みやび通信

好きなゲームについて色々書いていきます。たま~に攻略記事あり。

ファークライ3 クラシックエディション(PS4)

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ファークライ3クラシックエディション

ユービーアイソフト

2018年7月5日

PlayStation 4PlayStation 3Xbox 360Microsoft WindowsXbox One

 

ファークライ3クラシックエディション』は2012年11月29日に発売された『ファークライ3』にDLCを追加して操作性等が改善されたもの。

クリア後の感想です(※ネタバレあり)

 

ストーリー

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南の島ルークアイランドへバカンスに来た主人公ジェイソンとその御一行。

ロサンゼルス出身のジェイソン3兄弟とその友人たちはエリートの富裕層で親のクレジットカードを使って遊び放題。

そんな彼らがこの島へ来たのはスカイダイビングをするためだったのだが…

 

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実はこの島はバース(写真右)率いる海賊たちに占領されていて薬物や人身売買が行われていた。ジェイソン達もあっという間に捕らえられてしまい身代金目的に監禁されてしまう。

兄のグラント(写真左)と共に脱出を試みるも途中で兄は射殺されてしまいジェイソンは一人島へ放り出されるところからこのゲームはスタートする。

 

脱出する途中で自分たちと同じように捕らえられた人たちが身代金を当てにできない貧乏人だという理由で次々と処刑されていく光景を目撃する。

まるで映画『ホステル』のような胸糞展開に序盤からこのファークライというゲームのオリジナリティが爆発している。

『ホステル』という映画はモテないアメリカの若者たちがスロヴァキアの田舎に売春目的で行ったところを拷問専門の人身売買業者に捕らえられて悲惨な目に会う映画なのだが、似ているのは胸糞悪い展開だけでなく「アメリカの調子こいた若者VS先進国から来たバカ旅行者をカモにする田舎の人身売買業者」という対立構造まで一緒だ。

間近で見る行為だけを見れば残虐な海賊どもこそ絶対的な悪のように思えるのだが、ろくに旅行先の情報も下調べせずに未開のジャングルが多く残る島へ呑気に観光しに来た主人公たちに対しても「自業自得なんじゃないか」という気持ちが少し沸いてしまいプレイヤーとしては何とも複雑な気分でのスタートとなる。

 

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命からがら脱出したジェイソンは島の住人であるデニスという男に助けられる。

どうやらこの島にはもともとの住民のほかにラクヤットという原住民で構成された組織があり海賊たちに対抗しているらしい。

デニスもその組織の一員で、ジェイソンの秘められた力を引き出すために彼の体にタトゥーを施し、ジェイソンは単身兄のかたき討ちと仲間の奪還に向かうのだった。

 

様々な楽しい要素

このゲームにとってタトゥーはとても重要な要素だ。

FPSゲームである今作だが、様々な行動に対して経験値が与えられ、それらを貯めてスキルを解放していくと腕のタトゥーが刻まれ強くなっていく。

RPGと同様のこの成長システムによってアクションゲームが得意でない人でも島中を冒険していくことで攻略を有利に進めていける。

この成長要素の中でも重要になってくるのがステルス要素。

本作はかなりステルス行動を推奨する仕様になっていて、敵の拠点を制圧する際にも「誰にも見つからずにクリア」の条件を満たすと力任せに乱戦して制圧した時の何倍もの経験値を獲得することが出来る。

腕に覚えのあるプレイヤーなら序盤の時点で必要なスキルを獲得して素早い攻略が可能だし、アクションが苦手な人もクエストの数をこなしていればいずれは攻略できるだろうし、慣れてくれば自ずとステルス操作も身について攻略の多様性に気が付く。

 

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このゲームのステルス要素はかなり楽しい。

拠点を見つけたら望遠カメラでマーキングして敵の死角を探す。岩陰や草の中から近付いて石ころでおびき寄せたりスナイパーライフルで狙う。

拠点にある警報器を無効化したり敵の捕らえた猛獣の檻を破壊して襲わせたりと、やみくもに突撃するよりもはるかに多彩な行動ができて楽しい。

以降のシリーズで改善されたが、この『3』では倒した敵を移動できないのだけが残念。倒した直後だけは運べるのだが、一度手を放してしまうと二度と運べなくなってしまうので注意が必要。

 

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ステルス以外にも特筆すべき素晴らしい要素にあふれている今作。

草木は燃え、広がって、木や家まで燃える。

高所をよじ登ったりグライダーやパラシュートで広大なオープンワールドを自由に飛び回れる。

島の隅々までに工夫を施された遊びが用意されていて、ストーリーを進める上では立ち寄ることのない洞窟や水中にも仕掛けがいっぱいあり、レリックという全部で120個ある島の遺物を集めてまわることで島の隅々まで存分に味うことが出来る。

任天堂の傑作オープンワールドゲーム『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』はかなりの部分で今作をお手本にしたんじゃないかと思う。

ちなみに初期のミッションで麻薬畑を焼き尽くすシーンで延々と流れる印象的な曲はSkrillexのMake iIt Bun Demという曲で、歌っているのはボブ・マーリーの実の息子であるダミアン・マーリーという粋な選曲だ。

 

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島に生息する野生動物の種類も豊富で、水中にはワニやサメもいる。

海賊・島の住民・野生動物が衝突する環境なので単調に思えるミッション中でも不測の事態が起こり緊張感を維持している。

海賊を倒しに行ったら偶然そこに通りかかった住民と銃撃戦になっていて、その様子を遠くで傍観していたらそこに野生のトラが乱入して全員喰い殺してしまう光景を目撃したことがある。

島全体が生きているようなダイナミズムを感じさせる今作のゲームデザインは素晴らしいとしか言いようがない。

しかもプレイヤーの拠点制圧の割合によってこれらの勢力図は塗り替えられていくので、例えばレースのミッションに海賊の邪魔がなくなって走りやすくなるなどの、プレイヤーの干渉による難易度のコントロールが出来てしまう。

しかもこういった「主人公が世界に干渉していく影響」というものをストーリーの細部に至るまで取り入れているところがこのゲームを破格な作品にしている。

 

主人公ジェイソン

このゲームはRPG要素が強いと書いたが、主人公であるジェイソンにはとてもじゃないが感情移入できない。それは意図的にそうなっている。

装備を作成するのに必要な動物の皮を剥ぐときには「うわぁ」「グロいな」などとボヤき、ストーリー上成長していく要所要所で「殺しが楽しくなってきた!」などと言い、助けた仲間たちにドン引きされたりする。

 

このゲーム、捉え方によってはプレイヤー批判のように思えるポイントがいくつかあるのだが、あえてそういった解釈を避けるためにジェイソンのような「ロサンゼルス出身のエリート」というガチガチの設定の人物を主人公にすることによって回避している。

 

バースの存在

誤解される要素は2つあるのだが、その一つが海賊のリーダーであるバースの存在だ。

ゲームでは重要なキャラクターに会うと、ストーリー上で仲間になるCIAの工作員に情報を提供してもらえるのだが、このバースだけは全てが謎に包まれていて何もわからない。

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ストーリーの中盤でバースと対決することになるのだが、バースの部屋の中には沢山のブラウン管が吊るされている。

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錯乱するジェイソンから見た自殺しようとするジェイソン。

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 床にばら撒かれた薬物によって錯乱状態になっているジェイソンに向かって「お前には俺を撃てないだろう」と挑発してくるバース。

この演出は捉え方によっては「殺人ゲームに興じるプレイヤーはジェイソンでありバースでもある」ので、バースを殺すということは自分を殺すということなのだとも受け取れる。

しかしこれは単にプレイヤーを攪乱させるためのブラフであり、ストーリーをちゃんと進めていればバースの言葉通りジェイソンの事だとわかる。

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刻々と狂っていくジェイソンはストーリー上できちんと描かれているし、ストーリーのラストでは「人殺しはもうたくさんだ。こんなことはもうやめるんだ。大勢の人を殺してしまった…俺はもう、ただの化け物なんだ。怒りに支配されているのを、ずっと感じるんだ。だけど、人間の心はまだ持っている…はずだ。きっと…あるはずだ」というジェイソンの言葉で締めくくられている。

 

不思議の国のアリス

もうひとつの誤解を生む要素が、ストーリーを進めていく要所要所で挿入される『不思議の国のアリス』の引用。

これは『不思議の国のアリス』自体が様々な解釈の出来る作品なので誤解を生みそうだが、引用されている「かわいそうな牡蠣の話」やチェシャ猫のセリフは、ジェイソン一向に降りかかった災難やルークアイランドの現状に合った箇所をチョイスして引用しているに過ぎない。

 ルークアイランドという島自体が、旧日本軍の基地があったり友好組織であるラクヤットが儀式として薬物を用いていたりと現実と非現実の境界線上にあるような環境であることも指しているのだろう。

終始無音で表示されていたアリスの文章が終盤になるとラクヤット(レリック)の音楽が流れることでそういった誤解は解けるはずだ。

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ストーリーの終盤、ジェイソンはラクヤットの女王シトラに仲間の首をはねるように命じられる。

ここでエンディングは分岐するのだが、首をはねることを拒むことでジェイソンの腕からはタトゥーが消え去り、彼はアメリカへ帰ることを決意する。

そう、『不思議の国のアリス』のラストもまた、不思議の国の残酷で逆らう者の首をはねるのが大好きな女王からアリスが逃げるところで目が覚めるというお話なのだ。

 

 

以上、ここまで語っても語りつくせないほど『ファークライ3』というゲームは魅力的で独特だ。オープンワールドの世界の中でここまでストーリーや島の形状から敵味方の行動までうまく噛み合って、さらにはプレイヤーまでをも攪乱してくる痛快な傑作は珍しい。

まだプレイしてない方は是非この正しく狂った世界を体験してほしい。

クラシックエディションでは追加コンテンツもあり操作性も改善されているのでこちらをお勧めしたい。

 

 

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