みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

ゲーム好きなら観ておきたい映画『クロニクル』

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クロニクル

2012年

アメリカ映画

監督 ジョシュ・トランク

 

あらすじ

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病気の母親と無職で暴力的な父親の元で孤独を感じながら暮らす高校生のアンドリュー少年(左)。学校まで車で送り迎えをしてくれる従兄弟のマット(中央)にも心を開けない。

ビデオカメラで自分の日常を撮ってネットに投稿することを唯一の趣味としているアンドリューはマットの勧めで学生主催のパーティーへと出向くが、そこでマットとその友人であるスティーヴ(右)と共に妖しく光る石を見つける。

そこで不思議な体験をした三人はある特殊能力に目覚めるのだが…。

 

映画の撮影手法としてはPOV方式とも呼ばれますが、正式には『ブレアウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド』のように撮影者が自分のカメラで撮った素材が後々発見されたものを観客が見ているような作りで、こういったものはファウンド・フッテージ形式と呼ばれています。

本作はジョシュ・トランク監督のデビュー作で前半部分の高校生の日常部分にはあまり予算がかけられていないのですが、こういった低予算部分と高校生の日常を描く方法としてファウンド・フッテージ方式が効果として絶妙なリアリティを出すことに成功しているように思います。

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主役のアンドリューのカメラ趣味も友人が少ないので自撮りが多く、映画の進行によって彼が自分のカメラへ向ける表情や撮り方を見ていくと、学生生活や家庭環境の悪さから彼が屈折した想いやナルシシズムを肥大化していく様子がわかりやすく伝わってきます。

割と暗めのイケてない高校生の自我を表現する際に「自撮り」という手法を使うのは、ゲームで言えば『ライフイズストレンジ』の主人公マックスがセルフポートレイトを撮り続ける行為でも使われていて、この映画を『ライフイズストレンジ』の男の子バージョンとして観てみるのもおもしろいと思います。

 

監督自身が大友克洋の大ファンで、役者にも『AKIRA』の映画を見せて演技指導したのだとか。今作は大友オマージュとしての超能力が後半に大爆発しているのが大きな見所になっています。

アンドリュー達の身に付けた特殊能力は鍛えれば鍛えるほど強くなっていくのですが、他の2人に比べて友人も趣味も少ないアンドリューだけがどんどんレベルアップして強くなっていくんですね。

そしてある事件をきっかけに闇落ちして能力を悪い方向へ使うようになっていくのですが、そのきっかけが「童貞喪失に失敗する」というもので。

この映画、こういった描写が本当に最高。

最初に3人が能力に気が付いた時にしたことがキャッチボールとかスカートめくりだったりと、非常に微笑ましくて。

童貞喪失に関しても、ちょっと前に他の2人の女関係の自慢話みたいなのを聞いてて焦っちゃうんですよね。

こういう大人からしたら「そんなことで…」と思うようなことでもちゃんと10代の切実な問題として描いているところが素晴らしいです。

 

アンドリューが覚醒する時にデビッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』という曲がかかるんですけど、この曲はデビッドボウイが自分で作り出して演じていた架空の救世主「ジギー」というキャラの事を歌った曲で、ボウイ自身はこのキャラにのめり込みすぎておかしくなっていた時期もあって、この時のアンドリューの気持ちと重ねているんですね。

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他の2人は読書とか政治家志望などの趣味や夢があるんだけど、アンドリューは基本ネットしか見ないからあっという間に闇に落ちていきます。それもすごく単純な厨二病みたいなやつ。

ネタバレになるので映画の全ては語りませんが、私が素晴らしいと思ったのはやはり10代の未熟さや暴走をきちんと茶化さないで作っているところです。

結果、笑ってしまうんですが。

 

『ライフイズストレンジ』と比較すると、アメリカの学生生活の描写や、10代の発想と超能力が結び付いて起こってしまう結果のリアリティなど多くの共通点があります。

しかし一方の『ライフイズストレンジ』は女子の話でセンチメンタルな方向へ話が進行していくのに対して『クロニクル』は男子の厨二的な方向へ行くという、リアリティとしてはどちらもあるんだけど男女の違いでここまで観てる方の心の持ちようが変わるのかという面白さがありましたね。

 

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