みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

LoveR ラヴアール(PS4)

f:id:miyabi-game:20190513110948j:plain

LoveR ラヴアール

角川ゲームス

2019年3月14日

playstation4

 

全キャラクリア後の感想です。

本作『LoveR』は、『トゥルー・ラブストーリー』『キミキス』『フォトカノ』を手掛けたゲームデザイナー・杉山イチロウ氏と、『ラブプラス』のキャラクターデザインで有名な箕星太朗氏とがタッグを組んだ恋愛シミュレーションゲーム

杉山イチロウ氏の個人的な印象としては、その時代のギャルゲーの潮流に上手く乗りながら丁寧でオリジナリティのある良作を作り続けてきた人という感じです。

杉山氏の作品は何作かプレイしてきましたが、どの作品もただの亜流ではなくて独自のゲーム性を恋愛シミュレーションに上手く落とし込んでいて新鮮でした。

 

制作発表時のイメージ画を見た時、『フォトカノ』と比較してエロ要素控えめの純愛路線なのかな?という印象を受けました。

フォトカノ』の制服は女の子の体にピッタリと張り付いていて、身体のラインが強調されていてリアリティのない(悪い意味ではないです)ものだったのですが、それに比べて『LoveR』の絵からはそういったアニメっぽいエロさの抜けたさわやかさの感じられるもので、恋愛シミュレーションの新しい形を期待させるものでした。

 

f:id:miyabi-game:20190514154548j:plain

実際プレイしてみるとメインヒロインの篁(たかむら)さんが結構な巨乳で、他の子達もなかなかのものなのですが、やはりPS4という据え置き機専用タイトルということもあって顔や髪の毛など、女の子の他のパーツにもちゃんと目が行くようになっていて、携帯機の作品に比べると不自然なエロさは大分抑えられていました。

 

コミュニケーション

f:id:miyabi-game:20190514172251j:plain

会話によるコミュニケーションは、流れてくる話題のピースを選ぶことでそれぞれのゲージが溜まっていき、ゲージがMAXまで貯まると特別なイベントが発生します。

これは女の子と話す際のもどかしさが感じられて良かったです。

これ以外にも主人公のステータスアップなど、全体的にわかりやすくてイージーな作りになっていました。

かといって複数の女の子を同時に攻略しようとするとかなり忙しくなるので、自分に合ったプレイスタイルを見つけると、程良く忙しくて楽しい学園生活が送れます。

 

フォト機能

f:id:miyabi-game:20190514173433j:plain

フォトカノ』でもう既に散々やったし、最初はあまり期待していなかったフォト機能。

結局似たような場所で何度も撮影することになり、ミッションクリアの為に作業的に撮った写真が増えてきて早々にうんざりしてしまいました。

しかし!!!

ある時いらない写真を削除しようとアルバムを開いた瞬間胸にこみ上げるものが!

何気ない会話や作業の間に撮った写真が眩しく、そこに写った彼女達はキラキラと輝いていました。

キャラデザインやPS4で表現されたクオリティの高い美少女の破壊力はなかなかすごい迫力です。接近こそできなくて単調になりやすい構図でも、表情や動きで結構バリエーションのある写真が撮れます。

なので、よっぽどひどい写真以外は削除できませんでした。

しかもそれぞれの女の子のストーリーの終盤やエンディングでは、ちゃんと自分の撮った写真が登場するので、それも感動しました。

今作において、自ら女の子を撮影するというコミュニケーションに勝るものはなく、それを補完するためのストーリーや会話のインパクトも抑えられていてバランスが良いです。

 

女の子たちの魅力

f:id:miyabi-game:20190514175813j:plain

メインヒロインの篁さん~幼馴染のちなっちゃんという風に、ベタなキャラから攻略していったのですが、この二人のストーリーが似ていたのでちょっと飽きてしまいそうになりましたが、他の子たちがなかなか個性的だったので、全て攻略した後となってはちゃんと全員魅力的に思えます。

妹と小学生が恋愛対象になっているのは最初引きましたが、実際プレイしてみるとほのぼのした良い話でした。

妹の優美菜ちゃん(写真左)はYouTubeVチューバーのようなこともやっていて、そこでの「マジカルユミナ」というキャラとゲーム内のキャラが連動していて、良い感じのファンタジー感がありました。

 

今作『LoveR』は実に丁寧に作られた正統派恋愛シミュレーションゲームの名作です。

杉山イチロウ氏、箕星太朗氏の作品のファンならまず買って損はありませんし、誰でも安心して遊べる作品だと思います。

 

 

3Ⅾギャルゲーの未来

今作を発売日に買って楽しく遊んでいたものの、なにかこう、モヤモヤするものをずっと抱えていました。

発売日の延期があったにもかかわらず、あまり話題になっていなかったこと。

YouTubeでのマジカルユミナを含む『LoveR』関連の動画再生数が全然伸びていなかったこと。

そして発売初週売り上げが1万本に届かなかったことを知り、残念な気持ちよりも「ああ、やっぱり…」という気持ちの方が勝ってしまいました。

杉山氏によれば「DL版が売れているので、実際は倍売れている」との事ですが、それでも2万本程度。いわゆる「信者ゲー」と呼ばれているものでも、このクオリティの完全新作ならもっと売れるべきだし、正直失敗の部類に入る結果だと思います。

 

まず初めに「ギャルゲーは衰退したのか?」と考えて色々調べてみましたが、PS2以降据え置き機専用の作品は減ったものの、主戦場をPSPやVITAなどの携帯機に移して割とコンスタントに新作が発売されています。

じゃあ所謂紙芝居と呼ばれるテキスト重視の作品を除いて、『LoveR』のように等身大のキャラクターをフルポリゴンで描いた作品はどうなのかというと、そもそもそういったタイプの恋愛シミュレーションゲーム自体がほとんど作られていないことに驚きました。

先陣を切った『ときめきメモリアル3』(2001年)に後続はなく、2009年のラブプラス旋風までには実に8年もの空白があります。

ラブプラス』発売の1週間前にD3パブリッシャーから『ドリームクラブ』の1作目がXBOX360で発売。恋愛シミュレーションと銘打ってはいますが、内容は「大人の社交場でホストガールとお酒を飲んだりカラオケをしたり」というもの。

おなじくXBOX360でコンシューマデビューを果たした『アイドルマスター』(2007年、アーケードが2005年)も、「アイドルを育てる」という、それまでの「ときメモの系譜」からは逸脱したオリジナリティを持っていました。

アイマス恋愛シミュレーションという枠に留まらず育成ゲームとしても高く評価され、その数年後(2010年前後)のAKB48のブレイクをきっかけとしたアイドルブームの波にも乗り、現状では最も成功した3Dギャルゲーシリーズだといえます。

ラブプラス旋風後にも特に3Dキャラによる恋愛シミュレーション自体は量産されませんでした。

学園ものに至ってはPS3・4で出た『夏色ハイスクル☆青春白書』(2015年)くらいなもので、こちらもオープンワールド恋愛シミュレーションという変わり種。

ラブプラス』のイメージがあまりにも強すぎて、もっと大量の亜流作品が作られていると思っていたのですが、調べてみると本当に少なく、3Dキャラによる恋愛シミュレーションゲームの勃興と衰退というのはただの「ラブプラスブーム」だったようです。

その後ラブプラス3DSNEWラブプラス』(2012年)の失敗と、2015年の内田明理氏(プロデューサー)とミノ☆タロー氏(イラスト担当・現 箕星太朗)のコナミ退社によって一つの節目を迎えました。

 

そんな中で異彩を放っていたのが今作『LoveR』の作者でもある杉山イチロウ氏で、PSPで発売された『フォトカノ』(2012年)は翌年にはVITAにも移植、アニメ化などのメディアミックスも成功し累計20万本を超えるヒット作に。その後の杉山氏による『レコラヴ』(2016年)と『LoveR』が『フォトカノ』の上位互換だったにもかかわらず初動売り上げが伸びなかったのは何故なのでしょうか。

 

その理由の一つにはPSVRバンダイナムコVR専用ゲーム『サマーレッスン』(2016年)の存在が考えられます。

テキスト系を除いた恋愛シミュレーションゲームの大きな転換を考えた時、『ときめきメモリアル』(1994年)~『ラブプラス』(2009年)に続くものが『サマーレッスン 宮本ひかり』(2016年)だったのではないかと。

ラブプラス』と『サマーレッスン』を比較すると、明らかにプレイヤーに与えられる「疑似恋愛」の要素が大きく変化しています。

『サマーレッスン』での恋愛要素は一見すると後退していて、女の子に触れることもほとんど出来ず、会話によるインタラクションも乏しい。

それなのに女の子とのコミュニケーションの感触が、それまでのどの恋愛シミュレーションゲームよりも超えている感じがします。

これはただ単にPSVRの特性によるものというだけでなくて、キャラの動作がアイドルのものになっていて、しかもかなり研究されつくされたものでした。

一般的な恋愛観と、エンタメによって与えられる疑似恋愛観は全く異なるもので、2010年代のアイドルブーム以降の疑似恋愛観においては「主人公がモテモテのハーレム状態」など作らなくても「アイドルの存在を身近に感じられる」ほうがリアリティとしては勝ってしまう(そう考えるとアイマスの先見性は凄すぎる)。

主人公のハーレム状態やその他諸々のギャルゲー要素はラノベやアニメ、JRPGなどの別ジャンルのゲームに吸収・分散されてしまい、恋愛シミュレーションゲームとして単体で成立させるのはかなり難しくなってきています。

アトラスのペルソナシリーズは3以降ではがっつり恋愛シミュレーション要素を取り入れていて、しかも学園ものでもあったりするので、そこら辺との明確な差異がなければ存在意義がない。

ラブプラス』が携帯機という特性と、その時代の疑似恋愛観を上手く結合させたように、『サマーレッスン』もPSVRによる新しいイノベーションを起こしました。

『LoveR』をプレイしていると、どうしても古さを感じてしまいます。

画質だけが向上した古いゲームという印象は拭えません。

実際にはレビューにも書いた通り、様々な工夫が施された良質なゲームなのですが、主人公とヒロインとの関係性や世界観が10年前のギャルゲーから進歩していないように感じます。

それでも私は『LoveR』というゲームが好きだし、むしろ今作における美しいグラフィックで丁寧に描かれた女の子の生き生きしとした動きを見る限り、ギャルゲーの未来は明るいのではないかと思えます。

 

©2018 KADOKAWA GAMES

https://twitter.com/miyabi_game01