ザ・コーマ2:ヴィシャスシスターズ
Devespresso Games
2020年8月6日
Nintendo Switch、 PlayStation 4、 Xbox One、 Microsoft Windows、 Linux、 macOS
多くの謎を残した前作からの続編。
ホラーは基本謎を残したままで全然良いと思っていましたが、本作をプレイしてみるとゲームとして何段階も進化しており、続編としてはこれ以上ないくらいの満足度を得ることが出来ました。
『ザ・コーマ』シリーズとしてはこの2作で完結との事で、前作を遊んでいるとより楽しめるものになっています。
以下、クリア後の感想です。
※ネタバレなし
ストーリー
主人公はヨンホに代わり、前作でも登場したヨンホの同級生であるミナを操作してゲームを進めて行くことになります。
ヨンホが経験した恐ろしい事件から3週間後の世界が描かれ、ソング先生やセホなど、おなじみのキャラクターが重要な役割を持って登場します。
ヨンホの見る悪夢に導かれるように闇の領界へといざなわれてしまうミナ。そこで出会う謎の少女。果たしてミナは無事脱出することが出来るのか!?
ゲームを進めると、前作では謎のまま終わった「凶姉妹」や「コーマ界」の正体が徐々に明かされていきます。
今作ではビジュアルのクオリティが格段に向上したこともあり、服装のカスタマイズが出来たり、ミナが受けたダメージが見た目に反映されたりといった効果が追加されています。
舞台
前作ではセファ高校が舞台でしたが、今作ではセファ高校に体育館が加えられた他、ソンルン警察署や小鬼市場、地下鉄ソンルン駅など多数追加されたマップを行き来しながら謎を解いていきます。
それぞれのマップが丁寧に作り込まれており、敵出現のタイミングと逃げ道の配置バランスが絶妙で、ある程度イベントを終えるとワープポイントが出現したりなど、この手のゲームによくある「同じ場所を何度も行き来させられる煩わしさ」を極力感じさせない作りになっています。
前作同様、韓国のスクールカースト的な問題などがオブジェクトやそこらに落ちているメモの中に散りばめられ、十代の子供たちの文化や心情を垣間見ることが出来ます。
ゲーム性
今作ではライフとダメージの概念が特殊で、毒や傷などを適切なアイテムで治療しないまま放置しておくとライフの最大値が下がり、二度と元に戻りません。
持てるアイテムの量が少ないため、前作では包帯や解毒剤を捨ててライフがギリギリまで下がってから回復アイテムを使うというプレイによるクリアが可能でしたが、今作では全てのアイテムに対する取捨選択が重要。
私の場合、前作と同様のプレイスタイルで進めてしまい、中盤からはライフが1つしかない一撃即死状態でゴールまで行かなければならないという悲惨な状況に。
それはそれでゲームとしては緊張感があって面白かったのですが、これからプレイされる方は説明をよく読んでから臨まれることを強くお勧めします!
前作同様「逃げる」「隠れる」「回避する」という3つの行動を使い分けて敵から逃げるのですが、敵の臭覚が増したのか、隠れている際に敵が近付くとキー入力を求められ、失敗すると見つかってしまいます。同様に施錠などの仕掛けにもキー入力があり、そういった場面に限って敵の足音が近付いてきたりといった恐怖演出が緊張感をより一層引き立てています。
ストーリーやマップの複雑化には携帯電話で仲間と連絡し合うことによってナビゲーションなどの補完がなされ、迷うことなくゲームを進めることが出来ます。
まとめ
前作からビジュアルや操作性が格段に進化したのはもちろん、ゲーム全体としてのクオリティの向上に感動。
開発者インタビューでは「ナラティブを目指した作品」という発言がありましたが、正に今作ではストーリーとゲーム性が完全に融合しており境界線がない。
マップやイベントの配置も見事で、環境ストーリーテリングの巧さと理解、そしてそれを実現する技術が数多のインディーゲームの中でも頭一つ抜けている。
前作は「優しかった先生が突然理由もわからず襲い掛かってくる」という、ホラー作品としてはインパクトも怖さも抜群で、この1作目の謎を解き明かしていく今作のストーリーは、これがもし映画やドラマなどの映像作品ならば地味なものになっていたはず。
『リング』に対する『らせん』みたいな感じで、謎が明らかになっていく過程を見せるということは未知の体験から来る怖さが薄れていくことでもあるし、単純にゲームとしてもストーリーとアクションが分断されている前作の方が「鬼ごっこ」という特性からもゲームプレイに集中できて面白いはず。
『ザ・コーマ2:ヴィシャスシスターズ』はそういった「2作目の壁」をゲームシステムの向上と、プレイすることのみによって得られる物語への没入感によって乗り越えています。だから、奥深い設定のストーリーを理解させながらも、ちゃんと怖い。
その怖さの種類もゲーム性も前作と似ているようで、ほとんどがすり替えられているにもかかわらず違和感を感じさせない作りは見事で、ゲームバランスも絶妙。
台湾の『返校』(2017年)と並ぶ、新しい感覚を持ったホラーゲームの傑作。
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