みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

バイオハザード ヴィレッジ(PS4)

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バイオハザード ヴィレッジ
カプコン
2021年5月1日
PlayStation 4PlayStation 5、Xbox Series X/S、Xbox OneMicrosoft WindowsGoogle Stadia

 

バイオハザード ヴィレッジ Z バージョン』クリア後の感想です。ネタバレ防止のためストーリーの核心には触れないようにしますが、大まかな設定や序盤に関する記述は含まれます。

 

前作『7』との繋がり

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本作『バイオハザード ヴィレッジ』は2017年に発売された『バイオハザード7 レジデント イービル』の正統な続編。「Village」の「Vill」がローマ数字の「8」を表している。

ゲームの主人公は前作と同じくイーサン・ウィンターズ。ゲームエンジンは最新のものとなっていますが、フォトリアルを基調とした一人称視点のシューターという基本部分は変わらず。

物語は前作で生き延びたイーサンが、嫁のミア、娘のローズと仲良く暮らしているシーンから始まります。

人気のあるホラー作品の続編というのは往々にして敵側(怪異を起こしている側)を中心に作られがちですが、本作では「そもそもイーサン一家に問題があるのでは?」という、前作で匂わせていた主人公側の謎に焦点が絞られています。

「よくわからないことに巻き込まれている自分自身(イーサン)がそもそも何なのかわからない」という、プレイヤーの置かれた状況が面白い。

 

序盤の演出が秀逸

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序盤ではやたらと暗い廃屋に入らなければならなかったり、そこにある冷蔵庫を恐る恐る開けるなど、前作で強調されていた生理的嫌悪感を漂わせていますが、それら全てを吹き飛ばす衝撃的かつ圧倒的な暴力により『バイオハザード ヴィレッジ』という未知の世界が幕を開けます。そして、個性的すぎるボスキャラ勢揃いでの威圧は「ああ、今からこいつらが支配するステージを一つずつ回って、最後に真ん中のやつを倒すんだな」と誰もが思うであろうし、実際その通りになります。

前作のベイカー親子登場シーンを踏襲しつつ、より単純化され、スケールだけが大きくなっている。序盤におけるここまでの疾走感、そして圧倒的な理不尽感はこの上なく爽快で、ワクワクが止まらない!

それに加え、ゲームを進めて行けば行くほど気になるイーサンのボヤキや、ゲームの都合上の問題だと思っていたイーサンの特殊能力への不信感は高まり、「一体自分は誰を操作して何に巻き込まれているんだ!?」という理不尽感が増幅されていく。

前作でもイーサンをしつこく追いかけまわし、何度殺しても蘇る「ジャック」という理不尽極まりない存在がいましたが、今回はストーリー体験としての理不尽が強調されており、ゲームプレイとの相乗効果で前作とは異なる新しい体験をプレイヤーに与えてくれます。

 

探索と収集

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今作ではお金を使って買い物が出来ます。お金は敵が落としたアイテムを売ったり拾ったりして手に入れることが出来、お店では武器の改造やカバンの拡張、食材を渡して作ってもらえる料理でステータスを上げることなどが出来ます。

今作ではとある村を拠点に攻略を進めて行くのですが、広い村マップの四方にボスのエリアが用意されており、何かと忙しいボス戦の合間に立ち寄る村の探索は解放感が感じられ、気持ち的にも余裕が出来るのでとても良かったです。

お店をフルに使うことになるのは2周目ですが、ノーマルモードの1周目でも気分転換の役割をしっかりと果してくれます。

今回は謎解きが比較的優しくなっていますが、隠しアイテムなどの収集要素が強まり探索の楽しさは増しています。

 

戦闘

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戦闘に関しては、特にこれまでのシリーズにはなかった新しさみたいなものは見当たらないし、中盤の水辺にいるボスとの戦闘は動けるエリアが狭いだけの退屈なものでしたが、基本的にはどのボスも総合的な演出込みでデザインされているので大きなマイナスにはならない。ボスに辿り着くまでの仕掛けは意表を突くものが多く、最後まで緊張感が途切れません。

ただ、少ない弾でやりくりしている所に無数のゾンビに囲まれて絶望するような、かつてのバイオにあった緊迫した状況というのは本作の構造的には生まれにくく、個人的には今さら欲しいとも思わないのですが、こうした難易度調整に関してはバイオハザードというシリーズに何を求めるかによって評価が分かれるでしょう。

ストーリーと関係ないマップにも強敵や罠が仕掛けられていたりと、細かい遊びが随所に用意されていて、ノーマルモードでも最後まで気が抜けない演出は緊張感を保ちながらプレイヤーを確実にクリアまで導いてくれるという意味で素晴らしい。

 

感想

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前作と同様、ホラーゲームというジャンルにおいて、ここまでビジュアルの美しさを生かしきった作品というのは他に見当たりません。レールプレイでの自由度の高さもストーリーの疾走感を損なうどころか、心地よい休息を得ることで逆に止め時を失います。主人公のアイデンティティを揺さぶり続ける事で、これまでのシリーズとの差別化を図りつつファンサービスにも抜かりがない。

バイオハザードの新作としても『7』の続編としても、これ以上のものは想像が出来ません。

 

 

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ドラクエ10~バージョン5.5の感想

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今回は

ドラクエ10 バージョン5.5[前期]2021年3月31日~2021年7月7日
ドラクエ10 バージョン5.5[後期]2021年7月8日~2021年11月10日

の感想をまとめて書いていきます。

 

まずは[前期]から

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聖守護者の闘戦記第6弾「羅刹王バラシュナ」が6月に実装されましたが、それまでの期間をどう過ごせばよいのかがこのスケジュールからは想像が出来ません。

聖守護者の報酬は相変わらず武器とウィングといった見た目装備。

私はこの期間中一度もログインしていません。情報は仕入れていたものの特筆すべきものは何も見当たりませんでした。

 

では次、[後期]

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幻界の四諸侯にムドーを加えた新コインボス「真・幻界諸侯」が9月に実装。報酬はHPと各弱体系耐性を上げる「幻界王の首かざり」。伝承のない久々の首アクセということで使い勝手はありそう。

9月16日からは『最後に冒険を中断した日時』 が2021年7月8日より前の人を対象とした72時間フリープレイが実施(1月10日まで)され、私はバージョン6実装直前、実に11か月ぶりにドラクエ10にログインしました。

ストーリーは前期後期と分割された状態で配信されたのですが、まとめてやっても5~6時間で終わってしまいました。特に入り組んだマップの追加もなく、攻略を見ないでこの短さ。

ストーリーは昔のFF的な、勧善懲悪だけでは割り切れない何かや自己犠牲的な何かだということはぼんやりとわかりましたが、キャラクターの掘り下げが中途半端だし全体的な尻すぼみ感が強くて内容が頭に入ってきません。バージョン4までは、たとえ物語の軌道修正に失敗したとしても最後だけは無駄に大げさに、そして派手に終わっていたのに、もはやそうした余力も残ってないのかと痛感させられました。

マイタウンの設置家具数が増えたと聞いたので、サブクエストでもらった風呂を一つ置いてログアウト。そしてSwitchからドラクエ10をアンインストールしました。

ドラクエ10というゲームを2013年からプレイしてきて、半年以上一度もログインしなかったのは初めてだったし、これほどまでに興味がなくなるとは思いませんでした。

ゲームそのものへの興味は大分前からなくしてはいたものの、周辺で起こる様々な流行・炎上とゲームの相互作用について考えることが楽しくてこれまで書いてきましたが、かつてドラクエ10内で流動的だったコミュニティも他のオンラインゲームやSNSに分散し、インターネット全体に流れる空気が特定のゲームやサイトに依存した状態で成り立たなくなっているというのがここ数年の現象なのではないかと。

 

「ゆいたむ」炎上問題

今年の8月にドラクエ10プレイヤーとしてTwitterやブログで1万人近くのフォロワーを擁する「ゆいたむ」というアカウントが炎上する事件がありました。

自撮りの写真には若くてかわいい女性が写っていて、配信者やフォロワーと気軽かつ頻繁にコミュニケーションをとる親しみやすさが人気だったのですが、実はそこで使われていた写真が赤の他人のInstagramからの盗用だということが写真に写っている本人から指摘されて裁判沙汰にまでなってしまいました。

しかしこの事件を「ドラクエ10の問題」として扱うことには抵抗があります。

例えば熊澤英一郎さん()の場合だと、世代的にスクエニRPGで育ち、ドラクエ10内での自分の立ち位置について気にするような発言を多く残しているわけで、オンラインゲームと事件の関連性は少なからずあると言えるでしょう。

「ゆいたむ」の場合は単なるフォロワー稼ぎ以外の目的が不明だし、一応数字としてカウントされる中年男性の釣り堀として、たまたまドラクエ10を選んだだけのように思えます。

この問題はネット上のどこにでもあるルッキズム&エイジズムから考えるのが正しいかと思いますが、こうした炎上を生みやすい空気は10年前の2ちゃんねるニコニコ動画では今よりもっと過激な形で存在していて、世代的にドラクエ10の初期段階からネットで自分の意見を発信している人の多くはそこらへんを通過している人が多い。

なので、新自由主義(のようなもの)やレイシズム西村博之的な「論破」を正義とする空気感がドラクエ10を囲む一部のコミュニティでは色濃く残っています。

しかしこれもドラクエ10に限った問題ではないし、そういったコミュニティの規模も非常に小さいものです。なので、ネットのボーダーが曖昧になった現在では「ドラクエ10のユーザー層」という括りは偏見によってでしか捉えられないでしょう。

ただ問題なのは、ドラクエ10関連で炎上した場合、率先して攻撃してくるのは2ちゃんねるやニコニコを通過したコミュニティであり、問題は精査されず、彼らの価値観で一方的に裁かれて玩具にされて捨てられるということ。

熊澤英一郎さんの事件も本来ならば精神疾患や教育ネグレクト等の視点で語られて然るべきなのに、みんなで死体に石を投げるような誹謗中傷しかなかったわけだし、恐ろしいことに現在でも一部のまとめブログ等ではあの事件が面白ネタとして扱われています。

初期ドラクエ10ではTwitterで専用のゲームアカウントを利用している人は珍しく、私がゲーム内で知り合ったプレイヤーのほとんどが常識的な人であったことを考えると、現在のネット上のドラクエ10のイメージはスマホTwitterの普及によって拡散されたものが大半であることは確実で、実際のドラクエ10はただただ「場」を提供し続けてきたに過ぎないのではないかと。

もちろん、スマホ普及前にはドラクエ10開発側の都合によりゲーム内の人間関係に大きな影響を及ぼす事件も多く発生しましたが、それについてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います。

 

※ 熊澤英一郎...2019年6月に発生した元農林水産省事務次官・熊澤英昭による殺人事件の被害者。

 

最後に

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Switchからはアンインストールしたものの、また何か面白そうなコンテンツが追加されたりSALEがあれば買って遊んでみるつもりです。

バージョン5は一応2万円くらい払って200時間くらいはプレイしてみたわけで、その結果の判断としては妥当かと思います。しかし一度やめたMMOに復帰するのはほとんど無理だと痛感したし、ソロで遊べる要素はもうほとんどないですね。

オンラインゲームの場合、ネット上で所謂「イキっている」プレイヤーを見るのも楽しみのひとつではあったのですが、そのメンツもここ数年ずっと同じ顔触れで、ずっと同じことばかり言っているので、ゲームのビジュアルやコンテンツだけでなく周辺の状況も古く感じられるようになってきたら、もういよいよ潮時かなと思います。

ドラクエ10には色々な思い出があり、まだまだ語り尽くせませんが、最新の情報を追うのは一先ずこれで終了です。

 

今までありがとうドラクエ10

 

 

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真・女神転生V(Switch)

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真・女神転生V
アトラス
2021年11月11日
Nintendo Switch

 

本作は真・女神転生シリーズ(通称メガテン)としては2016年2月10日に発売された『真・女神転生IV FINAL』以来の新作。プロデューサーは前作から引き続き山井一千氏が務める。

以下、全ルートクリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

ストーリー

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品川駅の雑踏を映すオープニング。

品川駅といえばバブル崩壊後急速に発展し、新幹線含む6つの路線に加え羽田空港に近いという利便性の高さから多種多様な人々が行き交う、現在の東京を象徴する駅のひとつ。

 

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本作のストーリーの中で主人公(プレイヤー)は崩壊後の世界を再構築する選択に迫られ、多種多様な神々の声を聞くことになります。

 

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法の神によって知恵を奪われた古い神々は悪魔となり、神の軍団である天使たちとぶつかることで楽園は魔界と化していた。

一方で、古い神々から奪った知恵で出来た「知恵の実」を食べてしまった「ヒト」は神に近い存在である「人間」となり、それに怒った法の神によって楽園から追放されてしまう。

人間の世界で暮らしていた主人公は思いがけず魔界に迷い込んでしまうが、「神造人間アオガミ」の身体を器とすることで古の神の姿「ナホビノ」となる。

 

この設定を土台としながら、最終的に法の神との対立か、多神教世界の創造、或いは神の玉座を破壊して人間だけの世界を創造するかなど、エンディングは4つのルートに分岐。

世界観は神話や宗教をモチーフとしながらも、対立する神々それぞれの立場から発せられる主張は明確で、現代に生きる私たちが感じている分断や不安に置き換えることが可能。

 

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弱者によって両親を殺害され偏った正義を暴走させる警察官の八雲ショウヘイや、「多様性」という言葉を強調する総理大臣の越水ハヤオ、そして法の神が世界を治めなければ秩序が崩壊すると妄信している大天使アブディエルもまた完全な知恵を持つ存在ではないことが明かされるなど、現代的な価値観を主題としているのは明らかで、全体的に演出も素晴らしく共感できる部分が多い。

 

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、世界を作り変える結末とトゥルーエンドで主人公の置かれた場所が、今年上映された映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と偶然にも似ているのは非常に興味深いです。

しかしシンエヴァとは違い、『真・女神転生V』のラストシーンでは異なる2つの視点が提示され、ストーリー冒頭で語られた秩序と混沌が繰り返されるという不穏な予感を残しているのがメガテンらしくて良い。

 

ゲーム内容

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悪魔合体は特に今さら解説する必要もなく、いつも通り面白いのですが、悪魔全書に登録されている素材で生み出せる仲魔は逆引き合体でお金さえ払えば手に入るなど、快適に遊べる変更が加えられています。

 

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悪魔をスカウトする際に同種の仲魔がパーティーにいると悪魔同士の会話が始るのですが、会話の内容は豊富でとても面白いものばかり。水木しげる先生の漫画に出てくる妖怪のようなユーモアがあり、人間よりも魅力的。

 

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バトルに関しては相変わらずの高難易度で、ノーマルモードでも余裕で全滅するし、オートセーブもないのでレベル上げですら緊張感があります。

2種類の低難易度モードを無料でダウンロードできるので戦闘が苦手な人にも優しい。

私自身、歯ごたえのある戦闘がこのシリーズの良さであることは理解できるものの、「歯ごたえのあるレベル上げ」がダルすぎて途中で投げてしまった作品がいくつかあるので、この仕様は本当に有難い。

この他にも、経験値やお金を多く落とす敵がたくさん出現するDLCが低価格で販売されているので自分好みの難易度で確実にクリアまで辿り着けます。

 

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荒廃した東京が舞台のマップは高低差が激しく、行きたい場所へなかなか辿り着けない不便さは感じるものの、収集要素が多いので結果的に探索がキャラクターの強化につながります。

一つ一つのマップは広いものの、代わり映えのしない景色が続きがちで、オープンワールド的な環境表現も隠れた絶景もないので、良くも悪くも一般的なJRPGの範疇に納まっています。

 

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中盤で行くことになる魔王城では壁に扇風機がたくさん設置されていて近付くと飛ばされて床に落とされるのですが、床には特に針の山や溶岩みたいな即死トラップがあるわけでもなく、ただ単に序盤の通路に戻るだけ。

これってたぶん、魔王城が暑いから扇風機買ってきて適当に配置してしまったんでしょうね。悪魔は知恵が足りないから。

...というのは冗談ですが、最近のドラクエやFFでもこういう仕掛けは多いし難しい問題だとは思うのですが、いちプレイヤーとしては、敵の悪意には立ち向かっていけるけど、開発者の悪意に足止めを食らうのは正直萎えます。

もう少し世界観を補足するようなものにできなかったのでしょうか。

 

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荒廃した東京の風景はとても個性的で美しいのですが、全体的なマップデザインはかなり普通のJRPGといった感じで目新しさはありません。

 

感想

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私個人の体験として、真・女神転生シリーズは3DSで出た『真・女神転生IV』と『真・女神転生IV FINAL』をスルーしてしまったので比較が出来ず、プレイ自体も数年ぶりになってしまったのですが、本作は非常に丁寧に作り込まれ、かつ間口も広く、シリーズ初心者のような新鮮な気持ちで最後まで楽しめました。

強敵にボコボコにされて泣いて帰って悪魔合体を繰り返し、パーティー編成を考えている時間が何よりも楽しい。

時代の変化によりアングラ感がなくなってしまったのは寂しいものの、現代的なテーマにメガテン的な視点で切り込んでいく姿勢は素晴らしいし、見せ方も上手く飽きさせない。

他のJRPGと差別化が図れていない部分がいくつかあり退屈に感じる時間もありましたが、それ以上にこのシリーズでしか味わえない特別な体験はしっかりと残っていて良かったです。

 

 

©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

Stilstand(Switch)

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Stilstand
Niila Games
2021年11月4日
iOS,Android,Microsoft Windows,macOS,Mac OS,Nintendo Switch,PlayStation 4

 

『Stilstand』はデンマークコペンハーゲンを拠点とする「Niila Games」によるインディーゲーム。初配信は2020年8月27日。

4人の大学生によって始まったNiila Gamesですが、2017年に配信された『GuruGloo:Adventure Climb』をはじめ、モバイルゲームをこれまで3作品発表していて、どれも高評価。

これらの過去作はゲームとして優れてはいるもののビジュアル面での個性には若干欠けるものでした。

Niila Gamesがよりインパクトのあるゲームを生みだすために始めたコラボ企画の第一弾が『Stilstand』であり、本作はNiila Gamesと同じくコペンハーゲン在住のグラフィックノベル作家Ida Hartmannがストーリー、アート、ゲームデザインを手掛けており、彼女のゲームデビュー作品となっています。

以下、クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

インタラクション

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ゲームはコミック形式で、ボタンを押すごとにセリフやコマが次々表示されます。絵やセリフの選択肢などが青くなっているポイントをクリックすることで物語が進んでいくという簡単な操作が主なので誰でもクリア可能。

 

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スマホSNSを閲覧する際のスクロール操作や、ちょっとしたミニゲームも用意されています。全てが単調な操作なのですが、ゲーム内のキャラクターの心理状態とリンクしているのでついつい没頭してしまいます。

 

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このゲームの主人公はやたらとタバコを吸うのですが、ある場面では突然灰の中が真っ黒な煙で満たされるような演出がありハッとさせられます。

その他にも単純なインタラクションによって適度にプレイヤーにストレスを与える演出がいくつか挿入されており、作品世界への没入感を高めてくれます。

 

ストーリー

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コペンハーゲンの安アパートで一人暮らしをしている若い女性。

毎日ベッドでゴロゴロしているものの友人から遊びの誘いは来るし、男性をデートに誘っても断られない。

ヒッピーのコミュニティに参加してパーティーでお酒を飲んだり、現代美術に親しんだりとそこそこ教養はあるものの、どれも本気になれず結局家でゴロゴロしながらテレビを見たりSNSを眺めたり。

 

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彼女の部屋に住み着いた一匹の怪物。彼女の内面を表す存在かと思いきや大したことは言わず、一人でトランプ(ソリティア)してるだけ。

そんな怪物との対話の中でも少しだけ彼女の意識は変化し、日々の生活に影響が…

 

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世間一般の価値観にノリきれず悶々とするモラトリアム期間の漠然とした不安や無気力感の描写がリアルで、一見するとホラー的なビジュアルから受ける印象を良い意味で裏切ってくれる喜劇的な可笑しさに満ちています。

 

感想

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世間や友人との近くも遠くもならない距離感と、ただただ過ぎていく時間。

気休めとしての自作ポエムやSNSの投稿や芸術作品が映画のエンドロールのように流れ続けているけど、もはや気にも留めていない。そんな、流れ続ける気休めの言葉を横目でチラ見するまでの物語。

とてもリアルで、滑稽で、辛いはずなのに笑ってしまう。

そんな物語を、アートとゲームがしっかりと支えている良作。

 

 

© 2021 Niila Games / Ida Hartmann / Nakana sp. z o.o.

クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み~おわらない七日間の旅~(Switch)

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クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み~おわらない七日間の旅~
ネオス
2021年7月15日
Nintendo Switch

 

クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み~おわらない七日間の旅~』はネオスとミレニアムキッチンの共同開発によるゲーム。原作を取り扱う出版社やアニメのスタッフ監修のもと『クレヨンしんちゃん』の世界観が忠実に守られています。

以下、2周クリア後の感想です。

※ネタバレなし

 

ぼくなつ+クレしん

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本作の監督を務めるミレニアムキッチンの綾部和氏は『ぼくのなつやすみ』の開発者であり、本作の発表時には多くのファンから『ぼくなつ』のテイストを期待する声が聞かれました。

実際プレイしてみるとミレニアムキッチンが2013年に発売した『怪獣が出る金曜日』の方により近い内容で、『クレヨンしんちゃん』としてもテレビアニメよりも映画版寄り。これら2つが持つ非日常性と、『ぼくのなつやすみ』の夏休み要素が見事に融合した作品となっていました。

ただし、内容的にはあくまでもテレビアニメの主な視聴者層である子供が楽しめるものになっており、『怪獣が出る金曜日』と比べるとはるかにわかりやすいものになっています。

 

七日間の田舎暮らし

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しんちゃんの母親みさえの故郷である熊本県の架空の町「アッソー」で過ごす七日間。

 

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描き込まれた美しい背景とマップを駆け抜ける3Dキャラクターとが自然に合わさっていて、絵本とアニメの中間のような表現がとても親しみやすい世界を作り上げています。

ゲーム内ではしんちゃんを操作して「釣り」や「虫捕り」「植物採集」が出来、写真に撮ることで図鑑が埋まっていきます。マップによってはSwitchの携帯モードでは見辛いのが難点。

 

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しんちゃんが経験したことはカメラによって日誌に収められ、地元の子供新聞に載せることでおこづかいがもらえます。他にも、サブクエストや町の人の頼みを聞くことでもおこづかいがもらえ、商店でチョコビなどが買えます。

 

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チョコビを一個開封するとカードが一枚貰えます。これは「恐竜バトル」というミニゲームで恐竜を強化する際に使用するもので、勝つためにはとても重要なもの。

この「恐竜バトル」にしても図鑑埋めにしても、コンプリートするには一周のプレイでは中々難しく、ゲーム内での生活に時間的な制約があるため、くまなく遊びつくそうと思うと一周のプレイ時間は最大で約10時間程度。しかし二周目以降も図鑑は引き継がれるので、一週目は自由に過ごすのがお薦めです。

 

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マップを移動することやスタミナ切れによって時間が経過し朝昼夕夜と一日が過ぎていきます。スタミナ切れはお菓子を食べることにより回避可能。図鑑のコンプリートを目指して行動しているとあっという間に一日が終わってしまうのがリアルな夏休みと一緒でもどかしい。軸となるストーリーがあるものの、サブクエストの数はそこまで多くないので、かなりゆったりと過ごすことが出来るのですが、毎日のルーティーンの中にも多くの細かい変化が加わっているので飽きずに楽しめました。

ストーリー

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駅前にある恐竜の骨や、近所に住む謎の博士との交流によって進むストーリーは不思議で懐かしい思いを抱かせてくれます。

 

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とんでもないことが起こっているはずなのに、都会育ちのしんちゃんからすれば田舎の変わった風景の一部でしかなく、大人たちのリアクションも小さい。

『ぼくなつ』にも見られたテイストではあるものの、大人に訴えかけるノスタルジーよりも5歳児から見える世界観をより重視していて、親世代が子供たちを見守るような優しい視点で語られる物語は現実とそこからはみ出してしまった想像の世界を無理矢理こじつけることなく自然に融合させているのが素晴らしい。

 

感想

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現実と非現実が混然一体となった子供の世界をゲーム的な記号やお約束を極力排除して作られた世界は、クレヨンしんちゃんを視聴する子供と、かつて子供だった大人が共有できる思い出のようなもの。

以前このブログの『怪獣が出る金曜日』で、「クレヨンしんちゃんの映画に近い」と書いたのですが、本作のような作品は正に綾部和氏こそが適任だったと言えるでしょう。

原作の雰囲気を壊さず、かつここまでオリジナルな要素を大胆に加えながらも自然に見せてしまえるというのは、クレヨンしんちゃんの映画作品特有の自由度もさることながら、綾部氏の持つ作家性との相性が抜群に良かったのだと思います。

 

 

© 臼井儀人双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK
©Neos Corporation

LoveChoice 愛の選択(Switch)

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LoveChoice 愛の選択
Akaba Studio
2021年9月10日
Nintendo SwitchPlayStation 4Microsoft WindowsLinuxmacOSMac OSXbox One

 

『LoveChoice』は中国広東省のゲームスタジオ「Akaba Studio」によるインディーゲーム。PCでの初配信は2018年9月30日。

 

3つの恋愛に関するエピソード

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本作では「愛・ゲーム」「愛・距離」「愛・詮索」の3つのゲームをプレイすることが出来ます。シナリオ間の繋がりはありません。「愛・ゲーム」「愛・距離」では分岐による2種類のエンディングを確認。

 

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「愛・ゲーム」では、それぞれ別のゲーム関連の仕事に就く社会人同士の恋愛を男性視点でプレイします。

付き合いたての若く初々しい恋愛が描かれ、SNSでのやり取りや、お互いの生活にどこまで干渉するかなど、何かとプレイヤー(男性)が気を遣わなければなりません。

あまり多くを語らない彼女の気持ちをしっかりと汲んで行動しなければ簡単にフラれてしまうのは妙にリアリティがあって辛い。

 

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「愛・距離」では、幼少期に知り合った女の子の夢を応援しながら、同時に自分自身の将来の悩みにも直面する男性視点でプレイします。

ここでは淡い恋心をお互いに持ちながら転校してしまう少女との遠距離恋愛が描かれ、進学や就職までの過程を追うという、本作の中でも最も長くドラマチックなエピソードになっています。

彼女の夢と自分自身の彼女に対する想いを天秤にかけ、どちらかを犠牲にしなければならない岐路に立たされるので、トゥルーエンドに辿り着くためにはとても辛い決断を下さなければならないでしょう。

 

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「愛・詮索」は3つのエピソードの中では異色でありながらオーソドックスな謎解きゲームになっています。夫の浮気を疑う女性視点でプレイしますが、登場人物の姿は見えず部屋の探索がメインとなります。様々なオブジェクトを調べていくうちに夫婦のイメージが頭に浮かんでくるような演出が素晴らしい。

 

これら3つのエピソードがそれぞれ単体で全く違う恋愛の形を、それぞれ異なるアーティストによるイラストとゲーム性で語られます。

 

ポイントクリックADV

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随所にスマホアプリの恋愛ゲーム『Florence』に似た仕掛けが見受けられますが、マウスでの操作が想定されたポイント&クリックが採用されているので、『Florence』のような直感的であることで得られる感動はありません。その代わりブラウザゲームの特性を逆手に取るような、プレイヤーの観察力を試す仕掛けが多く盛り込まれていて初見では見事に騙されてしまいました。ただ、その仕掛けのせいで特に「愛・ゲーム」では周回プレイが必須になっているのが難点。

 

感想

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いくつかの場面では必ずしもゲームプレイとストーリーが噛み合っているとはいえませんが、3つのエピソードはどれもリアルな恋愛の形がしっかりと描かれていて素晴らしい。

特に遠距離恋愛を描いた「愛・距離」は感情移入度が高く、普通の恋愛ものならばバッドエンドともいえる結末をトゥルーエンドとしてプレイヤーに受け入れさせる説得力を持つ名作。

 

 

Ratalaika Games S.L. & Akaba Studio

ブリッジコンストラクター:ウォーキング・デッド(Switch)

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ブリッジコンストラクターウォーキング・デッド
ClockStone
2021年5月27日
Steam,PlayStation 4,PlayStation 5,Nintendo Switch,Xbox One

 

『ブリッジコンストラクターウォーキング・デッド』はポイント&クリック型のパズルゲーム『ブリッジコンストラクター』と人気ドラマ『ウォーキング・デッド』とのコラボレーション作品。

 

ブリッジコンストラクター

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『ブリッジコンストラクター』は木材や鉄、ワイヤーなどの様々な素材を使いバランス良く橋を建設して自動車を向こう岸まで運ぶゲーム。素材の耐久力や値段を考慮して指定されたコストに収めることで評価が上がります。

 

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不安定な土台の上に、いかに耐久力のある橋を建築できるのかが最も重要。

部分部分にかかる重さの負担を考えて素材を使い分けることでコスト削減が図れますが、これがなかなか難しく、高得点を狙うにはかなり細かい調整が必要。

 

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本格的な建築ではなく、あくまでもパズルゲームなので、限られた範囲の中でギリギリ耐えてクリアできるように、いかに誤魔化してその場しのぎの欠陥建築が出来るかの発想も重要で、車が無事に通り過ぎた瞬間に壊れる橋はこのゲームではむしろ理想的ですらあります。

 

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コストを度外視して好きなように建築してもステージクリアとなり次へ進めることが出来ますが、上の写真のようにオレンジ色の枠内に収めなければならないので基本的に難易度は高め。

今作ではウォーキングデッドとのコラボという事で、指定された数のウォーカーや敵対勢力を倒すこともクリア条件に含まれることがあります。

 

TWD要素

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ドラマ版のウォーキングデッドでおなじみのダリルやミショーン、ユージーンなどの人気キャラが登場し、橋の建設とは別に彼らに行動を指示して敵を倒したり仕掛けを作動させてステージクリアを目指します。爆弾を投げられるキャラや、音の出る人形を投げることが出来るキャラなど、それぞれの特性を上手く生かしながら建設と連動させることでピタゴラスイッチ的な爽快感が得られ、中毒性は高い。

ステージによって使用できるキャラは限定されますが、後半に登場するミショーンは連続して多くの敵を斬り殺すことが出来たりと、原作と同様の個性が生かされているのでファンならば自分の手でドラマを演出しているかのような興奮が味わえるでしょう。

 

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オリジナルストーリーらしきものはありますが、あくまでもパズルゲームの雰囲気を盛り上げる程度のものでエンディングすらなく突然終わります。

「パズルゲームは苦手だけどウォーキングデッドは好き」という人にはあまりお勧めできません。

 

感想

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まず、元となる『ブリッジコンストラクター』が非常に良く出来たゲームである上にウォーキングデッド要素がプラスされてピタゴラ感が増し、クリア時の気持ち良さが上がっています。似たようなステージが続くことによるマンネリ感も、使用できるキャラの個性によって全く別のゲームのように感じられて飽きない。

時にはひとつのステージに1時間以上熟考と試行錯誤を繰り返すこともあり、難易度は高めですがクリアした時の爽快感は格別。

微妙なバランスでしか成り立たないような足場のステージもいくつかあり、閃きだけではクリアできず、動画などを見て真似しようとするとむしろ難易度が上がる始末なのですが、それほど建築にプレイヤーの個性が反映されやすいとも言えるわけで、クラフトゲームとしても非常に良く出来た作品でした。

 

 

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