップの構造から見て取れ、強いオリジナリティを感じさせます。

 

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特殊能力で足跡を辿る『ウィッチャー3』的なものや、各地に点在する精霊に触れると宝の場所まで案内してくれる『Ghost of Tsushima』のキツネ的なものまで、オープンワールドで実現可能なあらゆる要素をあくまでも『原神』独自の解釈として自然に融合させていることに驚きました。

マップは探索すればしただけ見返りがあり、冒険者レベルに合わせて敵の強さも変化。

レベルを上げるための経験値はアイテムによって取得するのですが、序盤で戦闘を回避しても探索によって宝箱を発見することにより成長することが出来ます。

フィールドに設置された宝箱の種類と入手方法は実に多様で、それに合わせたマップデザインも素晴らしく、近道では強敵が立ち塞がっているので崖を登って回り道をすると丁度良い強さの敵と報酬が用意されていたりと、ゲームバランスが非常に良く練られていることがわかります。

 

戦闘

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多くのオープンワールドの特徴として「戦闘が面白くない」というものがありますが、本作の戦闘も一つ一つを取れば他作品の浅い模倣に過ぎず、特に雑魚戦などは軽すぎると感じます。

しかしここでもキャラクターごとの属性や、属性に特化した敵の攻撃、独自のギミックを持つ中ボス戦などがフィールド上でシームレスに展開されることによって全体的な単調さを回避しています。そこから各属性のキャラを育成する楽しみが生まれ、探索に対するモチベーションも持続しやすくなっています。

 

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ボス戦では突然シューティングゲームをやらされたりもしますが、これも良い意味で軽く、飽きる前にさっさと終わります。

 

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ダンジョンに関しては、ソロプレイではかなり単調に感じますが、マルチプレイと併用していることからMMO的な構造を持たざるを得なかったのでしょう。

ちなみに平常時、キャラクターから武器が浮いて見えるのと大剣のモーションは『ニーア オートマタ』の模倣であることが海外のファンから指摘されています。

 

まとめ

オープンワールドのファンタジーRPGとしては会心の出来。細かいモーションにおいては改善の余地はあるもののアップデートできる強みもあるので今後も期待できそう。ストーリーは序盤なので何とも言えませんが、各キャラクターの個性や世界観が丁寧に描かれていて、サブクエストもちゃんと面白い。

オープンワールドとしての目新しさはないものの、『原神』というゲームの世界観に合った良いとこ取りのMIX具合が素晴らしく、作品としてのオリジナリティは十分にあります。

新しいオープンワールドを目指すのではなく、新しいジャンルをオープンワールドとしてカジュアル化するという点においては『Ghost of Tsushima』と共通する部分が多い。

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JRPGなどのACG(日本のサブカルチャー)に強い影響を受けながら、それらをオープンワールドという途轍もない労力と開発費を要するジャンルに落とし込むというチャレンジが素晴らしすぎるし、実際にプレイするとそのバランス感覚とアイデアの豊富さに驚かされます。

配信から4日後にモバイル版だけでダウンロード数が1700万を超えるという快挙。

日本では配信初日から「ゼルダのパクリゲー」「ウイルスが仕込まれている」などの批判が多く、そういった意見のほとんどが「中国産である」という中国への不信感からきていることが悲しくもありました。

 

様々な新しいチャレンジをしている『原神』ですが、目立ったバグもなく、ファストトラベル時のロードも比較的短く、ガチャなしでもクリアできる仕様は無料ゲームという事を抜きにしても技術的に凄いし、その丁寧な作りからは任天堂リスペクトすら感じさせます。

個人的には本作のような世界観やストーリーには興味がないのですが、単純にオープンワールドとして今後どのようなアイデアが展開されていくのかが楽しみだし、かなり期待できる作品だと思います。

 

 

Copyright© 2012-2020 miHoYo ALL RIGHTS RESERVED

シェンムーⅢ(PS4)

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シェンムー

YS Net、 ネイロ、 YSNET inc.
2019年11月19日
PlayStation 4Microsoft Windows

 

シェンムーⅢ』は発売日に買い、3周してトロコン済。

その後ブログに感想を書いては消し…を繰り返しては断念する日々。

どう書いてよいかわからず…

しかし、もうそろそろ発売から1年が経つということで、とりあえず今の気持ちを書き留めておこうかと思います。

 

感想を書けなかった理由は、私がこのシリーズの大ファンであるということと、今作が酷くつまらなかったということ。

発売後、クラウドファンディング支援者やゲームライターによる大絶賛レビューを読んで、ただの製品版しか買っていない自分が勝手に肩身を狭くしていたのも良くなかった。

発売後しばらくして鈴木裕さんがインタビューで「今回はファン向けに作った」というような事を言っていましたが、ここでいう「ファン」というのも「クラファン支援者」としか捉えられませんでした。

シェンムーⅢ』に感じられたある種の気持ち悪さが肯定されているように思えたし、商業的な失敗への言い訳にも聞こえ、ここでもまた勝手に悲しくなったり。

 

もしも私がシェンムー未経験の状態で今作をプレイしていたら、個性的なバカゲーとしてそこそこ楽しめたのだと思います。それこそ90年代サブカル的な意味での「クソゲー」として。

ただ、そうはいかない程『シェンムー 一章横須賀』と『シェンムーⅡ』に多大な影響を受けてしまった今となっては、そういった時代錯誤な嗜みだけは絶対にしたくありませんでした。

 

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今作に関して最初に多くのファンから出た批判が「ストーリーが進んでいない」というものでしたが、私はむしろ今作においてストーリーのみがかろうじてシェンムーらしさを残していると思いました。

横須賀における多様な人種の疑似家族的なコミュニティの一員から、香港を舞台とした完全にアウェイな土地での旅人という、過去作で築いた素晴らしい体験の流れを白鹿村と鳥舞という2つの舞台によって再現し、物語終盤で1作目の序盤ではまるで歯が立たなかった藍帝に一矢報いる成長した巴月涼の姿を描くストーリーは、長い時を経て生まれ変わったシリーズの新たな船出の一歩として十分納得のいくものでした。

今作に対してネガティブな印象を抱きながらもクリアできたのはシェンムーらしいストーリーと、巴月涼を演じた松風雅也さんの存在が大きかったです。

 

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私が『シェンムーⅢ』に対して拒絶に近い思いを抱いたのは、そのディテールです。

都内の自然公園のような白鹿村、朝から晩まで全店開きっぱなしの商店街を擁する鳥舞。その鳥舞の最奥部に控えるファン記念館とその中心に鎮座する鈴木裕像などなど...

 

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グルッパのシェンムーシリーズにもため息が出ました。

これらの過去作グッズ、クラファン支援者の写真や書き込み等も巧く取り入れればゲームの世界を壊すことはなかったと思いますが、半ば投げやりに投入されているようにしか見えませんでした。

鳥舞に至っては街全体からそういった空気が感じられ、まるでシェンムー教の本拠地であるかのような居心地の悪さを感じました。

 

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しかし私が最も落胆したのはマップ上の至る所に存在するこの赤いマーカー。

調べたり持ったりができるありとあらゆるオブジェクトに赤いマーカーが光っているのですが、今作からの新要素である「生薬集め」によってフィールドを歩いているだけで嫌でも視界に入ってきます。

ファン向けのストーリーと、世界観を破壊する新設設計が混在し、それらのバランスが最悪。

「薪割り」などのミニゲームは馬鹿馬鹿しさの中にもシェンムーらしさが垣間見えて良かったのですが、マップに関しては本当に酷いと思います。

 

私が最近のシェンムー評で最も心打たれたのが、RAM RIDERさんが言っていた「VRのような衝撃」というもの。

かつて3D空間と現実世界との境界線を曖昧にする「ゲーム的リアリティ」の思想を最も正しく体現していると思わせてくれたゲームがシェンムーであり、だからこそ「ゲーム的記号」の導入には慎重であって欲しかったのに、今作ではそれがあまりにも雑。

酷すぎると思います。

何かこう、原作に思い入れのないメーカーがキャラゲーを作る時にやりがちな「雑さ」とは違う、もっと深刻な何かが『シェンムーⅢ』からは感じられます。

 

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以上、書きたいことは書きました。

シェンムーⅢ』は珍ゲー・クソゲーとしてはそこそこ面白く、シェンムーシリーズとしては時代錯誤によって退化した駄作。

今後もシリーズが続くのであればこのような作品もひとつくらいあってもよいとは思いますが、『シェンムーⅢ』を絶賛する多くのファンの声は確実に鈴木裕さんのもとへ届いているわけで、珍ゲー路線で突き進むのならばそれはそれで新しい扉を開いていくのかもしれません。

個人的な興味は大分削がれましたが。

 

あと、『龍が如く』を落としてシェンムーを持ち上げるファンをちらほら見かけますが、あれは本当にやめてほしいです。みっともないから。

 

 

Original Game©SEGA ©Ys Net All rights reserved
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夏色ハイスクル☆青春白書(PS4)

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夏色ハイスクル☆青春白書
ディースリー・パブリッシャー
2015年6月4日
PlayStation 4; PlayStation 3

 

正式タイトルは夏色ハイスクル★青春白書 ~転校初日の俺が幼馴染と再会したら報道部員にされていて激写少年の日々はスクープ大連発でイガイとモテモテなのに何故かマイメモリーはパンツ写真ばっかりという現実と向き合いながら考えるひと夏の島の学園生活と赤裸々な恋の行方。~』

開発は『ドリームクラブ』シリーズを手掛けたタムソフト。

 

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私はこのゲーム、発売時に買ったものの全然攻略できず速攻で売ってしまったのですが、今回はDL版を買いなおして攻略サイトを頼りにメインヒロイン「三日月めぐ」ルートをクリア。

以下、三日月ルートを軸にした感想です。

※ネタバレなし

 

恋愛ADV&オープンワールド

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プレイヤーは主人公の青春夏男を操作して3か月の夢ヶ島生活を体験します。

8人+αのヒロインそれぞれに個別のストーリーとエンディングが用意されており、お気に入りの女の子とオープンワールドの舞台を自由に駆け巡ります。最高。

 

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島にいる200人ほどの人物の内168名に名前が付いていて3か月間個別の行動をしています。しかもそれぞれに好感度が設定されていてサブクエストの発生条件にも影響し、写真を撮影することで図鑑を埋めていく楽しみもあります。こういった、シェンムーやスカイリムのシステムをどん欲に取り込んでいるあたり、オープンワールドとして抜かりない感じがします。

 

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主人公は夢ヶ島高校で強制的に報道部に所属させられ、常にカメラを持って行動することになります。

十字下ボタンを押す回数で「しゃがみ」「ほふく」「仰向け」と体勢を変えることが出来、様々なアングルで撮影することが可能。

ただし女の子の近くでしゃがんでいると好感度が下がり、右上の危険メーターがマックスになると警察に追いかけられます。

GTAの核である犯罪要素まで取り入れているとは!

 

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恋愛ADV要素もかなり作り込まれていて、様々な場所でのデートはもちろん、報道部の合宿に文化祭、下校時間に校門前で待っていてくれて一緒に帰ったりと、これまでのギャルゲーで制限されていた移動の自由がオープンワールドによって開かれています。

女の子の表情も豊かで、バックストーリーも細かく丁寧に描かれており、普通にギャルゲーとして面白い。最高。

 

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自転車に乗って島中を冒険したり、商店街では買い物や散髪、海では釣りもできるし、ディースリー・パブリッシャー作品ではお馴染みの双葉理保まで登場する至れり尽くせりの申し分ない内容。

オープンワールドゲームを日本で作る際にギャルゲーという日本独自のジャンルを核とする個性は圧倒的に支持出来るし、そこへ海外のオープンワールドの良い部分を取り込む姿勢も素晴らしい。

最初にこのゲームの情報を見た時「ついに来たか…」と震えたものです。

 

驚異のクリア率

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発売から5年が経っていて、メインヒロインルートのクリア率がたったの5%。

この数字がこのゲームの全てを表しています。

私が5年前にプレイした時は、色んな女の子と交流していたら全員のルートが何故か閉じてしまい、サブクエストも途中から音沙汰がなくなって失敗してしまうことから、何かしらのバグが同時に発生しているのでは?と思い、おそらく長期に渡るであろうアプデに期待して中断。

しかし5年経ってもこのクリア率。バグは修正され、細かい操作性も改善されている。

で、攻略を見ながら再プレイしてわかったことがあります。

 

作りっぱなし

このゲームって、とにかく色んな楽しい要素を詰め込めるだけ詰め込んで、あとはもう投げちゃってるんですね。

だからそれぞれの要素がぶつかって打ち消し合い、色々遊ぼうとすればするほどクエストAの途中でクエストBが邪魔して、それをメインクエストが邪魔して、メインクエストの途中でクエストCに手を出すと全部が台無しになったり(有志による攻略サイトを見ても発生条件不明なクエストがいくつもある)。

普通に遊んでいると、様々な出来事の「さわり」だけに触れつつ独りぼっちで夏が終わっていくという悲惨なことに。

 

このゲームは時間の管理がすごく大事なんですけど、拠点である放送部の部室に時計がなくて、わざわざ時計がある教室まで見に行かなければなりません。

放課後が大体15時半なんですけど、重要なイベントはだいたい17時半とか18時に起こります。

その間はとにかく他の行動が出来ないので保健室のベッドやトイレで時間を細かく進めるのですが、これが本当に面倒。

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主人公のスマホはメールと音楽プレイヤーの機能しか付いていません。

執行猶予中か何かなのでしょうか。とても怖いです。

 

キャラクターの好感度によってクエスト出現のタイミングがずれたりするので、特定の期間に複数同時にクエストがぶつかり合って、うっかり受注キャラに近寄ってクエストが始まると他の受注中のクエストが失敗して取り返しがつかなくなったり、とにかくめちゃくちゃなんですよ。これはもうゲームの設計段階で失敗しているのでバグよりも厄介です。

 

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そんな複雑な構造を内包しているにもかかわらず、ギャルゲー要素は他のギャルゲーと一緒なので3か月の長期に渡るオープンワールドをヒロインの数だけ周らなければならない。

こんなの、誰がやるんですか…

 

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あと、主人公の特技である盗撮もストーリーに全く必要ないので出オチにしかなっていません。デメリットしかないし、エロ写真を撮りたいならそれ専用のモードが用意されているのでわざわざやりません。

 

まとめ

それぞれのヒロインのクエストを見ると夢ヶ島開発計画や理事長の秘密など、ストーリーの軸になりそうな面白いエピソードがたくさんあるようなので、一本の太いストーリーを主人公の特技を生かして解決していき、最終的に好感度の高い女の子を一人選んで個別エンディングを見せる侍道のような構造の方が絶対に良かったと思います。

どんなにオープンワールド好きでも8週とかしませんから。

 

ただこのゲーム、全然嫌いにはなれない。

雰囲気とかシナリオも好きすぎるし、チャレンジ精神も圧倒的に支持できる。

しかし3か月分のタイムスケジュールがどうしても足を引っ張っる。

本当に、何でこんなことになってしまったんだろう。

 

一つ一つの要素だけを見ると傑作の予感しかしないのに、総合すると致命的な欠陥を孕んだネタゲーにしかならない。

惜しい…本当に惜しい!

 

 

© D3 PUBLISHER

ウルフェンシュタイン: ザ オールド・ブラッド(PS4)

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ウルフェンシュタイン: ザ オールド・ブラッド
MachineGames
2015年5月5日
PlayStation 4Xbox OneMicrosoft Windows

 

前作『Wolfenstein: The New Order』から1年後に発売されたMachineGames開発によるウルフェンシュタインシリーズのリブート第2弾。

クリアまで約5~6時間の作品ですが、お値段もお手頃でサクッと遊べる感じ。

クリア後の感想です。

※ネタバレあり

 

今作は『Wolfenstein: The New Order』以前を描いた前日譚。

ナチス・ドイツ、1946年3月オーストラリア併合国近郊。

主人公はもちろん我らがB.J.ブラスコヴィッチ。

 

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ナチスのオカルト研究センターにある「ヘルガ・フォン・シャーブスの秘密文章」を入手するべく相棒ウェスリーと共にウルフェンシュタイン城に潜入を試みるも失敗し牢に放り込まれます。

 

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ウルフェンシュタインの地下牢で見つけた一本の棒。

これは一般には市販されていないタイプの「絶対に壊れない棒」で、武器としてナチ野郎をぶん殴ったりコンクリートや石の壁にぶっ刺して高い場所へ登ることが出来ます。

前作にはなかった要素ですが、刺さる壁がなかなか見つからずに何度か道に迷いました。

 

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脱出に成功した後はレジスタンスの協力のもと、ヘルガの秘密を探りにウルフブルグへ向かいます。

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ベルガを追い詰めるつもりが囚われてしまうブラスコヴィッチ。

 

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しかし突然地下からガスが噴き出して兵士たちが全員ゾンビになるので皆殺しにしながら脱出します。

 

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あとはもう、なんやかんやロボットとかに乗って進んでいくと、ベルガが自ら作り出した巨人とイチャイチャしているので、そいつを倒しておしまい。

 

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前作同様ヒトラー総統はおあずけですが、懐かしのゲームで遊べる隠し要素アリ。

 

感想

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何も考えず、とにかく銃をぶっ放したい人にお薦めしたいゲーム。

一応ステルス要素もありますが、見つかってから増援が来るまでが早いので結局は拾った銃で撃ちまくって走り回るの繰り返し。

ストーリーらしいストーリーはほぼなく、ナチスのオカルト研究にスポットを当てた強引でめちゃくちゃな内容が気持ちよい。

マッチョな主人公と悪くてバカな敵が殺し合うだけの最高な内容。

疲れた時にやりたいゲーム。

 

 

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ザ・コーマ:リカット(switch)

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ザ・コーマ:リカット
Devespresso Games
2020年8月6日
Nintendo SwitchPlayStation 4AndroidXbox OneMicrosoft WindowsLinuxmacOSMac OSPlayStation Vita

 

『ザ・コーマ:リカット』は韓国のDevespresso Gamesによるインディゲーム。

2017年に初配信された『The Coma』は『The Coma: Cutting Class』などサブタイトルを変え幾度かリマスターされていますが、今回遊んだのは2020年8月6日に発売されたパッケージ版『ザ・コーマ:ダブルカット』内のSwitch新版(※1)

クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

※1.Switchにも5月発売の旧版と8月発売の新版があり、プロダクトが異なる。

 

韓国の高校が舞台のホラーゲーム

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主人公の高校生ヨンホがある日学校で居眠りから覚めると辺りの様子が一変。

突然襲い掛かってくる凶暴化した教師から逃げながら学校脱出を目指します。

学校が舞台の横スクロールホラーゲームという事で、日本の『トワイライトシンドローム』や台湾の『返校』との違いを楽しむのも一興。

韓国のスクールカーストや学歴社会に晒される生徒たちの不安感などが描かれていて、謎の多いストーリーをより一層際立たせています。

 

迷路の中の鬼ごっこ

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凶暴化した教師から逃げる際に取れる行動は「走る」「隠れる」「かわす」の3つ。

 

・「走る」はスタミナを消費し、回復に時間がかかるので場所によっては逃げきれない場合も。

・「隠れる」はロッカーやトイレの個室に身を潜めて敵が去るのを待ちます。敵に見える場所で隠れると見つかってしまうので注意が必要。

・「かわす」は敵の攻撃に合わせてボタンを押すことで素早く回避できますが失敗するとすれ違いざまに連続でダメージを受けることがあるのでリスクが大きい。

 

これらの行動を使い分けて逃げ切りますが、ロッカーの中に荷物が入っていて入れないこともあるので下見も大事。

敵の移動速度はプレイヤーよりも少し遅いのでスタミナが切れる前に避難しましょう。

他にも落下してくるゾンビ?や毒を持った植物などが存在し、「怪我」や「毒」状態を解除できる解毒剤や包帯で治療しなければ体力が減ります。

道具にはスタミナや体力を回復させるものもあり、そのうちのいくつかは自動販売機で購入できます。

 

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校舎内には鍵の掛かった部屋や障害物で塞がれて通れない道などがあり、後半に霊障のようなものが強まってくると異空間の入り口(ワープゾーン)が開いたりなどマップが変化するので、敵から逃げながら迷路のような空間を逃げなければなりません。

学校には同級生や謎の人物などがいて、彼らの頼みを聞くことで道がひらけることも。

 

まとめ

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ストーリーは次回作に持ち越されるとのことで多くの謎を残したまま終わりますが、物語の背景を丁寧に描いているのでホラーとしては十分。

ゲームは横スクロールのデッドバイデイライトといった感じで、難易度の上がり方が緩やかで詰まることなく完走できるバランスが素晴らしい。謎解きも割と簡単な部類だと思います。

韓国のホラーゲームをあまり遊ぶ機会がなかったのでビジュアル含め不安でしたが、日本とも台湾とも違う独自の文化が反映されていて興味深く楽しめました。

 

 

The Coma: Recut © 2020 Developed by Devespresso Games Inc. Published by Chorus Worldwide Games.