みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

オープンワールドのゲーム【2】

サンドボックス、ほのぼの・生活系】
おいでよ どうぶつの森任天堂 2005年11月23日
ルーンファクトリー -新牧場物語-』マーベラス 2006年8月24日
ぼくとシムのまちEA 2007年9月18日

 

・ここまでは「箱庭」という言葉を様式、「オープンワールド」という言葉を概念として書いてきたが、ここでは「サンドボックス」というジャンルにも触れておきたい。
サンドボックスゲームの代表作『シムピープル』は当初から「家の建築」「家具の配置」「キャラメイク」という特徴からヨーロッパの少女向け玩具であるドールハウスのゲームとして女性層から圧倒的な支持を得ていた。
それだけでなくキャラクターの「願望を叶える」「欲求を満たす」という要素は多くのアドベンチャーゲームに影響を与え、特に自由度を重視したオープンワールドゲームで採用されることが多かった。
シムピープル』はストーリーのない完全自由型で、プレイヤーは自分でゲーム内の目標を決めてスケジュールを組む。基本的にはストーリーやゲームクリアの概念がない事がサンドボックスゲームの特徴である。しかし当時隆盛を極めたPSPGBA・DS等の携帯ゲーム機における展開として『The Urbz:Sims in the City』のような、SIMSから「家の建築」と「キャラクターAI」を廃し、ストーリーとオリジナルマップによるオープンワールドに近い作品を展開していたことは興味深い。
しかしその独特のビジュアルや欲求のコントロールに多くの時間を取られるゲーム性は
SIMSシリーズがあまり浸透していない国(主に日本)では全く売れなかった。

 

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どうぶつの森任天堂 2001年4月14日

 

・『シムピープル』とほぼ同時期に発売された初代『どうぶつの森』は当時それほど注目されなかった。森の住人たちの願望を叶え、そのお礼として獲得した家具を家(建築は出来ない)の中に配置しコンプリートを目指すというゲーム性は『シムピープル』と多くの共通した要素を持ちながらも似て非なるものだ。『牧場物語』(1996年)から時間に追われる要素を取り除き、『ぼくのなつやすみ』(2000年)から時間制限を取り除いたような作品という印象を受ける。
だが特筆すべきは、「時間」の概念が上記した2作品より明確にゲーム内世界に反映されている事である。定期的に行われる様々なイベントや、昼夜や季節によって変化する住民たちの反応はもちろん、しばらく話しかけなかったキャラの態度がそっけないものになったり、ゲームを起動せず放って置くと自宅が荒れてしまう等、現実世界の時間経過が箱庭空間に大きく影響を与えている。
この一作目にある要素を引き継ぎ、物量を増してDSの内蔵時計と連動させた『おいでよ どうぶつの森』は日本国内で爆発的なヒットを記録し「ほのぼの系」「生活系」という新しいジャンルを浸透させた。
一方生活シミュレーションの元祖とでもいうべき『牧場物語』は派生作品である『ルーンファクトリー -新牧場物語-』にて生活シミュレーションにRPG要素を取り入れるというオープンワールドとは真逆の進化を遂げ、完全にオリジナルのジャンルを創造。近年では『スターデューバレー』(2016年)にも大きな影響を与えた。

 

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ぼくとシムのまち』EA 2007年9月18日

 

・『ぼくとシムのまち』はSIMSシリーズの携帯機での売上不振(主に日本)に業を煮やしたEAが「どうぶつの森クローン」として、プレイキャラの欲求メーターというSIMSのアイデンティティを削ぎ落して作り直された子供だましのゲーム。ビジュアル的にもレゴ感が強く、箱庭としても全く作り込まれていない。
自宅を建設出来るのだが、家具や壁などが全て簡略化されて四角いブロックのような形になっている。
おそらくこのゲームがサンドボックス作品で初めて「四角い人間が四角いブロックを積み上げて家を建築するゲーム」なのではないだろうか。
ぼくとシムのまち』が、後にテトリスを抜いて世界一の売り上げを記録した『マインクラフト』(2011年)というサンドボックスの新しい代名詞となるゲームに影響を与えたとは考えにくい。しかし『シムシティ』から『シムピープル』までSIMシリーズを手掛けてきたウィル・ライト氏が2009年にゲーム業界から去ってから2年後に『マインクラフト』が発売されたことはサンドボックスゲームの歴史において重要な転換期であるといえるだろう。

 

・SIMS~マイクラの系譜にあるゲームを【サンドボックス】、牧場物語ぶつ森の系譜にあるものを【ほのぼの・生活系】と呼び、これらのジャンルの作品からオープンワールドの影響はほとんど見られない。ただし優れた箱庭であるSIMSが携帯機で容易にオープンワールド的な展開が可能だったように、オープンワールドサンドボックス要素を取り入れるケースは多い。

 

 

【過渡期】

龍が如くセガ 2005年12月8日
The Elder Scrolls IV: オブリビオンBethesda 2006年3月20日
ペルソナ3アトラス 2006年7月13日
BULLYR☆  2006年10月17日
『パチパラ13』アイレム 2006年10月26日
喧嘩番長2』スパイク 2007年3月8日
アサシン クリードUBI 2007年11月13日
グランド・セフト・オートIVR☆ 2008年4月29日
Far Cry 2UBI 2008年10月21日
レッド・デッド・リデンプションR☆ 2010年5月18日

 

GTAクローンという半ば突貫工事のように制作されたゲームが乱立した模倣期から、ここへきてようやくGTAの蒔いた種が換骨奪胎を経て花を咲かす。
この時期に出てきたゲームは現在でもシリーズ化して人気を博しているものが多い。
ロックスター含む海外の作品群が多くの資金を投入し大作を作っていく中で日本産の作品がユニークな進化を遂げていることが興味深い。

 

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龍が如くセガ 2005年12月8日

 

・『龍が如く』はQTEの採用やリアルな新宿歌舞伎町という箱庭の作り込み、プレイスポットの充実という特徴から発売当時はシェンムーと比較されることが多かった。鈴木裕氏の弟子ともいえる名越稔洋氏指揮のもと『ジェット・セット・ラジオ』(2000年)のチームによって製作された『龍が如く』の一作目はシェンムーとは似て非なる王道アクションRPGになっていた。
しかしプラットフォームをPS3に移した『龍が如く3』(2009年)から様子が変わってくる。「キャバつく」等のプレイスポットやサブクエストの異常な作り込み、タレントを前面に押し出したプロモーションやメディアミックスなど、他のゲームでは見られない派手な演出はシリーズを唯一無二の個性を持ったエンターテイメント作品として昇華させた。神室町という一つの街を15年以上作り続けてきたゲームなど前代未聞である。
その効果は木村拓哉を主演に迎えた『JUDGE EYES:死神の遺言』(2018年)に如実に表れている。街の至る所でイベントが発生し、それら全てが主人公の職業である探偵業に紐付けされる。
シェンムーを反面教師としてスタートし、GTAを模倣することなく日本のユーザーに確実に届く方法を模索してきた『龍が如く』は正に「シェンムーGTAⅢの解釈・批評として成立している」という意味でオープンワールドの歴史の中に位置付けることが出来る。

 

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The Elder Scrolls IV: オブリビオン』Bethesda 2006年3月20日

 

・この時期に台頭してきたBethesdaの『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』やUBIの
Far Cry 2』はGTAクローンとの決別ともいえる独自の世界観を作り出すことに成功した。 Elder Scrollsシリーズは核戦争後の世界を舞台とした傑作『Fallout 3』(2008年)を経て『The Elder Scrolls V: Skyrim』(2011年)によりオープンワールドゲームとして確固たる地位を築いた。これらのBethesda作品はGTAⅢ以降のオープンワールドの概念をRPGに適用することで直線的な従来のRPGに自由度という軸を引いた。
これはただ単に「GTARPG化」などではなく、あくまでもRPGの可能性を伸ばす為の
オープンワールド的解釈であり、その試みは見事に成功している。
一方でUBIの『ファークライ』シリーズも戦場や孤島などの特殊な場を舞台としたステルス型のオープンワールドFPSとなっている。
同時期に発売された『アサシン クリード』もまた約1000年前が舞台のアクションアドベンチャーオープンワールドゲーム。GTAクローンの多くが囚われていた「現実世界の模倣(主に都市)」「自動車」「銃撃戦」という限定的な要素からようやく脱却し、他ジャンルのオープンワールド的解釈としてのゲームが次々と誕生し、特にその中でもBethesdaとUBIは両巨頭といってよいだろう。

 

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 『喧嘩番長2』スパイク 2007年3月8日


・『喧嘩番長2』はおそらく日本で唯一『グランド・セフト・オートサンアンドレアス』(2004年)に真正面からタイマン勝負を仕掛けた作品だろう。マップを完全シームレス化し、自転車やバイクに乗れて改造まで出来、交通ルールを破れば警察車両に追われる。ギャング同士の抗争はそのまま不良の連合組織に置き換えられ、江の島や八王子などの現実世界を模した舞台が用意された。使いきれないほどの技を覚え、衣装や髪形などのキャラメイク要素も抜かりない。仲間を引き連れ育成し、女子と付き合うことも出来る。前作と比べてグラフィックは悲惨なほど劣化し、自転車がバイクを追い抜いていく。プレイヤーがいくら「もうやめてくれ!死んじゃうよ!」と叫んでも『喧嘩番長2』は戦うことをやめない。目からビーム光線を発し、わけのわからないことを叫び、車に轢かれてあり得ないほどふっとんで全身に包帯が巻かれる。前作から引き継いだストーリーは無数に分岐しながら不良叙事詩を紡ぐ。そこには数多のGTAクローンにはなかった真剣勝負の気概と覚悟が伝わってくる。
この時期のスパイクの作品群ほどオープンワールドと真正面から真剣に格闘した者達はいない。その中でも特にGTAを強く意識した『喧嘩番長2』と『新宿の狼』(2009年)は外せないだろう。

 

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『パチパラ13』アイレム 2006年10月26日

 

・『パチパラ13』は前作『パチパラ12』(2005年)における「箱庭世界での推理アドベンチャー」の箱庭世界を引き継ぎながら推理パートを削り「完全に自由なパチプロシミュレーター」という他に類を見ない特殊な世界を構築した作品。シェンムー~SIMS~侍~フェイブルなど、本作に影響を与えたと思われるオープンワールドサンドボックスゲームを挙げればキリがないほど箱庭世界を彩る要素が詰め込まれている。しかもそれらの要素が衝突せず絶妙にバランスが取れている。
しっかりとしたストーリーが軸にあるが、寄り道しなければ遭遇しないサブストーリーにもメインに負けないエピソードが多く用意されていて飽きさせない。
マップこそシームレスではないが、自転車やローラースケートでの移動に加えて自動車に乗って高速道路を使い移動することが出来る。異性と合コンやデートで仲を深め同棲したり、キスのミニゲームまである。主人公は男女から選べて、性別によって複数人の交際相手が用意されている。
暴力要素が全く存在しない箱庭ゲームとして『The Urbz:Sims in the City』と並ぶ貴重な作品。

 

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ペルソナ3』アトラス 2006年7月13日

 

・Bethesda作品がRPGオープンワールド化することによってリニア式RPGのカウンター的な評価を受けたのに対し、『ペルソナ3』もまたJRPGに箱庭世界を取り入れることで独自の進化を遂げた。『ペルソナ3』は基本的に一つの街だけで全てが完結する。学校に通い、寮に住み、敵と戦うダンジョンはタルタロスと呼ばれる巨大な塔のみ。それゆえ箱庭世界が充実したものになっている。友人や街の人達との間に生まれるコミュニティがパラメータに反映し、街の様々なスポットを彼らと訪れることでコミュレベルが上がる。
海外作品がシームレスな横に広がっていく世界を描くのに対して、『ペルソナ3』が狭い空間に密度と深さを示して見せたのは実に日本らしいオープンワールドの解釈なのではないか。

 

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グランド・セフト・オートIV』R☆ 2008年4月29日

 

・『グランド・セフト・オートIV』は多くのGTAファンの期待を裏切るものだった。
サンアンドレアス』で見せた車以外の箱庭世界の充実を誰もが予想した。
ショップやサブミッションの充実に仲間の育成要素が追加された『サンアンドレアス』の続編である『GTAⅣ』ではそれらの要素の大部分が削除されていた。その代わり用意されたのが、過去の亡霊に囚われ、故郷であるユーゴスラビアから逃げるようにアメリカへ渡って来た退役軍人ニコ・ベリッチの物語だ。
当時の開発者の発言「リアルな世界には、それに相応なストーリーが不可欠」という言葉通り『GTAⅣ』の広い世界はよそ者であるニコに冷たく、彼の怒りを増幅するのにうってつけの舞台となっていた。多くのオープンワールドゲームがその自由さを享受しようとしすぎた為に「バカゲー」へと落ちていく中、そこにはっきりと一線を引いたGTAのスタンスには全幅の信頼を置くことが出来る。実際『GTAⅣ』の環境が物足りないものになった背景には新ゲームエンジンで一から世界を構築しなければならなかったという時間的制約があったと後のインタビューで語られていたが、続編である『グランド・セフト・オートV』(2013年)においても『GTAⅣ』同様、ストーリーに大きく比重が置かれている。
レッド・デッド・リデンプション』は『GTAⅣ』と『GTAⅤ』の間に発売された西部開拓時代末期を舞台としたアクションアドベンチャーゲーム。ほとんど確かな資料が存在しない時代への綿密な調査と、ロックスターならではの映画へのリスペクトが混在したオープンワールド。狩りや採集など『GTAⅣ』にはない要素もあるが、GTAの西部劇版といっても差し支えはないだろう。

 

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BULLY』R☆  2006年10月17日

BULLY』ではGTAとは対照的に、マップのスケールを縮めて密度を詰めていく方法論で制作された。主人公は15歳の男子学生で、全寮制の学校に通いながら自由に生活することが出来る。学校の授業が全てミニゲームになっていたり、新聞配達のバイトやクラスメイトとの自転車レース等の学生らしい生活がシミュレート出来る。暴力描写はケンカ程度で人が死ぬことはない。
ゲーム内に存在するキャラクター全てに名前があり行動範囲が決められていることから、ロックスターゲームスの作品の中ではこの時点で最もシェンムーに近い作品といえる。

 

・日本のゲームが何故シームレスなマップを移動できるオープンワールドを作らないかというと、仮に日本を舞台としたマップを作るとして、都市と都市の間に住居が密集しているため、荒野の面積が多く広い土地を持つ海外を舞台にした作品に比べて製作費と時間が膨大にかかるという理由が考えられる。

 

 

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