FAITH: The Unholy Trinity
Airdorf Games
2025年8月7日
Nintendo Switch、Steam
本作『FAITH: The Unholy Trinity(信仰:不浄な三位一体)』は、Airdorf Gamesによるインディホラーゲーム。Airdorf Gamesの代表であるメイソン・スミス氏はこれまでいくつかのゲームを開発してきたが、デビュー作は2017年にitch.ioで配信された『FAITH(信仰)』で、本作はこのFAITH三部作を一本にまとめたものとなっている。尚、Steamでの初出は2022年10月22日だが、今回のSwitch版ではテキスト・ボイス共に完全日本語対応となっている。
以下、クリア後の感想。
※ネタバレなし
8ビットの恐怖

本作の特徴は、8ビットによるビジュアル表現とノイジーな合成音声にロトスコープアニメーションが一体となることで表出する不気味な世界観。
背景がほとんど真っ黒のチープな画面は、ホラーの恐怖感を高めると同時に、残酷でグロテスクな描写をリアルに描かず、プレイヤーの想像力に委ねる免罪符としても機能している。
サタニックパニック
本作における8ビット表現は任天堂のファミリーコンピューター(1983年)よりも少し古い、Atari 2600(1977年)やApple II(1977年)のテイストに近い。
本作のストーリーは、主人公の神父が反キリストの悪魔崇拝カルトと対決するというもの。これは1980年に端を発する、アメリカで流行した「サタニック(悪魔崇拝)パニック 」を題材にしたものだ。

サタニックパニックは当時の心療内科で有効とされていた催眠療法セッションにより、多くの患者が悪魔崇拝カルトに虐待された記憶が蘇り、パニックになったことで広がった社会問題を指す。
ここから派生していったナラティブとして、富裕層やエリート層を含む世界的な悪魔崇拝カルトの陰謀(人身供犠、ポルノ、売春、誘拐)という、近年起きたピザゲート(2016年)と同様の陰謀論が展開された。
このカルトへの勧誘ツールとして、ヘビーメタルやダンジョンズ&ドラゴンズが使われていたのではないかとみなされていたことはNetflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でも描かれている。
催眠療法が人の忘れてしまった過去の記憶を呼び起こすというのは全くのデタラメで、現在ではほとんどの心療内科では採用されていないが、90年代までは多くの人に信じられており、宇宙人によるアブダクション(誘拐)もこの催眠療法が発端となり、サタニックパニックと同様の問題を引き起こしている。
実際、この催眠療法で蘇る記憶は、人が個人的に不安に感じた映像が頭の中に再生されるだけで、80年代は新宗教運動(NRM)の台頭による危機感と、当時流行していた『エクソシスト』(1973年)や『オーメン』(1976年)のようなホラー映画が合体した記憶に過ぎなかった。
本作の8ビット表現が持つ、ある種の不鮮明さやノイズは、このサタニックパニックの悪夢を描写するのにうってつけのキャンバスであると言えるだろう。
ゲーム概要
ゲームは基本的にマップを探索し、落ちているテキストを読みつつ謎を解き進めていく。
敵との戦闘は、持っている十字架を掲げるアクションのみ。十字架を掲げている時には移動が出来ないので、主にボス戦では相手の動きを見ながら攻撃と回避を使い分けて攻略する。
普段Steamでプレイしているようなゲーマーならば難なくクリアできると思うが、Switchユーザーには高難易度に感じるかもしれない。覚えゲーなので、何回もチャレンジしてコツをつかんでいこう。
一周のクリア時間は約3~4時間。12ある全てのエンディングまでは約10時間程度。
感想
開発者のメイソン・スミス氏は敬虔なキリスト教徒で、宣教師として働いていた時期もあるという。そんな開発者による反キリスト教的なテーマは我々日本人からするとあまり馴染みのないものだが、上記したサタニックパニックについて少し知っておくと理解がしやすいかと思う。
ゲームデザインは相当に古いが、プレイしてみると導線がしっかりと引かれていて理不尽さはほとんど感じられない。謎解きや戦闘のバランスも良く、自然とこの魅力的な物語の世界に引き込まれてしまう。
BGMにはいくつかクラシックの楽曲が使われているが、8ビットサウンドによるエリック・サティは一聴の価値あり。あと終盤、連続で畳みかけてくる大量のピクセルアートが本当に狂っていて最高だった。
(C) New Blood Interactive (C) Airdorf Games. Licensed to and Published in Japan by HAPPINET CORPORATION
