みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

パチプロ風雲録5-青春篇-(PS2)

f:id:miyabi-game:20191113131054j:plain

パチパラ13 〜スーパー海とパチプロ風雲録〜

アイレム
2006年10月26日

PlayStation

 

「パチプロ風雲録5-青春篇-」はPS2のゲーム『パチパラ13 〜スーパー海とパチプロ風雲録〜』に収録されているストーリーモード。

パッケージに「ギャンブラーRPG」と書かれている通り、ゲームの主人公がパチプロとして成長し…みたいな感じではありません!

前作の「パチプロ風雲録4 銀玉殺人事件」では『シェンムー 一章 横須賀』(1999年)的な昭和の箱庭世界を充実させながらパズルによる推理パートを軸にストーリーが展開されましたが、今作ではヒロインである小川桜子一家を中心としたストーリーを軸にしながらも『シムピープル』(2000年)や『どうぶつの森』(2001年)的なサンドボックス要素を盛り込んだ非常に自由度の高いゲームになっています。

後の九条一馬プロデュース作品ではお馴染みになる飯田舞さんの楽曲が初めて使用された作品でもあります。

 

ストーリー

f:id:miyabi-game:20191113134217j:plain

卒業式の後、就職もせず手ぶらで桜を見上げる主人公。それがあなたです。

 

f:id:miyabi-game:20191113133040j:plain

メインヒロインの小川桜子

 

主人公は男女から選ぶ事が出来、性別によって登場人物が一部変更されたり交際できる相手が変化します。

メインストーリーは高校を卒業しても就職の決まっていない主人公が同級生の小川桜子(彼女の存在は性別による変化なし)の工場を取り返すために代理のパチンコ勝負を懇願されるところから始まります。

そこから彼女と仲良くなり、小川家の様々な問題に巻き込まれながらパチプロとしての腕を上げていくというもの。

いくつか分岐はあるものの、会話の選択肢より行動に依存しているものが多いので、ふざけたセリフを選び続けてもクリア可能です。ただ、セリフの選択によって相手キャラへの好感度が変化するので異性への態度には気を付けたいところ。

異性と付き合うことでそれぞれのストーリーが展開され、中にはメインストーリーにも負けないシナリオも用意されています。

シェンムーのようにそれぞれのモブキャラに自立したAIこそないものの、主人公が干渉できるキャラが多いのでオープンワールド的な自由度は高く、プレイヤーごとに違うルート(寄り道)を辿りながらストーリーを進めて行くことが出来ます。

 

世界観

f:id:miyabi-game:20191113135603j:plain

 富裕層と貧困層を共存させる世界設定は前作や最新作『絶体絶命都市4』(2018年)でも顕著に見られる九条作品の特徴ですが、今作に出てくる塚内町はBGM含めかなりいい味出してます。船で暮らす親子に青空床屋、孤児院にタコ部屋のような簡易宿泊施設。シャワーやトイレも外で済ますという極限の生活環境が描かれますが、独特の哀愁やユーモアにあふれていて不思議と暗い気持ちにはなりません。

拠点が自動車整備工場であったり、町の中華街や高速道路など、『グランド・セフト・オートⅢ』(2001年)との共通点も多いですが、実際プレイしてみると本作のオリジナリティが強すぎて全く気が付きません。

通貨はこれまでのパチパラシリーズ同様パチンコ玉であらゆる買い物が出来ますが、釣りで釣った魚を売っての金策も可能です。

 

f:id:miyabi-game:20191113145135j:plain

前作同様町ごとにアパートやマンションが用意されていて、パチンコの景品にある家具を手に入れて部屋を自由にカスタマイズすることが出来ます。

移動手段として新しく自転車や自動車があり、自動車は様々な種類から選んで購入することで乗ることが出来るのですが、免許を取得するために警察署でわりと本格的な問題に正解しなければなりません。自動車では高速道路を走って2つ3つ離れたエリアに短時間で移動出来るほか、自動車でしか行けないエリアなどもあり必携アイテムとなっています。

 

f:id:miyabi-game:20191113150411j:plain

町には様々な施設や飲食店などのスポットが用意され、異性とのデートスポットや合コン開催地として利用できます。最終的には交際へと発展し同棲するにまで至りますが、交際相手とのキスがミニゲームになっているのが斬新。『ラブプラス』(2009年)の3年前にこれを実装したのは凄いです(ちなみに『キミキス』は2006年)。おそらくGTAにある車内での性行為描写に対する日本のギャルゲー的解釈なのでしょうが、発想力が柔軟過ぎます。

 

熱いパチンコバトル

f:id:miyabi-game:20191113151314j:plain

今作では前作から推理要素を削った分だけパチンコ勝負を前面に押し出したストーリー展開が続き、ルール自体もパワーアップして8人同時打ちの勝負が出来ます。

パチンコ必殺技が前作よりも使いやすくなっていて、勝負に勝って新しい技を手に入れることでパチプロとしての成長が実感できます。

シナリオも様々なパチプロやそれに頼らざるを得ない人たちの業がパチンコバトルを通して描かれていて、理不尽な事も当然起こるわけで。

 

f:id:miyabi-game:20191113152344j:plain

前作にあった腹具合に加えて今作では運や健康、清潔度などのパラメーターがあり、清潔度を維持して健康を上げておかなければ運が下がってしまいます。

運を上げる方法が「マップ移動のロード画面でのガチャ」みたいな、本当に運に左右される仕様なので箱庭系が苦手な人には辛いかもしれません。でもこの画面では主人公の服装や歩き方が反映されていて文章も毎回面白く、飽きさせない工夫が凝らされています。

運はパチンコでアタリを引きやすくする要素なので、ここぞという時には無意味にマップを行ったり来たりするのもバカっぽくて良いですね。

 

パチパラ最高傑作

個人的には国産のPS2ゲームの中でいちばん好きな本作ですが、権利関係などで再販や九条氏による続編が絶望的なのが痛いです。2000年代は3Dゲームのビジネス的なフォーマットが今ほど定まっていなくて、作り手たちが自分が面白いと思うものを自由に作品に詰め込めた時代だったように思います。オープンワールドサンドボックスという新興のジャンルが出てきて、全てがごちゃ混ぜになっていた混沌期に今作ほどバランス感覚に優れた自由度の高い箱庭ゲームは希有です。しかも「ギャンブラーRPG」です。

この手のジャンルでは珍しい非暴力的なゲームにもかかわらず、パチンコといういかがわしさが非常にゲーマー心をくすぐります。

ゲーム的なバランスはもちろん、シナリオや世界設定のバランス感覚も素晴らしいです。酷い選択肢を選び続けると鬼畜度が上がって異性の好感度が下がるのですが、それだけなんですよね。ゲームの難易度を上げるとプレイヤーキャラの肌の色が黒くなるという仕様で炎上した『South Park: The Fractured But Whole』(2017年)みたいな作家性の強い主張がパチプロ風雲録からは全く感じられません。それでいて個性的。

個人的に今作のプロデューサーである九条一馬さんという人は堀井雄二さんに近いタイプの作家だと思っていて、プレイヤー目線で面白いゲームとは何かを常に考えているのだろうなと、本作を含むいくつかの作品を通して強く思いました。

 

 

©IREM SOFTWARE ENGINEERING INC. All rights reserved.
©SANYO BUSSAN CO.,LTD.