みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

アイドルマスター.KR(Amazonプライム・ビデオ)

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アイドルマスター.KR

脚本 シン・ヘミ, ウォン・ヨンシル
監督 パク・チャンユル

2017年

Amazonプライム・ビデオ

 

アイドルマスター.KR』は日本のゲーム『アイドルマスター』をモチーフとした韓国ドラマです。現在日本の動画配信サイトで配信しているのはAmazonプライム・ビデオのみで、日本語吹き替えはありません。

とにかく面白くて最後まで一気に観せてしまう魅力を持っている今作ですが、構造的にかなり特殊で、詳しく調べることでいろんな仕掛けが解ってより面白くなるので感想を交えて紹介していきたいと思います。

 

韓国と日本のアイドルの違い

今作に登場するアイドルReal Girls Projectのメンバーは実際にアイドルを目指している・経験している女の子を全国から募集して日本人1人、タイ人1人と韓国人8人の計10人(途中一部退場・追加あり)からなるメンバーが組まれましたが、その一次審査方法は各々がYouTubeInstagramに載せたプロフィールへの一般評価によるものでした。日本にもAKB総選挙のような投票形式のものはありますが、韓国ではデビューを決定するオーディションにおいてもプロだけでなくファンの投票に委ねる番組も多く存在します。

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ドラマ開始早々に20代後半のアイドル研修生が登場しますが、これも日本ではかなり特殊に見えますが、韓国ではそこまで珍しくありません。

日本のアイドルの歴史は古く、テレビや歌謡曲と共にありながらサブカルチャーをも取り入れた良い意味でも悪い意味でもガラパゴス的な独自性やゆるさ(発掘からデビューまでの期間が短い)があるのに対して、韓国でのアイドルというのは90年代後半から顕在化した概念であり、世界的な成功を視野に入れた国際的なアーティストとしてのアイドルを育成するために莫大な資金が投入されています。素人からすぐにアイドルになるようなパターンはほぼなく、長期間の実践トレーニングを積んでからデビューします。なので研修生期間が長いアイドルが生まれやすい環境があります。

ドラマの中では事務所社長自らジャンルの異なる女の子たちをスカウトして育てていくわけですが、この展開は日本のアイドルのエピソードっぽいですね(日本の昭和アイドルは原宿でスカウトされて~というようなパターンが多かった)

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そのスカウト組と研修生のチームにプロデビューをかけて毎回課題を与えて対決していくというストーリーなのですが、こうした育成過程を描きながらのドラマ展開は原作のアイドルマスターに通じるものがあります。韓国のオーディション番組はアメリカのもののような公開形式が多いのですが、日本ではテレビ東京ASAYAN』でのモーニング娘。のようにリアリティショー形式で見せていくものが2000年前後に流行しました。

それをさらに発展させたAKB48は過酷な状況にアイドルを追い込みすぎて半ば残酷ショーのようなグロテスクなものになってしまったので、リアリティショーをフィクションにしながら本当にアイドルを目指している女の子たちを使うというリアリティを織り交ぜた『アイドルマスター.KR』の手法は画期的かつ理想的です。

 

女の子たちの魅力

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ドラマのストーリー的にはスジを軸に、彼女の妹であるスアの死の謎を解き明かしていくことになるのですが、その他の登場人物も決して脇役に甘んじることなく丁寧に描かれているのが今作の大きな特徴。

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アイドルたちは皆本名での出演で、役柄にも彼女達の実像が大きく反映されています。これによってアイドルドラマにありがちな演技力のバラつきや不自然なキャラクター描写によって視聴者が受ける違和感は軽減され、いつの間にかアイドルたちの魅力によってストーリーが引っ張られて行きます。これだけ多くの女の子たちが出演していながら、それぞれの細かい関係性が隅々まで描かれているドラマも珍しいです。キャラクターの特徴がきちんと描かれているので、ドラマ中に起こる小さな出来事に対するそれぞれの感情の機微や、様々な状況に置かれたキャラクターの立ち位置や組み合わせにも一喜一憂してしまいます。普通はもっと特定の曲が必ずかかるとか、売り出したいタレントの出番だけ多い等の事務所・スポンサー的な制約が見えてしまうものですが、今作においてそういった要素は最低限に抑えられており、最後まで目が離せない展開が続きます。個々のタレントとのディスカッションを基に丁寧に作られたドラマと、全24話という長さによってアイドルたちの魅力が余すところなく生かされている作品になっています。

 

カンプロの魅力

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Real Girls Projectのアイドルたちを擁する825エンターテイメントのプロデューサーを務めるソンフン演じるカン・シンヒョクも今作を支える大きな魅力的要素の一つ。

常にポーカーフェイスで、アイドルたちにもめちゃくちゃ厳しいのですが、ふとした瞬間に見せる表情がとてもかわいい!女性視聴者からすれば、今作で初めて魅かれるアイドルはカンプロかもしれません。彼自身がものすごくアイドル性が高いんですよ。

 

偏見なく見てほしい作品

韓国では同時期に大きなオーディション番組が乱立してしまい今作『アイドルマスター.KR』は目立つことが出来ずに埋もれてしまったようです。もったいない!

日本でも原作であるアイマスは基本的に声優ファンに支えられているし、現役のアイドルファンはわざわざ生で見ることが困難な他国のアイドルを追うことは稀。

アイドル云々抜きにして純粋にドラマとして面白いのでフラットな目線で見てほしいとは思うのですが、アイドル・ゲーム・韓国というジャンルや国に対する偏見は多くの人達に高いハードルとなって立ち塞がっています。

私自身はかつてハロプロなどのアイドルにハマっていたのですが、アイドルを「応援」することの重みに耐えかねて逃げ出してしまった経験があります。

アイドルに対する世間からの偏見と、それを助長するようなファンやアイドル仕事をこなしているアイドルたちの姿。女性アイドルに限って言えば、短い期間の貴重な少女性を売りにし、20代前半で寿命を迎えるという残酷なビジネスや、その中で病んでいく子達も沢山見てきたし、あまり売れていないアイドルならグッズやファンクラブを通しての投資の個人的負担が大きく、それらが更に彼女たちを追い詰めていく環境に自分自身が参加していることに耐えられなくなりました。

一度アイドル文化に浸かってしまうと「応援」のハードルは上がり、たまに気に入った曲を見つけても「CDを買っただけではファンと呼べないのでは」と思い、日を追うごとにアイドル文化から離れていってしまいました。

そんな私にとって『アイドルマスター.KR』は、自分がアイドルを好きになった原点へ帰してくれながらフィクションとノンフィクションが交差するストーリーへと導いてくれました。日本と韓国のアイドルが持つ良い部分だけを切り取ったドラマは都合の良い幻想だと笑われるかもしれませんが、醜い現実にはウンザリだし、その醜さとアイドルの魅力とは全く関係がないものです。

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ドラマ中にもアイドル同士の嫉妬や対立、ビジネスにおける大人の都合などが描かれ、単純な成功物語に着地せず、終盤のステージでは彼女たちのリアルな希望と不安がないまぜになったシーンが描かれます。

ドラマの本当に最後の場面、スジの「私たちがあなたを応援するから」というセリフにこのドラマの素晴らしさが凝縮されています。日本と韓国のアイドル文化を解体し、アイドルの魅力だけを再構築したフィクションによってアイドルとそのファンをビジネス的な足かせから解放し、最終的にその関係性を逆転する発想は原点回帰でもあります。本来多くの人達に歌やダンスで元気を与えるはずのアイドルが、いつの間にか欲望のはけ口となり、投資の見返りとして若さを消費するのは結果的に提示される風景こそ正常に見えてその内実は捻じ曲がっています。『アイドルマスター.KR』が提示した世界観は本来そうあってほしいアイドルの世界で、多くのアイドルを目指す女の子たちが夢見る世界です。厳しい競争社会ですが、それぞれの個性が尊重されて切磋琢磨する現場は様々な利権が絡む芸能界では理想でしかないのかもしれませんが、プロの世界としては正常だと思います。

ドラマの中では彼女たちの今後の活動や楽曲の宣伝などが全くなく、あくまでもフィクションとして最後まで描き切っています。これも言ってみれば、アイドルドラマとして理想的な制作を実現しています。Real Girls Projectのアイドルたちはどの子も魅力的で楽曲も素晴らしいので多くの方たちに観てほしいドラマです。

 

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ゲームと事件~元農林水産事務次官長男刺殺事件について思うこと

2019年5月28日 、川崎市登戸駅近くで起きた51歳の男による無差別殺人。2人が死亡、2人が重症、15人が怪我を負った。子供達が乗る送迎バスを狙ったもので防ぎようがなかった。犯人の岩崎隆一は自らの首を刺して搬送先の病院で死亡。

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岩崎については細かい情報がほとんどない。親戚の家で引きこもり状態にあった岩崎の部屋にはパソコンやスマホはなく、他者とのコミュニケーションが全くない状態だったようで、岩崎が映っている写真も中学の卒業アルバムのものしか見つかっていない。

マスコミが大衆を扇動するのに使ったのは犯人への怒りだったが、岩崎はもう死んでいるので唯一の特徴である「引きこもり」を犯罪者予備軍のように報道することで印象操作。「部屋は整然と整理されていて、テレビのほか、ポータブルのゲーム機やテレビにつないで遊ぶゲーム機などもあった」というテレビの報道もあり、ゲームに対しても怒りの矛先が向けられてしまった。

 

6月3日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した精神科医斎藤環氏は「まず最も欠けているのが、海外の乱射事件などでなされていることでもある、被害者の追悼と遺族への寄り添いだ。
事件の背景の掘り下げも大事だが、初期段階としては被害者のサポート、心の問題についてのケアがなされて然るべきだと思う。そうした視点があれば、ストップウォッチのような、トラウマをえぐる報道はしないはずだ。検証するにしても、もう少しやりようがあるという気がする。被害者視点が欠けており、単純に事件を面白おかしく消費しているとしか言いようがない。そこは残念なところだ」と指摘。

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池田小事件の宅間守のように、ふてぶてしく被害者の感情を逆なでするような発言があれば私だって怒りで血が沸騰するが、岩崎はもう死んでいる。しかもわからない事ばかりだ。斎藤環氏の言う通り、どんなに大衆が怒っていてもマスコミは「被害者の追悼と遺族への寄り添い」を優先するべきだ。犯罪者予備軍を決めつけ、次の岩崎探しをするなんてストーリーは炎上商法ではないのか。まるで全ての引きこもりが同様の事件を起こすような偏見に満ちた分析はやめてほしい。

 

川崎の事件から3日後の6月1日、元農林水産事務次官の熊澤英昭(76)が長男である熊澤英一郎さん(44)を東京都練馬区の自宅で殺害するという事件が発生。

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この事件では被害者である長男が引きこもりの状態にあって、加害者である父親は事件当日に近所の小学校で行われていた運動会に対し「音がうるさい」と言う長男を見て川崎の事件を連想し「怒りの矛先が子供に向いてはいけない」と思い犯行に至ったと供述。

被害者の英一郎さんは本名でTwitterをやっており、そこでのいわゆるイキリオタクっぷりはマスコミが作り上げた犯罪者予備軍と重ね合わせやすく「こいつはやばい」「事件起こしそう」「親父よくやった」など、被害者を罵倒し、加害者を称賛する声で溢れた。

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被害者の英一郎さんが使用していたTwitterアカウント。ステラというのは彼がドラクエ10の中で名乗っていた名前の一つ。

被害者がプレイしていたオンラインゲーム『ドラゴンクエスト10』での行いや、Twitterでの発言などを見ると確かに嘘や差別的な発言が目立つが、これは特別彼に限ったものではないだろう。プライベートを盛ったり、ネット右翼的な考えの人間など珍しくもない。唯一気になるのは被害者が母親に暴力をふるっていることが自慢げに書かれている事だが、これも他人の家庭内の事なので事実確認の取れない段階での推測は出来ない。

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被害者のTwitterではしばしば母親に対する敵意が綴られていたが、熊澤家の家庭環境については不明瞭な部分が多く、被害者の言葉だけを鵜呑みにするのは危険。

家庭内暴力がひどい引きこもりの息子に耐えかねた父親が近所の小学生を守るために起こした事件という筋書きは、実に想像や感情移入しやすいものだが、あとから出てくる情報を待たずに攻撃対象を決めつけて怒りをぶつけるのは短絡的だ。

実際に被害者が実家に住んでいたのは事件発生のわずか数日前からだったり、加害者が以前から護身用ナイフを持っていたなどの新しい情報が出てきているわけだが、事件を扱った報道は鎮火していくだけなので最初の印象だけが残ってしまう。

ネットの炎上とマスコミの偏向報道が合わさることによって、まるで宮崎勤や松本サリンの時代へと逆行しているように感じる。

 

オンラインゲームは有害か?

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様々な事件報道で標的にされることが多いゲームだが、凶悪犯罪とゲームを結び付けるような研究結果は今の時点ではない(http://interpersonalresearch.weebly.com/uploads/1/0/4/0/10405979/ppmc_-_vvgs_and_real-world_violence.pdf)。かつてチャールズ・マンソン一味がテレビのインタビューで「俺たちは毎日テレビで戦争映画を見ている!」と答えていたが、犯罪をメディアやエンタメのせいにするのは犯罪者側の理屈だ。

例えばソシャゲに課金しすぎて借金を背負い銀行強盗する人間がいたとして、それはゲームのせいではなくて課金システムが悪いのだ。

ではオンラインゲームの「オンライン」の部分はどうか。

最近多い対戦型(PVP)のものに限っては、まず1試合の時間が短くゲーム自体の値段も安く課金要素はソシャゲのガチャに比べると遊びの範囲を越えない設定になっている。

これも人によっては中毒性があるともいえるが、的確な操作と集中力が要求されるため中高年者が長時間プレイできるものではない。eスポーツにおいても上位ランカーは20代が大半を占めている。

一方今回の被害者が遊んでいたゲーム『ドラゴンクエスト10』(以下ドラクエ10)はMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲームの略)と呼ばれるタイプのゲームで、ゲーム内の世界に自宅や街などの自由に歩き回れる仮想現実空間が存在していてチャットによる他プレイヤーとの交流が盛んに行われている。

他のゲームのような多人数バトルも存在してはいるが、一人で遊べるものも多く、プレイヤースキルやコミュニケーション能力が低くても困ることがあまりなく、長時間プレイしていても疲れないのでネトゲ廃人を生みやすい。

海外のMMOや、それを模倣した国産のMMOと違い、ドラクエ10はMMO初心者をターゲットにすることでゲームの敷居が低く設定されており、他のゲームについていけないような人やドラクエ世代の中高年者達の憩いの場としても機能している。

ただ、2012年のゲームである。私が定期的にこのゲームを遊んでいて思うのは、ここ2年程のドラクエ10にはもはや依存性がないのではないかということ。理由としては、オンラインゲームで重要なキャラクター強化の部分が完全に終わってしまっているということ。

ゲーム開始時に設定されたデザインの伸びしろは既になく、ストーリーを終えたプレイヤーは休止するか仲の良いフレンドとチャットするくらいしかやることはなくなっている。しかし、その考えは今回の事件の被害者のTwitterを見たことで砕かれた。

被害者の英一郎氏はゲーム内でとっくの昔に形骸化してしまった初期のコンテンツを延々とこなしていた。問題発言・行動によって運営にキャラを削除されてもまた一から作り直してコツコツとレベルを上げていたのだ。

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被害者が毎日欠かさずこなしていた日課。ここに書かれているものだけでも2時間近くかかる。ドラクエ10にはこれ以外にも週や月ごとにやらなければならないことが山ほどある。

最新のゲームについていけないドラクエ世代の吹き溜まりとして機能していたドラクエ10だが、逆に言えば2012年という閉ざされた空間に彼らを閉じ込めてしまっているようにも思える。ビジネス的にはドラクエというIPを延命させる為のノスタルジアマーケティングだが、一部のプレイヤーにとってのドラクエ10は永遠にぬるま湯に浸かってロールプレイできる理想郷のようなものになっている。そんな状況に甘えて運営側もゲーム作りにたいして力を入れていない。いわゆるゲーマーと言われる層や純粋なドラクエファンは半年かそこらで去っていく。

1年以上継続して毎日プレイしている人は、たとえそれが惰性だとしてもプレイに何かしらの意味付けをしなくては「やっていけない」状態になってくる。もちろん例外はあるが、被害者のツイートを見ると「楽しむ」「有名」というワードが多く散見される。これらが意味するのは、もはやドラクエ10のゲーム性とは関係のない、終わりのない仮想現実の中を生き続ける知恵だ。自分の世界を壊そうとするプレイヤーや、時には運営に対する攻撃性はプレイ時間が長い者ほど強い傾向にある。これがさらに悪化すると「自分より楽しそうにしている人」や「ゲーム内の有名人」にまで攻撃しはじめる。被害者の迷惑行為も主に有名なドラクエ10ブロガーに対して向けられることが多く、そういった迷惑行為で自分自身が有名になることに対してまんざらでもなかった様子が伺える。

被害者の父は農林水産事務次官というエリートで、被害者自らそれを公言していた。ドラクエ10というゲームの世界でもう一つの人生をやり直そうとしていた被害者にとってゲームの中でも特別な存在になろうとしたのは必然のように思う。Twitterでのネット右翼的思想やスルメロック氏の漫画、植松聖に賛同するような優生思想っぽい発言も、本気でそう思っていたというよりはゲームの世界(仮想現実)の流れの上での発言のように思える。

加害者は長男が川崎事件の岩崎のようになるのではないかと危惧したと供述しているが、私にはそうは思えない。少なくともドラクエ10にそのような危険性はない。ある種の人間にとって引きこもり状態を長引かせるような側面はあるかもしれないが、今回の被害者にとってはむしろ受け皿になっていたように思える。被害者はドラクエ10の世界を存分に楽しんでいたし、近く来るアップデートも楽しみにしていた。自分を受け入れてくれる世界やコミュニティを持つ人間が、それらすべてをぶち壊しにする行為を果たしてするだろうか。現実の自分自身とのギャップに苦しんでいたとしても未来への経済的な不安はない。川崎事件の岩崎とは何もかもが違う。

 

精神疾患発達障害の可能性

被害者はTwitterにおいて自身の病気に関するいくつかの記述を残している。私はそういった病気に関しての知識があまりないので何とも言えないが、事件当日に被害者に向けられた「いつか事件を起こしていただろう」「犯罪者予備軍」などの誹謗中傷の言葉にはあまりピンと来ていない。彼のTwitterを読めば読むほど今まで見てきた犯罪を犯すような人間とは似て非なるもののように思えてくる。自分は幸せだという記述が繰り返し出てきたり、仮想敵に対しての仮想の恋人(ここらの真偽は現在不明)とのプラトニックな恋愛話など、どこまでも際限なく過激になっていくタイプというよりは彼自身の中で愛憎が拮抗しているような印象を受ける。

 

ここから少し個人的な話。

私自身、中学校に入学後間もなくして情緒不安定な状態に陥り、仮病で学校を休んだり登校しても保健室でゴロゴロして過ごすようになってしまった時期があった。

それはすぐに親にばれ、夏休みに入ると大学の施設で検査を受けることになった。多少は渋ったが学校をサボっていた後ろめたさもあって結局行くことになった。約一週間の内、検査自体は一日で終わり、あとは山で楽しくキャンプをするというもの。新宿から一人でバスに乗り地方の大学へ。大学に着くと私と同じ理由で連れて来られた子供達が20人以上集まっていた。さっそく部屋に通されて3人一組で様々な質問に受け答えたりロールシャッハテストなどを受けた。

それが終わるとバスに乗り込みキャンプ場のある山へと向かうのだが、皆初対面な事もありバスの中は静まり返っていた。そんな中で一人明るく先生(大学の研究生)や運転手に気さくに話しかけている女の子が美佐子(仮名)さんだった。私より一つ年上の中学2年生で、体つきも大人で美人で明るい美佐子さんは運転手に自分の持ってきたCDをかけてもいいかと頼んでいた。音楽が好きだった私は「それ何ていう曲なの?」と美佐子さんに話しかけ、それをきっかけにしてすぐに仲良くなった。いきなり友達が出来て嬉しかった。私達二人は他の子へも積極的に話しかけていき、キャンプ場へ着く頃にはバスの中は和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。

キャンプ場へ着くと私達と同じような20人程度の子供たちのチームが2組待機していた。彼らは近県の普通の中学生で、ボランティアという言い方をしていた気もするが詳細は忘れた。とにかくそこで初めて先生から彼らとこれから共同生活をしていくのだと告げられた。寝泊まりするキャンプこそチーム別に分かれているが、それ以外の共同作業はシャッフルで班が組まれるという。

他チームの子供達は私達の事情は何も知らないので同じ中学生として過ごしてくれればよいと言われたものの、私は目まいがするほどの不安に襲われた。普通の中学生と見比べてみると明らかに私達のチームは浮いていた。「この人達と同じだと思われたくない」と、何故だか彼らに私達の事情がばれたら全てが終わる予感がして気が気ではなかった。

 

私たちはシャッフルされた班ごとに分かれて薪割りや食事の準備をした。特に皆何も気にせずに作業しているようだった。私は内心ドキドキしながら色んな学校の子たちと仲良くやっていたのだが、ある時他のチームの女子2人と一緒に水場で食器を洗っていた時に一人の子が「このキャンプに精神病院の子達が混ざってるって噂聞いたけど、本当かな?」と言った。まずいと思った。しかし間を空けずにもう一人の子が「みんな同じ中学生だよ」と言った。その言い方からは、私達の事情を知っていながらかばってくれているような優しさを感じたが、そんなことよりも私は自分自身が心底恥ずかしくなり顔が真っ赤になった。私はキャンプに着いてからずっと自分と同じチームの子達を差別し、他のチームの子達と仲良くなりたいと思っていた。そんな気持ちが見透かされたようで、本当に心から自分を恥じた。

 

それからは自分のチームでも他の班行動の時でも同じように振る舞った。長く一緒にいると自分のチームの子達の中には全く喋らない子や高圧的な子、突然地面を叩く子など、様々な発作を目にすることはあったがほとんどは一時的なものに過ぎず、皆普通に話せるし問題なくコミュニケーションが取れた。私や美佐子さんのように発作が出ないタイプの子の方がむしろ多く、当初感じていた不安はもう全く無くなっていた。

 

テントでは二人一組になって寝袋で寝るのだが、私は美佐子さんと一緒だった。ある日の夜、深夜に目が覚めた。薄い暗がりの中、見ると私の隣で美佐子さんが寝袋から体を半分起こして歌を歌っていた。美佐子さんは驚いている私に気が付くと「ねえ!じゃあこの歌は知ってる?」と言って違う歌を歌い始めた。私は「早く寝なよ」と言って寝袋に入り眠った。

 

キャンプが後半に差し掛かる頃、今まで学んだことを実践するための2日間の登山の募集があった。かなり厳しい山を登るので、行きたい子だけが行き、自信のない子はそのままキャンプで過ごすというもの。他のチームからは半数くらいの子が挙手したのだが、私のチームの子は誰も行こうとはしなかった。本当は私も行きたかったが、チームで自分だけが行くのは気が引けると躊躇していたところに美佐子さんが「一緒に行こう」と誘ってくれた。嬉しかった。

登山は入り口の時点からかなりの急こう配を登らなければならならず、休憩は2時間おきで、空気もだんだんと薄くなる。5~6時間登った頃、美佐子さんが私の耳元に小声で「もうそろそろ帰ろうよ」と言ってきた。私は全然疲れていなかったし、美佐子さんも特に辛そうには見えない。5~6時間かけて登ってきたのにこれからまた同じ時間をかけて帰るなんて嫌だったし、頂上の景色も見たかったので「がんばろう、もう少ししたら楽な道になるみたいだよ」と言ったが美佐子さんは聞いてくれない。「大丈夫、私が先生に言えばキャンプまで付き添ってくれるから」と言いながら美佐子さんがポロシャツのボタンを外すと大きな胸の谷間が覗いた。美佐子さんは中学2年生だがキャンプに来ている子供たちと比べて身体も胸も大きく、先生が彼女に向ける視線も他の女子とは違うことは私も気が付いていた。しかし色目を使って先生に甘えるなんてと、私は少し不愉快な気持ちになり「頂上で待ってるから」と言って美佐子さんを置き去りにした。

頂上で休憩している時に他の子から美佐子さんが腹痛を訴えて先生に担がれて下山したことを知った。

その後私は2日間の登山を無事に終えることが出来た。登山中は一人でテントを張り、自炊することになるのだが、登山した子供たちの中で私だけが飯ごうでご飯を炊くのに成功してみんなの前で先生に褒められたし、森の中でのキャンプファイヤーで他のチームの子たち全員と仲良くなることが出来たりと大収穫だった。

途中でルートを変えて下山するチームもいて、結局最後まで登山を完走出来たのは10名程度で、私達がキャンプへ戻ってくるとみんなが歓迎し褒めてくれた。

一通り皆んなに挨拶を終え、テントに戻り荷物を片付けているところに美佐子さんが駆け寄ってきて「すごいね!私もお腹痛くなかったら行きたかったな~」と言ってきたので「そうだね」と返した。

 

それからキャンプが終わるまでの間、私は一緒に山を登った子達と仲良く過ごした。帰りのバスの中、相変わらず美佐子さんは先生や運転手などと楽しく話していたが、私はもう彼女に声をかけることはなかった。

 

あれから20年近くが過ぎたが、彼らと連絡を取ることはなかったし、あまり思い出しもしなかったのだが、ここ数年ネット上で見かける悪い意味での有名人の一部に美佐子さんの面影を見出してしまう。そこに、あの下山した日の分岐を見る。

もしあのキャンプの時、私が美佐子さんの嘘を責めていたら一体どんな事が起こっていたのだろうか。私の機嫌を取るための嘘に嘘を重ねていたかもしれないし、他の子や先生を使って私を攻撃してきたかもしれない。もちろん、普通に謝ってくれたのかもしれないが。

ドラクエ10関係の有名人の中には、最初は良いイメージで有名になり、本人がそのイメージを拡大させるために嘘を重ねてしまい、それを責められることで攻撃性を強めたり被害妄想に憑かれ、裁判や自殺をほのめかすようになりアンタッチャブルな存在になっていく過程をいくつか見た。そういった人を擁護している仲間も、結果的には火に油を注いでいるだけで問題解決の方向へは向かわない。

2ちゃんねるやニコニコの時代から彼らのような人達は「おもちゃ」と見なされ弄ばれてきた。彼らには本当のファンもアンチもいない。ただいじめられて、壊れたら次のおもちゃにターゲットが移行するだけだ。

私が参加したキャンプに来ていたような子供達は、まだ親が早い段階で心配して対策を施してくれたパターンだが、子供に無関心であったり無理をさせたりして後天的な症状を発露させてしまうパターンも少なくないだろう。今回の事件でも、被害者が発達障害精神疾患を患っていた可能性を報道するメディアは少なかった。これだけ加害者に都合の良い供述が鵜呑みにされた事件というのは珍しい。近い時期に起きた事件との類似性(こじつけ)や、オンラインゲームという特殊な環境やSNSにおける被害者の尖った発言を切り取って組み立てられた信憑性の薄いストーリーによって殺人が正当化されてしまった。

発達障害精神疾患だと認定されている人間がいくらそれを訴えたところで、ほとんどの人には対処法が解らない。結果的に彼らは嘘つきと責められ、周りに対して攻撃し始める。孤立した人間がインターネットで全能感を得ようとして差別的な思想に毒されるのは当然のように思える。その攻撃性は、彼らに対する想像力が欠如した人達のひやかしによって加速する。私自身、そういった疾患を持った人との付き合い方はわからない。

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最初はただの気分屋くらいに思っていた友人から突然一線を越えてくるような中傷を受ければ嫌悪感を抱いてしまうし、アスペルガー症候群に理解のない人との間には埋めることの出来ない溝を作ってしまう。こういった病気への理解がないままネット時代に突入してしまったのは悲劇だ。症状の重さには個人差があるが、少しでも癇癪を起こす人がいたら距離を置くしかない。少なくとも、彼らを焚き付けて炎上させるよりは良い。理想としては私が体験したキャンプのような、しっかりとしたカウンセラーがいて、一般の人も自由に行き来できる場所が必要なのだと思う。

現在、ドラクエ10などのオンラインゲームは一部の行き場のない人たちの受け皿になっている。社会の中に彼らをきちんと理解して受け入れてくれる場所があればゲームなどいらなくなるはずだ。だから今、彼らからゲームを取り上げるようなことだけはしないでほしい。

 

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LoveR ラヴアール(PS4)

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LoveR ラヴアール

角川ゲームス

2019年3月14日

playstation4

 

全キャラクリア後の感想です。

本作『LoveR』は、『トゥルー・ラブストーリー』『キミキス』『フォトカノ』を手掛けたゲームデザイナー・杉山イチロウ氏と、『ラブプラス』のキャラクターデザインで有名な箕星太朗氏とがタッグを組んだ恋愛シミュレーションゲーム

杉山イチロウ氏の個人的な印象としては、その時代のギャルゲーの潮流に上手く乗りながら丁寧でオリジナリティのある良作を作り続けてきた人という感じです。

杉山氏の作品は何作かプレイしてきましたが、どの作品もただの亜流ではなくて独自のゲーム性を恋愛シミュレーションに上手く落とし込んでいて新鮮でした。

 

制作発表時のイメージ画を見た時、『フォトカノ』と比較してエロ要素控えめの純愛路線なのかな?という印象を受けました。

フォトカノ』の制服は女の子の体にピッタリと張り付いていて、身体のラインが強調されていてリアリティのない(悪い意味ではないです)ものだったのですが、それに比べて『LoveR』の絵からはそういったアニメっぽいエロさの抜けたさわやかさの感じられるもので、恋愛シミュレーションの新しい形を期待させるものでした。

 

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実際プレイしてみるとメインヒロインの篁(たかむら)さんが結構な巨乳で、他の子達もなかなかのものなのですが、やはりPS4という据え置き機専用タイトルということもあって顔や髪の毛など、女の子の他のパーツにもちゃんと目が行くようになっていて、携帯機の作品に比べると不自然なエロさは大分抑えられていました。

 

コミュニケーション

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会話によるコミュニケーションは、流れてくる話題のピースを選ぶことでそれぞれのゲージが溜まっていき、ゲージがMAXまで貯まると特別なイベントが発生します。

これは女の子と話す際のもどかしさが感じられて良かったです。

これ以外にも主人公のステータスアップなど、全体的にわかりやすくてイージーな作りになっていました。

かといって複数の女の子を同時に攻略しようとするとかなり忙しくなるので、自分に合ったプレイスタイルを見つけると、程良く忙しくて楽しい学園生活が送れます。

 

フォト機能

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フォトカノ』でもう既に散々やったし、最初はあまり期待していなかったフォト機能。

結局似たような場所で何度も撮影することになり、ミッションクリアの為に作業的に撮った写真が増えてきて早々にうんざりしてしまいました。

しかし!!!

ある時いらない写真を削除しようとアルバムを開いた瞬間胸にこみ上げるものが!

何気ない会話や作業の間に撮った写真が眩しく、そこに写った彼女達はキラキラと輝いていました。

キャラデザインやPS4で表現されたクオリティの高い美少女の破壊力はなかなかすごい迫力です。接近こそできなくて単調になりやすい構図でも、表情や動きで結構バリエーションのある写真が撮れます。

なので、よっぽどひどい写真以外は削除できませんでした。

しかもそれぞれの女の子のストーリーの終盤やエンディングでは、ちゃんと自分の撮った写真が登場するので、それも感動しました。

今作において、自ら女の子を撮影するというコミュニケーションに勝るものはなく、それを補完するためのストーリーや会話のインパクトも抑えられていてバランスが良いです。

 

女の子たちの魅力

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メインヒロインの篁さん~幼馴染のちなっちゃんという風に、ベタなキャラから攻略していったのですが、この二人のストーリーが似ていたのでちょっと飽きてしまいそうになりましたが、他の子たちがなかなか個性的だったので、全て攻略した後となってはちゃんと全員魅力的に思えます。

妹と小学生が恋愛対象になっているのは最初引きましたが、実際プレイしてみるとほのぼのした良い話でした。

妹の優美菜ちゃん(写真左)はYouTubeVチューバーのようなこともやっていて、そこでの「マジカルユミナ」というキャラとゲーム内のキャラが連動していて、良い感じのファンタジー感がありました。

 

今作『LoveR』は実に丁寧に作られた正統派恋愛シミュレーションゲームの名作です。

杉山イチロウ氏、箕星太朗氏の作品のファンならまず買って損はありませんし、誰でも安心して遊べる作品だと思います。

 

 

3Ⅾギャルゲーの未来

今作を発売日に買って楽しく遊んでいたものの、なにかこう、モヤモヤするものをずっと抱えていました。

発売日の延期があったにもかかわらず、あまり話題になっていなかったこと。

YouTubeでのマジカルユミナを含む『LoveR』関連の動画再生数が全然伸びていなかったこと。

そして発売初週売り上げが1万本に届かなかったことを知り、残念な気持ちよりも「ああ、やっぱり…」という気持ちの方が勝ってしまいました。

杉山氏によれば「DL版が売れているので、実際は倍売れている」との事ですが、それでも2万本程度。いわゆる「信者ゲー」と呼ばれているものでも、このクオリティの完全新作ならもっと売れるべきだし、正直失敗の部類に入る結果だと思います。

 

まず初めに「ギャルゲーは衰退したのか?」と考えて色々調べてみましたが、PS2以降据え置き機専用の作品は減ったものの、主戦場をPSPやVITAなどの携帯機に移して割とコンスタントに新作が発売されています。

じゃあ所謂紙芝居と呼ばれるテキスト重視の作品を除いて、『LoveR』のように等身大のキャラクターをフルポリゴンで描いた作品はどうなのかというと、そもそもそういったタイプの恋愛シミュレーションゲーム自体がほとんど作られていないことに驚きました。

先陣を切った『ときめきメモリアル3』(2001年)に後続はなく、2009年のラブプラス旋風までには実に8年もの空白があります。

ラブプラス』発売の1週間前にD3パブリッシャーから『ドリームクラブ』の1作目がXBOX360で発売。恋愛シミュレーションと銘打ってはいますが、内容は「大人の社交場でホストガールとお酒を飲んだりカラオケをしたり」というもの。

おなじくXBOX360でコンシューマデビューを果たした『アイドルマスター』(2007年、アーケードが2005年)も、「アイドルを育てる」という、それまでの「ときメモの系譜」からは逸脱したオリジナリティを持っていました。

アイマス恋愛シミュレーションという枠に留まらず育成ゲームとしても高く評価され、その数年後(2010年前後)のAKB48のブレイクをきっかけとしたアイドルブームの波にも乗り、現状では最も成功した3Dギャルゲーシリーズだといえます。

ラブプラス旋風後にも特に3Dキャラによる恋愛シミュレーション自体は量産されませんでした。

学園ものに至ってはPS3・4で出た『夏色ハイスクル☆青春白書』(2015年)くらいなもので、こちらもオープンワールド恋愛シミュレーションという変わり種。

ラブプラス』のイメージがあまりにも強すぎて、もっと大量の亜流作品が作られていると思っていたのですが、調べてみると本当に少なく、3Dキャラによる恋愛シミュレーションゲームの勃興と衰退というのはただの「ラブプラスブーム」だったようです。

その後ラブプラス3DSNEWラブプラス』(2012年)の失敗と、2015年の内田明理氏(プロデューサー)とミノ☆タロー氏(イラスト担当・現 箕星太朗)のコナミ退社によって一つの節目を迎えました。

 

そんな中で異彩を放っていたのが今作『LoveR』の作者でもある杉山イチロウ氏で、PSPで発売された『フォトカノ』(2012年)は翌年にはVITAにも移植、アニメ化などのメディアミックスも成功し累計20万本を超えるヒット作に。その後の杉山氏による『レコラヴ』(2016年)と『LoveR』が『フォトカノ』の上位互換だったにもかかわらず初動売り上げが伸びなかったのは何故なのでしょうか。

 

その理由の一つにはPSVRバンダイナムコVR専用ゲーム『サマーレッスン』(2016年)の存在が考えられます。

テキスト系を除いた恋愛シミュレーションゲームの大きな転換を考えた時、『ときめきメモリアル』(1994年)~『ラブプラス』(2009年)に続くものが『サマーレッスン 宮本ひかり』(2016年)だったのではないかと。

ラブプラス』と『サマーレッスン』を比較すると、明らかにプレイヤーに与えられる「疑似恋愛」の要素が大きく変化しています。

『サマーレッスン』での恋愛要素は一見すると後退していて、女の子に触れることもほとんど出来ず、会話によるインタラクションも乏しい。

それなのに女の子とのコミュニケーションの感触が、それまでのどの恋愛シミュレーションゲームよりも超えている感じがします。

これはただ単にPSVRの特性によるものというだけでなくて、キャラの動作がアイドルのものになっていて、しかもかなり研究されつくされたものでした。

一般的な恋愛観と、エンタメによって与えられる疑似恋愛観は全く異なるもので、2010年代のアイドルブーム以降の疑似恋愛観においては「主人公がモテモテのハーレム状態」など作らなくても「アイドルの存在を身近に感じられる」ほうがリアリティとしては勝ってしまう(そう考えるとアイマスの先見性は凄すぎる)。

主人公のハーレム状態やその他諸々のギャルゲー要素はラノベやアニメ、JRPGなどの別ジャンルのゲームに吸収・分散されてしまい、恋愛シミュレーションゲームとして単体で成立させるのはかなり難しくなってきています。

アトラスのペルソナシリーズは3以降ではがっつり恋愛シミュレーション要素を取り入れていて、しかも学園ものでもあったりするので、そこら辺との明確な差異がなければ存在意義がない。

ラブプラス』が携帯機という特性と、その時代の疑似恋愛観を上手く結合させたように、『サマーレッスン』もPSVRによる新しいイノベーションを起こしました。

『LoveR』をプレイしていると、どうしても古さを感じてしまいます。

画質だけが向上した古いゲームという印象は拭えません。

実際にはレビューにも書いた通り、様々な工夫が施された良質なゲームなのですが、主人公とヒロインとの関係性や世界観が10年前のギャルゲーから進歩していないように感じます。

それでも私は『LoveR』というゲームが好きだし、むしろ今作における美しいグラフィックで丁寧に描かれた女の子の生き生きしとした動きを見る限り、ギャルゲーの未来は明るいのではないかと思えます。

 

©2018 KADOKAWA GAMES

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サマーレッスン 宮本ひかり(PS4)

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サマーレッスン 宮本ひかり

バンダイナムコエンターテイメント

2016年10月13日

playstation4

 

『サマーレッスン:宮本ひかりエクストラシーン茶店編』『サマーレッスン:宮本ひかり エクストラシーン 花火大会編(衣装&シチュエーション)』を含む全追加コンテンツ購入、真エンディング後の感想です。

 

本作『サマーレッスン 宮本ひかり』はPSVRのローンチタイトルとして配信されたものですが、それ以前からPSVRの約2年間にわたるお披露目&宣伝期間を共に歩んできた歴史があります。

当初はPSVRのデモコンテンツという扱いだったものがユーザーの大反響・要望に応えてソフト化に至りました。

『サマーレッスン 宮本ひかり』の率直な感想としては、正直大変驚き、感動しました。

これまでのギャルゲー含む美少女文化の系譜をしっかりと踏まえながら現代風にアップデートされた感覚をPSVRに落とし込む発想と、そこで得られる疑似体験のリアリティ。

少し長くなりますが、その理由をギャルゲーの歴史を辿りながら説明してみたいと思います。

 

疑似恋愛文化・ビジネスの変遷

1.ときメモからのハーレム化

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初代『ときめきメモリアル』。シビアなパラメータ管理が特徴的。

©1995 Konami Digital Entertainment

恋愛シミュレーションゲームの走り『ときめきメモリアル』(1994年、コナミ)におけるゲームによる恋愛の疑似体験とは「相手を落とす」ことに主軸が置かれていました。

限られた期間の中でプレイヤーキャラのパラメーターを上げて成長し、ターゲットとなる女の子を攻略するという、非常に戦略性・ゲーム性の高いデザインは多くのプレイヤーを苦しめ、メインヒロインの藤崎詩織は「ラスボス」と呼ばれていました。

ときメモ』が巻き起こしたギャルゲーブームは同人やエロゲを巻き込んで多様化していくことになるのですが、その過程で『ときメモ』が持っていた戦略性・ゲーム性は削ぎ落されてシナリオ重視の紙芝居型のものが増え、プレイヤーの成長要素よりも様々なルート分岐を回収してCGを集めることが多くのギャルゲーのゲームプレイのメインになっていきました。

これによってギャルゲーは「現実の恋愛のシミュレーション」(本当は全然違うが)という煩わしさから解放されて、プレイヤーは「特に何もしていないけど女の子たちが寄ってきて勝手に話が進む」状態になります。

こうしたいわゆる「ハーレム状態」はその後の「セカイ系」「なろう系」といわれるライトノベルに見られる特徴と直結しています。

 

2.ラブプラスの拡張現実

アニメ監督の神山健治氏によれば、90年代からアニメの世界に入りたいという願望を持ったアニメファンたちが増えていったといいます。

 

その感覚はバーチャルリアリティーだったと思うんですが、彼らは2次元に行けないことに気付き始め、今度は2次元の方から来てほしいと考えた。
そして、2次元から来たのがラブプラスだった。

神山健治 「AR Commons Summer Bash 2010」リポート

 

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DSで発売された『ラブプラス』はゲームキャラと結婚式を挙げるプレイヤーまでいたりと、AR・拡張現実の可能性を広げた。©Konami Digital Entertainment

2009年にニンテンドーDSで発売された『ラブプラス』(コナミ)は、恋愛シミュレーションゲームの世界にAR・拡張現実をもたらした全く新しいタイプのゲームで、結果多くの人々に受け入れられ「ラブプラス旋風」という社会現象にまでなりました。

DSの内臓時計によるスケジュール管理はプレイヤーの現実世界とゲームの世界を繋げ、ストーリーは省かれ、そのかわりにプレイヤーに語り掛けてくる女の子の膨大なテキストによるコミュニケーション。

ラブプラス』は、どこでも持ち運べるDSの特性を最大限に生かしたゲームでした。

ラブプラス旋風が去った後、『ラブプラス』がもたらした恋愛シミュレーション要素は薄められた状態で別ジャンルのゲームに吸収され、それ以前のノベル系のものはラノベやアニメに吸収されて、恋愛シミュレーションゲームという独立したジャンルのものは下火になっていきました。

 

3.アイマスAKB48

2009年の『ラブプラス』からさかのぼる事4年前の2005年、ナムコによる『アイドルマスター』(通称アイマス)の一作目がアーケードで誕生しました。

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アーケード版のアイドルマスター。開発は2001年からスタートしていた。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

それから2年後にXBOX360版・通称箱マスから2019年の今日までに展開し続け人気を維持しているアイマスシリーズは、ギャルゲーの歴史の中で商業的に最も成功したタイトルといえます。

箱マス発売と時を同じくして2005年に秋葉原で活動を始めたアイドルがAKB48

AKB48もまた、売上だけを見れば国内で最も成功したアイドルグループです。

アイマスAKB48との間に相互的な影響はありませんが、強いて言えば両者ともハロープロジェクトの「モーニング娘。」を意識して作られたものだということが挙げられます。

 アイマスAKB48が頭角を現し始めた時期というのが、ラブプラス旋風が吹き荒れた2009年以降。

2009年にAKB48初の「選抜総選挙」が行われ、2010年「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」などのヒット曲によって地上波のテレビで大ブレイク。

一方アイマスは世間的な大ブレイクこそないもののXBOX360PSP・DSなどの携帯機での発売、2007年頃から初音ミクと共にニコニコ動画の人気コンテンツとしてネットでの知名度を獲得し、『THE IDOLM@STER 2』(2011年)のPS3版発売によって一般ゲーマーへの知名度も浸透しました。

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 2010年にはAKB48がゲームにも進出。

『AKB1/49 アイドルと恋したら…』がPSP・VITA専用ソフトとしてバンダイナムコから発売され、その後2本の続編を含むシリーズ総売り上げは100万本を突破。

1作目の初日25万本という強気の出荷本数の理由は、各店舗によって異なる特典(生写真)を付けるといういわゆる「AKB商法」によるもので、ゲームの内容自体はPSやサターン時代によくあった実写もののような「ファングッズ」の域を出ないものでした。

AKB48テレビ東京の番組「ASAYAN」でモーニング娘。が見せてきたドキュメンタリー的な手法を過剰に発展させたプロモーション展開をしていきます。

「会いに行けるアイドル」から選抜総選挙における残酷ショーと、その舞台の裏側を見せていく演出はファンの応援を加速させ、握手券などのメンバーと接触できる権利を付けたCDの複数買いによって現在までオリコンランキング上位を独占している状態。

 

一方アイマスのプロデューサー・坂上陽三氏はAKB48の総選挙には否定的な見解を示していて、アイドルでは定番の性を強調した水着やセクシーなサービスカットも「アイマスのファンはそれを求めていません」と、ファンの意見を取り入れた健全なゲーム制作を目指しているようでした。

しかし『アイドルマスター2』からDLC商法が加速。当初は1万円ほどの課金で全アイテムを入手できましたが、ソシャゲの『アイドルマスター シンデレラガールズ』(通称モバマス)からは他のソシャゲと同じく課金ゲーへ。

声優陣によるコンサートは2006年から定期的に開催され、2010年の時点でキャパ12000人の幕張メッセイベントホールを埋めるほどになっています。

 

ラブプラス旋風が吹き荒れた2010年のアイドル戦国時代にAKB48アイドルマスターが大きな成功を収める事が出来たのは、今振り返ってみると「AR・拡張現実」を制した者の勝利だったように思えます。

疑似恋愛ビジネスがゲームやテレビ番組の枠を飛び出して現実世界へ侵食してきたときに起こる「実際には付き合えない」という溝を埋めてくれるのがアイドル文化の持つ「応援」という行為。そこに「アイドルの成長」というドキュメンタリーを付け加えることによってバーチャルと現実の境界線は曖昧なものになっていきます。

AKB商法や行き過ぎたDLC販売も、「応援」によって得られるコミュニケーションの疑似体験に現実との接点を持たせるのに重要な要素でした。

そして両者とも「モーニング娘。」の持っていた「卒業システム」を排す事でファンの持つ幻想を長引かせることに成功しています。

AKB48は2009~2010年の選抜総選挙で上位7位、いわゆる「神セブン」と呼ばれていたメンバーを2017年まで残し(渡辺麻友)、アイマスにおいても「765プロオールスターズ」と呼ばれる初期メンバーを現在まで残しています。

こういったアイドルに対する応援の熱が高まった要因の一つとして、2011年の東日本大震災によって日本中に団結の意識が強くなったからだという指摘(※)もありますが、2014年頃には「BABYMETAL」や「でんぱ組.inc」のような、特定の音楽やサブカルチャーなどの1ジャンルに的を絞った、それまでのような疑似恋愛対象から外れたグループのグローバルな活動によってアイドルも多様性を獲得していきます。

 ※アイドルプロデューサー・もふくちゃん(福嶋麻衣子)、2018年吉田豪の猫舌SHOWROOM

 

4.レイプレイ事件

ラブプラス』が発売された2009年、エロゲ業界に激震が走ります。

それは「レイプレイ事件」と呼ばれるもので、国内向けの『レイプレイ』(2006年)というゲームがAmazonからイギリスへ流出。『レイプレイ』の持つ暴力性がイギリスだけでなくアメリカでも問題視され大論争へと発展。エロゲだけでなく『GTA』などゲーム全般の暴力表現問題まで蒸し返される事態に。

それまで国内でリアル寄りの3D美少女ゲームメーカーとしてブランドを築いてきた『レイプレイ』開発元のイリュージョンをはじめ、エロゲ業界全体が委縮したムードに包まれました。

イリュージョンは当時開発中だった『リアル彼女』(2010年)を最後に、リアル寄りのエロゲの開発をしばらくやめてしまいます。

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VRカノジョ』(C)イリュージョン アダルトゲーム ILLUSION All rights reserved.

その後イリュージョンは2017年に久々のリアル寄り3D美少女ゲームVRカノジョ』を配信することになるのですが、その内容は『サマーレッスン 宮本ひかり』を模倣したVR専用ゲームになっています。

 

ラブプラス以降、ラブプラスが切り開いた拡張現実による疑似恋愛を発展させたのが「アイドル」でした。

モーニング娘。の失速、『NEWラブプラス』(2011年)の失敗、リアル寄り3Dエロゲの空白期間においてAKB48アイマスの持つ双方向性は時代の追い風を受けて新しい疑似恋愛におけるコミュニケーションの形を定着させました。

 

宮本ひかりはアイドルである

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ゲームを始めるとまず、学校から帰ってきた彼女・宮本ひかりが自分の部屋のドアを開けて 、そこにいるプレイヤーの存在を不審がります。

その後で母からプレイヤーが家庭教師だと聞かされてこちらへと近寄ってくるのですが、その距離感は信じられないほど不自然に近いです。

このゲームの説明を簡単にすると、不自然で大げさな演出と、プレイヤーが家庭教師なのにもかかわらずたいしたことは教えられずほんの少し手助けする程度の薄いゲーム性、皆無といってよいキャラクターの掘り下げやストーリー性などが挙げられます。

こう書くと全然面白くなさそうに思えますが、これまで書いてきたギャルゲー~アイドルに至る疑似恋愛体験の変遷と、VRという特性を踏まえてみると評価は逆転します。

 

ラブプラス』のカノジョたちは、DSという箱に入れて持ち運ぶことは出来ましたが、決してその中からは出ることが出来ない存在。膨大なテキストやスクリーンパネルへのタッチ操作によって行われる「手をつなぐ」「キスをする」などの性的なコミュニケーションは、触れることの出来ない存在とプレイヤーとの溝をゲーム的なインタラクションによって補完するものでした。

そしてアイマスAKB48という存在は現実と虚構を行き来する実体を持った代わりに、アイドルを一人のプレイヤーに独占させるわけにはいかなくなり、距離感は『ラブプラス』よりも後退せざるを得なくなりましたが、アイドルの成長と、それをファンが応援するという形によって達成感の共有を疑似体験することが出来ます。

多くのファンのそれぞれ個々に対象とのドラマを描かせるため、込み入ったストーリーやキャラクター描写は排され、疑似恋愛の対象の多くは「応援したくなる・しやすい」タイプのキャラクターへと特化していきました。

 

宮本ひかりのキャラクターの設定や挙動は全てこういった疑似恋愛の変遷を踏まえたものになっています。

宮本ひかりの挙動は、アイドルのCMなどの短いドラマでよく使われる「画面の向こうの異性に対して話しかける」演出や、曲の振り付けで多く用いられるファンへのアピール的な仕草のみで構成されています。

 

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『Rev.from DVL「LOVE-arigatou-」橋本環奈×ガールフレンド(仮)ver』

Copyright © CyberAgent, Inc. All Rights Reserved.

わかりやすい例として、サイバーエージェントのソジャゲ『ガールフレンド(仮)』(2012年)の橋本環奈さんを使ったイメージ映像があります。

この映像では約4分間にわたって画面のこちら側にいる視聴者に橋本環奈さん扮する女子高生が見つめてきたり話しかけてくるというもの。

上の写真の場面では学校の水道水を飲んだ橋本環奈さんがこちらに向かって「おいしい!」と言ってくるのですが、こういう普通には絶対に起こらないような不自然なシチュエーションを成立させる為に求められるのが「アイドル性」の高さなのですが、この動画は映像・音楽・モデルのレベルが非常に高く、求められるアイドル性のハードルを易々と越えています。

 

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『アプガが僕に恋をした(仮)仙石みなみ アプガ制服青春コレクション

 ©YU-M Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved.

2016年7月30日に公開された『アプガが僕に恋をした(仮)』という動画はVR対応なのですが、映っているものの縮尺やカメラ位置が不安定で、モデルの日本人体形が悪い意味で際立ってしまい、余分なリアリティがはみ出してしまっています。

モデルの仙石みなみさんはアイドルとしては全然かわいい部類なのですが、VR映像だととても残念な事になってしまっていて、実写VR動画に求められるモデルの水準の高さを思い知らされます。

これらの動画ではゲームのようなインタラクションがないので、設定は「恋人同士」になっていますが、演出的には『サマーレッスン』と全く同じようなアイドル的演出のみで構成されています。

 

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アイドルの実写動画と比較すると、VRで見る宮本ひかりというモデルの完成度に驚かされます。プレイヤーの固定された位置から見た時の姿や、そこから繰り出されるアイドル的なポーズの自然さ、背景との融合が完璧です。

しかもVRでしか出来ないような不自然な、しかし紛うことなきアイドル演出を大胆に投入しています。

勉強中にプレイヤーの目の前で椅子に座っている宮本ひかりが鉛筆を落としてそれを素早く拾おうとするという演出があるのですが、1回では拾えず、3回目でやっと拾うことに成功します。まったくリアリティのない不自然な演出なのですが、アイドルに必要不可欠な「応援したくなる」要素と、1回目に拾う仕草をした時に彼女の頭が目線の下に来て、それを目で追うと戻ってくる彼女の頭とぶつかりそうになってとっさに避けてしまうというVR的なアクションが自然に融合するという、全く新しいアイドル演出を生み出しています。

随所にこうしたアイドルとVRを組み合わせた新しい試みに溢れていて、『サマーレッスン』の中の全てがアイドル的な空間として存在しています。

そこには動画と視聴者の間にあった垣根が消え、もはや「恋人同士」という設定すら不要になっています。

 

まとめ

ときめきメモリアル』では自分自身のスキルアップ・努力によって女の子と恋人同士になることがゴールだったのが、『ラブプラス』では恋人同士になった後のコミュニケーションが主軸になっていきました。

アイドルマスター』における声優のコンサートや、AKB48による拡張現実の生身化は恋愛要素を歌や振り付けなどの演出に特化させ、ファンによる「応援」とアイドルの「成長」ドキュメンタリーの共有によって新しいコミュニケーションのスタンダードを作りました。

そして『サマーレッスン』ではVRによって作り出される2人だけの空間が実現したことで、それまで現実と虚構の間にある溝を埋めていた余分な設定は消え去り、アイドルに認知してもらうための「応援」ももはや「見守る」程度にまで後退しました。

『サマーレッスン』におけるプレーヤーは一応家庭教師という設定ですが、存在としては守護霊に近い感じがします。成長を見守るだけの存在。

宮本ひかりという少女からは現実的な恋愛関係やセクシュアリティが排され、2人だけの空間とアイドル的な挙動のみによって、ただただ幸福な空間だけが存在しています。

これってもう「死んだおばあちゃんと霊が見える孫」とかでも良いと思うのですが、ここまでの空間を築き上げることが出来たのはやはり日本のギャルゲーやアイドルが長い年月をかけて育んできた疑似恋愛文化の賜物といえるでしょう。

『サマーレッスン』は疑似恋愛の歴史を総括し、ギャルゲーをVRによる新しいステージへ押し上げた作品だと思います。

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クソゲー」などのワードを叫びながらゲーム実況するキズナアイ

Perfume以降、恋愛とは無関係な歌詞によるアイドルソングが普通に受け入れられるようになり、『サマーレッスン』の発売と同じ2016年にバーチャルユーチューバーのキズナアイが誕生したりと、それまで当たり前だった性的なアピールや過剰なストーリーが排された現在の美少女文化は確実に時代と歩調を合わせた進化を遂げているのではないでしょうか。

 

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ホラーSENSE~だるまさんがころんだ~(PS4)

f:id:miyabi-game:20190513111858j:plainホラーSENSE~だるまさんがころんだ~

コーエーテクモウェーヴ

2019年1月25日

playstation4

 

PSVRのホラーゲーム。

タイトルにある「SENSE」とは、本作がもともと全国のアミューズメントパーク・テクモピアで稼働中の「VR SENSE」という筐体専用のゲームだったため。

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©コーエーテクモウェーブ All rights reserved.

 調べてみるとこのような形の筐体なのですが、驚くのはその機能

 

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なんと風や香りまで感じることが出来るそうです。

これは是非一度実際に体験してみなければ!

 

で、今作『ホラーSENSE~だるまさんがころんだ~』は上の機能を省いた家庭用バージョンというものなのですが、体感こそ薄れるものの自宅をお化け屋敷にするにはもってこいの十分な怖さがありました。

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プレイヤーは4人の仲間たちと一緒に夜の廃校を探索します。

ストーリーは2話で、探索中に落ちているメモの切れ端を集めることでエンディングのルートが分岐します。

 

ゲームの基本的なルールは一般的な「だるまさんがころんだ」と同じで、鬼がこちらを向いていない時に近付いて行ってタッチすれば勝ち。

〇ボタンしか使いません。

まっすぐな廊下を進んでいくだけなので3D酔いしやすい方でも割と大丈夫かと思います。

むしろオープニングムービーの方が酔うかも?

 

コーエーテクモといえばホラーゲーム『零』シリーズが有名ですが、今作のホラー演出もちゃんとVRを想定した優れたものが多いです。

霊的なものはもちろん、ムカデやネズミなどの生理的嫌悪感を促すようなものがありつつ、本当に生々しいグロやゴキは出てこないのは有難いですね。

悪趣味に陥らず正統派のホラーに仕上げているのは好感が持てるし、安心して楽しく人と遊べるようになっています。

 

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クリアすると通知表に評価が出ます。

これっておそらく頭の動きなんかも感知していて「動揺した・してない」という評価が与えられるのだと思うのですが、大の怖がりの友人に「動揺なし、鉄の心臓」という評価が下された時、私の頭に一つの疑惑がよぎりました…

 

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お前、目閉じてやっただろ!!!

 

そうです、このゲームの最初のステージは「だるまさんがころんだ」という声が聞こえている間だけ〇ボタンを押せばクリアできるようになっているのです。

せっかく怖がりの友人の絶叫が聞けると思っていたのに!!!

 

…ですが安心してください( ̄ー ̄)ニヤリ

最初のステージこそ目を閉じていてもクリアできますが、ステージ2においてはもうその手は通用しません。

ステージ2では赤く光る目のお化けがこちらを見てきて、目を合わせるとゲームオーバー!どうしたって目を開けなければいけないわけです。

なんという秀逸(意地悪)なゲームデザイン

さらにその後解放されるハードモードでは「だるまさんがころんだ」と鬼が言っている間だけ進んでも間に合わない時間制限付き!

鬼の姿も非常に見え辛く、瞬きする余裕すらありません。

しかもハードモードでは鬼がこちらを見ている時は頭も動かしてはいけないというルールまで追加されています。

…最高ですね!

 

私はまだハードモードはクリアしていませんが、怖いとかそういうのではなくて、あんまりやりすぎると慣れちゃって怖くなくなるので制限しています。

全然怖いとか、そういうのじゃなくて…。

 

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THE PLAYROOM VR(PS4)

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THE PLAYROOM VR

ソニー・インタラクティブエンタテインメント

2016年10月13日

playstation4

 

PSVRセッティング段階でお薦めされる無料アプリ。

しかし侮るなかれ、PSVRを買ったらまずはこれ1本で1日遊べてしまうほどの高いポテンシャルを秘めたパーティーゲームでした。

中に入っているのは7本のミニゲーム。ほとんどのものは2~4人で遊ぶものですが、ちゃんと1人でも遊べるものもあって、とにかく一つ一つのクオリティが高い!

他のゲームと比べて映像も綺麗だし3D酔いするものもなく、正に入門編にしてPSVRの未来の可能性をも提示している傑作。

一通り遊んでみた感想を書いていきたいと思います。

 

MINI BOTS

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MINIBOTSは自室のような空間。

ガチャガチャのような機械があって、他のミニゲームを遊ぶことで貯まるコインを消費して景品をゲット!

景品はいつでも眺めて楽しむことが出来ます。

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景品のおもちゃの一つ一つが本当に良く出来ていて、プラスチックのおもちゃのスプレーで塗装した感じとか、ついつい見入ってしまいました。

 

MONSTER ESCAPE

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MONSTER ESCAPEは、VRを装着した人が巨大な怪獣になって他のヒーロー役のプレイヤーと対戦するゲーム。

コントローラーを繋げることでヒーローは4人まで設定可能。

最低2人のプレイヤーがいれば遊べます。

とにかくこれ、VRを付けて怪獣になると首を振って建物を破壊したり飛んでいるヘリを叩き壊したりとやりたい放題!気持ちいいです!

最初は逃げる事しかできないヒーローたちを追い詰めて怖がる様子を見るのが最高に楽しいです!

 

CAT AND MOUSE

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CAT AND MOUSEも最低2人のプレイヤーがいれば遊べます。

VRを装着した人がネコになって目の前のチーズを運び出そうとするネズミを捕まえます。

ネコの前にはカーテンが貼られていて、VRを付けた状態で首を前に出すことでカーテンが開き、隠れるのに失敗したネズミを捕らえます。

カーテン越しにはうっすらと外の様子が見えるのですが、ネズミ役のプレイヤーからはVRを付けたネコ役のプレイヤーの様子がまる見えなので、なかなかシビアな心理戦になっていて面白いです。

VRを装着している人と、モニターでプレイしている人とのメリットとデメリットを生かしたバランスが絶妙で、本当に良く出来ているゲームだと思いました。

 

GHOST HOUSE&WANTED!

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GHOST HOUSEとWANTED!は似たような内容で、VRを装着していると見えないお化けや、特徴のわからない指名手配犯などの情報がテレビモニターに映し出されて、VRを装着している人に外野が直接声で教えてあげるというもの。

情報を聞いたVR側がコントローラーを操作してミッションを遂行します。

これはちょっと、VRを装着している側はとても面白いのですが、外野はただ言うだけなので、もう少し工夫があったらもっと面白くなると思いました。

みんなで順番に交代で遊ぶと面白いです。

 

TOY WARS

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TOY WARSはネコ型のロボットに乗り込んで迫りくるおもちゃの敵を砲撃で倒していくゲーム。

基本的に場所は固定なので酔いません。しかし演出が凝っていてロボットの乗り心地はとても良いです!

高いスコアを狙うシューティングなのですが、世界観がかわいくて弾をぶっ放すのが気持ちいいので何度もチャレンジしたくなる魅力があります。

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VRを装着していない友達にコントローラーで他のロボットをモニターで操縦して手伝ってもらうことも出来ます。

 

ROBOT RESCUE

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最後に紹介するROBOT RESCUEは、2018年に発売された『ASTRO BOT:RESCUE MISSION(アストロボット レスキューミッション)』のプロトタイプ・体験版のような内容です。

ここでは一つのステージしか遊べませんが、VR専用のアクションアドベンチャーゲームとしてはほぼ最適解ともいえる完成度を見せつけられます。

ゲームとしてはそれほど目新しさはないのですが、とにかく面白いです。

もしも任天堂が先にVRを発売していたらきっとこれと同じような内容のものをローンチタイトルに持ってきたでしょう。そう思わせるような丁寧で正統派な作り。

3DSWiiUの疑似3DマリオをVR空間の中で完璧に作り込んだようなゲーム。

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プレイヤーはレスキューロボットとなってマップの様々な場所で立往生している仲間ロボットを救出していきます。

VRやコントローラーのモーションセンサーを生かしたゲームデザインは秀逸で、様々な仕掛けを解いたりマップを攻略する楽しさに満ちた作品になっていて感動しました。

VRを装着していない人がモニターを通してお手伝いすることも可能ですが、1人でじっくりプレイしたくなりました。

 

 

以上が『THE PLAYROOM VR』を一通りプレイした感想です。

本当に、無料とは思えないほど沢山のVRという新しい世界の驚きに満ちた作品で、PSVRを買ったなら是非ともプレイしてほしいです。

 

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PlayStation VRを買いました!

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PlayStation VR PlayStation Camera同梱版
CUHJ-16003 (CUH-ZVR2シリーズ)

2017年10月14日

ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア

 

初代PlayStation VR(以下PSVR)が発売されたのが2016年10月13日、それから約一年を経て2017年10月14日に発売された新型PSVRを今さらながら買いました。

発売当初に興味はあったものの入手困難な事や価格設定(初代は44,980円)、周辺機器の高騰などもあり見送っていました。

新型が出るころには若干興味も薄れていて、大きな話題になるようなソフトもなかったために忘れかけていましたが、ゴールデンウィークに友人と何をして遊ぼうか考えている時にふと思い出しました。

価格も初代より1万円ほど安く、そろそろコンテンツも充実してきているのではないかと調べてみると、モーションコントローラーがなくても結構遊べるという情報もあり購入することにしました。

 

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great experience!!!

 

自宅にて、『VR WORLDS』というゲームでサメに襲われたりして一通り盛り上がった後、友人達が帰っても私はPSVRを顔面から外すことが出来ませんでした。

気が付けばYouTubeにある数十本のVR映像をむさぼるように見まくり、PSストアにあるVRソフトを片っ端から買っていました。

もう、しばらくは飲みに出かけたりできません!

外食も禁止!!!

 

正直最初はそこまでの驚きはなく、想定内…いやむしろ「なんか映像ぼやけてない?」というガッカリ感すらありました。

しかしPSストアにある無料の体験版的なものを試している内に自分の中の何かがはじけて大爆発が起こりました!!!

特別な体験をしたときほど、自分に何が起きているか、すぐにはわからないものです。

PSVRを何度も付けたり外したり、普通のモニターでゲームをしたりという行動をくり返していくうちにだんだんとその凄さに打ち震え、叫び出しそうになったほどです。

 

いままでどこまでも広がっていると信じていたゲームの中の世界も、なんだ、モニターという狭い枠の外から眺めていただけだったんじゃないのか?

その障害を当たり前のように長年受け入れていたせいでPSVRの凄さをすぐには実感することが出来なかったのです。

いままでモニター越しに想像力の補正をかけて見えていたものが目の前に現れる感動。リアリティというよりは、かつて経験したことのないような虚構の立体化、そしてそれは実写映像よりも3DCGの世界によるインパクトの方がより強い…ゲームの全く新しい意識と身体へのアプローチ!!!

 

正直ナメてましたゴメンナサイ!!!

こんな凄い体験があるなんて...もっと早く買えばよかったと後悔しています。

これからしばらくはPSVR三昧の日々になりそうです。

 

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