みやび通信

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絶体絶命都市4Plus -Summer Memories(PS4)

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絶体絶命都市4Plus -Summer Memories

グランゼーラ

2018年11月22日

playstation4

 

絶体絶命都市4Plus -Summer Memories』クリア後の感想です。

2周してエンディング3パターンとトロフィーコンプリート出来ました。

 

今までのシリーズとの違い

これまでの絶体絶命都市はアクションアドベンチャーでしたが、今作はシミュレーションアドベンチャーの色合いが強いものになっています。

震災や余震によって発生する様々な物理的被害から逃げ回る前作までとは打って変わって「震災によって発生する人的トラブル・復興に向かう人々」に焦点が当てられています。

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そしてこれまでと同様に主人公は特別な力を持ったヒーローでもなんでもないただの一般人なので、そういったトラブルを目の前にしても成す術がなかったり、小さな人助けをしながら街中をうろうろすることになります。

まず一番初めに目的を決める選択肢が提示されるのですが、これが今作における非常に重要なテーマになっていきます。

前作までは「沈みゆく架空の島」を舞台に人工地震などの陰謀が渦巻き、そういった謎を解明して島を脱出するという話でしたが、今作では正に自分の住んでいる町と地続きの都市で起きた災害を描いており、そのため著しくリアリティを欠くような表現は抑えられています。

 

1周目の感想

エンディングは二つのルート(飛行場と避難所)に分かれていて、私は避難所を選んだのですが、非常に消化不良で後味の悪いものでした。

以下ではその1周目の率直な感想を含めてのレビューになります。

 

悪い点

・エラー多発

まずこれはゲームとして根本的な問題ですが、エラーで落ちることが何回もありました。前作『巨影都市』でもそうだったのですが、これはゲームプレイの没入感を激しく削ぐので今後解消してほしいところ。

正直、この問題が解決しない限り今後も作品としてまともな評価をされることはないように思います。

 

・シミュレーションとしての弱さ 

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上で「シミュレーションアドベンチャー」と書きましたが、この「シミュレーション」のプレイヤーキャラに直接依存するような部分があまり作り込まれていません。

食欲や排泄、喉の渇きなどのパラメーターが存在しているにもかかわらずペナルティが一切ないので緊張感がなく、アクション要素もだいぶ少なくライフが減ることも滅多にないので食料やトイレのような施設の存在が希薄になってしまっています。

絶体絶命都市2』で身体が濡れるとキャラが凍えて、火に当たると回復するというようなシステムの方がプレイに緊張感を持たせることが出来て良かったと思うし、パラメーターアイコンが存在することによって序盤の混乱を招く事にも繋がっています。

 

・キャラクターの作り込みの甘さ

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これは特にIT社長の霧島とインチキ宗教団体の教祖についてそう思いました。

ですが正直今までの『巨影都市』を含めたシリーズを通して思えばこれくらいで良い気もしますが(霧島に限ってはやはり掘り下げ方が中途半端に感じてしまう)。

むしろキャラクターの掘り下げよりも少なさにこの不満は起因しているのかもしれません。短いエピソードの中にも因果応報がきちんと描かれていれば多くのプレイヤーは納得できたはずです。

ですがこれは終盤の胸糞展開の事を言っているわけではないのであしからず。

 

・前日譚がない

後日譚は追加DLで配信されるという話ですが、やはり本編にも前日譚は欲しかった。こういったパニックものでリアリティをある程度底上げする装置としての前日譚というものが必須だったように思います。ムービーでも良いので。

主人公のものでなくても、舞台となる街が震災前にどのような環境だったのか知っていると震災によっての変化が感じられて良かったかと。

「あの人は震災前は優しかったのに」というようなセリフが出てきますが、そういう事をもっと知りたかったです。

 

良い点

・死を含む震災による不幸を単純な美談にしていない

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この一点で本作が他の数多の感動ポルノと一線を画している作品だとわかります。

終盤の胸糞展開に拒絶反応を示している人はただ単に耐性がないだけ。

ほとんど同じ状況の震災パニック映画『アフターショック』では主人公が震災に乗じて脱走した囚人に殺されたくなくて彼女の隠れ場所を吐いて目の前でレイプされたのを見届けた後で火だるまにされて殺されます(その後彼女も射殺される)。

エンタメとして何か使命を持って作るならば、あらゆる悲惨なことも想定しなければ人の役には立たないし心も動かさない。無事普段の生活に戻れたら感動話も聞けるかもしれないけど被災地は死体の山で人々の心の余裕もなくなってるわけで。

本当に悪趣味な嗜好で作られたものもあるけど、このシリーズがそういった類なものでない事は過去作をやればわかるし、開発者自身が震災の被災者だという事からも明確です。ただ単に死やそれに対する現場での関心の薄さを露悪的と捕らえるならば、それはその人の許容範囲や価値観の狭さが原因なんですよ。

今までのシリーズにも死体は出ているし、他のゲームだって山ほど敵とか殺しているわけで、そこを掘り下げた瞬間に拒絶するのは「汚いものは見たくない・関わりたくない」っていう逃避でしょう。

 

・外国人問題

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これは海外のゲームやドラマ・映画なんかでアメリカが舞台の時に被差別者は必ずカナダに逃げようとするんですが、それはたいてい南北戦争のメタファーなのだけど、そういった知識のない人や南部の歴史修正主義者達によく批判されがちなんですね。

今作の外国人差別も過去の日本の被災地や戦時下でも実際にあったことなのに某掲示板なんかの今作の批判の中には「外人があんなに良い奴ばっかのはずがない、火事場泥棒みたいなのばっかだろ」という意見をいくつか見ました。そのまんまゲーム内の避難所の日本人のセリフとして使えそうです。素晴らしい。

 

・真エンディング

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これは2周目の飛行場ルートである条件を満たすことで見ることが出来たのですが、このエンディングによって今作の評価は格段に上がりました。

このエンディングではある女性の笑顔を見ることが出来るのですが、それだけで全てが救われたような気がしました。

ただの一般人である主人公、やれることはやれるだけやった。出来ないこと、どうしようもないことの方が多かった(今作では選択肢による大きな変化も期待できない)。でもそれらが無駄じゃなかったとちゃんと思わせてくれるエンディングでした。そして最後にもう一回冒頭の選択肢が提示され、自分の認識の甘さや「これは私の物語だったんだ」と気が付く。

前作までの「陰謀暴いて女の子助けてヘリで脱出」みたいなものはゲームにおけるカタルシスの一側面でしかなく、今作もまた「ゲームでしか体験できないこと」を実現していて、ちゃんとプレイする価値のある作品になっていました。

だから、異色作ではあるけど問題作ではない。

1~2作目にある良い部分を削ったことによる恩恵は全く受けていないのでそこは普通にマイナスですが、それまである程度進行に影響のあった選択肢が全く武器として役に立たなくなってしまった事も最後の最後で納得できました。

 

今までのシリーズとは視点(路線)を少しずらした今回のストーリー展開は、古参ファンにとっても個人によっては様々な違和感や問題を感じさせるものになってしまいましたが、私は良作だと思います。

絶体絶命都市という皮を被った多様な異色ジャンルのゲームをこれからも作り続けてほしいですね。

 

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