ここではゲームを除く【ホラー】【映画・ドラマ】【音楽】【お笑い】【新書】に関して、重要と思われる作品3つをセレクトし雑感を述べる。
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ホラー
1.祖父の絵がある家/オウマガトキFilm
2.変な地図/雨穴
3.毛糸のズボン/直野祥子
空前のホラーブームと言われる昨今だが、今年は特にそういう特集が多く組まれた年であったように思う。しかし、90年代に映画『リング』や『呪怨』がヒットした時のような、エポックメイキング的な作品が乱立したわけではなく、そのほとんどは単なる過去の焼き直しに過ぎない。
モキュメンタリーホラーがようやく市民権を得たという意味では喜ばしいことだが、類似した作品が多すぎて、構造や仕掛けが飽きられたら一気に終息してしまいそう。しかし、テレビの深夜番組やYouTube、各地でのイベントも盛況で、ブームの爆心地が特定のメディアに偏っていないところは面白い。
オウマガトキFilmや雨穴作品は、ちゃんと怖いものを追求、提示し続けていて偉い。
直野祥子の『毛糸のズボン』はだいぶ古い漫画作品の復刻だが、いつの間にか淘汰されてしまった恐怖を現代に蘇らせる試みは新鮮。90年代に『人間時計』が復刻されたように、古い作品を紹介していくことの重要性を再確認させてくれた。
毛糸のズボン ――直野祥子トラウマ少女漫画全集 (ちくま文庫)
映画・ドラマ
1.KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ/Netflix
2.アドレセンス/Netflix
3.プルリブス/Apple TV+
『アドレセンス』は現代のアメリカにおけるSNSが子供たちに与える悪影響を辛辣な物語として大人たちに突き付ける。アメリカで起きていることは数年遅れで日本でも起きることはほぼ確定で、絶望感が強い。リベラリズムが抑圧となって起きたバックラッシュは、排外主義やルッキズムの暴走として現れる。では逆に平和的思想が暴走した場合には一体何が立ち現れるのかという思考実験を試みたのが『プルリブス』というドラマなのだが、この世界線の人類も結局ダメそうだ。現実社会を反映した物語が極端な振れ幅しか持てなくなった現代に『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はかなり楽観的過ぎるのかもしれない。しかし、そんなKPOPガールズが世界中の大衆から圧倒的な支持を得たという事実は小さな希望として受け取っておきたい。
音楽
1.流離 access memory of 森山大道/山本精一
2.5・11とはなにか/computer fight
3.LUX/ロザリア
ロザリアは前作が良すぎて、今作はそれを上回るものではなかったけど、それでもやっぱり聴きまくった。そんなことよりも2025年に森山大道やガセネタが新たな音像として響いてくるとは思いもしなかった。角谷美知夫の未発表音源まで発売されて、アヴァンギャルド界隈に激震が走った年だったのかもしれない(そんな界隈があるのかも知らないが)。
レッチリ・フリーのソロも後期マイルスやドルフィーを想起させるジャズ寄りなアレンジで自分好みすぎるし、StereolabやTortoiseが久々に発表したアルバムも大変素晴らしく、実験音楽好きにとっては豊作といえる年だった。
流離 access memory of 森山大道[紙ジャケット仕様]
【Amazon.co.jp限定】ラックス - ロザリア (メガジャケ付)
お笑い
1.大脱走3/DMM TV
2.MXグランプリ/TOKYO MX
3.チャンスの時間♯335/ABEMA TV
藤井健太郎一人勝ち状態である。年末に放送された『水曜日のダウンタウン』の企画「名探偵津田」の盛り上がりも凄いが、彼の作る番組の何が他を圧倒しているのかと言えば、個々の芸人に対する「当て書き」で企画を組み立てているということだろう。これらの藤井作品は、佐久間宣行が『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』でやっていたことを拡張したもので、オープンワールド的なナラティブを持っているのが特徴(ゲーム実況的と言ってもいい)。芸人のアドリブによってストーリーが分岐する自由度が担保され、その世界の中で起きるイベントが特定の芸人の当て書きで創作されているので替えがきかない。近年のサブスクお笑い企画では、固定的なイベントやゲームのルールばかりが重視され、脱線が起きにくい構造となっている。IPを世界で売りたい場合にはパッケージとしての完成度が重視される傾向にあるが、藤井作品ではそれらを度外視した再現性の低い展開が期待できる。視聴者からすれば当然、そっちの方が面白いに決まっている。
MXグランプリではショウレースにおける審査員の神聖性が剥奪され、チャンスの時間「高野正成の触ってはいけない柔らかい話」は芸人同士の関係性から成るチームプレイの欺瞞を揺さぶる。
これらは、ダウンタウンプラスがルールと関係性の中だけで完結しているのと対照的だ。
新書
1.陰謀論と排外主義/黒猫ドラネコ他
2.考察する若者たち/三宅香帆
3.ファンたちの市民社会/渡辺宏樹
推し活と陰謀論が政治と結びつき、インフルエンサーが次々とポピュリスト化していった2025年。このデタラメな時代の概要を把握する上での重要な3冊。
資本主義の罪に資本主義の功で戦いを挑む三宅香帆に向けられたインテリ層からの視線は、10年前のSEALDsに向けられたものと同様の疑念に満ちていて、非常に危うい。
右派左派が内ゲバをしているうちにやるべきことは、正気を保つことだ。
スマホで得られる情報だけで、あなたの全てを説明することは出来ないし、納得する必要もない。
この3冊を読めば、2025年という地図の中での自分の位置がある程度見えてくるはず。
二次創作にも批評性を。自分の言葉で。