
じゃあ、また
RB Wolf Design
2025年1月9日
Microsoft Windows、macOS、Nintendo Switch
本作『じゃあ、また』は、マレーシアのRB Wolf Gamesによるインディゲーム。
PCでの初出は2022年10月3日で、原題は『再見 Once again』。
以下、クリア後の感想。

本作はオーストラリアのインディゲーム『Florence』(2018年)の系譜にあるカジュアルゲーム。
簡単なタッチ操作で物語を読み進め、短時間で誰でもクリアまで到達できるシステムとなっている。
『Florence』と比較すると、ナラティブとインタラクトが分かち難く結びついているとは言えず、ゲームとしての完成度は劣るが、それでも十分プレイする価値のあるゲームだ。
「さよなら」を言うために


本作の物語は、主人公の少年「ナツ」が毎年自分の誕生日にだけ、亡くなった母親に会うことができるというもの。
ナツの知らない若き日の母の姿。
ほんのひと時の間だけ、同じ時間を過ごし、思い出を作っていく。
そしてまた次の誕生日…というふうに、過去を待ち遠しく思いながら未来に向かって生きていく。

母の吸うタバコの煙、母の乗るオートバイ、カメラ、写真。
フィルムには共に過ごした思い出が焼き付けられていく。
そうして迎える最後の夏、ナツは何を思うのか。
手書きで書かれた丁寧なイラストと、シンプルなアニメーション。
説明不足だが確実に伝わってくるセリフの数々は、ナツと母親の関係性をよく表している。
タイムトラベルは過去を変えるためでなく、ナツが確かに母親の物語の中に存在したことを確認するためのものだったように思う。
そしてこの作品をプレイしている私たちもまた、写真や映像、思い出の物や場所にアクセスすることでタイムトラベルすることが可能だ。

こうした物語が語られるとき、父親よりも母親が選ばれる傾向があるのは、母親の女性性によるものなのだろう。
母親には自分を生む際の出産の危険性があり、自分の育児によって何かをあきらめざるを得なかったのではないかという罪悪感もある。
そうした意味で、若かりし日の実像という点では、父親よりも母親の方が想像がしにくく、謎めいている。
かつて彼女がどんな夢を見て、何を大切にして生きていたか。
母親の記憶がほとんどないナツの見る景色が、多くのプレイヤーにとっても共感できる情景として映ればこのゲームは成功だろう。
©RBwolfGAMES