みやび通信

好きなゲームを中心に、様々な文化・エンタメについて書いています。たま~に攻略記事あり。Amazon アソシエイト・プログラム参加者です。

GOODBYE WORLD(Switch)

GOODBYE WORLD

Y・O・フジイ
2022年11月17日
PlayStation 5、Nintendo SwitchXbox OnePlayStation 4Microsoft WindowsXbox Series X/S

本作『GOODBYE WORLD』は、Y・O・フジイ氏によるインディゲームで、フジイ氏にとってのデビュー作でもある。2020年夏にSteamで体験版が配信され、その後さまざまなプラットフォームでプレイ可能となった。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし

 

ゲーム開発者ゲーム

物語ではプログラマーの蟹井(かにい・左)とグラフィッカーの熊手(くまで・右)という二人の女性による、ゲーム開発をめぐる葛藤や関係性の変化が描かれる。
全13話からなる物語は、二人の出会いから始まり、別れ、邂逅までを辿る。
設定的には藤本タツキによる漫画家マンガ『ルックバック』を想起させるが、『ルックバック』が天才二人の物語なのに対し、本作『GOODBYE WORLD』はもっと凡庸で狭い範囲の話だ。
大きな事件もなく、ただただ過ぎていく日々に何ら手立てもなく立ち尽くし、あがくことすらままならない蟹井の日常は、どうしたってドラマティックな展開を期待できない。

 

生コンテストでの入賞を成功体験として、就職をせずゲーム開発の道に進んだ二人。
しかし、開発はすぐに壁にぶち当たり、理想だけが膨らんでは、しぼんでいく。
そんな蟹井に根気強く付き合っていた熊手だが、現在のバイト先に就職する人生に自分自身の幸せが丁度収まることに気が付き、蟹井のもとを去っていく。
その後も蟹井は自分の好きな、作りたかったゲーム開発に固執する。
そのゲームも、熊手のグラフィックが評価されていただけで、ゲーム自体は市場では全く通用しないという現実を突き付けられてしまう。

 

蟹井は本当に不器用で、自分の気持ちを言葉や行動で上手く表現できない。頭の中が嫌な事で埋まっていくと、ネコを思い浮かべてギリギリ心の平衡を保っているような状態だ。

 

ゲーム内ゲーム

蟹井と熊手の物語の合間に、プレイヤーは二人の開発しているゲーム『BLOCKS』をプレイすることになる。
ゲームボーイを思わせるレトロなドット絵のゲームは、パズル要素の強いジャンプアクションで、ちゃんと遊べるものになっている。
ただ、これが売れるかどうかを考えると微妙で、私自身、蟹井の隣で「何が足りないんだろうねえ」と語りかけたくなってしまった。

 

蟹井の行き場のない感情とリンクするように、ステージは徐々に暗闇に閉ざされる。
『BLOCKS』自体は、たとえクリア出来なくても、3回ミスるとゲームオーバーとなり物語は進んでいく。
この、ゲーム開発者ゲームの中のゲーム内ゲームという構成は、本作に独特のテンポを与えている。

 

感想

これぞインディゲームと言った題材を、短いプレイ時間にしっかりと落とし込んだ良作。この手のカジュアルゲームとしては、表現方法は複雑なのに、プレイヤーに直線的に理解させてしまう巧さがある。
多くのインディゲームでは、作中に蟹井の抱えていたような葛藤や思想が漏れ出していることがままあるが、本作ではそうしたものを極力削ぎ落としてプレイヤーを物語の世界に没入させる。
蟹井自体は動かせないものの、蟹井のプレイしているゲームをプレイさせることで一体感を与える手法もゲーム独自の演出で実に上手い。
本作で描かれる淡々とした日常は、決してSNSでバズるような派手なシーンこそ生まないが、誰もが感じたことがあるであろう様々な感情を喚起させ、クリア後にはしばし呆然ともの思いにふけってしまうような感動があった。
終わり方も素晴らしい。
Switchでは振動機能を生かし、さらに没入感を得られるのでオススメ。

 

 

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