俺の名前はみやび。アストルティアのプロレーサーだ。プロレーサーと言えば聞こえはいいが、NPCのコスプレをしているだけだ。
そんな俺のもとにフレンドから依頼の手紙が届いたのは10月も中旬、第一回ドルボードGP(グランプリ)も終わろうかという週末のこと。
手紙の内容はこうだ
みやび
「・・・」
そして俺は今、その5分も切れない依頼人のツラを拝みに向かっている。
まずは依頼人から詳しい話を聞いてみよう。
「今日はわざわざありがとうございます」
みやび
「早速本題に入らせてもらうぞ。レースだが、自分でやれるところまでやってみたのか?」
「はい。何度やっても5分10秒台が限界なんです。フレ達とやってて、みんな出来なくてこれでいいやと思っていたのですが、久々にランキング表を見たら俺だけランキング外に追い出されていたんです!ひどいと思いませんか!?」
みやび
「別に。みんなが努力した結果だろ」
「それが違うんですよ!俺以外のみんなは業者に頼んでズルしているんです!」
みやび
「業者・・・だと!?」
「そうです。相乗りさせて5分切る見返りとして報酬のエルフの飲み薬を要求する業者に頼った結果なんです!」
みやび
「なるほどな。たとえそれで5分切ってもランキングには載るかもしれないが報酬は全部持っていかれるわけか。プロレーサーとして見過ごすわけにはいかないな」
「ですよね!俺はランキングなんてどうでもいいんです。ただただ報酬が欲しいだけなんです!」
みやび
「わかった。その依頼、引き受けよう。これが上手くいけば次回のレースからオレも稼げるかもしれねえし」
「あざす!よろしくお願いします!」
軽く引き受けてしまったものの、さてどうするか。ただでさえ人も減っているこの時期、相乗りには通常よりも5秒前後の遅れが出るらしい…道にはモンスターも溢れているよな…
みやび
「まあ、あんまり考えても仕方ないか。おいポテトガス!バイクのメンテナンスをしておいてくれ!」
ポテトガス
「はいっ!かしこまり~」
彼は助手のポテトガス君。長年私をサポートしてくれている人の言葉を話す動物だ。
みやび
「早速準備に取り掛かろう。まず重要なのはマップにいるモンスターだな」
ポテトガス
「ですね。特に今回厄介なのは序盤のスライムベスと終盤のさんぞくウルフですかね」
みやび
「うむ。特に人が少ないこの時期は厄介だ。狭い道や直線コースの障害物は人力で排除しておこう」
ポテトガス
「僕が一ヶ所担当するとして、もう一人必要ですね。みやびさんのフレンドでお手伝い頼めませんか?」
みやび
「あっ、お前そういうこと言うタイプ?PT足りないからって『そちらのフレさんで』とか言っておきながら後で陰口言うタイプ?」
ポテトガス
「陰口言うタイプじゃないです…。あ~、じゃあもう一人は僕のフレからお願いしておきますね」
みやび
「よろしい。じゃあ後は相乗りのタイミングさえ合えば完璧だな。早速本番に挑もう!」
ポテトガス
「はいっ!」
~数時間後~
ポテトガス
「みやびさん、こいつはバイトのムサシです」
ムサシ
「はじめまして!ムサシです!」
みやび
「よろしく。ムサシか…昔俺が飼ってた犬と同じ名前じゃん。死んだけど」
ムサシ
「ははは…僕はそう簡単には死にませんよ~」
「あ…あの…みやびさん…俺は一体何をすれば…緊張で手が震えてしまって…」
みやび
「そんなに緊張しなくてもいいですよ依頼人さん。相乗りする時だけ集中してやってもらえれば、あとは何もしなくてもいいから」
「あ、そうなんですか!ありがとうございます!」
みやび
「他に何か言っておきたいことがあれば…」
「【練習〇ギスギス✖速度マシマシ勝ち解散】で!」
みやび
「・・・」
みやび「それでは皆の者!配置につくのじゃああああ!!!」
みんな「おおおおおおおおおおおお!!!」
後編へつづく
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